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お味噌汁

2.多恵子、味噌汁を作る

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 At Nishihara Town, Okinawa; October 3, 1999.
 The narrator of this story is Taeko Kochinda.

翌日、あたしは自宅の冷蔵庫の中身を確認した後、足りないものを近くの市場まで買出しに行った。
豚は肩ロースって言ってたよね? それからジャガイモと、黄大根チデークニー、かつお節と、昆布クーブ、っと。
材料を買って帰ると、あたしは、一時過ぎから台所に立った。昆布クーブを戻すためだ。
「多恵子、何してるの?」
かあがあたしを珍しそうに眺めている。
「味噌汁作る」
「味噌汁?」
「勉に頼まれた。ジャガイモと昆布クーブの味噌汁頂戴って。作ったらお父も喜ぶよ、って」
「へえ」
お母は驚いている。ということは、勉をそそのかした犯人は、お母ではない。
とすると、おとうかな?
娘の顔を見て「味噌汁頂戴」って、直接は言いづらいのかな?

あたしは、かつおだしを取り、ジャガイモと黄大根チデークニーの皮を剥きながら、干ししいたけを戻した。あとは、豚肉を一度さっと湯通しして、順序良く煮込めばいいや。
三時過ぎに、全ての具が鍋に入った。うん、いい匂いだ。
いつも忙しくて、おかあに作ってもらってるけど、たまーに台所仕事をするのも、いいな。

車庫から車の音がする。
「お邪魔しまーす。お、いい匂いだね?」
玄関から、勉が台所を覗いている。
「リクエストにお答えして、味噌汁作っているよ。まだ煮込んでいる最中だけど」
「ありがとう。じゃ、期待してるからねー」
勉はサンシンを持って奥座敷に入った。

「いいカジャぐゎーすしが、ぬーやが?」
今度はおとうがやってきた。おかあが答える。
今日ちゅーや、多恵子が味噌汁、仕込しこーゆんでぃ(用意するって)」
「多恵子が?」
とうは目を丸くした。あれ、あれれ?
「お父さんがリクエストしたんじゃないの?」
「はぁ? ぬーんち、よ?」
とうはあたしに聞き返した。
… …おかしいな。ちぐはぐになってるぞ?
むしがて」
と言って、お父も奥座敷に消えて、やがてサンシンの音が響いてきた。

だけど、… …なにが、「むしがて(いいけどさ)」ね?
そりゃ、おかあには負けるよ。ベテラン主婦だもん。
でも、あたしも少しずつは、頑張っているんだよ! あたしも認めてよ!
そしてあたしは頭の中で、ゆっくり経過を反芻してみた。
じゃ、つまり、これは純粋に、勉のリクエストなわけね?
勉、あんた、そんなに味噌汁食べたかったの?

ぐつぐつ言う鍋に味噌を溶かした。さあ、これで完成だ。お母に味見させた。
「上等さー。二人とも喜ぶはずよ!」
まあ、だったら、いいね。気分転換にもなったし、良かったさ。
釣り銭は、勉に返さないで貰っておこうっと。市場までの交通費代。
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