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【1章】
【第九話】戯曲
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安心できたのは束の間だった。
諦めの悪いグロームがまたやってきたのだ。
しかし、幸いまだこの小屋に私たちが住んでいることに気づいていない。
「失礼だがそこの若者。この辺に賢者はいないか?」
グロームは私に気づかず話しかけてきた。
「そんな大層なお方をお見かけしたことは一度もありません。」
私は上手く平静を装うことができた。
しかし、事態は上手く運ばなかった。
「そうか。念のため小屋の中を改めさせてもらうぞ。」
「お待ちください!」
私は上手くやり過ごせないと思って、小屋の中にいるっ者たちに伝わるよう、大げさに止めに入った。
「貴様、よく見ればこの前の!」
私はグロームに覚えられていた。
グロームは表情を強張らせ、2人の部下を引き連れてずんずん新居に入り込んだ。
その頃、小屋の中では、
「外が騒がしいな。もう見つかってしまったか。」
「そのようです。」
マルコが扉の隙間から外の様子を窺って、バルルーフに報告した。
「例の準備をしてくれ。」
「わかりました…。」
バルルーフは、前々から考えていた作戦を実行するべくマルコに支度をさせた。
マルコはバルルーフから与えられた指示にもかかわらず辛そうに応じた。
「それからカルティア。」
「なんだ?私は戦力にならないぞ。」
「いや、重要な役割がある。」
武芸に精通していないカルティアは自らを戦力外とみなしていたが、重要な役割と聞いて、息を呑んだ。
「飲まれろ。」
バルルーフはそう言って、大量の酒が入った樽をこれまたどこからともなく出して言った。
それも以前4人で飲み明かした時の倍の量だった。
「よかろう。」
カルティアは言われた通り、酒をがぶがぶ飲み始めた。
グロームが小屋を開けて中に入ろうとすると「うっ」という声を漏、同時に一歩後ずさりした。
何事かと思い、私も続けて小屋の中に入った。
小屋の中は新築と思えない異臭で充満していた。
床には糞がまき散らされていた。
そしてその床の上には、顔を真っ赤にしたカルティアとバルルーフが寝転がり、浴びるように酒を飲んでいた。
「気が狂ったか!」
グロームはしかめっ面をして怒鳴った。
「はへは、ひははは?」
カルティアが一度口に含んだ酒を口から溢しながら何かを言った。
「処刑するにも値しない。」
グロームはそう言い残して、その場を去っていった。
私は一部始終を唖然唖然として見ていた。
裏口でマルコが泣いていた。
「なぜ先生がここまでしなくてはならないのですか?」
それを聞いたバルルーフが答えた。
「信念のため。」
バルルーフは初めから正気だったみたいだ。
「しかしこれは人としての行為を逸脱しています。」
マルコが涙ながらに訴えた。
「私はそれほどに頑固でわがままなのだよ。」
バルルーフは汚れた新居の片づけを始めながら言った。
カルティアは酔いが回って気絶していた。
本気で酔わなければ、この場に居続けることはできなかったことと思う。
諦めの悪いグロームがまたやってきたのだ。
しかし、幸いまだこの小屋に私たちが住んでいることに気づいていない。
「失礼だがそこの若者。この辺に賢者はいないか?」
グロームは私に気づかず話しかけてきた。
「そんな大層なお方をお見かけしたことは一度もありません。」
私は上手く平静を装うことができた。
しかし、事態は上手く運ばなかった。
「そうか。念のため小屋の中を改めさせてもらうぞ。」
「お待ちください!」
私は上手くやり過ごせないと思って、小屋の中にいるっ者たちに伝わるよう、大げさに止めに入った。
「貴様、よく見ればこの前の!」
私はグロームに覚えられていた。
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その頃、小屋の中では、
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「そのようです。」
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「例の準備をしてくれ。」
「わかりました…。」
バルルーフは、前々から考えていた作戦を実行するべくマルコに支度をさせた。
マルコはバルルーフから与えられた指示にもかかわらず辛そうに応じた。
「それからカルティア。」
「なんだ?私は戦力にならないぞ。」
「いや、重要な役割がある。」
武芸に精通していないカルティアは自らを戦力外とみなしていたが、重要な役割と聞いて、息を呑んだ。
「飲まれろ。」
バルルーフはそう言って、大量の酒が入った樽をこれまたどこからともなく出して言った。
それも以前4人で飲み明かした時の倍の量だった。
「よかろう。」
カルティアは言われた通り、酒をがぶがぶ飲み始めた。
グロームが小屋を開けて中に入ろうとすると「うっ」という声を漏、同時に一歩後ずさりした。
何事かと思い、私も続けて小屋の中に入った。
小屋の中は新築と思えない異臭で充満していた。
床には糞がまき散らされていた。
そしてその床の上には、顔を真っ赤にしたカルティアとバルルーフが寝転がり、浴びるように酒を飲んでいた。
「気が狂ったか!」
グロームはしかめっ面をして怒鳴った。
「はへは、ひははは?」
カルティアが一度口に含んだ酒を口から溢しながら何かを言った。
「処刑するにも値しない。」
グロームはそう言い残して、その場を去っていった。
私は一部始終を唖然唖然として見ていた。
裏口でマルコが泣いていた。
「なぜ先生がここまでしなくてはならないのですか?」
それを聞いたバルルーフが答えた。
「信念のため。」
バルルーフは初めから正気だったみたいだ。
「しかしこれは人としての行為を逸脱しています。」
マルコが涙ながらに訴えた。
「私はそれほどに頑固でわがままなのだよ。」
バルルーフは汚れた新居の片づけを始めながら言った。
カルティアは酔いが回って気絶していた。
本気で酔わなければ、この場に居続けることはできなかったことと思う。
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