王妃になるなんて言ってないんですけど

むう子

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13話

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ふう。一息ついてお茶を飲む。
私が本当の娘に...か。確かに私も皇后陛下のような人がお母さまになったら...なんて何度か考えたことはあった。お父様は女性から言い寄られても私がいるからと断っていたみたいだし私自身もお母様のことを覚えていないけれどなんとなくお母さま以外の女の人はお母さまと思える気はしないし、唯一甘えられるのは皇后陛下だった。
皇帝陛下からも家族になれたらなんて言われたけれど皇后陛下から直接こうやって言われると少し心が温まる自分もいる。

それにしても何故皇后陛下も今までお母様とお友達だった事を言ってくれなかったのかしら。
お父様にも今度聞いてみようかな。
そんな事を考えながらマリーのことも心配だし、社交界での令嬢たちがどう動くかも見ておきたいし、かといってまたセオが何かをしでかしたら...なんて色々と考えることが多すぎてとりあえずエナが用意してくれた湯舟に入り明日はダンに癒されよう。と決めリラックスした。 

そして次の日朝食を済ませ、エナにドレス商のルエスにもう1着、オリヴィアが似合いそうな色のドレスを購入したいということを伝えて欲しいと伝え、皇庭にあるダンのお気に入りの犬小屋へ向かった。 

「ダンっ」 

ワンッとダンは吠えこちらに向かってくる。
「ふふふ。今日は体調はどう?おじいちゃんなんだからこんな風に走ってこなくてもいいのよ?」
そう言いながらダンの頬をマッサージするように撫でるとダンは気持ちよさそうに目を細めた。 

「ふふふ。ダン、沢山ご飯食べて長生きしてね?」 

クゥゥンと言いながら私の膝に頭を乗せてきたので
可愛すぎて頭を撫でながらダンに話しかけていると
背後から「ダンッ」とセオの声が聞こえ振り返ってセオの方をみた。 

セオの声にダンはぷいっとそっぽを向く。 

「はぁ。ダン。ほんとお前可愛げ無いな」 

「セオドアがそんなこと言うからダンも素っけないのよ。それより私たちが話してるとまずいんじゃ...」 

「なんで王妃候補の兄が候補と話してまずいんだよ。初日も俺が来たこと怒られたそうだけど王妃達は俺の義妹になること分かってないんじゃないか?(笑)ま、気にする必要ない。」 

そう言うとダンも甘やかして貰える相手を分かってるのか。とダンの頭を撫でた。ダンは相変わらず素っ気なくしていてわたしは思わずクスッとした。


「失礼ね。甘やかしてもらえる相手じゃなくて可愛がってもらえる相手よ」



急にダンが背筋を伸ばし耳をピクっとさせたためパッと振り返るとフレシア公爵令嬢が歩いてきてそっとセオドアにお辞儀した。


「ごきげんよう。この番犬はお年ですのね。少し私に気づくのも遅かったみたいね。私も撫でてもよろしくて?」 


「……」

「ええ。もちろんです。既にダンは番犬を卒業してますわ。新しい子達はエレンが大きくなって庭園に気にかけることが無くなったから匂いをかぎつけたらここに来るかもしれないけれど基本的に他の場所でパトロールしてるみたいですわ。それにダンも含めて番犬達は王妃候補たちの匂いに吠えないように躾られてるの。だから吠えることはありませんわ。」 
呆れるように冷たい目をするセオドアの代わりに私が返事し、フレシア公爵令嬢は慣れようにセオを無視しダンの元へしゃがみ込んだ。



「あら、そうだったの。何も知らずにごめんなさいね」そういってダンを撫でるフレシア公爵令嬢。
令嬢は私に敵意を持ってるはずなのに何故こんなところに来たんだろう。そんな事を思っていると令嬢はダンを撫で終えて立ち上がった。 

「トレシア公爵令嬢、そして第1王子、話しておきたいことがございます。」 

「何をそんなに改まって…。」 

「……。私があなたに敵意を持っていたのは確かですが、それは真っ当に王妃として頑張りたいという敵意であり、私は悪質な行為は好きではありません。」 

「???」
一体何が言いたいのか……。 

「私は子供の頃から皇后のようなお方になれたらと目指しておりました。ですが私には王妃に向いていないとこの一週間で考え直し、辞退しようと思っております。」 

「……フレシア公爵令嬢……。」 

「それで……正直王妃候補にすら簡単になってしまえるトレシア公爵令嬢の事は好きにはなれませんでしたがが辞退する前に忠告をと…。」
私だって王妃候補になる気は無かったけれど私のことを好きになれないって直球に言われて逆に清々しいわ……。 

「忠告?どういうことでしょう?」


「………。私が直接お聞きした訳ではなく侍女が聞いた話なので定かではありませんが、王妃候補の中にトレシア公爵令嬢の命を狙ってる方がおります。」 

「なんだと……?それならシアに言わず陛下や皇后に言うべきではないのか。」 

「私もそう思ったのですが…。何せ私が直接聞いた訳ではなく侍女が聞いた話ですわ。何より確実では無いことを大袈裟に言えば家紋の恥にもなりえませんし、真っ当に頑張っている王妃候補者達といるのは確かですから。。私はトレシア公爵令嬢に敵意を持っていると有名でしょう。私の侍女も喜んで私に知らせに来たので用心してください」 

「……何故そんなことを私に…」


「それは…。あなたが真っ直ぐな心の持ち主だと分かったから。かしらね。私は曲がったことが嫌いで、あなたの事も正直子供の頃から他の令嬢達とは話さずに見下して皇后や王子たちに媚びてるだけだと思ってましたから……。正直私にはまだ力量不足と思いましたがとんだ誤解だったようですわね。女性のいざこざは良くあることですが王妃を目指すために誰かを犠牲にするなんて私は自分を許せなくなるだろうと辞退することを選んだのです。辞退するとはいえもし何かあれば助けになりますわ。」 

「フレシア公爵令嬢…」 

「辞退か…賢明な判断だな。」 

「第1王子。この国の存続のために王妃を決めなければいけないのも確かですから。」 

「……」
セオドアにとってこの言葉は荷が重いだろうな……とセオドアの方を見るとやっぱり機嫌を損ねてそっぽ向いていた。
「あ……第1王子を責めている訳ではなく……。王子の悲劇を私も知らない訳ではありませんから……」 

「悲劇???」
私は思わずフレシア公爵令嬢とセオドアの方を交互に見つめる。 
セオドアはいつもの冷酷な目つきだけれど少し怒ったようにフレシア公爵令嬢を見つめフレシア公爵令嬢はバツが悪そうに
「……あ、話しすぎましたわ。私がトレシア公爵令嬢が一緒にいる所を誰かに見つかる訳にもいきませんから……。では失礼致します」 

フレシア公爵令嬢はこの空気をそのままにそそくさと歩いて行ってしまった。 

「…………」
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