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第1章 全ての始まりの記録
abyss:51 稼働停止
しおりを挟むレグルスの笑顔とはとても言えない笑みを浮かべると同時に父さんの攻撃が再開した。
レグルスの話で少し体力を回復できた母さんは前より動きにキレが増していた。
一気に終わらせる気だ。
こんな宇宙人が出てくる荒唐無稽な話を聞かされたら早くこの場所から離脱したいと思う。
父さんの左右の腕を短刀でガンガン叩きつけるように迎撃しているため腕にダメージの蓄積はあるはず。
あの鬱陶しい両腕を何とか出来れば背後に回り込める勝機が見える。
クソ! 俺はこの闘い何一つ役に立っていない!
見ていることしかできないのか?
二人の激しい闘いに割って入るには実力が足りなすぎる。足手まといにしかならない俺が参戦したところで母さんが俺を庇って父さんに二人とも殺されるだろう。
その次はティナも殺され父さんは絶望しながらレグルスに自殺を命令される。
何か─── 何かレグルスの気を引くことができれば父さんの動きを止めることができないか?
ティナが俺の手をギュッと握った。
丸い物体を掴まされる。
手榴弾だ。
「お母様のジャケットの中に一個だけ入ってた」
母さんが投げ捨てたジャケットは手榴弾を渡すためだったのか、たまたまあっただけなのかわからないが、ティナが気がついてくれたことでいまの状況を変えられるかもしれない。
おれは手榴弾の安全ピンを抜き渾身のフォームでレグルスにストレートでぶん投げた。
レグルスの顔がぐりん!と俺たちに向き、手のひらを床に向けると、地面から白いバットがにゅーん、と射出される。
バットを掴んだレグルスは綺麗なフォームで飛んでくる手榴弾を
カキーン☆!
と弾き返す。
3カメラの視点でバットの芯にヒットしピッチャー返しされた。
ドォーーン!!!
普通の手榴弾より威力が強く、俺の前で爆発した。
衝撃で吹き飛ばされた俺は体が思ったより痛くないことに違和感を覚えた。
身体の上に何かが乗っている。
両手で触れるとティナが俺の前で抱きついて一緒に倒れていた。
その背中からは大量の血が・・・・。
俺を庇って爆発を背中で受けてくれたのだ。
「ティナ!なんで!!!」
「ううっ、無事?…………あそこで打ち返してくるなんて卑怯よね…………」
「ティナ!血が止まらない」
あまりに愚策だった。
相手が打ち返してくるという予想が立てられなかったにせよ、結果はティナを瀕死にしてしまった。
ただ俺の愚策とティナの犠牲のおかげかはわからないが、手榴弾に気を取られていた時から父さんの攻撃に隙が生まれた。
攻撃が乱雑になったのだ。
母さんは乱雑になった隙を逃さず背後に回り込もうとした。
が、父さんの動きが乱雑に見えたのはフェイントで左腕が関節を無視した角度で母さんに突き進む!
「クソ」
死を覚悟した母さんが悪態をつく。
ピュギュオォン!!!!
バギンンッ!!!!!
ズボボボボンッ!
俺の背後から轟音と稲妻を纏った一筋の閃光が走り、奥にある壁面を奥の奥まで突き抜けた。
閃光の軌跡にあった父さんの左腕は火花を散らせながら焼き切れ、ガジャン。と重い音をたてて床に落ちた。
片腕が落ちたことで身体の体重バランスが崩れ、父さんが右腕の爪ナイフを床に突き刺し身体を支える。
何が起きたのかわからないが、母さんはこの機を逃すまいと父さんの背後に回り込み跳躍して頸椎に埋め込まれている電子回路を短刀の柄で何度も振り下ろし叩き壊した。
バチチチッ!ボシュン!
父さんの全身に電気が走り頸椎から煙が上がる。
父さんの右手が床から抜け、その場に座り込んだ。
そして今度こそ完全に動きが止まった。
やっと決着がついた!!!
安堵したが、ティナの大怪我とさっきの攻撃が誰によるものなのかだ。
閃光が撃たれた方向を向くと、スーツを着た背の低い老人が立っている。
ローグ。
「いまのはギリギリじゃったな」
遅れてきたヒーローみたいなニヒルな笑みを浮かべていた。
「ローグ!? どうしてここに!」
「ん、そりゃハルキを衛星から確認してたからな。わしが助けに来たからもう安心じゃよ!」
と右手でピースをしようとしたのだろうが右手は腕のあたりまで吹き飛んでいて血がボタボタ垂れていた。
「あー、こりゃあかんな。レールガンを持ち運びしやすいよう小型銃にしたのじゃが、試作だったからぶっ壊れてしまったわい」
「そっちじゃない! 腕! 暢気にしているけど腕がなくなっている!」
「おー、おおおーー。そうじゃったな、いてててて!」
と笑いながら痛がる素振りをしている。
おかしいだろ、痛覚がないとかそんな怪我じゃないだろ。
「助けに来たあんたが重傷を負ってどうするんだよ!」
俺はツッコまずにはいられなかった。
母さんは座ったまま動かなくなった父さんの正面に回り込み
「─── あなた!」
肩で息を切らしながら膝をつき、父さんと見つめ合う。
「あぁ夜春 ─── ありがとう。愛してる」
父さんは優しく笑いかけた。
動けない父さんの顔に両手で優しく触れ、キスをしようとした。
ザシュッ
嫌な音だった。
父さんの右爪が母さんの腹部に深く突き刺さっていた。
『!!!!!』
父さんは困惑した表情を浮かべ、母さんは苦痛の表情を浮かべる。
俺とローグはなぜ父さんが突き刺したのか、動けるのか理解することができない。
その光景を静かにレグルスは眺めていた。
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