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そろそろ、この近辺で出来ることもないし、最後に街を出る前にお金を稼ごうと思い立った。
俺は宿で寝ているツクモを置き去りに冒険者ギルドの扉を開いた。
ギルドは朝早くから依頼の紙を手にしようとする冒険者たちでごった返していた。
人の合間を縫って、ホールを歩いていると、背後から野太く下劣な声をかけられる。
「よう! 久し振りだなあ!」
「ガイスト……」
俺に声をかけたのは俺をボロボロにした相手ガイストであった。ガイストは趣味の悪い宝石のついた眩しい装飾品を身につけていた。
冒険者ギルドで久しく目にしていなかったので、安心していたが、今日で去ろうという日に鉢合わせてしまった運命を呪った。
「お前、スライムの皮を売りまくって景気がいいらしいじゃないか?」
ああ。また、こいつは俺から金を奪おうとしているのか。膝が震える。しかし、くだらない男のプライドか、怯えていることを悟られないようにはっきりと声を出す。
「お前こそ羽振りが良さそうじゃねえか」
「ん? なんだ? ああ。この飾りか。良いだろ? てめえの女が残した金使って、集めたんだよ。どうだ? 似合ってるか?」
「……残りの金はどうした?」
「ああ! 全て女に使っちまったよ! ギャハハハ!」
「表出ろやぁぁぁぁぁ!」
さっきの怯える気持ちは忿怒に塗り替えられ、咆哮をあげた。
「ひっ、ヘフ、ぶあははは!! こりゃ傑作だ! わかった! 表出てやろう! てめえらもこいや!」
ガイストは、ひとしきり笑ったあと他の冒険者達に声をかけた。すると、冒険者達はおこぼれに預ろうとするためか、ニヤニヤと醜悪な笑みを浮かべて近づいてきた。だけど、そんなことどうでも良かった。俺はただ叩きのめされたあの場所でガイストを叩きのめしたい怒りに染まっていた。
閑散とした裏路地にたどり着くやいなや俺は冒険者達に囲まれる。
「さて、レクトくん。今なら、土下座して媚び、俺に一生奴隷のように貢ぎ続けると誓うのなら見逃してやっても良いぞ?」
ガイストが嘲笑うようにそう告げた。
こいつらに勝てる自信なんてハナからない。ただ、経緯はどうあれこんな俺の為に残したアイリの金を奪い、無為に費やしたことが許せないだけだ。そして、それを見過ごしてきた自分にも。不意に口が動く。
「てめえみてえなゴミに誰がそんなみっともねえ真似するかよ!」
俺の言葉にガイストは顔を真っ赤に染め、わなわなと震え叫ぶ。
「こいつを殺せ!!!」
ガイストの叫びを皮切りに冒険者達が襲いかかってきた。しかし、その動きは酷く遅く見える。
右の男が殴りかかろうと腕を振り上げるのが見え、懐に入りこみ躱す。今度は前の男から蹴りが放たれるも仰け反って避ける。
筋肉の動きが明瞭に見え、男達の動作が始まる前には既に回避することができていた。それからもひたすらに男達の攻撃を避け続ける。
「はぁ、はぁ。糞! ちょこまかと動きやがって! おら!」
息を切らし殴りかかってきた男の動きは遅すぎて止まって見える。俺は男の拳を頰の横紙一重で躱し、逆にその勢いを利用して顔面を殴りつけた。
「ぐぉえぇ」
男はどさりと土煙を巻き上げ地面に倒れこんだ。
「避けるのにも慣れてきた。今度はこっちから行く!」
「ひっ」
冒険者の男達は皆息を飲んだが、俺は構わず顎を殴り、蹴りを入れ地面に横たわらせて行く。冒険者達は何度も起き上がって襲いかかってきたが、全てを避け、何度も倒して行くとやがて立ち上がらなくなった。
そして、立っているのは俺とガイストだけであった。
「て、てめえ何があった! こいつらは戦闘スキルを持つ冒険者達だぞ!」
「知らねえなそんな事。俺が興味あんのはガイスト。お前がどうやって寝るかだけだ」
「糞があああ! 採集スキルだけの無能が! なめんじゃねえええ!」
激昂して掴みかかってきたガイストを屈んで軽く避け、頭に回し蹴りをあてると前のめりにガイストは倒れた。が、すぐに起き上がる。
