王妃になるなんて言ってないんですけど

むう子

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17話

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社交界を終えてすぐドレスの件でエナ達を通してルエスから感謝され、侍女とのお揃いのドレスは流行りに流行り、社交界直後から注文が殺到し今まで以上に嬉しい悲鳴をあげているらしい。 

昨日はマリーの噂も無事に誤解が解けたみたいで逆にグレイ公爵の下心が外に漏れ紳士の仮面は完全に剥がれたらしく当分の間は寄り付く令嬢もいなさそうでさすがセオ!!とスッキリしたけど…セオはエレンとどうしてケンカしたのかしら…。
あの感じだといつものすぐ仲直りするようなケンカじゃなさそうだな…。
セオは拗ねたら長いしエレンもさすがに折れそうにないし。
はぁ。私が今王妃候補じゃなかったら直ぐにでも仲直りさせちゃうのに!!
そこまで考えてハッとエレンから王妃になってほしいって言われたんだと思い返す。
マリーの言う通りだった。
子供の頃からずっと一緒に過ごしてきたエレンが急に1人の男性に見えて少しドキッときてしまう自分がいたなんて思いもしなかった…。 

コンコンッ  

「「おはようございます♪」」 

「おはよう。エナ、オリヴィア。どうして今日はそんなに楽しそうなの?」  
私は少しボーッとしながら二人に問いかける。 

「ふふふ。昨日はトレシア嬢と第2王子とのダンスに見とれてしまいましたのよ。ダンス中に第2王子と何を話されてたんですか?第2王子も真剣な眼差しでトレシア嬢を見つめていらっしゃったから侍女の中でも話題の的ですのよ」 
嬉しそうに話すオリヴィア嬢にエナはニコッと微笑みうんうんと頷く。 

「…昨日エレンに王妃になってほしいって言われたの」 

「キャー!告白じゃありませんか!!やっぱり第2王子はトレシア嬢の事がお好きだったのですね!!」  

「トレシア嬢は第2王子の王妃になりたくないのですか?」 

オリヴィアが興奮しながら喜ぶと共にエナは少し心配そうに私に聞いてくる。

「うーん…なんというか…エレンから王妃になって欲しいって言われた時にセオみたいに困らせたりしないって言われたの。だからなんだか…勢いで言ってる気がして…セオともケンカしてるみたいだし」


「まぁ…けれど第2王子が第1王子に敵対心を持つのは凄くよく分かりますわ」 

「え?」 

「だって第2王子の王妃候補者を心配して初日に部屋に乗り込む相手に敵対心は湧くものではありませんか?それにこういうことをするのはトレシア嬢にだけ。ですよ。第2王子が今までだまって大人しくしていたのがビックリするくらいですわ」 

オリヴィア嬢は急遽王妃候補になったことを知ってるとはいえ私が側近として入ったことを知らずハッキリ言い切りエナが私にフォローしてくれる。 

「トレシア嬢、今すぐ決めろと言われてるわけではありませんから…まだすぐに王妃が決まる訳でもありませんしゆっくり考えればいいんですよ。」 
オリヴィアはうんうんと頷く。 

「そうよね。まだまだこれからだものね」


「そうです!まだまだこれからですわっ!!そうだ。今日から王妃教育のために次の段階に入ります。それでこの間言っていた領地視察のためにその地の把握をしないとと思って資料を持ってきたんです。」
 そう言ってエナは5箇所の町の資料を私の机の上に置いた。


【アストレア】
私はそっと上にあるアストレアの資料を手に取った。
アストレア……。
やっぱり赤字が酷く続いてるのね。
税金の使い込みが原因でここの人たちもやる気が低下してるのかしら。
ここは元々綺麗な湖があることで食べ物も美味しく町の人達も優しくて有名な観光地だったらしいけれど、治安が悪いと言われていれば間違いなく足を運ぶ人達は減少する。
新しい領主は誰なのかしら。

新しい領主はデレク・ラリヌエス。  
 税金の使い込みが発覚し暴動が起き、その後領主として町人たちを少し改善させているものの
やっぱり発覚させたのはラリヌエス氏じゃないみたいだから町人達の中では派閥も出来てる状態だし領主が変わったところでアストレアが赤字になったことへの不信感を未だに持ってる人達が多いみたいね…。


この国は国税をほかの国と比べてもわかるくらい大事に扱っている。だからこそ町の人達に理解してもらえるように動けばきっとラリヌエス氏の信頼を得るにはそう時間はかからないはずなのに。

アストレア


ほかの都市の資料もパラパラと見たけれど…
うん。やっぱりアストレアが気になるわ。


「あと…今日から何日間か、普段皇后様がこなしている書類を数枚ずつ、王妃候補者に配られます。もちろんコピーですが王妃候補者様の判断でサインをこなしてくださいとの事ですので本日分の書類はこちらに置かせていただきますね」
 
「2人ともありがとう。」

書類を眺め今すぐ決断が必要なものとそう出ないものに分けながら皇后はもっとすごい量の書類を見分けてるのかとゾッとする。
あっ……この書類……。
 ラリヌエス氏のだ。

そこには困窮者に少しでもデルを給付したいがアストレアには余裕が無いため支援して欲しいという内容のものが書かれていた。
確かに税金の使い込み発覚後前の領主に対し暴動が起きたためきっと今も職が無い状態になった者や観光客が居なくなったことによって貯蓄でなんとか繋いでいる人たちもいるはず。

元は素晴らしい観光地で人の良さも溢れていたからラリヌエス氏も必死なんだろう……。


昔お父様と暴動後の町へ行ったことがあるけれど…
その時も殺風景で悲惨だった。
怪我をした人もいればすみっこで座り込んでお酒を飲んでる人たち。未来を感じさせない状態で、正直子供の私には怖い場所でしかなくて……。 
そんな私にお父様が気づいてくれて本来の町の絵を見せてもらった時は衝撃的だったことを今でもよく覚えている。


正直デルを困窮者へ給付したところで困窮者と認識されなかった町の人達は納得できないだろうな。  

もし……アストレアが私が昔見た町のような状態になっているのなら暴動被害の修繕に物資の寄付をするために明るくて活発な人員を送って活気を取り戻す光を作ることが優先だわ。
デルを配るのはまず活気を取り戻してからじゃあないと修繕や職探しするまでに使い切って意味の無いものになる。

それにしてもアストレアなら領主の使い込みがあったとはいえこの給付くらいならアストレア内でできるはずなのにそれすらも出来ないって前領主はどれほどの使い込みをしたのかしら…。

私は急いでこの内容の執筆をし始め、続いて急ぎの書類をこなし、エナとオリヴィアに皇后に届けるよう頼みこの後は急ぎでない書類を見通しハッと息をついた。

「ふぅ……もうこんな時間なの?やっぱり皇后陛下は凄いわ。こんな書類が毎日のように数倍届くなんて。」

「ふふ。慣れもあるかと思いますわ。トレシア嬢なら直ぐに慣れるかと。今お茶を入れますわね」


「ありがとう。でもこれは慣れでは済まない量よ。皇后陛下が疲労で倒れないか心配になるくらいだもの。皆皇后陛下に頼りすぎよ」

そんなことを言いながらも1週間ほど嘆きながらも書類整理をコツコツと進めた。

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