カーネイジ・レコード

あばらい蘭世

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第1章 全ての始まりの記録

abyss:19 ティナ襲撃される②

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村山と織田が先に仕掛けるのかと思いきや、後ろにいた日向と志尊が二人同時にダッシュでバーテンダーに向かう。

志尊の顔面を狙った攻撃に日向のワンテンポ外した下段足払いコンビネーション。
これをバーテンダーはどちらもあっさりとかわす。
二人ともかわされるのは想定していて次の一手で志尊は体を回転させた裏拳、それをバーテンダーは上体をそらして避けるが、裏拳から真下に軌道を変えた肘打ちを胸に食らう。
怯んだ一瞬で日向が回し蹴りを背中にお見舞いする。
バーテンダーは少しだけよろめいたが「やりますね」と不適な笑みを崩さず言った。

志尊が間髪入れずに攻撃を入れるがバーテンダーはそれを左手でいなすと右拳を志尊のお腹に二連撃叩き込んだ。殴り飛ばされる志尊と入れ違いで織田と村山が二人同時にバーテンダーに攻撃開始。
バーテンダーは避ける、いなしながら隙をついては二人に打撃を打ち込んでいく。
打撃を受けながらも織田がバーテンダーを羽交い締めにしたところで村山が顔面に何発も拳を叩き込む。しかしバーテンダーはニヤァと笑う余裕がある。

バーテンダーは力任せに織田の両腕をほどくと後ろの織田の脇腹と顔面に交互に何度も肘鉄を食らわす。織田は顔面の肘鉄は防御できたが脇腹のはまともに食らい後ろによろめく。
「こいつ強いぞ」
村山が繰り出した連続回し蹴りはバーテンダーに足を掴まれ投げ飛ばされてしまった。投げ飛ばされた先にいた日向が村上を掴むが勢いを止められず二人とも地面に転がり込んだ。
「いてぇ!なんつー力だよ!」
「累!気をつけろ!」
バーテンダーの前に累が立ちはだかる。
「あなたたちに用はないので、怪我をする前に───ああ、そうでしたターゲットではないので殺しても構わないんでした。生かす方が面倒なので死んでください」
恐ろしく気持ち悪い仕草で髪をかき上げながらバーテンダーはまだまだ余裕の態度をとる。

累は打撃と蹴りのコンビネーションを繰り出す。喧嘩慣れしている相手だったらこれで十分闘えたし勝てただろう。
しかしその攻撃のほとんどがバーテンダーにかわされいなされる。
累のコンビネーションより早くバーテンダーの打撃が少しずつ累にダメージを与えていく。
「人間かコイツ!?」
1対5人で闘っているがバーテンダーにダメージはほとんどなくスタミナ消費は累たちの方が大きかった。
「私が相手でなければ余裕で勝てていたでしょうに残念です。そろそろ飽きてきましたので終わらせていただきます。あなたたちは井の中のかわずを知りなさい!」
バーテンダーの強烈な拳と蹴りを食らい5人は殴り飛ばされ撃沈した。

それぞれ必死に立ち上がろうとしているが立ち上がれず地面に倒れ込んで呻いている。
「ぐう…! クソ!」
倒れ込んでいる5人の間を悠々ゆうゆうと歩くバーテンダー。
「殺すつもりでやったんですが死んでない、私が弱いのかあなたたちが頑丈だったのか──」
織田が倒れながらも通り過ぎるバーテンダーの足首を掴む。
バーテンダーは織田を一瞥いちべつすると、織田の手首を踏みつけた。

ぼきん

乾いた音と織田の呻き声が漏れる。
「しつこいですね~、お嬢さんも痛いのが嫌でしたら大人しくついてきてもらえると嬉しいのですが」
ティナは終始ずっと黙ってバーテンダーを睨んでいる。
「そんな怖い顔しないでください。あなたを生きたままさらってこいという命令オーダーなんです…………
── ちょっとくらいイタズラしてもぉオッケーもらっているんですよぉ!!!
クッフッフッフ!! あああアアアアアァっ! 楽しみだなァアアアア!!!!」
バーテンダーは唾をまき散らし下品な口調にかわった。
自分が強者である立場になり絶対的有利な状況になると本心が出てきてしまう人間性を持っていたのだろう。
「数年ぶりの外なんですよぉ~~~! 綺麗な女性が苦痛で泣き叫ぶ悲鳴がねぇ~私は~~大好きなんですヨォ~~~~クフフフ!」と興奮しているのか目が興奮で充血し全身がワナワナと震えている。
バーテンダーの変態セリフを聞いて倒れていた5人は立ち上がる気力が湧いてしまう。
「それを聞いちまったら尚更なおさらねーちゃんを連れて行かせるわけにはいかないぜ」
「ああ、こんな変態野郎に絶対に渡しちゃダメだ!」
「やっぱりそう言うクソ野郎はいるんだよなぁ!」
「オダっち、行けるか?」
「こんなの怪我に入らねーよ!」織田は手首を押さえながら立ち上がる。
みんなの目は死んでいなかった。

