究極生命体のダンジョン作り!

雷川木蓮

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魔王様、お初にお目にかかります

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北町健五、25歳のツッコミをさせてくれ。

確かにさ、外に出てどっかの街に行ってみよっかなーって思ってたよ。そこで中世みたいなお城を見れたいいなーとは思ったよ。

そこ結果がコレですか?少なくとも人間の肌の色じゃなくて青紫色の肌を持つ人達、多分魔族だと思われる人達のお城に飛ばされるのはどうなんでしょうか?

ごめんなさいら本当に事故なんです。さっきから貴方達に見えてると思うけど、テレポートが発動しないんですよ。端末でダンジョンに戻るをさっきから連打してもさっぱり動かないんですよ。

誰か助けてください。

「ところがどっこい、向こうのみんなは誰も助けてくれない!」

「そこの奴は放置しておけ。最近はブツブツ何か言ってたおかしい奴だ」

「あっ、ハイ」

どこかで見た事あるやり取りをしているが、気にしない方向で。つーか、元の位置に帰してくれませんかね?

仕方ないな、ハッタリをかますしかない。

「いや、ダンジョンができたという報告がありましてね、その調査に来てたら偶然…………いやはや、こんな事もあるんですね。この事は黙秘するので帰してください」

「無理じゃろ?我等が人間界に侵入する魔法陣を見つけたとなら消すしか他無い」

「哀れなり、フフフ…………」

ダメだダメだダメだ!こんなんじゃ消す気満々だろうが!

降伏したら何されるか分からない。もしかしたら奴隷化するかもしれない。そうなったらダンジョンに置いてきたあいつらが不安になる。

じゃあ、戦うのか?これをこじらせて人間界と戦争じゃー!って事になったら俺は最悪な存在だよ!

ドウシテコウナッタ?本当、ドウシテコウナッタヨ?

「来ぬか?来ぬなら拙者から先に行くでござる!」

「パガン、待て」

ウェーン・ジャルバッド、多分、魔王様だろうな。その方がパガンと呼ばれた四天王っぽい一人の武者を止めたが止まらなかった。

「ふぬんばっ!?」

あ、いつも殺し屋をぶっ飛ばす癖で殴り返しちゃった。俺が殴ったせいでパガンは広間の壁を突き破ってまで飛んでいった。やり過ぎたかなぁ?

空気が冷えてきた。いくら何でも俺は鈍感とかKYじゃないよ。ヤバイ時はきっちりと…………

「ごめんなさい、逃げさせてもらいます!」

逃げるが勝ちよ!扉に細工されてると思ったからパガンがぶっ飛んで破壊された壁から逃げる事に、

「ぬぅん!まさか先手を入れるつもりが入れられるとは不覚なり!」

出来るわけないよね。四天王っぽい人だもん。向こうの世界の殺し屋をぶちのめす程度で殴ってもあまり意味ないよね。

ジリジリと四天王達4人が俺を囲んで近づいてくる。向こうは殺る気満々で俺は逃げたい。

「選択肢は2つ!
・このまま戦ってボコられる
・降参して捕虜になる
さぁ、選べ!」

うわぁぁ…………ウェーン様直々に選択肢をいただきましたよ…………

ここから端末で電話できるかな?よく考えたらあいつらはスマホの使い方が分からないんじゃないのか?

何故か知らんがちゃんと電話のアプリもあるんだよな。電話番号で『ダンジョン(自宅)』ってあるから電話をかけてみるか?

敵の前で堂々と電話するのもアレだけど時が時だ。やってみるしかない。


プルルルル、プルルルル、プルルルル、プルルぶちっ


この感じは間違えて電話を切った音だな。向こうはパニックになってるだろうな。ハハハ…………

「さあ、勇敢な人間よ。どうする!」

「無理無理無理、降参させていただきます」

「そうか、よし…………え?」

ウェーン様はあっけにとられた顔をしてらっしゃいますね。降参するのがそんなにおかしいでしょうか?

