王妃になるなんて言ってないんですけど

むう子

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16話

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今日は社交界。
会場へ入るもの達そして私たち王妃候補の名前が呼ばれていく。 

(まあ、王妃候補たちのドレス美しいわね)
(マドリー公爵令嬢のドレス素敵ですわ)
(あれが有名ドレス商のルエスが自ら作らせてほしいと作ったドレスですって。噂を聞いた時は侍女とお揃いなんてお友達じゃあないのにと思ったけどああして見ると素敵ね。私も1番親しい子にプレゼントしてみようかしら) 

(さすがドレス商のルエスね。トレシア嬢がきちんと引き立ってより一層の素敵に見えるわ。) 

そんな噂が飛び交った。 

マリーはどこだろうとキョロキョロしているとスチュアート公爵夫人とシュテリア公爵夫人が話している。
あれ、フレシア嬢は辞退したはずなのに……。
そんなにシュテリア夫人とスチュアート夫人って仲良かったっけ…。
アリスとフレシア令嬢はそんなに仲良くなかったはずだけど夫人たちは仲がいいんだ。
そんなことを考えながら席へ戻ろうとしたら耳元から(マリー令嬢は上の階の休憩室に)と聞こえた。 

パッと後ろを向くものの誰もおらずシークレットナイトの凄さにびっくりしながらも私は休憩室に向かった。 

「マリー!!」 

「シアっ久しぶりね!!急に王妃候補になるからびっくりしたのよっまさか第2王子の王妃になるなんて」 

「本当色々あったの!急だったしマリーに話すタイミングがなくて……王妃になるつもりもないんだけどね」 

「そうだったの?だから何の説明も無かったのね。」 

「それより!!結婚式が延期ってどういうこと!?婚約者様のこと大好きだったマリーが延期にしたって聞いていてもたってもいられなくて」 

「ああ……。話せば長いんだけどね……もう思い出してもほんっとにムカつくの!!!!」 

「え!?どういうこと?」 

「結婚式を延期しようって初めに言ったのはグレイなの。その理由がわたしの親友が結婚式に来られるように待とう。だったの」 

「え?それは私から見たらいい人に聞こえるけど…」


「うん。私も初めてそれを聞いた時はわたしの気持ちを察してくれたんだと思ってたの。だけどよくよく聞いてれば王妃になった親友が結婚式に来てくれるなんて絶対いい式になるだろって。自分の株だけのために結婚式を遅らせようって言ってきたの。それで私はシアがお忍びで来てくれる事になったって伝えたら拒みに拒んできて!!結婚式の準備だって既にしてきてたのに【王妃】に囚われるグレイに私が完全に冷めちゃったの…だからまだ少し揉めてるけど私はこの婚約は無かったことにしようと思ってる。」 

「マリー…ごめんね。私のせいでそんな事になってたなんて思いもしなかった…」
私はマリーをギュッと抱きしめた。 

「ううん。シアは何も悪くないわ。逆に私はシアのおかげでグレイの本性を知れてスッキリした」


「マリー…」 

「だってそんな男と結婚したら私も見栄に囚われた人間だと思われるでしょう?そんなの私耐えられない!!だからこれで良かったのよ。それより、シアの方はどうなの?」 

「私?私も…色んな意味で大変かも…。エレンの婚約者なんて私が決めたらエレンの人生を左右させるのに責任感重大だし…詳しいことは言えないけどそんな中王妃候補者の中に何か企んでる令嬢が居るみたいだし…。」 

