私の光

イチゴ牛乳

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気絶してしまった茜を見ながら如月君の事を考えていた。
茜のお陰で勇気が出た。
如月君に私のことを全部話そう。
離れて行ったらその時だ。
決心した私はシャワーを浴びようとしてベットから立ち上がる、が目眩が起き身体が前に倒れていく。
「っと、何やってんの」
直前に茜が目を覚まし身体を支えてくれた。
「っは、ごめん…」
茜に寄りかかったまま額に腕を置きため息を吐いた。
「……遥?」
「んー?」
「飯、きちんと食ってる?」
耳元で聞こえてきた低い声に背筋が凍った気がした。
「あ、ははは」
笑って誤魔化そうとしたがギロリと睨まれ呆気なく終了。
「ごめんなさい。面倒くさくて夏休みに入ってあんまり食べてないです」
「…馬鹿だろ」
「おっしゃる通りです」
そう言うと呆れたようにため息を吐かれた。
でも、瞳は仕方がないなというような優しい感じ。
茜は、茜達は私が夏バテしやすいことを知っているからこの季節はいつもより心配性になる。
「あっちに行ったらマスターに頼んで何か作ってもらうぞ?…マスターが作ったのなら食えるだろ?」
「うん」
そう返事すると茜は軽々と抱き上げて先程の部屋に入った。
…なんというか、こういう時に茜は男なんだと再確認する。
葵と茜の双子ちゃんは見た目は線が細くて可愛いらしいのに、ふとした時に男らしくなる(これをギャップ萌えという)。
私、結構重いんだけどなぁ…。
……というか、お風呂……。
私と茜は(私は茜に抱き上げられている状態のまま)部屋に入るとなんとも重苦しい空気が漂っていた。
それは葬式と勘違いされそうな重さで……。
思わず、
「え、ナニコレ。葬式の練習でもしてんの?」
と言ってしまった。
考えてみてよ?
部屋に戻ったら葬式の空気ってどうなんだって思わない?
「あ、ははは。ちょっと、ね?」
気まずそうに笑う葵に眉間に皺が寄るのが分かった。
他の3人なんて目も合わせようとしない。
だが、茜は何も見てない風にソファーに座った。
抱き上げられている状態だから私はその上に座るということで…。
重いだろうに…まぁ、茜が大丈夫なら私は何も言わないけど。
すると、茜は部屋に備えているホールに連絡するようの電話を手に取った。
何をするか知っている私はただ黙って茜に寄り掛かった。
それに何かを言う訳でもなく、私の頭を優しく撫でてくれた。
「マスター、遥用にサッパリしたもん作ってくれ。俺達の分もよろしく頼むな?」
それだけ言うと茜は連絡を切った。
部屋は再び沈黙が訪れた。
…マスターが料理を持って来るまでにはまだ時間がある。
「…如月君、私の性質を教えようか」
「…性質?」
私の言葉に如月君と茜以外が驚く。
3人が何を言いたいのかが手に取るように分かるがそれを敢えて無視した。
「そう、性質。…私はね、如月君、"1人だけを愛することが出来ない"んだよ。良く言えば博愛主義者、悪く言えば浮気者。世間一般的にすれば私は異常者で節操なし。人と何が違うんだろうね。人によって考え方なんて違うのに。それに昔は一夫多妻制が在ったんだから1人だけを愛することが出来なくてもいいんじゃない?相手に内緒で浮気するような奴よりまだいいと思わない??…如月君はどう思う?」
意地悪く笑うとそれを見ていた茜は黙って手を握り締めてくれた。
…さて、如月君はどんな"答え"を出すのだろうか。
「……先輩は何を言わせたいんですか?…軽蔑しました、最低です、とでも言わせたいんですか?それとも、僕に嫌われたいんですか?……もしそうなら残念でしたね。それくらいで嫌いになる程、先輩への想いは軽くありませんよ?」
そう言った如月君は真っ直ぐに私を見て来る。
「…言っとくけど、私、裏の人間だからね」
「上等です」
何を言っても屁古垂れることがない如月君に私は項垂れた。
「茜ちゃんどうしよう、この子馬鹿なのかな。馬鹿だよね?」
軽くパニクる私。
今までだったら皆、この話をしたら離れて行くのに。
離れて行かなかったのはveriteにいる人達だけだった。
それなのに、それなのに…、
「天宮先輩」
そんな私の耳に届いた声はとても落ち着いていた。
「僕は離れて行くつもりはありませんし裏切るつもりもありません。…それでも、側にいることを許して頂けませんか?」
「……私だけの一存では決められない。此処はこの子達の居場所でもあるから。…でも、私は、一緒にいたい」
自分の考えを伝えると如月君はフワリと笑った。
視界の端には仕方がないと笑う3人の姿がある。
恐る恐る振り返ると茜も仕方がなさそうに笑っていた。
いいの、茜。
あんなに"部外者"を嫌がっていたでしょう。
泣きそうになった時、タイミング良くノックが鳴る。
「料理、持って来た…って、お姫ちゃん?なんで泣きそうに…」
料理を持って現れたマスターに私は茜から飛び降りて勢い良く抱き着いた。
「ッ、う、わっと。どうしたの?」
「マスターは、圭志は如月君が此処に居ていい?」
圭志は不思議そうにした後、状況を理解したのか優しく笑った。
「俺は、はるちゃんが幸せならそれでいいよ?」
「あー!マスターズルい!!僕だって言いたかったのに!!」
「あはは。ごめんね?"まだ"言ってなかったとは思わなかったから」
圭志の意地の悪い笑みに葵は視線を逸らした。
「ひ、ひなちゃんは?!」
圭志の背後にいたひなちゃんに詰め寄ると圭志と同じ答えが返って来た。
あーもー!!
なんで此処の人達は皆優しいかなぁ!
思わず頬が緩みそうになるのをなんとか止める。
そして如月君に向き直る。

「改めて如月君、…いや、"奏"、よろしくね」
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