エイプリルフールの彼女(連載版)

日本語わかりま銑十郎

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最終話「夏が終わる」

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  4.

「あたしを幸せにしてください」

  1.

 彼女からあの言葉をきいて、もう何年たつだろうか。

 いまでもふと思い出す。
 意を決したような瞳。照れたようなほほ笑み。不安に揺れながら、それでも必死に絞り出したような声。

 あれが中三の四月のできごとで、僕がいま二十だから。ええと、何年まえだ?

 ぷしゅー。
 電車がとまる。

「あ、出なくちゃ」

 僕はあわてて電車をおりる。

「うー寒」

 地球温暖化なんてぜったい嘘だ。
 だってこんなにも寒い。

 手をこすり息をはきつけながらホームを出ると、母親が僕をむかえにきていた。
 母親が開口一番にもらしたのは、「おかえり」でも「ひさしぶり」でもなく、来年度から高三になる妹の愚痴だった。

「京子にも一緒にむかえに来いってゆうたんやけど」
「べつにいいよ。京子、受験まであと一年だし忙しいんでしょ?」
「それがぜーんぜん勉強しよらんけん困っとるんよ。ずうーっと小説ばっかり読んで、注意しても逆ギレするし」
「へー」

 適当に相づちをうちながら、母親の車に乗りこむ。
 母親がエンジンをいれながら、

「晩ごはんどーする? 米は炊いとるけど」
「あ、いってなかったっけ? 今晩同窓会があるんだ、中学の」
「えー? 成人式前やのに?」
「うん。成人式のあとはみんな高校の同窓会があるし、翌日だと大学にもどらないといけない人もいるからさ」
「ケイは大丈夫なん、大学」
「んー。月曜日は自主休校する予定だけど、授業一コマだけだし、いままで全部出席してる講義だし」
「まあ、大丈夫ならええけど。同窓会あるなら送ろうか?」
「いや、いいよ。飲むつもりないし、自転車で行く」

 大学生になってはじめての飲み会で浮かれてビールを頼んだらひと口で泥酔してひどい目にあった。それいらい二度と飲酒しないと心に決めている。

 車が赤信号でとまり、母親が思い出したように、

「あ。そういえばケイのつこうとった自転車処分したけん、京子の自転車つこうて」
「えー、京子の自転車で居酒屋なんかとめたら補導されん?」
「京子、電車通学やけん高校のステッカーはってないで」
「あー、そっか」

 話題もなくなり、無言で窓の外を眺める。
 僕の慣れ親しんだ町は、僕の慣れ親しんだ町のままで……しかしときおり、あったはずの建物がなかったり、なかったはずの建物があったりするのを発見すると、名状しがたい無常観に胸がほんのりと痛くなる。

「あ、家のまえにコンビニできたんだ」
「そうそう、便利になったんよ」
「便利だねぇ」

 そう僕がつぶやくのと同時、車がとまった。家に到着した。

「ただいまー」

 家にはいると、リビングのソファで京子が小説を読んでいた。

「京子、なに読んでるんだ?」
「ちょ、覗かないで、殺すわよ」
「んだよ」

 京子にひじでブロックされる。
 僕はふと京子の髪に目がいき、

「白髪増えた?」
「死ね」

 蹴り飛ばされた。
 僕は立ちあがり、

「そうだ、京子。自転車借りるぞ」
「嫌よ。兄貴のニオイつくじゃない」
「つかねーよ。とにかく借りてくぞ」
「……」

 無言。

「すっかりクールになっちゃって」

 昔はお兄ちゃんお兄ちゃんいってひっついてきたのに。
 だいたい兄貴ってなんだよ。

 本当に、なにもかも変わらないようでいて、実はしっかり変わっているのだ。
 京子は夏休みに会ったときよりだいぶ大人びていたし、化粧でごまかしてはいるが母親の表情もいくぶん老けて見えた。

 僕はふと、彼女のことを思い出した。

 加奈ちゃんはどんな女性になっているんだろう。
 東京に転校して、そのまま東京の高校に進学して、大学はどうしているのだろう。

 僕はいまだに加奈ちゃんとの初恋を払拭できていなかった。
 東京の大学に進学したのだって、もしかしたら道でばったりと加奈ちゃんに出会えるんじゃないかと期待したからだ。

 でも、東京には人が多すぎた。
 加奈ちゃんなんか、見つかるわけがなかった。

  2.