「え、第2王子の婚約者を決める?シアが王妃になるんじゃないの??」 

「私ははじめにエレンから側近になって欲しいって言われて色々あって王妃候補っていう形になったの」 

「え??てっきり第2王子がとうとう行動に移したのかと思ってた。もう。本当あの2人臆病ね」 

「あの2人??」 

「ああ。シアも鈍感だから仕方ないか…。ここまで来たら言っちゃうけど、2人とも、普段とシアを見つめる顔はぜんっぜん違うわよ?」 

「それは、あの2人が女性恐怖症だから仕方ないのよ」 

「女性恐怖症だから?昔からシアにだけあの二人が愛でるような目をしてると?ここまで来ると王子達がちょっと可哀想になってくるわ。」 

エレンとセオが私の事を…?
そんなこと一度も考えたこと無かった。
固まっている私にマリーは話続ける。
「まぁシアは恋愛に無頓着だから仕方ないけど…。だからこそ王子達が心を開いたのもあるだろうしね。王妃候補になったからてっきり第2王子に決めたのかと思ってたのよ。だからグレイも必死だったわけだし」 

「ええぇ…。私はエレンに王妃を決めてくれって頼まれただけだったから何も…」 

「ふふ。まぁ私も第2王子が腹を括ったのかと思ってたけど勘違いだったみたいね。でもこれからどうなるか分からないわよ。シアもやっと意識したみたいだし。」 

「意識って…。私は…」 

マリーはグッと伸びをしながら話し続けた。
「シアと2人で話せる機会を作ってくれてありがとうね。話せてスッキリしたー!!まだ両家の問題もあるから直ぐに婚約破棄は出来ないんだけど、お父様も私の味方をしてくれてるし本当に私はもうグレイに何の未練も何も無いし本性を知って逆にスッキリしてるから安心してね。第2王子の婚約者が決まったらまたゆっくり話しましょう。まだまだ話し足りないけど…そろそろ戻らないとねっ。」 

「うんっ。私もマリーと話せて良かった。まだまだ話し足りないけど…落ち着いたら沢山お茶しましょう。」

それからは少したわい無い話をして廊下へ出て歩いて会場へ戻った。 

エナとオリヴィアの元へ戻り王族席にいるエレンの方を見るといつもより元気がなくまだ本調子じゃなさそうだった。 

あれ?そういえばセオが居ない…。
何でだろ。こういう場ではいつもセオは嫌々ながらも必ず出席してたのに。
体調でも崩したのかななんて思っていると
マリーの事で何かあったのかと心配そうにエナとオリヴィアは私の方を覗き込みエナが口を開いた。
(トレシア嬢、親友の令嬢は大丈夫でしたか?) 

「あ、ええ。マリーの方から婚約破棄する事にしたらしくて、マリーは元気そうで安心したわ」 

(話せて良かったですね)
(そうでしたか。やっぱりあの噂は嘘だったんですね)
オリヴィアは納得したように話す 

「え、噂って??」 

(今日令嬢と話すと決まっていたので心配させてはいけないと口に出さないできたんですが令嬢とグレイ公爵の婚約破棄は少し前から噂になってたんです。原因は公爵が多忙の時期なために式を遅らそうと言ってるのに令嬢がわがままを言ってそのまま進めようとしたとかで呆れた公爵が婚約を取りやめることにしたとか。) 

「…それは偉く公爵の都合のいい噂が流れたものね。」 

私はムカつきながらも王妃候補者として王族席の隣で座っているために身動きが取れず会場を見渡しグレイ公爵を探した。 

いた。あんな所でマリーを困らせたくせにのうのうとワインを飲んで…。 

(トレシア嬢!!顔が強ばってますから落ち着いてください) 

「あ…ごめんなさい。」 
はぁ。懲らしめてやりたいのわ。
そんなことを思いながら見つめているとセオがグレイ公爵の傍にいた。
なんであんな所に?いつも王族席で黙りしてるだけなのに。
いつもムスッと座っていたセオが歩いているために周りの人達はサッと場所を開けていく。
そしてセオはグレイ公爵に後ろから声を掛けた 