ずっと静観していたティナが口を開いた
「あんたたちありがと。もう十分よ、気持ちは受け取ったわ。
あとは私がやるから大人しく後ろで休んでいなさい」
ティナはゆっくり前に歩き出し一番近くにいた村山のところに行くと持っていた鞄を
「持ってて」
と渡した。
「え、え、ねぇ~さん! これからいいところ見せようと思ったのにぃ!」
村山は悔しそうに地団駄じだんだを踏んだ。
累たちも悔しそうな顔をしたがティナの言うことに素直に従い後ろに下がった。
ティナの後ろで日向と織田が村山からティナの鞄を持つ係をかわろうとしてプチ喧嘩になりかけていた。
「おやおや、素直にあなたが降参したようには見えません。まさか今度の相手はあなたですか? どうせ後でたっぷりなぶるのだから楽しみは後に取っておきたいんですけどねぇえ~~~~!」
「この変態。よくも私の可愛い弟たちに怪我させたわね!」

ティナが呼吸をスゥーーーと整えながら腰を落とし両手を胸の前に広げた状態で構えた。
バーテンダーは良からぬことを考えているのが顔に出ていてエロ顔になっている。
両指をくねくね気持ち悪く動かしながら突進してくるバーテンダー!
ティナは一歩下がりバーテンダーの右腕をスッと掴みながら喉に素早い一撃を食らわすと肘鉄を顎に何発か打ち込む。瞬時にティナは目に見えない速さで体を捻るとバーテンダーを地面に思い切り叩きつけた。
さらに掴んだ腕を少し引き上げてクルリと回転させながらバーテンダーの体をうつ伏せにし、腕を固定したままティナの体重を乗せて肩を外した。トドメに横顎よこアゴかかとで重たい蹴りを入れると数歩下がって距離を取った。

それを背後で見ていた5人は感嘆の声援を送った。
「ウッヒョー、流石ねーさん! いつも鮮やか!」
「マジ最高! あれだけ食らったら勝負あっただろ!」
油断した時が一番危ないのをわかっているティナはバーテンダーから目をそらしていない。
武道の心得「残心」である。
5人の歓声を打ち消したのは、バーテンダーがピクリと動いたからである。
バーテンダーは踏み潰された頬をさすりながら何事もなかったかのようにむくりと起き上がった。服をパンパンとはたいている。
「おいおいマジかよ…………」
「ありえねぇーだろ…………」
と累たちは驚いている。
ティナはもう一度呼吸を整える。
バーテンダーはゴキンと音を立てて外れた肩を戻しながら
「今のはびっくりしましたよぉ~、あなたのほうが彼らより強かったのですね。
肩だけじゃなく小指まで折っているとは、くひひひひひっ!!!!」と折れ曲がった小指をこちらに見せながら不適な笑みを浮かべている。
「ざーんねーんでーしたぁーーー! そこらの雑魚ザコだったら今ので決着がついていたでしょ~うが私は頑丈ですので!!!」
「あなた気持ち悪いわ。生理的に無理」
「気持ち悪くて結構! この痛みの代償は覚悟してもらいますよぉ~!!!」

バーテンダーはゲヒヒヒッ!と舌を出した笑みで突進してくる。
常人なら気持ち悪さにビビって恐怖を感じるが、ティナは場数をこなしていた。
こういう状況でこそ経験値がものをいう。
今度は下がらず半歩前に出て相手の攻撃の拍子を崩し打撃を受け流す。
攻撃が来ていることを理解した上で前に出る、という行為は怖い。
武術を習った者の中でも敢えてをやろうとは思わない。
しかしティナは一歩踏み込みをやってのけた。

相手の突進する力を利用して肘鉄を顔面に打ち込むことでダメージを倍増させ、間髪入れず掌底を鳩尾みぞおち、相手の体がに曲がって顎の位置が下がったことで膝蹴りを食らわす。
真下からの膝蹴りにバーテンダーの体が上に上がる。上からの振り下ろした右拳を後頭部に叩きこみ、左拳のアッパーを顔面に撃ち込む。
身体が浮いた状態にトドメの横蹴りを喉元に食らわした。

ズドン! ゴロゴロゴロザザーーーッゴチン!

吹っ飛ばされて地面を転がりながら電柱に激突。
「ふぅーーーー 生理的に無理だから二度と立ち上がらないで」

ピクリとも動かなくなったバーテンダーの姿を見てティナは残心の構えを解いた。
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