カーネイジ・レコード

あばらい蘭世

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第1章 全ての始まりの記録

abyss:55 惨禍 or ディストピア

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13年前の大爆発に俺は巻き込まれ、死にかけそして生きている。
記憶の中で見た出来事、俺の右手に飛んできて収まった剣を持っていること、父さんの記憶を取り戻した事を含め現実に起きた事だった。


過去に起きた出来事を頭で整理する間も無く手に握られた剣は変形していく。
剣の柄から瞼が開きあおいトカゲみたいな細長い瞳孔の瞳が出てくる。目を中心に剣先までそれまでのシルバーの刀身とゴールドの装飾とは形も色も変わっていった。
バスターソードだったサイズがもう一回り大きな大剣に変わる。

柄の形状が大太刀くらいの握りやすい太さと長さになる。つばはドラゴンの鱗のような意匠と刃物が溶けてくっついたような鋭利さに変形。このつばで攻撃するだけで十分殺傷能力が高く、手元を狙ってきた攻撃を防御することも可能だ。
分厚い両刃の刀身は禍々しくなり、金属から半透明の黒色にレッドベリルのような鮮やかな赤が混ざり合った鉱石に材質が変わる。
全長2m近くなったが重さはダンベル2kg程度でとても軽い。

変形が終わった。
前の造形はヒーローぽいのに俺が手にしているのは魔王が持つような代物だ。
「ねぇ、なんでこんなに邪悪な形になったの? 俺何かした?」
『素直で真っすぐな心の中にいびつな闇を持って成長したようだな』
「俺、素直な良い子だよ?いびつな闇ってなんだよ?」
と返すが
『潜在意識と無意識に在る闇が形に出たのだ。細かいことは気にするなハゲるぞ』

造形に納得はできないが俺の身体ダメージは完治し闘える状態に戻っていた。
「剣って呼ばれているけど名前ある?」
俺が剣に語り掛けると
『この星の言語で言うならば、惨禍さんかかディストピアだ』
どっちも物騒な名前だな!
「さん─── いや、ディストピアで呼ぶよ」
ディストピアを掴んだことでこの不利な状況をくつがえせそうな気がしてならない。

「─── ううん」
ディストピアを掴みながら膝の上でうつ伏せだったティナの意識が戻った。
破片が体内から抜け出て、出血が止まり傷が綺麗に塞がっていた。
『お主を介して小娘に触れたことで娘の治癒能力が向上しただけに過ぎんが、この娘の回復速度は異常だ』
瀕死だったティナがパチリと目を覚ます。
「私─── 死にかけてたのにぜんぜん痛くない。なんで? びっくりなんだが!」
ティナは仰向けになり下から俺の顔を覗き込む。
ティナの頭を撫で撫でしながら安心していいよ、と優しく笑いかける。

「ディストピア。能力と出来ることを詳しく教えてくれ」
『適合者の精神力を食らい続ける間、そやつの精神レベルに合わせて身体能力を何倍にもすることが出来る。適合者でなく未熟者や薄っぺらいヤツが持つと生命力を食われ続け最悪死ぬ。他いろいろ』
「他いろいろって具体的には?」
『使用者によって異なる』
「つまり俺次第ってことか」
『そういうことだ』
俺はティナの手を掴んでゆっくりと立ち上がらせた。
ティナはぴょこんと立ち上がり自分の体がほぼ治っているのを確認する。

ディストピアを握っている俺の姿を見てローグが額の血管を浮かび上がらせて俺に叫んだ。
「ハルキ! お主の手に剣が来たなら2人の命は間に合う! あの死にたがりどもをワシのところに連れてくるんじゃ!!!」
母さんは最後のキスをしようと父さんの顔に顔を近づけようとしているが腹部に突き刺さった父さんの爪ナイフが邪魔をしていた。

ズブブブブ

「あなた、愛しているわ」
自ら奥まで刺してキスをした。
2人は唇を重ねる。

「頼む! いまのお主なら2人を助けられる、早く連れてきてくれ!!!」
ローグが叫ぶ。
そうだ父さんと母さんはまだ死んでいない。
絶対に助ける! ディストピアを握る手に力が入ると同時に全身に赤黒いオーラが目に見える形で溢れ出し力がみなぎってきた。
「任せろ」

シュン!
ザシュシュ!!!

