私の光

イチゴ牛乳

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暁を先頭に暫く歩いて行くと古い、アパートの前で止まった。
此処か……。
「なら少し待っててくー……」
ガッシャーン!!!
暁が喋っている途中に何かが割れる音がした。
その音に顔を青ざめさせた暁が慌ててアパートのとある部屋に入って行ってしまった。
「何してる!!?」
すぐに暁の怒鳴り声が聞こえてきた。
「ふざけんなクソジジイ!!春に手ェ出してんじゃねーよ!!」
暁のその言葉に暴力を振るわれていることが分かる。
……にしても、こんなに辺りに"音"が響いているのに誰も来ない。
それが、日常茶飯事だということが暗に示されていた。
だからと言って、誰も助けないなんて…。
やっぱり大人はゲスだ。
なぜ助けないの?
あんなに苦しそうな声なのに。
助けてと叫んでいるじゃない。
「……行こうか」
静かに呟いた私に圭志達は動き出した。
私よりも先にアパートに入って行きゲスに怒鳴る。
その間も誰かが来る気配はない。
こんなに大きな"音"が出ているのに。
ゆっくり、ゆっくりと足をアパートに向かわせる。
あー…、奏を家に帰してて良かった。
こんなところを見せたくない。
いや、奏だけじゃない。
本当なら圭志達にすらこの汚い世界を見せたくなかった。
でも、もう遅い。
きっと奏も裏の世界に来るんだろう。
だから、それまでは……。
「…ぐっ、クソ餓鬼ども!!こんなことして許されると思うなよ!?」
「自分のことを棚に上げて何言っているの?オジサン」
中に入ると、圭志達に暴言をはいているゲスが目に入った。
思ったことを口に出すと怒ったように(いや、実際怒っているけど)私を睨んで来た。
それに私はクスクスと笑う。
「これ、虐待でしょ?まさか、"許されると思っているの"?」
暴れるゲスから視線を逸らし、暁を視界に入れる。
暁が大事そうに男の子を抱えていた。
「暁、その子が弟君?」
「ああ」
「ふーん。弟君、こんばんは。お名前は何ていうの?」
「…………は、る」
私がそう聞くと、怯えたまま応えてくれた。
こんなに可愛い子に暴力を振るうなんて頭大丈夫だろうか。
いや、虐待している時点で大丈夫じゃないか。
「はる君かぁ。どういう漢字なのか教えて欲しいなぁ」
「ぇ、………えーとね?春、夏、秋、冬の春!!」
「そっかぁ!春か!お姉ちゃんもねぇー、はるっていう読み方が入ってるんだぁ!」
「そうなんだぁ!お姉ちゃんのお名前はぁー?」
「遥、だよ。ね?はる、が入っているでしょ?」
「うん!お揃いだね!」
「うん、お揃い!…ね、春。この人誰?」
緊張が解れて来たところでゲスに目を向ける。
すると怯えて知らない、と言った。
「知らないの?この人"お父さん"じゃないの?」
「ううん!"こんな人"知らない!!!僕の家族はお兄ちゃんだけだよ!!」
先程の怯えた様子がない、無邪気に答えた春。
それにゲスは酷く動揺した様子で怒鳴って来た。
「春!!何を言っている!!お前は俺の息子だろうが!!」
それに春は聞く耳を立てない。
やるなぁ……。
これは将来が楽しみかも?
