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ダンジョンマスター懸案
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一夜明けてもダンジョンは動かなかった。北町健五は疲れてるせいでぐっすり眠っており、他の眷属も三体を除いてぐっすりと眠っていた。
だが、街は眠っていなかった。
突如、魔王軍が新たに出来た詳細不明なダンジョンに大軍で押し寄せ、挙げ句の果てに『ケツァルコアトル』のギルドマスターと『ヴァルキリー』支部長と手を組んだものの撃退されるという前代未聞の失態を短期間で犯したのだ。
そもそも『ケツァルコアトル』のギルドマスターと『ヴァルキリー』の支部長が何故手を組んだのかという事が謎である。
本人達は「四天王と戦っていたはずなのにいつの間にか相手のペースに合わせられていた」と証言している。
最悪共謀罪で極刑になる可能性もある行動を「いつの間にか」という言葉で済ませてしまったのだ。
あれもこれも大体は魔王のせい、魔王のスキルがおかし過ぎるのだ、という意見は出ていない。魔王の『御都合主義』が従わせたのではなく、彼女達が魔王に従ったという事実には誰も気づかない。
そして、そのスキルを知ってるのは我らがダンジョンマスターなのだが、そのことで更に問題になっている。
ギルド『フェニックス』所属、ランク4冒険者キタマチ・ケンゴが魔王が攻め込み撃退されたダンジョンマスターだということが二人によって明かされたのだ。
そして、場所は『都合上により消去されました』で尋問が行われた。
「……………………」
「冒険者は素性が怪しいものでも役に立てるために受け入れるというが、今回ばかりは例外だ。『フェニックス』のギルドマスター、何か言い分はあるか?」
「……………………」
「まあ、相手の素性を把握してない上に忘れ形見を救われた貴殿は何も言えまい」
ここでギルドマスターが出来ることは『黙秘』のみ。健五の素性が異世界から(半ば無理矢理)連れてこられた規格外の人間ということすら聞いてない。
規格外なのは今更だが、ダンジョンマスターであるとは思わなかった。しかも、魔王がそのダンジョンマスターを制圧しようとしていた事も今知ったのだ。
「ふん、貴殿は孫を救われたという経歴があったな。一人でこっそり『ワースター』を潰した事を知ってる者なら納得するだろう」
「しかし、ダンジョンマスターは人の敵だ。倒そうにも魔王を撃退したダンジョンに籠られると…………」
もう彼を倒すしか方法がないとここにいる数人を除いて考えている。当然ながら魔王を何らかの方法を使って撃退したのを承知で、だが。
承知しているからこそ対策がわからない。なにせユーリーチン氏の事件の時に変わった普段着だと思われていた衣服のまま魔法の嵐を無傷で耐えきった男だ。普通に勝てるわけがない。
それに加えてダンジョンマスターときた。ダンジョンというのはランダム要素が多すぎる、超強い上に彼にとってプラスだらけのランダム要素があるとなると…………
「勝てないよなぁ」
「同じくイメージがわきません、放置しておくに一票」
「討伐に一票」
「飼いならすに一票」「「同じく」」
様々な意見が出るなか、ギルマスは黙って聞いているしかなかった。
「多数決だと飼いならすが一番多いな。ああ、みなまで言わなくてもいい。ダンジョンの謎を解き明かせることができるかもしれないからな」
「…………これにて決定だ。かのダンジョンは今限り討伐を行わず、ダンジョンマスターである者との交渉の結果により判断を下す。交渉役は下の者に任せられん、我らで交渉を行うことに反対の意を唱えるものは」
この発言に対し誰一人として手は上がらなかった。上手くいけば莫大な利益をもたらす可能性があるが、失敗すればどう二度と交渉させてもらえなくなるだろうと、考えている。
そんな大事な交渉を下の者に任せるわけがないのだが…………
「交渉は、私にやらせて欲しい」
「ほう、貴殿が交渉すると?確かにダンジョンマスターとは親しいとまではいかないが上司でもあるな」
「逆に逆鱗に触れない可能性はないか?正体を明かさた上に偉そうにするなと」
「恐らく、そんな性格してない」
彼女には確信があり決意があった。彼を引き込み丸め込む自信があった。
「ふむ、1番近いのは彼女だ。奴からして顔も知らない我々よりは成功率は上がるであろう」
「私もその意見に賛成だ」
「良かろう。『フェニックス』ギルドマスター、汝に任せる」
ザワザワと話し合い決定が下された。あとは会えるかどうか分からないが彼に会って話すだけだ。
~●~●~●~●~
「喧嘩屋、ダンジョンが成り立つ研究の協力、してくれる?」
「えっ?別にいいですよ」
「……………………えっ」
