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シャルロッテはツクモの前に出て、食いかかるように頼んだ。
あの、ミスリルが手にはいる好機だ俺もその気持ちはわかる。ここはシャルロッテに頑張ってもらおう。
「やるんだ。なら、とりあえず練習しないといけないよ。まずはレクトの手の甲に手を添えて」
ツクモは手を前に出して、片手をもう一方の手の甲に重ねた。どうやら、そうやって行うらしい。
しかし、ツクモのジェスチャーの意味がわからないのかシャルロッテは俺の顔をチラチラと伺ってくるだけで何もしようとしない。
「何しているんだシャルロッテ。ほら」
俺はシャルロッテに向けて、手を差し出す。すると、シャルロッテはおやつをもらう前の子犬のように、そろそろと近づいてきた。
俺の隣までくると、胸の前で握っていた右手を自分の拳から離し、のそりと腕を伸ばしてきた……かと思えば引っ込める。そんな、動作を繰り返した後ちょこんと手のひらを俺の左手の甲に重ねた。
「やった!」
シャルロッテは、らしくない子供のように無垢な笑顔を浮かべ達成感に浸っていた。
何をそんなに喜ぶことがあるのだろうか。手を重ねるくらい……そういえば、元婚約者だというのに手を繋いだことがなかった。
そもそも、俺はシャルロッテに避けられていて手をつなぐどころではなかった。そう考えればシャルロッテの行動に納得がいく。
シャルロッテは俺のことが好きじゃないから、そんな男に手を重ねるのは貴族の子女として抵抗を示したのだ。
なるほど。拒否感を乗り越えて自分のために嫌なことを達成したのだ。それは達成感に喜びの言葉を漏らすのも最もだ。
実際に、手の甲にはしっとりとした手のひらの感触。あまりの葛藤に手のひらに汗をかいているのだろう。
「それで? どうすればいいんだ?」
シャルロッテの気持ちを尊重してツクモに尋ねる。
「レクトは何もしなくていいよ。女騎士がさっき説明した通りの魔力コントロールを身につけてよ……って女騎士?」
ツクモがシャルロッテにジト目を向けて怪訝そうな顔をしたので、シャルロッテの方を見ると、俺と重ねた手をただただ見つめていた。
「おい、シャルロッテ?」
「はっ!? な、なんだレクト?」
シャルロッテは何か考え事でもしていたのかわからないが、俺の言葉に現実に引き戻されたようである。
*
強い脱力感に襲われると、白い閃光が走り、目を閉じる。焦げ臭い悪臭に目を開けると、目の前には上部がドロドロに溶け去った岩があった。断面はこぽこぽと泡を立てていたが、次第に収まり黒くなっていく。
「グラビティダウン!」
またもや脱力感に襲われて、倒れそうにもなるも踏ん張って岩の上を見る。そこには、ふわふわと白銀色に輝く物体が浮かんでいた。物体は小指の爪程度の大きさで、目を奪われるほど美しい。少し経った後、俺はシャルロッテとともに歩み寄って、ミスリルを手にとった。
「これで、結構集まったな」
「そうだな」
あれから、大会の前前日の今日まで、ひたすらにミスリルを集め続けた。
最初はシャルロッテが集中できずに、上手くいかなかった。しかし、時間をかけるとシャルロッテも集中できるようになり、やがてはできるようになった。
だが、それは簡単な道のりではなかった。シャルロッテは大粒の汗を掻きながら、必死に何度も何度も繰り返した。時には目の下に隈を作って、俺たちが寝ている間も反省に反省を重ね、次の日にはより上達していた。そんな血のにじむような努力をして、ようやくできるようになったのだ。
それでも、ツクモに言わせると、それだけの努力で出来るなんてシャルロッテは魔力制御の天才だそうだ。
「なあ、本当に俺がもらってもいいのか?」
魔力の制御ができるようになってからはミスリルを早朝から深夜まで集めた。
しかし、そこまでして集めたというのに、ミスリルは一つの武具を作れるかどうか程度の量しか集まっていない。そこでシャルロッテは俺に全てを譲ると言っていたのであったが、流石に気がひける。
「ああ。何回もそう言ってるじゃないか」
「シャルロッテが作ったようなものだろ?」
「そんなことを言ったらレクトの力がなければできなかったじゃないか。私の存在は代用が効くけど、レクトの存在は必須だからな」
シャルロッテはそう言って笑った。
確かに俺の存在も必要なのは必要であった。俺は採集スキルのおかげか、ミスリルが存在する位置をぼんやりとだがわかる。そこに目印をつけてシャルロッテが融かす。
その繰り返しで集めてきたので、やはり、シャルロッテの存在もまた必要不可欠である。
なら、自分だけもらって、シャルロッテに何も還元しないなんて不義理なことはしたくない。
「今度はシャルロッテの分もミスリルを採るのを手伝うから」
「ははは。それじゃあ、ミスリルで出来る欲しいものでも空想しておくことにするよ」
シャルロッテは何も気にしていないのか、それとも期待すらしていないのか笑い飛ばした。
