究極生命体のダンジョン作り!

雷川木蓮

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このお馬鹿様は何を言っちゃってくれてるんですか

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四天王バガンが率いる軍隊がダンジョンをいい感じに攻略している最中に現れた人間の軍勢。その中で数人が魔族の堀と柵を突破した。

それを北町健五がモニター越しに静かに見ている。どう出るか気になって静観することにしたのだ。

あっという間に侵入してきた二人はバガンの前にたどり着いた。バガンの予想通り、『ケツァルコアトル』のギルドマスターと『ヴァルキリー』の支部長だ。

「やはり貴様らか」

「何故こんなところに魔族が軍を率いて現れたかよく分からない。小さなダンジョン目当て?」

「ハンッ!ここが小さなダンジョンで済むと思うなら貴様らの目は節穴以下だな!」

ダンジョンに入ったことすら無いギルドマスターを鼻で笑い飛ばすバガン。

自身もダンジョンには入ってないが、あの男が経営し魔王がちょっと入れ知恵したダンジョンをそこらのダンジョンと同じにするのは馬鹿としか言えないと思っている。

それに部下が不殺で返されるのも手際が良すぎる。普通ならダンジョンで殺して養分にすればいいものをあえて殺さず返さないことに関してはバガンは理解できない。

今は目の前にいる強者の対応をするべきだが、ダンジョンから強制転移されたパーティーが突然バガンと二人の前に現れた。

「はぁっ、はぁっ、アイアンゴーレムめぇ…………」

「こ、今度は鈍器係が必要って…………がくっ」

「『ダークヒール』…………つらぃ、収穫あったけどあれはつらい…………」

「…………これは?」

「おお、今度はアイアンゴーレムが出てくるか。次の編成も考えた方がいいな」

ボロボロになった三人組が他の魔族に肩を貸してもらいながら治療テントに向かうのを唖然として見ていた。もちろんそうやって見ていたのはギルドマスターと支部長だ。

「前に報告があった時は調節中と聞いていたが、よもやここまでとは…………」

「流石はあの男のダンジョンだと思わんかね!我々でも手を焼く魔王のお守りをしてくれるだけでもありがたいというのに!」

「魔王のお守り?」

白銀の鎧に包まれた『ヴァルキリー』の支部長が首をかしげる。フルフェイスな兜で顔が見えないが怪訝な顔をしているのは確かだ。

バガン、いや四天王、それだけではなく魔王の部下にとって唯一魔王の手綱を握れるのがあの男という認識なのだ。

ありがたい、凄くありがたい。ぶっちゃけある程度のわがまま聞くから城に居座って欲しい(魔王軍の総意)

だが、あの男はダンジョン経営があるからと魔王直々のスカウトを袖にした。待遇も約束されたものなのに袖にするのは何事か(魔王軍の総意)