 同窓会の会場はとあるちいさな居酒屋。
 幹事の畑野絵里の家族がやっている店らしく、貸しきりのうえに格安で提供してもらっている。

「おおーう、ケイ! 遅いわーいっ!」

 席につくなり土井にからまれた。

「ごめんごめん、ちょっと道まちがえてさ」
「お前チョーシのってんな? トーキョー人はこんなど田舎の道知りませんってか?」
「ちがうよ。居酒屋なんて来たことなかったし、うろ覚えだったんだ」
「はーいお前アホー。うろ覚えじゃなくて、うる覚えだろがい」

 そうだっけ。

「まったく、いい大学かよってるくせにんなこともわからんのかい」
「偏差値なんて、国立歯学部のお前だって変わらないじゃないか」
「知名度がね、違うわけだよ知名度が。うちの県なんて、どこにあんの? 九州のあたりだっけ? っていわれるレベルなんだからな、一般的に」
「そこまで酷くないだろ」
「いーや、酷いね。サークルに東京出身の医学部生がいるんだけど、自分から地方に出向しておいてからに、こっちが方言でしゃべると鼻で笑ってきやがる。あいつカッペ馬鹿にしてやがんな。カッペだらけの中でひとり東京人の俺カッケーとか思ってやがんな。ついでに歯学部の俺を見くだしてやがんな。そんなに東京が好きでオツムが立派なら、東大でも早稲田でも行きゃーいーっつーの!」

 土井は鼻をまっ赤にしてさけぶ。こいつだいぶ酔ってんな。
 まじめに酔っぱらいの相手をするのも面倒なので、話はんぶんに適当に相づちをうつ。

 受容と共感。なんでもかんでも「うんうん」頷き、たまに「そだねー」とか「大変だねー」とか返してやれば、相手は勝手に気分をよくするのである。相手が先輩とか目上の人なら「凄いですねー」と「勉強になりますー」もかなり有効。

 僕はそんな感じで大学で学んだ処世術を発揮しつつ、他の同窓生たちを見わたす。
 中学時代とほとんど変わらないやつもいれば、面影すら感じられないほど変貌しているやつもいる。

 一番注目を集めているのは京大法学部に進学した本木で、昔からこいつは成績優秀だった。
 ものすごい美人がいるからだれかと思えば、しゃべり方が女っぽいとからかわれていた栗原くんらしい。今は東京でモデル活動をしているという。

 ほかにもたくさんの同窓生がいて、しかしその中に加奈ちゃんの姿はなかった。
 同窓会の出欠確認のメールにも彼女の名前はなかった。

 それはそうだ。
 だって、加奈ちゃんは東京でおこなわれる成人式に行かなくてはならないのだ。加奈ちゃんには東京に家族がいて、高校の友達がいて、もしかしたら彼氏だっているかもしれない。

 すべては変わるのだ。
 加奈ちゃんの故郷はここではなく、東京になってしまったのだ。

 だから、僕がこうして加奈ちゃんの姿を探してしまうことに意味はなく、僕は店の扉が開く音をきいて勢いよく振り返った。

 周りの雑踏が消えうせた。

「あはは」

 その笑みは昔とちっとも変わってなかった。

 すこし大人びていたが、無邪気さは消えていなかった。
 ショートヘアだった髪は肩がかくれるくらい伸びていた。
 なんだかひらひらとした、よくわからないけどなんとなくお洒落な服を着ていた。

 加奈ちゃんだった。

「あ、あ、」

 声がうまく出せない。

「ありー? 加奈さん、来ないんじゃなかったんかい?」

 となりで土井が出しゃばってきた。

「うん。でも、ちょっと気が変わって。絵里には事前に連絡してたんだけど」

 加奈ちゃんがそう苦笑すると、同窓会幹事の畑野絵里がおおげさに手をあわせながら、

「ごっめーん、みんなに伝えるのすっかりわすれてたー」

 わはははは、なにが面白いのか酒に酔っているだけなのか、爆笑につつまれる。

 加奈ちゃんは僕のいる座敷に近づくと、僕のとなりを指さす。

「ねえ、ここ座っていい?」

 僕はひたすら頷いた。

  3.

