36 / 49
生かせ、殺して捕まえるな
しおりを挟む
屋敷に突入したが、第一印象は荒れてるだった。
かなり慌ただしく動いたようで綺麗とは少し程遠いほどゆかは汚れていた。
だが、まだ全員が退避したわけではなさそうだ。気配があるとか言わないけど奥の方がまだ騒がしい。
つまりそこに行けばさっき逃げた野郎がいる訳だ。引っ捕える必要はある、はずだ。
いや、今更すぎるけど直接的に人を殺すのは気が引けるっていうか…………
今まで誰かが死ぬところは見たけど全部他人が殺していた。アルが盗賊をぶっ殺した時もそうだった、俺は大雑把とはいえ指示して殺れと言っただけ。
言い方は悪いけどここはゲームじゃなく現実だから、誰かに手を汚させ続けるというのはこの世界だと無理に等しい。
覚悟を決めて奥に進んでいく。といっても声が聞こえる方へ歩くだけだ。
意外と屋敷に声が響くから場所が特定し辛い。部屋をしらみ潰しに探さないと…………
「ここかっ!」
開かない扉を蹴破っても誰もいなかった。これで4部屋目の扉をぶち破ったことになる。なんで誰もいないのに部屋に鍵をかけられるんだ?
うーむ、これも魔法の力か?俺には理解できない。
「ここかぁっ!」
今度は5枚目の扉を蹴破る。何で手で引き剥がさないのかと言われたら困る。だって蹴り破りたかっただけとはそう言えない。
そこに『今です!』というどこかの軍師の幻聴が聞こえてきた気がする。と、馬鹿なことは考えないで現状報告。
扉を蹴破り突入した突然現れた鎖が俺の両手両足を拘束した。鎖は天井と床についていたらしく完全に俺を拘束した。
「はっはっはっ!馬鹿め、ノコノコとやってきたな!」
そこに立っていたのはさっきまで踏ん反り返ってた無能だった。いや、何でお前が何もない部屋にいるの?ここに来なかったら無意味だったけど…………
「ユーリーチン殿の家宝である『大地の鎖』にまんまと引っかかるとは、これは笑いものだな!」
ぐちぐち言ってる間にさっさと俺に攻撃してこいよと言ってやりたいけど馬鹿らしくて言いたくない。
というかこれお前の物じゃないのかよ。あ、もしかして『雇い主が預けたから俺の物』みたいな?それはそれでどうなんだよ、お前にプライドないのかよ。
「残念だったな、ユーリーチン殿は既に北の方へ避難した!今から追いかけても遅いわ、なんせ合法ではないとはいえ飼いならしていた気配を消せる土竜を使ったからな!」
「……………………」
呆れてものが言えなかった。こいつマジ無能過ぎて苦労するだろ…………いや待て、これはこれで演技か嘘かもしれない。
少なくとも演技の線はない。向こうの世界でもこの体のお陰で俺を騙してサンプルを取ろうとしたやつを何十人も見てたら嘘をついてることくらい見破れる目ほど目が肥えてくる。
となると、この無能が嘘を教えられてる可能性が非常に高い。本当のことかもしれないけどベラベラと喋る人材を置くのはのは怪しすぎる。
こいつは囮だな、間違いない。
「お前は確か情報によるとテイマーだったな。ヴァルキリーの女狐共を一匹のタイタンで倒したと聞いたときは驚いたぞ。まあ、お前一人こうして捕まえたなら話は別だがな」
そう言って俺の首元に剣を添える。ずっと喋るなこいつ、口だけはよく回る。
「命が惜しければ従え。お前のタイタンをここに呼び出し暴れさせろ」
「……………………」
「お前を殺したらあの魔物たちをどう止めるか分からんからな。少なくともそれは同意するが操れと言われるとな、虫唾が走る。さっさと自殺されてお前を奴隷にすればいいものを…………」
もういいかな?ぶっちゃけ鎖で繋がれたとしても天井と床にちょっとくっついてる程度なんですよ。
まあ、ユーリーチン家の家宝とも言われるこの鎖は相応な強度があるんだろうと予想した。でも、それはあくまで鎖の話であってね?