「俺はぁぁぁ! Bランク冒険者のガイスト様だぁああ!」
ガイストは剛力を使用してか、石畳の街道の石を引っぺがして投げつけてくる。俺は飛んでくる石をかろうじて避けるも長くは続かないことを悟る。
糞、このノーコン野郎。投げる方向がわかっても軌道がわからねえ。軌道が見えてからじゃ避けるのは遅れる。疲れてくれば、いつか間に合わなくなってくる。
「おら、もういっちょ行くぞ!」
ガイストは再び石を投げつけようとしてくるのを見て俺は指先に魔石をアイテムボックスから取り出す。そして、飛来する石を躱して、目を閉じ、指先に力を入れ、魔石を押しつぶした。
「ぐわあああああ!」
青い閃光が走りガイストの目を焼き潰した。そして俺は悶え苦しむガイストの視力が回復する前に駆け寄り、鳩尾を渾身の力で殴りつけた。
「かふっ」
ガイストはかすれた声を出して地面に倒れこんだ。起き上がる様子もないことを確認すると、急に力が抜けて地面にへたり込んだ。
あのガイストを倒せた。確実にアメジストベリーによる視力の向上やスライムの魔石のお陰だ。
ふと、ガイストを見る。ガイストの意識はなく白目をむいており、カニのように泡を吹いていた。
そして、無防備に身につけている高価そうな宝石がついた装飾品が目につく。
こんなものにアイリに残されたものを費やしたのかと再び怒りが再燃してくる。この装飾品を奪い返してやろうとも思ったが、虚しさが勝り手を引っ込めた。
俺は装飾品が欲しいわけじゃない。金貨が欲しかったわけでもない。アイリに残されたものが欲しかったのだ。それはもう戻ってこない。なら、こんなものを手に入れても仕方ない。
俺が今したいことは……。
そう思うと、満身創痍の体を起こし、フラフラと揺らして歩き出した。
そして、宿の部屋にたどり着き、ふわふわの絹よりも美しい山吹色の髪を枕にして、ベッドですやすやと寝ているツクモに呟く。
「お前と会えて本当に良かったよ。これからも俺は強く……」
全てを言い切れず、疲れに負けてツクモの隣に倒れこんだ。
俺は宿で寝ているツクモを置き去りに冒険者ギルドの扉を開いた。
ギルドは朝早くから依頼の紙を手にしようとする冒険者たちでごった返していた。
人の合間を縫って、ホールを歩いていると、背後から野太く下劣な声をかけられる。
「よう! 久し振りだなあ!」
「ガイスト……」
俺に声をかけたのは俺をボロボロにした相手ガイストであった。ガイストは趣味の悪い宝石のついた眩しい装飾品を身につけていた。
冒険者ギルドで久しく目にしていなかったので、安心していたが、今日で去ろうという日に鉢合わせてしまった運命を呪った。
「お前、スライムの皮を売りまくって景気がいいらしいじゃないか?」
ああ。また、こいつは俺から金を奪おうとしているのか。膝が震える。しかし、くだらない男のプライドか、怯えていることを悟られないようにはっきりと声を出す。
「お前こそ羽振りが良さそうじゃねえか」
「ん? なんだ? ああ。この飾りか。良いだろ? てめえの女が残した金使って、集めたんだよ。どうだ? 似合ってるか?」
「……残りの金はどうした?」
「ああ! 全て女に使っちまったよ! ギャハハハ!」
「表出ろやぁぁぁぁぁ!」
さっきの怯える気持ちは忿怒に塗り替えられ、咆哮をあげた。
「ひっ、ヘフ、ぶあははは!! こりゃ傑作だ! わかった! 表出てやろう! てめえらもこいや!」
ガイストは、ひとしきり笑ったあと他の冒険者達に声をかけた。すると、冒険者達はおこぼれに預ろうとするためか、ニヤニヤと醜悪な笑みを浮かべて近づいてきた。だけど、そんなことどうでも良かった。俺はただ叩きのめされたあの場所でガイストを叩きのめしたい怒りに染まっていた。
閑散とした裏路地にたどり着くやいなや俺は冒険者達に囲まれる。
「さて、レクトくん。今なら、土下座して媚び、俺に一生奴隷のように貢ぎ続けると誓うのなら見逃してやっても良いぞ?」
ガイストが嘲笑うようにそう告げた。
こいつらに勝てる自信なんてハナからない。ただ、経緯はどうあれこんな俺の為に残したアイリの金を奪い、無為に費やしたことが許せないだけだ。そして、それを見過ごしてきた自分にも。不意に口が動く。
「てめえみてえなゴミに誰がそんなみっともねえ真似するかよ!」
俺の言葉にガイストは顔を真っ赤に染め、わなわなと震え叫ぶ。
「こいつを殺せ!!!」
ガイストの叫びを皮切りに冒険者達が襲いかかってきた。しかし、その動きは酷く遅く見える。
右の男が殴りかかろうと腕を振り上げるのが見え、懐に入りこみ躱す。今度は前の男から蹴りが放たれるも仰け反って避ける。
筋肉の動きが明瞭に見え、男達の動作が始まる前には既に回避することができていた。それからもひたすらに男達の攻撃を避け続ける。
「はぁ、はぁ。糞! ちょこまかと動きやがって! おら!」
息を切らし殴りかかってきた男の動きは遅すぎて止まって見える。俺は男の拳を頰の横紙一重で躱し、逆にその勢いを利用して顔面を殴りつけた。
「ぐぉえぇ」
男はどさりと土煙を巻き上げ地面に倒れこんだ。
「避けるのにも慣れてきた。今度はこっちから行く!」
「ひっ」
冒険者の男達は皆息を飲んだが、俺は構わず顎を殴り、蹴りを入れ地面に横たわらせて行く。冒険者達は何度も起き上がって襲いかかってきたが、全てを避け、何度も倒して行くとやがて立ち上がらなくなった。
そして、立っているのは俺とガイストだけであった。
「て、てめえ何があった! こいつらは戦闘スキルを持つ冒険者達だぞ!」
「知らねえなそんな事。俺が興味あんのはガイスト。お前がどうやって寝るかだけだ」
「糞があああ! 採集スキルだけの無能が! なめんじゃねえええ!」
激昂して掴みかかってきたガイストを屈んで軽く避け、頭に回し蹴りをあてると前のめりにガイストは倒れた。が、すぐに起き上がる。
「俺はぁぁぁ! Bランク冒険者のガイスト様だぁああ!」
ガイストは剛力を使用してか、石畳の街道の石を引っぺがして投げつけてくる。俺は飛んでくる石をかろうじて避けるも長くは続かないことを悟る。
糞、このノーコン野郎。投げる方向がわかっても軌道がわからねえ。軌道が見えてからじゃ避けるのは遅れる。疲れてくれば、いつか間に合わなくなってくる。
「おら、もういっちょ行くぞ!」
ガイストは再び石を投げつけようとしてくるのを見て俺は指先に魔石をアイテムボックスから取り出す。そして、飛来する石を躱して、目を閉じ、指先に力を入れ、魔石を押しつぶした。
「ぐわあああああ!」
青い閃光が走りガイストの目を焼き潰した。そして俺は悶え苦しむガイストの視力が回復する前に駆け寄り、鳩尾を渾身の力で殴りつけた。
「かふっ」
ガイストはかすれた声を出して地面に倒れこんだ。起き上がる様子もないことを確認すると、急に力が抜けて地面にへたり込んだ。
あのガイストを倒せた。確実にアメジストベリーによる視力の向上やスライムの魔石のお陰だ。
ふと、ガイストを見る。ガイストの意識はなく白目をむいており、カニのように泡を吹いていた。
そして、無防備に身につけている高価そうな宝石がついた装飾品が目につく。
こんなものにアイリに残されたものを費やしたのかと再び怒りが再燃してくる。この装飾品を奪い返してやろうとも思ったが、虚しさが勝り手を引っ込めた。
俺は装飾品が欲しいわけじゃない。金貨が欲しかったわけでもない。アイリに残されたものが欲しかったのだ。それはもう戻ってこない。なら、こんなものを手に入れても仕方ない。
俺が今したいことは……。
そう思うと、満身創痍の体を起こし、フラフラと揺らして歩き出した。
そして、宿の部屋にたどり着き、ふわふわの絹よりも美しい山吹色の髪を枕にして、ベッドですやすやと寝ているツクモに呟く。
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