それに魔王がダンジョン攻略してあのダンジョンを得よと言うなら無理してでも攻略して連れて帰った方が周り(主に魔界)の被害を抑えられる。

現段階で魔族にとって最高の抑止力としてどんな宝よりも価値があるのがあの男である。

「あの子供っぽい魔王を治めるのにここのダンジョンマスターが必要なのだ。邪魔をするな!」

「っ!」

ギルドマスターと支部長は突然怒気を放つバガンに気圧されそうになるもそれぞれの武器を構える。それに応えるかのようにバガンもゆっくりと刀を構える。

その時、当のダンジョンマスターはと言うと

「子供っぽい魔王って…………あいつ結構問題児扱いされてるのか」

彼を欲しがってるのは魔王の暴走だけでなく全体的に欲されているというのを理解した。

「あんな女はご主人様に釣り合いませんよ!ワガママ放題の暴君なんかご主人様と合うわけがありません!」

「…………絶対ニ魔王ノ元ニツキタクナイ」

ある意味で酷い目にあわされた骨がため息を吐き、いつもあんな目に遭ってるのだろうかとバガンに同情した。

そんな呆れと同情が充満してる空間に端末から警告音が鳴り出した。

「え、確かこの音って…………げっ」

端末に出ていた文字は『魔王接近中』だった。




~●~●~●~●~




そんなことを知らない地上の方々。

「甘いぞ小童共!その程度で我を倒せると思うな!」

「大将首を置いていけ!」

「ちっ、思ったより邪魔になる…………」

バガンvsギルドマスター&支部長の戦いが既に始まっていた。ギルドマスターが魔法で牽制しようとしても支部長の武器が大剣であるため前に入って邪魔しかされていない。

要するに連携が全く取れていない。支部長の攻撃はバガンに余裕で捌かれているためろくなダメージすら与えられていない。

ギルドマスターの方はまあまあ強いとみているが支部長はそこまでだと感じたバガン。なら支部長を無駄に動かさせてギルドマスターの邪魔をすればダンジョン攻略の時間稼ぎ程度になるだろうと考えていた。

結果的に言うと時間稼ぎにはなった。ただし、ダンジョン攻略の方ではなく魔王が来る時間稼ぎに。

「バガン!攻略は順調かのぅ?」

「は、えっ、魔王様ぁ!?」

何も聞かされてなかったが、もしかしてくるんじゃないかなーと思っていたとはいえ本当に来てしまった魔王に対して素っ頓狂な声を上げてしまった。

一部は予想していたものの、やはり来るとなれば話は別だ。というか他の四天王や爺は何をしていたという話になるが…………

「やっぱ魔王様来ちゃったかぁ」

「もう諦めの領域だよね。そろそろ翁が過労と心労ね倒れそうになってるって噂聞いたけど」

「ま、まだいけるはずだって!かなり歳いってるように見えるけど元気だから…………」

「…………………………………………」

「聞こえてるぞお前ら!」

「「「聞こえるように言ってるんです!」」」

部下がハッキリと言わなければならない例とも言える。それで治るなら誰も苦労はしないのだが。

突然の魔王の登場と彼女の部下の言葉を聞いて、もはや何かの罠ではないか?という疑念が湧きつつある二人。

それにまだ援軍とも言える他の人間達が来ないことに若干の焦りも感じていた。その心は間違いなく一つになっている。

そう、彼ら魔族達はこう叫びたい。『この魔王は何故いつもいつも前線に出張ってくるんだ!』と。

「その様子だと苦戦しとるようだな。やはりケンゴのダンジョンはそう簡単に攻略できんか!」

「待ちなさい、今、ケンゴと?」

「うむ、そうだが?」

ケンゴという単語、ギルドマスターと支部長にはとても、とっても、とーーっても聞き覚えがある言葉だ。

例えば部下が無許可で決闘を挑み惨敗した主人とか、先日の反乱を鎮圧するためによく働いてくれて知名度が上がった男とか。

いやーな予感がするとしか言えない状況、バガンは顔に出してはないものの彼の名前を出してよかったのかと内心焦っている。

「…………もしやダンジョンマスターはケンゴ・キタマチという男では」

聞いてしまった、『ケツァルコアトル』のギルドマスターが聞いてしまった。

魔王は首をかしげハテナマークを浮かべているがバガンは少し冷や汗をかいた。なお、当の本人はやめろと叫んでるがここにいる全員には聞こえはしない。

ここは喋るべきではない。普通はそうだ、そう、普通は。

ここに空気を読まない魔王さえいなければ!

「お主ら知らんのか?最近冒険者でいい位置につけたと言ってたキタマチケンゴがこのダンジョンの主だ!」

バァーン、という効果音がつきそうな勢いで魔王が言い放った。ギルドマスターと支部長は行動と思考が止まりかけ、バガンは簡単に情報を喋った魔王のせいで頭を抱えた。

ダンジョンマスターはどこぞの骨のように一時的に発狂したのは語られることはない。
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