「誰が受け入れるか無能!」
「え、ぎゃばぁぅ!?」
俺は鎖を力強く引っ張った。流石に家宝というだけあって鎖は壊れなかったが天井が耐えられず鎖がついてた部分が丸ごと取れて腕が自由になる。
そのついでで無能をぶん殴ってやった。うわ、鼻血出してるし前歯も何本か折れたっぽい。
鎖は固いけど天井と床は案外硬くなかったのか救いだったな。手足に鎖は絡まったままだけど根元が取れてるから自由に動ける。
「あひっ、あうぅ~」
「情けない声を出してるな」
「ヒィィッ!?」
殴られた顔を手にで押さえながら這いずるように逃げようとする無能、そんな簡単に見逃すわけないだろ?
「殺しはしないさ、後でお前にきっちりと話を聞かせてもらうからな」
「しゃ、喋るから!命ばかりはお助けをぉ!」
「とりあえず、これを外す方法を教えろ、というか外せ」
めちゃくちゃ怯えながら無能は口をもごもごと動かして呟いた途端、鎖がカランと音を立てて床に落ちた。少なくとも俺の知ってる金属が落ちるような音じゃない。
とりあえず首を絞めて気絶させて引きずって屋敷の外に出よう。こいつを気絶させたあとは嫌という程この屋敷は静かになったから、地下を通って逃げたんだろう。
しかし、ユーリーチン氏はなんでこんな事件を起こしたんだ?利益があるようには思えない。
ただ固執した偏見を持っていたせいか?うーん、それは俺の仕事じゃない。
ん?あれ、俺の仕事ってこういうことだっけ?いやいやいや、違う!ダンジョンマスターだからダンジョンの経営じゃん!
ダンジョンを潰れないように繁栄させて育てるみたいな感じで、なんかハイになってるせいか混乱してきた。
「まったく、何してんだろ俺…………」
人生を迷走してるなぁ、と気絶している無能を引きずりながら呟いた。
一時的とはいえこの戦いは幕を下ろしそうだ。
かなり慌ただしく動いたようで綺麗とは少し程遠いほどゆかは汚れていた。
だが、まだ全員が退避したわけではなさそうだ。気配があるとか言わないけど奥の方がまだ騒がしい。
つまりそこに行けばさっき逃げた野郎がいる訳だ。引っ捕える必要はある、はずだ。
いや、今更すぎるけど直接的に人を殺すのは気が引けるっていうか…………
今まで誰かが死ぬところは見たけど全部他人が殺していた。アルが盗賊をぶっ殺した時もそうだった、俺は大雑把とはいえ指示して殺れと言っただけ。
言い方は悪いけどここはゲームじゃなく現実だから、誰かに手を汚させ続けるというのはこの世界だと無理に等しい。
覚悟を決めて奥に進んでいく。といっても声が聞こえる方へ歩くだけだ。
意外と屋敷に声が響くから場所が特定し辛い。部屋をしらみ潰しに探さないと…………
「ここかっ!」
開かない扉を蹴破っても誰もいなかった。これで4部屋目の扉をぶち破ったことになる。なんで誰もいないのに部屋に鍵をかけられるんだ?