「ねぇ春?お姉ちゃんね、お兄ちゃんとお話ししたいの。あのお兄ちゃんとお外で待っててくれる?」
「えー!うーん、分かった!!お兄ちゃんを虐めないでね!!」
そう言うと春はひなちゃんと一緒に部屋を出て行った。
それに暁は驚いていた。
「どうしたの、暁」
「え、あーいや、あの春がこんな簡単に懐くとは思わなかったから。………ほら、この環境だったからあんま人に懐かないんだ」
驚いたように、でも嬉しそうにする暁を見て笑った。
この2人なら案外、大丈夫だろう。
「……さて、問題はこのゲスだねぇ。暁はどうして欲しい?」
「どうしてって……、別に俺達に関わらないならどうなろうがどうだっていい」
「だって。良かったねぇ?暁が優しくて。私だったら殺してって頼むもん」
ヒッと怯えた声を出すゲスに笑い掛ける。
「てことは暁と春とは血が繋がっているだけで赤の他人って訳ね?と言ってもアンタはもう、"普通"に生きていくことは出来ないだろうけど」
「な、何言って……」
「え?だって、虐待だけでなくクスリに手ェ出しているでしょ?」
ひゅっ、と暁が息を呑む。
それでも私はクスクスと笑う。
「今日からアンタはブタ箱の中で暮らすんだよ」
それを合図に、外で待機していた警察が中に突入して来た。
「仁科和人!!虐待及び薬物乱用で逮捕する!!」
「っ離せぇ!俺に触るなぁ!!」
暴れるゲスを押さえつけ、連行して行った。
「いつの間に……」
「用意周到に越したことはない。それに仕事柄、警察から依頼されることが在ったからねぇ。使えるモンは使わないと、ね?」
クスリと笑うと全員の顔が引き攣ってしまった。
酷くない?
なんで圭志達までそんな顔してんの。
「ま、まぁ何はともあれ結果オーライだし」
「そうそう!弟君が待ってるし早く外に行こっか?!」
「…そう言えばいつ連絡したんだ?」
「「「「茜!!!」」」」
「………んだよ」
「んの馬鹿!わざわざ僕等が触れないようにしてた(主にマスターと蓮が)のになんで触れちゃうかなぁ!!?」
「馬鹿だ馬鹿だと思っていたけどここまでだったとは……」
圭志と蓮の必死のフォロー(?)は茜ちゃんによって水の泡となり、葵と悠によって茜ちゃんは罵られていた。
………憐れ、茜ちゃん。
茜ちゃんはただ、疑問を口に出しただけなのにねー。
「はいはい。あんま茜ちゃんを責めないであげよーね?いつ連絡したのかはねー、此処に私が入る前。虐待だけだと思っていたんだけどさぁー、此処に入ったら微かにクスリの匂いがしたんだよ。だから外で待機していた警察に聞こえるように言って合図を出した。ただそれだけだよー?」
それを聞いた皆は視線を逸らした。
疑問を口に出した茜ちゃんさえも。
……うわ、泣きそう。
いくら何でもそれは酷くない?
不貞腐れているとひなちゃんが春を抱っこして戻って来た。
「………?なんですか、この空気。それになぜ遥さんが不貞腐れているんですか?」
トーンを落として話すひなちゃんに春が眠っていることを察した。
ひなちゃんの質問に皆はただ視線を逸らした。
暁はひなちゃんの側に寄って春を受け取っている。
暁が春を受け取ったことを確認したひなちゃんは私の側に寄って来て、私の顔を覗き込んで来た。
「遥さん?どうしたんですか?」
「ーっ、ひなちゃーん!!」
「っ!?遥さん!!?っていうか、静かに!弟君が起きますって!」
「……ひなちゃん、今日は家に泊まって。というか泊まれ。これ強制ね」
ひなちゃんに抱き着いていた私は離れながら、不貞腐れたままそう告げるとひなちゃんは困り顔。
「ごめんねひなちゃん。今日だけはこれは譲れない」
顔を背けながら言う私の様子がいつもと違うからかひなちゃんは不安顔になる。
だけど私は黙り込んだまま。
それに違和感を感じたっぽいひなちゃんは圭志達に視線を移した。
「………皆さん、遥さんに何をしたんですか?答えようによってはあなた方でも……潰すぞ?」
若干キレ気味なひなちゃんの目が怖い。
目が据わってるからね?
……この中で1番怒らせたら怖いのってやっぱりひなちゃんだよねぇ。
しかもキレるポイントが私というね。
嬉しいかと聞かれたらもちろん嬉しいけど…、もうちょっとひなちゃんは自分を大切にして欲しいなぁ。
「ひなちゃん、」
「はい?どうしました??」
「…………………ね、む……ぃ」
「ああ、明け方ですもんね。……あれそういえば遥さん、昨日の昼から…って、ふふっ、おやすみなさい、遥さん?」
そこで私の意識は途切れた。
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