採集スキルしかない冒険者

kitatu

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 目の前には何十体ものスライムの屍が、夕日に焼かれて黒い影を落とす草原に横たわっている。どの屍も中から液体が流れ出し、残っているのは透明なプニプニとした皮だけであった。

「はあ、また失敗か」

 この惨状を作り上げたのは他ならぬ俺、レクトである。

 きっかけは、ある日の朝だった。俺は理の書を見つけ出してから、三日三晩、食えそうな草を食い、泥水をすすりながらも理の書を読みふけった。

 そして、ある朝、まず自分が強くなるためにできることはスライムの魔石をとることだと決心しスライムを狩りに出かけたのであった。

 魔石とは、この本で初めて知った言葉で魔物が生成する魔力を保存するための器官である。

 書によると、スライムは自ら生成した魔力を保存するため1mm程度と非常に小さな魔石と呼ばれる器官を作り出すことができる。スライムの魔石の中には、青い魔力光が秘められており、さらに魔石には遮光性も兼ね備えている。しかしそれでも、スライムが青く見えるほど光が強い。

 通常その魔石から漏れ出した魔力をスライムは利用している。スライムが分裂するのも体内に魔力が蓄積し、飽和してきた際、新たに魔石を作りだし、そこに魔力をため分裂して子孫を増やす。

 ただ、魔石は空気に触れるとより遮光性がまし、透明の1mm程度の石となり、中の魔力も次第に気散するため確認することは困難ということであった。

 スライムは死ぬと色が薄くなるのはこのためだ。

 まあ、前置きは良いとして、こんな役に立たなそうなものを何故躍起になって探しているのかそれは、採取できると、採集スキルのレベルが上がるためである。

 副次的にスライムの皮は冒険者ギルドで買い取ってもらえるので人並みの生活にもどることはできたのだが、何とも複雑な心境である。

「今日は最後にこの一体でやめておくか」

 そう呟き、最後のスライムに手を突っ込み、弄ると指先に硬い感触があった。俺は必死に指を動かし掴みとり、そのまま手を引き抜いた。

 そして、顔に近づけ片目を瞑り目を凝らして確認すると、指の間に本当に小さいながらも青く美しい輝きを放つ丸い石のようなものがあった。

「これが、スライムの魔石か! 良かった! 本当にあったんだ!」

 俺は思わず、子供のようにはしゃいだ。あまりにはしゃいで、眺めているといつのまにか魔石は透明になっていた。そして、次第に中が透けて眩しく赤い夕日を映し出した。魔力が空気中に気散していったのだろう。

 その事実がまた、自分を高揚させ、自分のステータスを確認せざるを得なかった。

「ステータスオープン」
 目の前に青い炎のような文字が浮かぶ。

 ***************
 レクト=リアス
<所持スキル>
 採集Lv10
 恩恵
 アイテムボックス
 ***************

「はぁ!? レベル十!?」

 レベル十は最高レベルである。確かに、スライムの魔石を手に入れるために、一月休まず、努力してきた。それにしても早すぎる。それに、アイテムボックスとは何だ?

 俺はアイテムボックスの項を注視してみる。

 アイテムボックス.……採集スキルを極めしものに得られる恩恵。アイテムボックスは時の止まった異空間にアイテムを出し入れすることができる。

 そんなスキルがあるというのか? いや、あるのだろう。何故か、使い方が息をするようにわかるのだから。

 俺は手に持っていたスライムの魔石を収納するイメージをする。すると、スライムの魔石は手から消えていた。

「ほ、本当に消えた!?」

 使い方はわかっていても本当にできるとなると驚いてしまうものである。今度は、取り出すイメージを思い浮かべる。すると、今度は手のひらの上に先ほどと何ら変わりない魔石が現れる。

「すげええええ!!」

 俺はあまりの高揚感に突き動かされ、日が落ち切って青白い満月が見つめてくる時間まで繰り返した。そこでようやく我に帰り街に帰ることにした。

 スライムの皮など、全て剥ぎ終えたものをアイテムボックスに仕舞い帰り支度を終える。

 最後に理の書をしまおうとしたその時、上流のような激しくも美しい声が聞こえ、山吹色の光が辺りを包み目を閉じてしまう。

「そんな所、絶対に嫌!!」

 目を開くと俺の前に、満月が霞んでしまうほど、神秘的で美しい少女が、風に髪を棚引かせて仁王立ちしていたのだった。
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