腰を落とし駆け出す。たった数歩を踏み込んだだけで父さんたちの目の前にいた。
そのまま剣を振りぬいた姿勢で父さんたちの背後まで通り過ぎてしまった。
父さんの右腕は肩と手首の二箇所を斬り腕を落とした。
一瞬で二回斬った。
俺の身体能力が上がっているというが、人の限界を超えた速さと動きに耐えられる骨と筋肉の強度、動体視力のすべてが比例するように向上していた。
父さんの膝の上に母さんを乗せ一緒に抱き上げる。大人二人分だが軽々と持ち上がった。
自分の身体が全く違うものに驚きつつどこまで何が可能か試したい気持ちが沸く。
いまは2人を優先しローグの元に一瞬で戻る。

2人を優しくローグの前におろし、瞬時にティナのところに行き抱きかかえて戻る。
「ハルキよ! もう大丈夫じゃ後はワシに任せてくれ! これで3人は絶対に死なせはせんぞ!!!」
ローグが死にかけの母さんと父さんを抱きしめ、自信に満ちた声と笑顔を俺に向ける。
「その体格と手の傷で3人を同時に一体どうやって連れていく?」
「なぁに、こうするのじゃ! これなら簡単じゃ!」
不敵に笑うローグの顔と身体がボコボコと変形しながら膨張していく。
すっとぼけた老人の顔はダンディな顔付きに変わっていく。人間に近いが人間の骨格でなく、身体や腕、足は鱗のような皮膚と鎧をまとったような筋肉になっていく。
地球の人類とは違う進化を遂げた人類といった感じだ。
レールガンで吹き飛んでいた腕もちゃんと復元されていた。ズボンだけはギリギリ破けなくて大事な部分はシークレットだった。
変身したローグは2m以上の巨躯になった。

俺は何度目かの驚きの連続に呆れながらローグを見上げ
「ほんとにあんた何者だよ」
と問いかける。
「カッカッカ! 最初に名乗ったじゃろ、ロバート・A・ダグラス。ミドルネームのAはエイリアンのAじゃ!」
「そんなのわかるかい!」
「ただの善良な宇宙人じゃよ。今から300年くらい前に地球にやってきた」
「善良? レグルスと同じ宇宙人だろ?」
「300年前じゃぞ、レグルスより先に違う惑星から来たのじゃ。奴が宇宙人だというならこれまで発見できなかったことは納得じゃのぅ。そうか相手も宇宙人だったのか、盲点じゃったな」
「なぜ俺たちを助けてくれるんだ?」
「助ける理由か? 将暉がわしの大事な友人の子孫だからじゃ。それだけじゃよ」
「そんなに前から…………ストーカー?」
「一言余計なところは母親にそっくりじゃな」
とローグはダンディな顔で笑ってくれた。

父さんと母さんの顔を見る。
俺が担いだことで母さんの肉体が少し回復し意識が戻っていた。
「ハルキ、お父さんに逢わせてくれてありがとう。もう一つだけお願いを聞いてくれる?」
「なんでも聞くから言ってくれ!」
「もう一度 ─── ママって呼んで欲しいな」
「マーー・・・ァ!? 俺一度も<ママ>って呼んだことないよ!」
うっかり言いかけそうになってしまった。
「ぷー! いまママって言った! 引っ掛かっイダダダダ! 痛い痛い死ぬ! ハルキを産んだときくらい痛い!」
「はははっ」
これだけジョークを言えて笑えるだけの元気があれば大丈夫だろう。
悠長に話している場合でないことは分かっていた。
案の定レグルスが横やりを入れてきた。
「もういいですか?! 待つのに飽きました! 私は空気を読みません!」
ごもっともなご意見です。
「1人も逃がしません! 棺桶コフィンに入るのが1人増えただけのこと! さっさと死ね!」
レグルスの言葉が徐々に雑になってきたのは気のせいか?

ジュジュン!!!

レグルスの合図と同時に1本の太い光の柱がディストピアがいた岩の塊がある場所に直撃。天井から床下まで突き抜けて大穴を作った。
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