「そんなことより、集めたミスリルと手を差し出してくれ」
上機嫌そう告げたシャルロッテに思うところはあったが、素直にミスリルを取り出してから、手を差し出す。
シャルロッテはふふっ笑って俺の手に柔らかい手のひらを重ねた。
そして魔力を失う強い脱力感とともに、ミスリルが魔力の球に包まれて浮かんでいく。球はだんだんと縮んでいき、盾の形になった。
「レクト。さっきまでとは比にならないほどの魔力を使うから覚悟して置いてくれ」
「いいよ。やってくれ」
シャルロッテの目を見てコクリと頷くと、シャルロッテはミスリルに目を向ける。すると全身が押しつぶされるような痛みが走り、目の前が紫色に煌めく。
痛みに痺れる体をなんとか踏ん張って、立ち止まりゆっくりと顔を上げる。
そこには水銀のように溶けたミスリルが盾型の魔力の中に浮かんでいた。
「ここから威力を弱めていくから、もう少し耐えてくれ」
俺は頷くこともできずにただただミスリルを見ていると、だんだんとミスリルが固まっていくのが見える。やがて、ミスリルは完全に盾の形に固まった。
そして、痛みや圧力に束縛されていたような状態から開放され、浮きそうなくらい体が軽くなってよろける。
「大丈夫かレクト!?」
シャルロッテに掴まれ歩みを止めた。そして、肩を支えられてなんとか立つ。
「あ、ああ。それよりも終わったか?」
「終わったよ。レクト。あれがミスリルで出来た盾……」
シャルロッテが指差す先には、盾の形をしたミスリルが地面に横たわっていた。盾と言っても本当に盾の形をしているだけでお粗末なものである。
だが、地面に無様に横たわっていてもその白銀色の輝きは失せることなく、初めからこの形の美術品であるかのように美しい。
目を奪われ立ち竦む。そして、はっと気づいて我に返る。
何分そこで立ち止まっていただろうか。先ほどとあたりの風景はなんら変わらない。立ち止まっていた時間は数秒だったのかもしれない。しかし、何時間でも、日が一周回って変わらない風景なのだと言われても納得出来た。
なるほど。これが時間を忘れる美しさというものか。
ふと、シャルロッテを見ると、俺と同じようにミスリルに目を奪われていた。そして目に涙をにじませて、口を開いた。
「やったな、レクト」
不覚にも少し俺も目に涙をにじませる。やり遂げた達成感と爽快感が体の奥底から湧き出してきた。そして、力が抜けて……。
「おいレクト!?」
沈みゆく意識の中でシャルロッテの声が聞こえた。
あの、ミスリルが手にはいる好機だ俺もその気持ちはわかる。ここはシャルロッテに頑張ってもらおう。
「やるんだ。なら、とりあえず練習しないといけないよ。まずはレクトの手の甲に手を添えて」
ツクモは手を前に出して、片手をもう一方の手の甲に重ねた。どうやら、そうやって行うらしい。
しかし、ツクモのジェスチャーの意味がわからないのかシャルロッテは俺の顔をチラチラと伺ってくるだけで何もしようとしない。
「何しているんだシャルロッテ。ほら」
俺はシャルロッテに向けて、手を差し出す。すると、シャルロッテはおやつをもらう前の子犬のように、そろそろと近づいてきた。
俺の隣までくると、胸の前で握っていた右手を自分の拳から離し、のそりと腕を伸ばしてきた……かと思えば引っ込める。そんな、動作を繰り返した後ちょこんと手のひらを俺の左手の甲に重ねた。
「やった!」
シャルロッテは、らしくない子供のように無垢な笑顔を浮かべ達成感に浸っていた。
何をそんなに喜ぶことがあるのだろうか。手を重ねるくらい……そういえば、元婚約者だというのに手を繋いだことがなかった。
そもそも、俺はシャルロッテに避けられていて手をつなぐどころではなかった。そう考えればシャルロッテの行動に納得がいく。
シャルロッテは俺のことが好きじゃないから、そんな男に手を重ねるのは貴族の子女として抵抗を示したのだ。
なるほど。拒否感を乗り越えて自分のために嫌なことを達成したのだ。それは達成感に喜びの言葉を漏らすのも最もだ。
実際に、手の甲にはしっとりとした手のひらの感触。あまりの葛藤に手のひらに汗をかいているのだろう。
「それで? どうすればいいんだ?」
シャルロッテの気持ちを尊重してツクモに尋ねる。
「レクトは何もしなくていいよ。女騎士がさっき説明した通りの魔力コントロールを身につけてよ……って女騎士?」
ツクモがシャルロッテにジト目を向けて怪訝そうな顔をしたので、シャルロッテの方を見ると、俺と重ねた手をただただ見つめていた。
「おい、シャルロッテ?」
「はっ!? な、なんだレクト?」
シャルロッテは何か考え事でもしていたのかわからないが、俺の言葉に現実に引き戻されたようである。
*
強い脱力感に襲われると、白い閃光が走り、目を閉じる。焦げ臭い悪臭に目を開けると、目の前には上部がドロドロに溶け去った岩があった。断面はこぽこぽと泡を立てていたが、次第に収まり黒くなっていく。