「やあ。グレイ公爵。婚約破棄になったようで残念だったね。僕も顔を出すつもりだったんだが。」 

「だ…第1王子!!」 

王子をみたグレイ公爵はパッと頭を下げ
「いやっそんな…第1王子からも気にかけて下さっていたなんて…!!今回はダメになってしまいましたがまた機会があれば是非に…」 

「ああ、今回は君の我儘のせいで残念な結果になったようだが僕たちはまだまだ若いしこれからだ。僕は出席出来るかは分からないがいい報告を待っていよう。」
そう告げてどうでも良さそうにセオは私と目を合わせることもなく部屋を出ていった。 

(まぁっ公爵の我儘?どういうことかしら噂とは全然違うみたいだけど)
(でも令嬢はトレシア嬢な親友でしたし、王子の言う事の方が本当なんじゃなくて?)
(でももし王子が公爵の我儘でって……それなら噂とは違うのかしら。マリー令嬢が可哀想ね) 

王子の一言に人々はまた噂し始める。 

マリーの噂をセオも知ってくれていたんだ。
私は小さくなったグレイ公爵に少しスカッとしてマリーの方をチラッとみた。 

マリーも同じようにスカッとしたようで、私と顔を合わせニコッと喜び周りに集まってきた令嬢達と楽しそうに話しているようだった。 

ふふふ。良かったわ。
でもセオがあんな事をしてくれるなんて思いもしなかったな。
もしセオがああやって噂の誤解を解いてくれなければきっとマリーは家柄も疑われ次に進む機会も減ったはずだし何よりあのグレイ公爵の気まずそうな顔!! 

でもなぜだろ。いつもなら…王族席にムスッと座ってるセオが会場を歩いてそのまま部屋を出ていくなんて…。
それに顔もなんだか、疲れていたような…。
何かあったのか少し気になりながらもあっという間にエレンとのダンスの時間になった。 

ダンスを踊るのはマドリー令嬢、イザベラ王女、私の3人となった。 

エレンがマドリー令嬢の手を取り踊り始めた。
さすがマドリー令嬢といわんばかりにその姿は美しく会場がざわめく。エレンの表情は微笑んではいるけどなんとなく他の令嬢に少し冷たく見える。他の人達には全く分からない程度だろうけど何かあったのかな… 

その後はイザベラ王女とのダンスタイム
イザベラ王女は可憐で品があって優しそうな雰囲気だから見ていて癒される。

そしてわたしの時間になりエレンが私に向かって手を差し出す
ニコッと微笑み手を差し出す私の手を掴み引っ張られた。
「シア、倒れたって聞いた時はすぐにでも会いに行きたかった。体調はどう?」
悲しそうにエレンは私に問いかけた。
体調を崩したせいで仕事も押し寄せてたんだろうな…。
「心配してくれてありがと。もう大丈夫よ。エレンこそ体調崩してたんだから仕方ないわ。」 

「王妃候補のシアと踊れるなんて夢みたいだよ。」 

「何言ってるの?わたしを誰だと思って?」 

「だけどシアならある程度の成績で他の誰かに譲る可能性もあったからさ。僕はシアと踊りたかったから」 

「なっ…」 

初めは王妃候補を見つけるためという気持ちがありながらも陥れられそうになったりで頑張らないとと必死になってしまっていた。わたしの悪い癖だ。 

「いっそシアが王妃になってくれたらな」 

エレンはわたしの方をウルウルとした目で見つめる。 

「もう!何言ってるの?」 

「はは。ダメかな?シアは王妃の素質もあるし僕自身も心を開いてる唯一の女性なんだけど。」 

ハッとさっきマリーと話してた事を思い出し顔が熱くなってしまう。 

「エレンったら。もう何言ってるのよ」 

「本気だよ?僕は兄上みたいにシアを困らせたりしないし」
少しツンとしながらエレンは目を横に流して離す。 

「…エレン、セオと何かあったの?今日はセオも王族席にすら座ってなくてビックリしたんだけど」 

「…何も無いよ。はぁ曲が終わっちゃったね。シア、王妃になることも考えておいてね。」
そう言うとお辞儀してそっと席に戻った。
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