「何故ここまで来て戦わない!我等と人間は戦争をしているのに、それなのにここまで来て降参するとは!」

「なるほど、フフフ…………」

「フルドよ、何が分かったんだ?」

「あの者は田舎者で本当に事故でこちらに飛んだのだと踏みました、何故戦わないのかは戦争をしてる事を知らないド田舎者だという事が、フフフ…………」

「なるほど、こちらでも山の深くに住む民族もそういう例があったな」

何か勝手に自己完結してるけど、ある意味助かった。つーか、この世界は魔族と人間は戦争してたのか。道理でピリピリしてるんだと思った。

ごめんなさい、ピリピリしてるのは俺が突然現れたからですね、ハイ。

「ふん、その者なら仕方ないな。扱いは捕虜にしておこう。一応、尋問はしておけ」

「ハッ、仰せのままに!」

さっきの四天王っぽい人達の中で一番老人っぽい人が膝をついて頷き、俺の近くまで来た。俺の手に手錠をかけて耳元で囁いた。

「魔王様の言う事に感謝しておけ。尋問で命を落とさなかったらな」

「それって拷問だよね?拷問は嫌だけども」

「黙ってさっさと行け!」

耳元で怒鳴らないでくれよ!ちょっとは耳にくるんだぞ!

ズカズカと人ん家入って悪いけど、そのままズカズカ歩いていく。結構広い廊下だ。明かりはロウソクで賄ってるのか?いや、火じゃないな。あれは…………石か?部屋についているドアも結構いい物使ってるな。

だが、そんなのを無視して牢屋にブチ込まれた。

「準備が整うまで待っとれ。それまでに覚悟も決めとくんじゃな」

準備って拷問の準備だよね。それまでに端末でダンジョンと連絡を取ってみるか。

よく考えたら向こうに端末あったっけ?俺が今持ってる端末しか無い筈だけどなぁ。もしかしたら、いつの間にか生産されてるのかもね。

電話をもう1回してみるか。


プルルルル、プルぶちっ


今度は早く切れたなおい。慌てすぎたのか?これじゃあ電話はダメだな。メールならいけるかな?


『宛先:ダンジョン
 件名:帰れない
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ごめん、いきなりだけど面倒事が起こったからしばらく帰れないかもしれない。その間はダンジョンの防衛よろしく』


送信っと。これをちゃんと読んでくれたらいいけど、そもそもメールを開けるかな?

待ってもやり方が分からないだろうから、伝わっただけマシか。さぁーて、牢屋と言ったら脱獄!どこかに隠し扉とかが…………

「待たせたな、残念な事にお楽しみは無しじゃ」

「ふっ、妾直々に尋問しないとお前が拷問で殺してしまうだろう?それだけは避けんとな」

「……………………仰せのまま」

おいクソジジイ、何不服そうな顔をしてるんだよ。拷問が好きなのかよ?

そんな事はどうでもいい。牢屋越しに魔王様直々の尋問が始まった。

「さて、ヌシの名は?」

「北町健五だ。先に言っておくが職業はテイマーでね、向こうに置いてきた奴等が心配なんだけど」

「む、それなら部下を使って連れてこさせよう。調教には爺、ヌシが向いてたな」

「はっ、お任せください」

「やめてくださいハイピクシーとかいるんですよ!」

「ハイピクシーとな?これは珍しいのを…………ふむ、魔王様、儂に良い考えが」

「爺の案をこなすのは難しいが、成功したら良い事づくめだからな。で、何だ?」

その老人は爺と呼ばれてるのか。それは昔から使えているから親しみを込めて爺だろう。で、爺の提案した考えは彼女達にとっては良い事づくめだろうけど、俺にとってはイヤーな予感がするな。

「………………………………という事ですのじゃ」

「ふむ、なぁるほどのぅ?」

2人してわっるい顔してますねぇ。これはこれはちょっと絵になる感じだな。

で、ハイピクシーをテイムしてるという事から出した案、何となくは理解できる。

「よし、キタマチケンゴとか言ったな」

「一応、北町が苗字で健五が名前です」

「名がケンゴか、よし、改めてケンゴよ」

いきなり呼び捨てですか。いや、魔王様だから一番地位の高い人だし呼び捨てでも構わないのか。

「人間ながら妾等の魔法陣を見つけ、バルシャを吹き飛ばす能力だけでも評価に値する。それに加えてハイピクシーをテイムしてると。真偽は後にするとして、無知ながら十分な戦力になると見た。どうだ、妾等の軍人奴隷になるか?」

魔王様直々のスカウトだ。さっきから『魔王様直々』をよく使ってるような気がする。

「妾等の方に来るなら奴隷とはいえ悪い扱いはせぬ。そこは妾と爺が保障しよう。爺は人間が嫌いだが、賢い人間はそうでも無いぞ?魔族は実力主義だからのぅ」

あー、何となく当たりが強いと思ったら人間は嫌いでしたか。で、魔王軍に着いたら悪い扱いはあまり無し、実力次第で奴隷でものし上がる事も可能、と。

でもなぁ、俺はダンジョン経営を任されてるし、とは言っても顔すら知らない奴からくれたようなもんだ。戦争とかただの馬鹿らしい消耗戦、悪くない扱いをされても嫌だよ。

「すみませんね、こっちの都合でそちら側に着くのは遠慮させていただきたい」

「ほぅ?その心は?」

「任された事があって、それをやりこみたいんですわ」

ハッキリ言ってやったぞ。ゲームみたいなダンジョンを任されたし、やり込むだけやってみたいんだ。どんどんダンジョンを深くしていって人を呼び込んで全滅は避けるようにして撃退、ポイントを集めて仲間を増やす。

これだけ言ったらゲームだけどそう簡単にいくのかねぇ?