うーむ、これも魔法の力か?俺には理解できない。
「ここかぁっ!」
今度は5枚目の扉を蹴破る。何で手で引き剥がさないのかと言われたら困る。だって蹴り破りたかっただけとはそう言えない。
そこに『今です!』というどこかの軍師の幻聴が聞こえてきた気がする。と、馬鹿なことは考えないで現状報告。
扉を蹴破り突入した突然現れた鎖が俺の両手両足を拘束した。鎖は天井と床についていたらしく完全に俺を拘束した。
「はっはっはっ!馬鹿め、ノコノコとやってきたな!」
そこに立っていたのはさっきまで踏ん反り返ってた無能だった。いや、何でお前が何もない部屋にいるの?ここに来なかったら無意味だったけど…………
「ユーリーチン殿の家宝である『大地の鎖』にまんまと引っかかるとは、これは笑いものだな!」
ぐちぐち言ってる間にさっさと俺に攻撃してこいよと言ってやりたいけど馬鹿らしくて言いたくない。
というかこれお前の物じゃないのかよ。あ、もしかして『雇い主が預けたから俺の物』みたいな?それはそれでどうなんだよ、お前にプライドないのかよ。
「残念だったな、ユーリーチン殿は既に北の方へ避難した!今から追いかけても遅いわ、なんせ合法ではないとはいえ飼いならしていた気配を消せる土竜を使ったからな!」
「……………………」
呆れてものが言えなかった。こいつマジ無能過ぎて苦労するだろ…………いや待て、これはこれで演技か嘘かもしれない。
少なくとも演技の線はない。向こうの世界でもこの体のお陰で俺を騙してサンプルを取ろうとしたやつを何十人も見てたら嘘をついてることくらい見破れる目ほど目が肥えてくる。
となると、この無能が嘘を教えられてる可能性が非常に高い。本当のことかもしれないけどベラベラと喋る人材を置くのはのは怪しすぎる。
こいつは囮だな、間違いない。
「お前は確か情報によるとテイマーだったな。ヴァルキリーの女狐共を一匹のタイタンで倒したと聞いたときは驚いたぞ。まあ、お前一人こうして捕まえたなら話は別だがな」
そう言って俺の首元に剣を添える。ずっと喋るなこいつ、口だけはよく回る。
「命が惜しければ従え。お前のタイタンをここに呼び出し暴れさせろ」
「……………………」
「お前を殺したらあの魔物たちをどう止めるか分からんからな。少なくともそれは同意するが操れと言われるとな、虫唾が走る。さっさと自殺されてお前を奴隷にすればいいものを…………」
もういいかな?ぶっちゃけ鎖で繋がれたとしても天井と床にちょっとくっついてる程度なんですよ。
まあ、ユーリーチン家の家宝とも言われるこの鎖は相応な強度があるんだろうと予想した。でも、それはあくまで鎖の話であってね?
「誰が受け入れるか無能!」
「え、ぎゃばぁぅ!?」
俺は鎖を力強く引っ張った。流石に家宝というだけあって鎖は壊れなかったが天井が耐えられず鎖がついてた部分が丸ごと取れて腕が自由になる。
そのついでで無能をぶん殴ってやった。うわ、鼻血出してるし前歯も何本か折れたっぽい。
鎖は固いけど天井と床は案外硬くなかったのか救いだったな。手足に鎖は絡まったままだけど根元が取れてるから自由に動ける。
「あひっ、あうぅ~」
「情けない声を出してるな」
「ヒィィッ!?」
殴られた顔を手にで押さえながら這いずるように逃げようとする無能、そんな簡単に見逃すわけないだろ?
「殺しはしないさ、後でお前にきっちりと話を聞かせてもらうからな」
「しゃ、喋るから!命ばかりはお助けをぉ!」
「とりあえず、これを外す方法を教えろ、というか外せ」
めちゃくちゃ怯えながら無能は口をもごもごと動かして呟いた途端、鎖がカランと音を立てて床に落ちた。少なくとも俺の知ってる金属が落ちるような音じゃない。
とりあえず首を絞めて気絶させて引きずって屋敷の外に出よう。こいつを気絶させたあとは嫌という程この屋敷は静かになったから、地下を通って逃げたんだろう。
しかし、ユーリーチン氏はなんでこんな事件を起こしたんだ?利益があるようには思えない。
ただ固執した偏見を持っていたせいか?うーん、それは俺の仕事じゃない。
ん?あれ、俺の仕事ってこういうことだっけ?いやいやいや、違う!ダンジョンマスターだからダンジョンの経営じゃん!
ダンジョンを潰れないように繁栄させて育てるみたいな感じで、なんかハイになってるせいか混乱してきた。
「まったく、何してんだろ俺…………」
人生を迷走してるなぁ、と気絶している無能を引きずりながら呟いた。
一時的とはいえこの戦いは幕を下ろしそうだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる