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1話 始まり
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「ハナー!!どこにいるんだー!?」
私の名を叫ぶ幼馴染みの声。
それに応えるように声をあげる。
「スグリーー!ココだよー!」
ブンブンと勢い良く手を振るとそれに気が付いた幼馴染みは、こちらに駆け寄ってきた。
「もーう!勝手に居なくなるなよ!」
プリプリと怒る幼馴染み、スグリに笑って謝る。
「ごめんってばー。だっていいもの見つけたんだもーん」
そう言いながら風を起こす。
葉で隠れていたものを見せるとスグリは驚いた声を出す。
「これって…、草幻花(そうげんか)だろ!?よく見つけたなー!」
「えへへー。でしょー?もっと褒めてもいいんだよー?」
ニコニコと上機嫌に答える私にスグリは小さな手で頭を撫でてくれた。
えへへ、あったかーい。
………ココはアスティール王国。
剣と魔法が主流な世界。
そう、"世界"。
私は違う世界の人間だ。
と言ってもきちんとこの世界で生まれ育った。
ゆうに、私は転生者だ。
前世での記憶もきちんとあるし、知識も残っている。
どうやら私は、元の世界で死んでココに転生したようなのだ。
転生前は20歳だったがこの世界での私は10歳だ。
まだまだ子どもだ。
そして幼馴染みのスグリ。
同じ時期に生まれ一緒に生きてきた。
そして実は、私と同じ世界から転生した男だったりする。
前世での関係は双子の姉弟だ。
だが私たちは好き合っていた。
……つまりは禁断の恋、だな。
そこでも一緒に生まれ育ち、そして、一緒に死んだ。
というか、事故った。
だからこの世界は私たちにとって有り難かった。
そんなスグリは、私の半身のような存在だ。
「でもハナ?あんまり魔法を使っちゃダメだろ?ハナの魔力は強いから悪い大人に捕まっちゃうから」
めっ!と怒るスグリに笑って見せる。
「大丈夫だよー、こんな辺境な地に来るやつなんてそうそういないってー」
私の魔力は普通よりも強い。
いわゆるチートだ。
そしてスグリは剣の腕がたつ。
私たちが一緒なら余程のことがない限り負けるなんてない。
と言っても、私たちにこんな能力があることを知っている者はいない。
両親でさえも、だ。
私たちが住む国、というか村は平和なんだ。
村人たちは皆、仲良く、助け合って生きて来ている。
そんな村だからこそ、こうして私たちはいれるのだが。
「ねぇスグリー?」
「うーん?」
野いちごを食べながらこちらを振り返るスグリ。
「だーいすき。」
ふふ、と笑って見せると目をパチクリさせスグリも言った。
「うん、俺もだーいすき」
クスクスと笑い合う私たちを祝福するかのように、風で花びらたちが舞う。
だが、平和はいつまでも続かなかったのだ………。
「オジサン、誰?」
突然村に現れた男。
私はスグリの背に隠れていた。
村人たちは男が誰か調べている。
村の子どもたちは一ヶ所に集められていた。
こんなこと今までなかったのに。
不安に思っているとその気持ちが伝わったのかスグリは手を繋いでくれた。
スグリも不安なはずなのに。
「私は王都に住む者だ!!魔法使いを探す旅をしている!!」
叫ぶようにそう言った男は信頼を得ようと必死に話しをしている。
「敵じゃないのかもな」
「………違う。」
「ハナ?」
ボソリと呟いた私の声に気付いたスグリは私の様子を伺うように下から覗いてきた。
さっきこの人、ニヤリって怪しい笑い方してた!!
「お父さん!この人悪い人!!」
私は必死に叫ぶが大人たちは耳を傾けない。
なんで?
どうして?
ギュッと手に力を入れるとスグリも握り返してくれた。
「スグリ…、怖いよ」
ポロリと涙が溢れるのが分かる。
どうすることも出来ないまま、この男が今日一日だけ泊まることになった。
こちらに向かって怪しい笑いを向けた男は村人たちと一緒に消えて行った。
「ハナ?さっきは急にどうしたんだよ?」
首を傾げるスグリに私はただ抱き着くだけ。
……どうすればいいんだろう。
「ね、スグリ…今日は一緒に寝て?」
涙目で見上げる私に安心させるようにスグリは優しく微笑んだ。
「もちろん」
フワリと微笑むスグリに安心して私は眠りに落ちた。
次に目を覚ましたのは息苦しさのせいで。
「くるし、!?っ、スグリ!!早く起きて!!」
隣に眠るスグリの身体を揺すり起こし、現状を確認する。
外からは悲鳴が聞こえる。
「どういう………」
「ハナ!!スグリ!!今すぐに外に出るんだ!!」
お父さんが部屋に入って来て私たちを抱き上げ外に連れ出した。
外に出た私とスグリはその惨状に目を疑った。
村は火に覆われていた。
「な、にこれ……」
その恐ろしさに腰を抜かした。
「ハナの言う通り、あの男は悪いやつだったんだ!!あの男は村に火を点けやがったんだ!!」
お父さんの叫びに目の前が真っ暗になる。
「ハナ、大丈夫だ。大丈夫」
スグリは私の背を宥めるようにさすり続けた。
だが私の目には人々の逃げかう姿ばかりが映る。
そして、あの男の声が聞こえた。
「あーあ、せっかくそのお嬢ちゃんが忠告してたのにだーれも信じないんだもんなー。馬鹿な大人たちだ」
振り返るとゲラゲラと笑うあの男が居た。
お父さんは私たちを守るように立ち塞がった。
「貴様!!何が目的だ?!」
「目的?目的なら始めに言ったろう?まぁ?正確には魔力の高いやつを売り払うための"魔法使い"探しだがなー」
その言葉にスグリは手に力を入れた。
それに気づいた私はスグリの手を握る。
ダメだよ、今は。
「この村に魔力の高い者は居ない!!ココから立ち去れ!!」
「そうだ!よくも騙しやがったな!」
いつの間にか集まった村人たち。
ダメ!!
この男はこんな状況下でも笑っているんだ!!
何か策があるかもしれないのに!!
それに気づいた私が叫ぼうとするが一足遅かった。
「村長ーー!大変です!敵が、敵が攻めて来ました!!」
「なっ!貴様ぁー!!」
ギロっ!と男を睨んだお父さんは村人と一緒に走って行った。
その場に残された私とスグリと男。
「あーあ、怪しい男の元に子どもを置いて行くなんてなー」
ゲラゲラと笑い私たちに近付いて来る男の前にスグリが立ち塞がった。
「あー?お嬢ちゃんは賢いからどっかで売り払えるとして……お前は死ね」
ガッと蹴り飛ばされたスグリ。
………え?
ヨロヨロとスグリに近寄ると頭から血を流し倒れて居た。
「や、だ。ヤダ、スグリ!!起きて!起きてよぉ!!」
身体を揺するがスグリは目を覚まさない。
「さーてと、邪魔者は居なくなったしさっさとズラかるか」
………許さない。
許さない。
私はただスグリと居たいだけなのに、スグリを愛しているだけなのにどうして邪魔するの?
カッ!と身体が熱くなり男を睨む。「おー?怖い怖い。」
からかうように喋る男に余計苛立つ。
「お前が死ね」
手を男に翳すと雷が男を貫く。
「ギャーー!!」
断末魔のような声が辺りに響く。
男の姿が消え去ったのを見てスグリの頭に手を翳す。
お願い、死なないで。
私を置いて行かないで。
祈るように傷に魔力を注ぐと傷が癒えていく。
しばらくすると傷は完璧に消え、スグリは目を覚ました。
「ん、あれ!?男は!?」
飛び起きるスグリに勢い良く抱き着いた。
「怖かったよー!!」
ボロボロと泣く私にスグリはオロオロとする。
その姿に私は不謹慎にも笑った。
「さて、ココをどうするかだね」
手を繋いで立ち上がり周りを見回す。
未だに燃え盛る火。
行き交う悲鳴。
………やる事はただ一つだけ。
手を天に翳し水を願う。
するとそこに大きな水の塊が出る。
大雨が降るイメージを願うとその通りに水が散って行く。
たちまち火は消えていく。
あとは敵だな。
村全体に居る敵だけに当たるようにイメージし槍を創造する。
それを放つと断末魔があちこちから響きその声も消えて行った。
既にお分りかもしれないが、私の魔法は願い、イメージすることで使うことができる。
言っておくが、普通は魔法を詠唱しなくてはいけない。
まさしくチートの特権。
そんなこんなで、村全体に起こった事件は解決した。
ただ一つ、誰がこの惨状を収めたのかの疑問を残して。
私の名を叫ぶ幼馴染みの声。
それに応えるように声をあげる。
「スグリーー!ココだよー!」
ブンブンと勢い良く手を振るとそれに気が付いた幼馴染みは、こちらに駆け寄ってきた。
「もーう!勝手に居なくなるなよ!」
プリプリと怒る幼馴染み、スグリに笑って謝る。
「ごめんってばー。だっていいもの見つけたんだもーん」
そう言いながら風を起こす。
葉で隠れていたものを見せるとスグリは驚いた声を出す。
「これって…、草幻花(そうげんか)だろ!?よく見つけたなー!」
「えへへー。でしょー?もっと褒めてもいいんだよー?」
ニコニコと上機嫌に答える私にスグリは小さな手で頭を撫でてくれた。
えへへ、あったかーい。
………ココはアスティール王国。
剣と魔法が主流な世界。
そう、"世界"。
私は違う世界の人間だ。
と言ってもきちんとこの世界で生まれ育った。
ゆうに、私は転生者だ。
前世での記憶もきちんとあるし、知識も残っている。
どうやら私は、元の世界で死んでココに転生したようなのだ。
転生前は20歳だったがこの世界での私は10歳だ。
まだまだ子どもだ。
そして幼馴染みのスグリ。
同じ時期に生まれ一緒に生きてきた。
そして実は、私と同じ世界から転生した男だったりする。
前世での関係は双子の姉弟だ。
だが私たちは好き合っていた。
……つまりは禁断の恋、だな。
そこでも一緒に生まれ育ち、そして、一緒に死んだ。
というか、事故った。
だからこの世界は私たちにとって有り難かった。
そんなスグリは、私の半身のような存在だ。
「でもハナ?あんまり魔法を使っちゃダメだろ?ハナの魔力は強いから悪い大人に捕まっちゃうから」
めっ!と怒るスグリに笑って見せる。
「大丈夫だよー、こんな辺境な地に来るやつなんてそうそういないってー」
私の魔力は普通よりも強い。
いわゆるチートだ。
そしてスグリは剣の腕がたつ。
私たちが一緒なら余程のことがない限り負けるなんてない。
と言っても、私たちにこんな能力があることを知っている者はいない。
両親でさえも、だ。
私たちが住む国、というか村は平和なんだ。
村人たちは皆、仲良く、助け合って生きて来ている。
そんな村だからこそ、こうして私たちはいれるのだが。
「ねぇスグリー?」
「うーん?」
野いちごを食べながらこちらを振り返るスグリ。
「だーいすき。」
ふふ、と笑って見せると目をパチクリさせスグリも言った。
「うん、俺もだーいすき」
クスクスと笑い合う私たちを祝福するかのように、風で花びらたちが舞う。
だが、平和はいつまでも続かなかったのだ………。
「オジサン、誰?」
突然村に現れた男。
私はスグリの背に隠れていた。
村人たちは男が誰か調べている。
村の子どもたちは一ヶ所に集められていた。
こんなこと今までなかったのに。
不安に思っているとその気持ちが伝わったのかスグリは手を繋いでくれた。
スグリも不安なはずなのに。
「私は王都に住む者だ!!魔法使いを探す旅をしている!!」
叫ぶようにそう言った男は信頼を得ようと必死に話しをしている。
「敵じゃないのかもな」
「………違う。」
「ハナ?」
ボソリと呟いた私の声に気付いたスグリは私の様子を伺うように下から覗いてきた。
さっきこの人、ニヤリって怪しい笑い方してた!!
「お父さん!この人悪い人!!」
私は必死に叫ぶが大人たちは耳を傾けない。
なんで?
どうして?
ギュッと手に力を入れるとスグリも握り返してくれた。
「スグリ…、怖いよ」
ポロリと涙が溢れるのが分かる。
どうすることも出来ないまま、この男が今日一日だけ泊まることになった。
こちらに向かって怪しい笑いを向けた男は村人たちと一緒に消えて行った。
「ハナ?さっきは急にどうしたんだよ?」
首を傾げるスグリに私はただ抱き着くだけ。
……どうすればいいんだろう。
「ね、スグリ…今日は一緒に寝て?」
涙目で見上げる私に安心させるようにスグリは優しく微笑んだ。
「もちろん」
フワリと微笑むスグリに安心して私は眠りに落ちた。
次に目を覚ましたのは息苦しさのせいで。
「くるし、!?っ、スグリ!!早く起きて!!」
隣に眠るスグリの身体を揺すり起こし、現状を確認する。
外からは悲鳴が聞こえる。
「どういう………」
「ハナ!!スグリ!!今すぐに外に出るんだ!!」
お父さんが部屋に入って来て私たちを抱き上げ外に連れ出した。
外に出た私とスグリはその惨状に目を疑った。
村は火に覆われていた。
「な、にこれ……」
その恐ろしさに腰を抜かした。
「ハナの言う通り、あの男は悪いやつだったんだ!!あの男は村に火を点けやがったんだ!!」
お父さんの叫びに目の前が真っ暗になる。
「ハナ、大丈夫だ。大丈夫」
スグリは私の背を宥めるようにさすり続けた。
だが私の目には人々の逃げかう姿ばかりが映る。
そして、あの男の声が聞こえた。
「あーあ、せっかくそのお嬢ちゃんが忠告してたのにだーれも信じないんだもんなー。馬鹿な大人たちだ」
振り返るとゲラゲラと笑うあの男が居た。
お父さんは私たちを守るように立ち塞がった。
「貴様!!何が目的だ?!」
「目的?目的なら始めに言ったろう?まぁ?正確には魔力の高いやつを売り払うための"魔法使い"探しだがなー」
その言葉にスグリは手に力を入れた。
それに気づいた私はスグリの手を握る。
ダメだよ、今は。
「この村に魔力の高い者は居ない!!ココから立ち去れ!!」
「そうだ!よくも騙しやがったな!」
いつの間にか集まった村人たち。
ダメ!!
この男はこんな状況下でも笑っているんだ!!
何か策があるかもしれないのに!!
それに気づいた私が叫ぼうとするが一足遅かった。
「村長ーー!大変です!敵が、敵が攻めて来ました!!」
「なっ!貴様ぁー!!」
ギロっ!と男を睨んだお父さんは村人と一緒に走って行った。
その場に残された私とスグリと男。
「あーあ、怪しい男の元に子どもを置いて行くなんてなー」
ゲラゲラと笑い私たちに近付いて来る男の前にスグリが立ち塞がった。
「あー?お嬢ちゃんは賢いからどっかで売り払えるとして……お前は死ね」
ガッと蹴り飛ばされたスグリ。
………え?
ヨロヨロとスグリに近寄ると頭から血を流し倒れて居た。
「や、だ。ヤダ、スグリ!!起きて!起きてよぉ!!」
身体を揺するがスグリは目を覚まさない。
「さーてと、邪魔者は居なくなったしさっさとズラかるか」
………許さない。
許さない。
私はただスグリと居たいだけなのに、スグリを愛しているだけなのにどうして邪魔するの?
カッ!と身体が熱くなり男を睨む。「おー?怖い怖い。」
からかうように喋る男に余計苛立つ。
「お前が死ね」
手を男に翳すと雷が男を貫く。
「ギャーー!!」
断末魔のような声が辺りに響く。
男の姿が消え去ったのを見てスグリの頭に手を翳す。
お願い、死なないで。
私を置いて行かないで。
祈るように傷に魔力を注ぐと傷が癒えていく。
しばらくすると傷は完璧に消え、スグリは目を覚ました。
「ん、あれ!?男は!?」
飛び起きるスグリに勢い良く抱き着いた。
「怖かったよー!!」
ボロボロと泣く私にスグリはオロオロとする。
その姿に私は不謹慎にも笑った。
「さて、ココをどうするかだね」
手を繋いで立ち上がり周りを見回す。
未だに燃え盛る火。
行き交う悲鳴。
………やる事はただ一つだけ。
手を天に翳し水を願う。
するとそこに大きな水の塊が出る。
大雨が降るイメージを願うとその通りに水が散って行く。
たちまち火は消えていく。
あとは敵だな。
村全体に居る敵だけに当たるようにイメージし槍を創造する。
それを放つと断末魔があちこちから響きその声も消えて行った。
既にお分りかもしれないが、私の魔法は願い、イメージすることで使うことができる。
言っておくが、普通は魔法を詠唱しなくてはいけない。
まさしくチートの特権。
そんなこんなで、村全体に起こった事件は解決した。
ただ一つ、誰がこの惨状を収めたのかの疑問を残して。
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