「任された事、か。それは何じゃ?」

「あーと、えーとですね…………」

よく考えたら俺がダンジョンマスターだって事を言っていいんだろうか?いや、見た所は魔王ウェーンは悪女みたいな美人だが悪役とは感じない。

爺もそれを支える参謀みたいな役だけど、賢いのは好きだって魔王様が言ってたな。つまり、それなりの考えがあって人間を嫌ってるという事だ。

一体、人間は魔族に何をしたんだろう?

っと、それは置いといてダンジョンマスターだって事を伝えるべきか否か。とりあえずお茶を濁しておこうか。

「あまり人には言えない事です。任された事を言ったら魔王様に何されるか分からないので」

「む?まさか特殊性癖の仕事か?案ずるな、実はこちらにも人間よりも変態な奴等が大量にいるぞ?そいつ等なら大体の事は耐えられる再生能力をもっとるぞ」

「何で特殊性癖の仕事だと思ったんですか!?」

「そういえば、アンジェロも特殊性癖でしたな。あれの何が気持ち良いのか爺にはさっぱり分からぬ」

「それは人それぞれだと思うぞ?妾にも全く分からんからな」

アンジェロって誰だよ!あー、このままだと俺は変態な仕事に就いてるという誤解を魔王様に植え付けてしまう!

仕方ない、腹を括るか。

「仕事の件については隠すのを諦めますよ。話すなら現地でお願いします」

「現地とな?なるほど、口で説明すると信じてもらえないと?爺、支度をせい」

「魔王様!?突然そんな支度は出来ませぬぞ!そもそも人間界に赴くなんて」

「あの魔法陣は隠蔽を付与する効果もあっただろう?それでいて人間にバレた試しは一度もない。それに、ケンゴが隠す仕事に興味があるしのぅ?」

「あぁー、はぁ…………」

観念したように爺がため息を吐いた。この魔王様は日頃から好奇心旺盛な感じなんだろうかね?

「よし、お泊りセットは妾が前もって用意してあるしのぅ?人間界に行くのは初めてよ。ほれ、行くぞ」

「魔王様!?」

お泊りセットがあるという事は初耳だったんだろう。しかし、行動力があるな。魔王様をダンジョンに入れたらボーナスポイントが入るかな?

「ケンゴを牢から出せ!出発の準備を!」

そこから先の話は早かった。俺から手錠を外して牢屋から出してくれた。そして、すぐに始めに飛ばされた広間に連れてこられて待機する事になった。

「よし、待たせたのぅ!」

魔王様、面倒事にならない為に心の中でツッコミをさせてもらう。その豪華な服で行く気かよ!?

あと、背中に背負ってるのはリュックサックでしょうか!?めっちゃパンパンになって膨らんでますけど!そのリュックサックの耐久力は大丈夫でしょうか!?

隣に控えてる爺が疲れた顔をしてらっしゃる。止めに止めて止められなかったんだろうなぁ…………

「よし、飛ぶぞ!」

俺の腕を掴んでさっさと魔法陣で転移した。

たった2人で・・・・・・

視界がブレて、始めに見えたあの青空や木々が見えた。

あ、今気づいたけど、ここはダンジョンの入り口の後ろじゃないのか?何か後ろの方が盛り上がってるし、この裏がダンジョンの入り口って事か。

「で、ヌシの仕事というのは?」

「コレですよ」

盛り上がっている所を半分回ると入り口があった。ここが正規ルートだろう。多分、ここまで近かったらテレポートも使える筈だ。

「これは、ダンジョン?魔界にもあったような形をしておるのぅ」

「そうです、これこれ」

手元の端末を操作しながら魔王様に向き合って、俺はダンジョン(自宅)にテレポートをタップする前に言った。

「ようこそ、俺のダンジョンへ。このダンジョンは簡単なので下で待っています」

俺はポカンとしている魔王様を置いてダンジョン(自宅)にテレポートをタップした。
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