「グラビティダウン!」
またもや脱力感に襲われて、倒れそうにもなるも踏ん張って岩の上を見る。そこには、ふわふわと白銀色に輝く物体が浮かんでいた。物体は小指の爪程度の大きさで、目を奪われるほど美しい。少し経った後、俺はシャルロッテとともに歩み寄って、ミスリルを手にとった。
「これで、結構集まったな」
「そうだな」
あれから、大会の前前日の今日まで、ひたすらにミスリルを集め続けた。
最初はシャルロッテが集中できずに、上手くいかなかった。しかし、時間をかけるとシャルロッテも集中できるようになり、やがてはできるようになった。
だが、それは簡単な道のりではなかった。シャルロッテは大粒の汗を掻きながら、必死に何度も何度も繰り返した。時には目の下に隈を作って、俺たちが寝ている間も反省に反省を重ね、次の日にはより上達していた。そんな血のにじむような努力をして、ようやくできるようになったのだ。
それでも、ツクモに言わせると、それだけの努力で出来るなんてシャルロッテは魔力制御の天才だそうだ。
「なあ、本当に俺がもらってもいいのか?」
魔力の制御ができるようになってからはミスリルを早朝から深夜まで集めた。
しかし、そこまでして集めたというのに、ミスリルは一つの武具を作れるかどうか程度の量しか集まっていない。そこでシャルロッテは俺に全てを譲ると言っていたのであったが、流石に気がひける。
「ああ。何回もそう言ってるじゃないか」
「シャルロッテが作ったようなものだろ?」
「そんなことを言ったらレクトの力がなければできなかったじゃないか。私の存在は代用が効くけど、レクトの存在は必須だからな」
シャルロッテはそう言って笑った。
確かに俺の存在も必要なのは必要であった。俺は採集スキルのおかげか、ミスリルが存在する位置をぼんやりとだがわかる。そこに目印をつけてシャルロッテが融かす。
その繰り返しで集めてきたので、やはり、シャルロッテの存在もまた必要不可欠である。
なら、自分だけもらって、シャルロッテに何も還元しないなんて不義理なことはしたくない。
「今度はシャルロッテの分もミスリルを採るのを手伝うから」
「ははは。それじゃあ、ミスリルで出来る欲しいものでも空想しておくことにするよ」
シャルロッテは何も気にしていないのか、それとも期待すらしていないのか笑い飛ばした。
「そんなことより、集めたミスリルと手を差し出してくれ」
上機嫌そう告げたシャルロッテに思うところはあったが、素直にミスリルを取り出してから、手を差し出す。
シャルロッテはふふっ笑って俺の手に柔らかい手のひらを重ねた。
そして魔力を失う強い脱力感とともに、ミスリルが魔力の球に包まれて浮かんでいく。球はだんだんと縮んでいき、盾の形になった。
「レクト。さっきまでとは比にならないほどの魔力を使うから覚悟して置いてくれ」
「いいよ。やってくれ」
シャルロッテの目を見てコクリと頷くと、シャルロッテはミスリルに目を向ける。すると全身が押しつぶされるような痛みが走り、目の前が紫色に煌めく。
痛みに痺れる体をなんとか踏ん張って、立ち止まりゆっくりと顔を上げる。
そこには水銀のように溶けたミスリルが盾型の魔力の中に浮かんでいた。
「ここから威力を弱めていくから、もう少し耐えてくれ」
俺は頷くこともできずにただただミスリルを見ていると、だんだんとミスリルが固まっていくのが見える。やがて、ミスリルは完全に盾の形に固まった。
そして、痛みや圧力に束縛されていたような状態から開放され、浮きそうなくらい体が軽くなってよろける。
「大丈夫かレクト!?」
シャルロッテに掴まれ歩みを止めた。そして、肩を支えられてなんとか立つ。
「あ、ああ。それよりも終わったか?」
「終わったよ。レクト。あれがミスリルで出来た盾……」
シャルロッテが指差す先には、盾の形をしたミスリルが地面に横たわっていた。盾と言っても本当に盾の形をしているだけでお粗末なものである。
だが、地面に無様に横たわっていてもその白銀色の輝きは失せることなく、初めからこの形の美術品であるかのように美しい。
目を奪われ立ち竦む。そして、はっと気づいて我に返る。
何分そこで立ち止まっていただろうか。先ほどとあたりの風景はなんら変わらない。立ち止まっていた時間は数秒だったのかもしれない。しかし、何時間でも、日が一周回って変わらない風景なのだと言われても納得出来た。
なるほど。これが時間を忘れる美しさというものか。
ふと、シャルロッテを見ると、俺と同じようにミスリルに目を奪われていた。そして目に涙をにじませて、口を開いた。
「やったな、レクト」
不覚にも少し俺も目に涙をにじませる。やり遂げた達成感と爽快感が体の奥底から湧き出してきた。そして、力が抜けて……。
「おいレクト!?」
沈みゆく意識の中でシャルロッテの声が聞こえた。
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