「えっ?」
いつの間にかいた重要人物に交渉下手がストレートにモノを言ったらすんなり通った事は語り継がれる事はなかった。
だが、街は眠っていなかった。
突如、魔王軍が新たに出来た詳細不明なダンジョンに大軍で押し寄せ、挙げ句の果てに『ケツァルコアトル』のギルドマスターと『ヴァルキリー』支部長と手を組んだものの撃退されるという前代未聞の失態を短期間で犯したのだ。
そもそも『ケツァルコアトル』のギルドマスターと『ヴァルキリー』の支部長が何故手を組んだのかという事が謎である。
本人達は「四天王と戦っていたはずなのにいつの間にか相手のペースに合わせられていた」と証言している。
最悪共謀罪で極刑になる可能性もある行動を「いつの間にか」という言葉で済ませてしまったのだ。
あれもこれも大体は魔王のせい、魔王のスキルがおかし過ぎるのだ、という意見は出ていない。魔王の『御都合主義』が従わせたのではなく、彼女達が魔王に従ったという事実には誰も気づかない。
そして、そのスキルを知ってるのは我らがダンジョンマスターなのだが、そのことで更に問題になっている。
ギルド『フェニックス』所属、ランク4冒険者キタマチ・ケンゴが魔王が攻め込み撃退されたダンジョンマスターだということが二人によって明かされたのだ。
そして、場所は『都合上により消去されました』で尋問が行われた。
「……………………」
「冒険者は素性が怪しいものでも役に立てるために受け入れるというが、今回ばかりは例外だ。『フェニックス』のギルドマスター、何か言い分はあるか?」
「……………………」
「まあ、相手の素性を把握してない上に忘れ形見を救われた貴殿は何も言えまい」
ここでギルドマスターが出来ることは『黙秘』のみ。健五の素性が異世界から(半ば無理矢理)連れてこられた規格外の人間ということすら聞いてない。
規格外なのは今更だが、ダンジョンマスターであるとは思わなかった。しかも、魔王がそのダンジョンマスターを制圧しようとしていた事も今知ったのだ。
「ふん、貴殿は孫を救われたという経歴があったな。一人でこっそり『ワースター』を潰した事を知ってる者なら納得するだろう」
「しかし、ダンジョンマスターは人の敵だ。倒そうにも魔王を撃退したダンジョンに籠られると…………」
もう彼を倒すしか方法がないとここにいる数人を除いて考えている。当然ながら魔王を何らかの方法を使って撃退したのを承知で、だが。
承知しているからこそ対策がわからない。なにせユーリーチン氏の事件の時に変わった普段着だと思われていた衣服のまま魔法の嵐を無傷で耐えきった男だ。普通に勝てるわけがない。
それに加えてダンジョンマスターときた。ダンジョンというのはランダム要素が多すぎる、超強い上に彼にとってプラスだらけのランダム要素があるとなると…………
「勝てないよなぁ」
「同じくイメージがわきません、放置しておくに一票」
「討伐に一票」
「飼いならすに一票」「「同じく」」
様々な意見が出るなか、ギルマスは黙って聞いているしかなかった。
「多数決だと飼いならすが一番多いな。ああ、みなまで言わなくてもいい。ダンジョンの謎を解き明かせることができるかもしれないからな」
「…………これにて決定だ。かのダンジョンは今限り討伐を行わず、ダンジョンマスターである者との交渉の結果により判断を下す。交渉役は下の者に任せられん、我らで交渉を行うことに反対の意を唱えるものは」
この発言に対し誰一人として手は上がらなかった。上手くいけば莫大な利益をもたらす可能性があるが、失敗すればどう二度と交渉させてもらえなくなるだろうと、考えている。
そんな大事な交渉を下の者に任せるわけがないのだが…………
「交渉は、私にやらせて欲しい」
「ほう、貴殿が交渉すると?確かにダンジョンマスターとは親しいとまではいかないが上司でもあるな」
「逆に逆鱗に触れない可能性はないか?正体を明かさた上に偉そうにするなと」
「恐らく、そんな性格してない」
彼女には確信があり決意があった。彼を引き込み丸め込む自信があった。
「ふむ、1番近いのは彼女だ。奴からして顔も知らない我々よりは成功率は上がるであろう」
「私もその意見に賛成だ」
「良かろう。『フェニックス』ギルドマスター、汝に任せる」
ザワザワと話し合い決定が下された。あとは会えるかどうか分からないが彼に会って話すだけだ。
~●~●~●~●~
「喧嘩屋、ダンジョンが成り立つ研究の協力、してくれる?」
「えっ?別にいいですよ」
「……………………えっ」
「えっ?」
いつの間にかいた重要人物に交渉下手がストレートにモノを言ったらすんなり通った事は語り継がれる事はなかった。
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