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第1章 全ての始まりの記録
abyss:50 フード男のその後
しおりを挟む時を少し戻して、ハルキが母と再会した時間軸での出来事。
フード男はハルキに手傷を負わされたダメージから身体を起こせるところまで回復していた。
彼が選択したのは地上に続く出口に向かって逃げること。
「クソがぁ! 俺は負けてねぇ!!! 油断しなければあんな奴に負けはしなかった! 次会ったら絶対に殺じてやるからな!」
ハルキに負けたこと、敵わないと悟って逃亡していること、初めて恐怖を感じてしまったことにプライドが傷ついていた。
高すぎるプライドが邪魔をしてなぜ負けたのか理解できない、理解することを放棄していた。
傲慢さがこの後の彼の選択を大きく変えた。
「あ゛っーーーー!!! 馬鹿馬鹿しい!!! クソみたいな地下とおさらばしてやる! クソゴミが俺を好き勝手コキ使いやがって! 俺は自由を手に入れるぞ!
地上に出たら機械も阿久津も手の届かない場所で好き放題人間をぶっ壊してやる!ふひひひひ!」
自由になった楽しい未来を想像し息巻く。
通路の途中にあった右左折する曲がり地点まで辿り着いた。
コツーン コツーン
と誰かの足音が地上側の入り口側から聞こえてくる。
フード男の身体が警戒し強ばる。
心臓の鼓動が速くなり、呼吸も速く浅くなった。
「ハァハァハァ!」
この場所からだと誰なのか姿は確認できない。
自分の逃げる先から誰かがやってくると想像していなかった。
(味方か?いやありえない)
見えない恐怖に全身が包まれる。
ハルキがいる方に逃げるか悩んだが、足音が一人分なのを確認すると対峙することを選んだ。
「ハァハァハァ!」
ゆーーっくり そぉーーーーっと曲がり角からチラリと覗く。
歩いてくるのは背の低いスーツを着た外国の老人、ローグだった。
ハルキの信号を追ってきたのだ。
ローグは口元の口角が少し上がり何かを楽しみにしている。
(なんだ、ジジイ一人だけか脅かしやがって)
フード男は相手が老人だったので安堵し、激しく動いていた鼓動が少し落ち着くのを感じていく。
フード男は相手が自分より格下の弱者とわかると強気になりわざわざ自分から姿を見せにいった。
「超超超ムカついていたところでヨォ! 憂さ晴らしのサンドバック確定な!」
殴る拳には折られたククリナイフではない別のナイフが握られている。
ローグは急に飛び出してきたフード男の顔を見てびっくりしながら立ち止まる。
「まだこんなに若かったのか、かわいそうに」
と何か自分の中で納得したように目を閉じた。
「いいなぁ~ジジイ、念仏でも唱えているのか? カカカっ!」
フード男はお構いなしに下品で下卑た言葉を吐き散らす。
ローグは目を開け優しい顔をして
「ところでのぅ─── ワシの大切な部下を殺したはおヌシじゃったよなぁ」
フード男はこれまでに殺してきた数が多すぎていつ、どこで、誰のことを言っているのかわからなかった。直近で心当たりがあるとすれば数時間前に殺した3人の男女の事を言っているのだろうか。
(チッ。敵討ちってやつか、認めてもいいが嘘ついた方が面白そうだなぁ)
「人違いじゃねぇ~の~? 俺はなーーーんにもしらねぇ~ぜぇ」
ナイフをひらひらさせ戯けた笑顔を見せる。
「ふむ、そうか。人違いか」
理事長は頭をポリポリ掻きながらため息をつき、止めていた足をフード男に動かした。
「ならばワシも「人違い」でお前を殺すとするかのぅ、いいと思わんか?」
「は? 何言ってんだオメェ、俺がボコって介護施設にブチ込んでやんよぉ」
不敵に笑いを浮かべるフード男と対象に老人は
ゾ ゾ ゾ ゾゾゾゾゾゾッ
ローグからドス黒い憎悪が剥き出しに溢れ出した。
フード男は老人が只者でないことを察し先制攻撃に出た。
「俺が負けるわけねぇだろクソジジイ!!!」
廊下の壁を蹴り縦横無尽に飛び跳ねながら隙を見つけてナイフで切りつける。
キィン!
ローグの背後から渾身の一撃で脇腹を確実に刺しに行ったが、刺さる瞬間に見えない壁のようなものに弾かれた。
「!?」
縦横無尽に動きながら考える。なぜ当たらなかったのか?
老人の手の内がわからない不気味さから嬲ることはやめ必殺の二撃目を顔面に振り下ろした。
バキン!