 同窓会はあっという間に終わった。

 時刻は夜八時。
 冬の太陽はとっくに落ちているが、まっ暗な夜空のしたで、町はまだぼんやりとあかるい。
 建物からこぼれる光、ゆきかう自動車のビーム、街灯にネオン。科学のちからは偉大だ。

 二次会にむかうという土井たちと別れ、僕は自転車を押しながら夜の町をすすむ。

 僕のとなりには加奈ちゃんがいた。
 加奈ちゃんはここから二キロほど離れた国道ぞいのホテルを借りているらしく、僕が送っていくことになったのだ。

「ねえ、加奈ちゃん」
「なあに?」
「どうして、来たの?」
「なにそれ、あたしが来たらダメなの?」

 すこし怒ったような声。

「いや、そうじゃなくて。僕はてっきり、東京の成人式に出るもんだと思ってたから」
「あたしもね、そうするつもりだったんだけど。でもね、出欠確認のメールに、ケイくんの名前があるのを見て、それで、行かなきゃって思ったの」

 遠い表情で加奈ちゃんがいった。

「そう、か」

 僕は長い沈黙のすえに、やっとそれだけの言葉をしぼり出した。

「変わったね、この町」
 加奈ちゃんがいった。

「そう?」
「そうだよ。あたしのいたころはここの歩道にガードレールはなかったし、あそこのコンビニは酒屋さんだったし、それに、あたしが泊まるホテルだってまだ建設途中だったんだよ」
「そうか」

 僕にとっては慣れ親しんだ町でも、加奈ちゃんはもう五年以上この町にいなかったのだ。
 僕がすこしずつ実感していった町の変化を、加奈ちゃんは一度に感じているのだ。

 僕なんて半年ぶりに帰省して、それでも町の変化に若干の寂寥感を感じたのに。
 加奈ちゃんは五年以上なのだ。

「そういえば、ケイくん知ってる? 上杉くんのこと」
「ああ。全国優勝だろ。それで、高校出たら海外に出るんだっけ? 東京五輪の代表候補とかいわれてるし。自慢になるよな」
「うんうん」
「俺、あの上杉にナックルサーブ教えたんだぜって」
「そっち!?」

 加奈ちゃんが声をあげる。

「ふつう、上杉くんに勝ったこと自慢するでしょ?」
「いや、三年のときに一年に勝ったていうのも、なんだか大人げなくてマズくない? それよりかは、『上杉はワシが育てた』っていうほうが響きがいいような気がするけど」
「うーん、そうかなぁー」

 加奈ちゃんは納得できないように二、三度首をかしげる。
 そして、二、三歩歩き、二、三回ちいさく息をしたあと、

「ほんと、何もかもが変わっちゃうんだよね」

 加奈ちゃんがため息に近い声をはき出した。

「そう、かもね」

 でも。
 僕は夜のスポットライトに揺れる加奈ちゃんの横顔をじっと見つめた。

 加奈ちゃんはいつまでも加奈ちゃんだ。
 しばらく無言で歩いていると、加奈ちゃんが不意にこちらをむいた。

「でもね、ケイくん」
「ん?」
「ケイくんはぜんぜん変わらないね」

 それはたぶん、加奈ちゃんのせいだ。
 僕はそう思った。

 僕はあの夏からずっと変わらない。
 加奈ちゃんが好きだ。
 ずっと僕の心が変わらないから、僕は加奈ちゃんと別れた中学三年の七月からずっとすすめなくなっているんだ。

「加奈ちゃんも、」

 あのころと変わらない。
 あのころの加奈ちゃんのまま、二十歳になっている。
 もしかして加奈ちゃんも僕とおなじで、

 そういいたくて、いえなかった。
 かわりに僕は、

「そういえば、加奈ちゃんっていまどこに住んでるの?」
「東京だよ。建築系の専門学校に行ってるの。四年制の。ケイくんは?」
「僕も、東京」
「え? なにしてるの? 大学生?」
「うん、まあ」
「そっか、じゃあ」