ナイフが折れた。
フード男の目に見えた光景は理事長の顔に刺さる前に右手でうるさい蚊を払うように振っただけだった。気を溜めていた、必殺技を使ったような特別なことはしていない。
恐ろしく早い平手で払っただけでナイフがキレイに折られたのだ。
「芸がないのぅ」
まるでスローモーションのように静かに動いて見える動きでローグがフード男の側面に身体を移動させた。
ズッ ドン!
ローグがフード男の脇腹に触れるとフード男は全身から血飛沫を撒き散らしながら壁面に吹っ飛び叩きつけられていた。
「がばぁつああああっ!」
口から血飛沫を吐きながらフード男は叫び声をあげる。
「痛いじゃろ。どうじゃ、何か思い出したか?」
「うぐぐうううううっ!!お、俺じゃない!俺は知らない!俺は何も悪くない!!!」
蹲りながら涙目で睨んでくる。手足、肋骨は砕かれ睨むことしか抵抗する術がなくなっていた。
「そうじゃお前さんが攫った女の子おるじゃろ。あの子に何かしたか?」
「し、じてい゛ない!彼氏が助げにぐる前に犯じてやろうとしたけど、ママが!レグルスが連れ出じでいていながったから何もでぎながった!!」
涙目とまともに喋られないが恐怖で声を絞り出している。
「しようとしていたわけじゃな・・・クソが」
「ママー! だすげ、、、て!!いづもみたいに俺を助げ、、、デェよおおっ!」
フード男は激痛と恐怖と自分の無力さに対する怒りから喚き出した。
「いい子にじているじゃないか! 俺が人間をどれだけぶっ壊しても喜んでくれたじゃないか! 俺に人間を殺すいい子に育ったよ! 俺をこんな性格にじだのはあんたのせいダァ!
グゾッ! グソグソクソクソグゾォ!!!」
フード男は気が触れたように自分の生い立ちとレグルスをママと呼び助けを求めた。
「どのみちお前さんがしてきたことは救いようがないのぉ」
ローグはフード男の胸部を両方から掴むとグシャと握りつぶした。
簡単に砕けた肋骨が両肺に突き刺さる。
「ガヒュゥーーーヒュウーーーー」
呼吸がまともに出来ず、しかし叫ぶと激痛で叫べぶことすらできない。
「お前が今日殺した3人のことはもう思い出さんでもええよ」
「ゆ、ゆるじ・・ぇ・・・ぉ、、ヒュッ! 俺が・・・やり・・・ひゅ!まじだ・・・!」
「何も話さなくていいのじゃ、ワシも「人違い」でお前を殺すだけじゃからのぅ」
ローグの目は怒りに満ちていてもう笑っていなかった。
フード男の腹にローグの手が触れる。
「な゛、、なにを・・・」
何かしらの攻撃をされることだけはわかり心が恐怖に染まっていく。
ローグの手がグッと服の上から腹の肉と臓物を無造作に握り、真横に掻っ捌いた。
ブチチチチッブチィ!
服と皮膚が雑に引き裂かれ臓物が床にぶちまけられる。
ローグはフード男のの目をジッと見つめながら
「死んで詫びるのじゃ!」
フード男の目から光が徐々になくなっていく。
死んだことを確認すると立ち上がり
「お前たちの仇はしっかり討ったぞ」
天を仰ぎ見る。
「さて、友を迎えに行くとするかのぅ」
とハルキたちがいる本拠地に向かって歩き出した。
◇◇◇◇
フード男が死ぬまでの一部始終をレグルスの並列思考が観測していた。
この老人、見かけ以上の戦闘力を持っていたことに驚いた。レグルスが観測してきたこれまでのどの人間にはない人知を超えた異常すぎる数値だ。
人間はまだ何かしらの可能性を秘めているのだろうか。
仮に秘めていたとしたところでいまさらローグのデータは必要なくなっていた。
13年前から人間という生物はどの程度の強度で、何をして成長するのか、忠実に動かすには何を与えたら良いのか阿久津の実験を観測していた。
観測する中でデータを取るためレグルスが自ら一人の子供を育てることにした。
それがフード男、確か名前は隼人だったはず。
大爆発直前に攫ってきた人間たちの中にいた家族から1組を選び引き離した。
自分をママと呼ばせた。
3歳児は手に余る、言うことをきかない、意思疎通が難しかったが5歳をすぎる頃から意思疎通ができるようになってきた。
飴と鞭で欲しいものはなんでも与え好き勝手にさせて育てた。
逆にレグルスの命令を聞かなければ死の寸前まで電流を流し続け何度か心停止になったが蘇生させた。
実験で失敗した人間の解体処理、廃棄する人間を殺させたりした。
隼人の両親も彼に処分させた。
何がいけなかったのか、どこで育て方を間違えたのか、結局レグルスは何もわからないまま隼人から興味をなくしていた。
「人間は忠実に育てられない」
幼少の頃から手をかけて育てた隼人に対するレグルスの答えだった。
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