 加奈ちゃんがどこか遠くを見つめる。

「これからは、会おうと思えば会える、よね?」
「加奈ちゃん、」
「たはは、ごめん。ヘンなこといったよね」

 ごまかすような笑い声。

「会おうよ、また今度」

 僕は歩くのをやめた。
 すこし遅れて、加奈ちゃんも立ちどまった。

 振り返った加奈ちゃんの泣きそうな顔を、通りかかったトラックのライトが一瞬だけ照らした。
 つぎの車の光が加奈ちゃんの表情を照らし出したときには、加奈ちゃんは笑みを浮かべながら僕を見つめていた。

「ケイくんはさ、あたしと別れてからなにしていたの?」
「なにって、」
「彼女はいる?」
「いないよ」

 僕は強くいった。

「加奈ちゃんは?」
「あたしー? あたしはいないかな、いまは」
「いまはって、昔はいたの?」
「うーん。秘密」

 加奈ちゃんはいじわるに微笑む。
 その加奈ちゃんの笑みはまるであのときみたいで……

「ねえ、加奈ちゃん」

 僕はようやく決心した。

 そうするべきだと思った。
 そうしなければならないと感じた。

「賭けは僕の負けだ」
「……」

 加奈ちゃんはまっすぐと僕を見つめる。
 僕はいう。

「高一のとき、ある女の子に告白されて、でも、僕はまだ加奈ちゃんのことを忘れられずにいた。それで、あの手紙を見た。見てしまった」
「それで、OKしたの?」

 おびえるような、加奈ちゃんの声。

「……断った」

 そう僕がいった瞬間、加奈ちゃんの表情がくずれた。

「どうして! 賭けの命令は、ケイくんが幸せになること! なのに、どうして!」
「幸せにならなくちゃいけないからだよ」
「……っ」

 加奈ちゃんが言葉を飲みこんだ。

「僕を幸せにしてください」

 僕は告白した。
 それは、あの日の逆の光景。

「僕が加奈ちゃんの命令を実行するには……、僕が幸せになるには、君じゃなきゃダメなんだ。加奈ちゃん! 僕は加奈ちゃんが好きだ。ずっと好きだ。ほかのだれかじゃダメなんだ!」

 そして、僕はありったけの声でさけぶ。


「僕は、加奈ちゃんが、だいだい、大好きだ――――――――――――ッ!!」


 いいきった。
 僕の視線の中心で、加奈ちゃんは頬を両手でおさえ、その場にしゃがみこんだ。

「たは――――――っ! こんなことになるなら、お酒のんどくべきだった、そしたら誤魔化せたのに!」

 加奈ちゃんは僕を上目づかいに見つめながら、

「顔すっごい熱くなってるの、わかる?」
「暗くてわからないけど、」

 けど、たぶん僕のほうが赤くなってると思う。顔中が焼け石みたいに熱くて、全身がガクガク震えている。

 でも、僕だけじゃなかった。加奈ちゃんもそうなんだ。

「見えないかー、ならいうんじゃなかった、恥ずかしい」

 加奈ちゃんはいじけたように視線をそらしつつ、立ちあがった。
 そしておもむろにコートのポケットに手をいれると、紙がこすれる音がしたあと、加奈ちゃんは封筒を取りだした。

「これ、ケイくんと交換した手紙」
「え」
「開けちゃったんだ、あたしも」

 暗くてわかりづらかったが、よく見ると封が開けられていた。

「びっくりしたんだよ。『幸せになってください』って、あたしとおなじこと書いてるんだもん」
「僕も、」

 びっくりした。それで……

「それでね。あたし、やっぱりケイくんじゃないとダメだって思ったの。賭けに負けちゃったから、あたしは幸せにならなくちゃいけないのに、あたしを幸せにできるのはケイくんだけだったの。だから、」

 すこし溜めて、

「……責任とってよね」

 加奈ちゃんが僕を見た。

 長いような、短いような、そんな沈黙が僕らをつつんだ。
 そのあいだに、加奈ちゃんの顔を何台もの車のライトが通過していった。
 そのあいだ、加奈ちゃんはずっと真剣な表情で、僕をじっと見つめていた。

 そして、加奈ちゃんはあのときとおなじ言葉を、すこしだけ成長した声で、いう。

 時計の針が動く音が聞こえた。
 そんな気がした。

 僕の十四歳の夏は終わり、二十歳の春がはじまった。
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