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第1章『集え彦星、女神の下に』
1章1話『目覚め』
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貴方は、理不尽な現実に悩まされたことはないだろうか?
常識という名の縄に縛られ、法という名の鞭に打たれ、こんな世界は間違っていると思ったことはないか?
いや、質問を変えよう。
貴方は、世界を変えてみたいと思わないか?
そんなことできるわけがない?果たしてそうだろうか。
それは9月後半の事だった。
夏の暑さが終わりを遂げたと思った矢先に冷たい風が流れ込み寒空が顔を出した頃だ。
タクトは長く閉ざされたまぶたをゆっくりと開き、その奥から虹彩を覗かせ、冷たい床に手をついて重い体を持ち上げた。
彼は辺りを少し見回した。
白いコンクリートの壁はそこが室内であることを示していた。
外から聞こえる雨の音。
窓から外の様子を覗いてみると、本来上にあるはずの月が下でゆらゆらと形を崩しながら揺らいでいる。
その周りは水が跳ねて小さな輪っかを作り出している。
「…………あれ?ここは………」
一通り辺りを見たが、少し状況が掴めないでいた。
眠る前の記憶と、今、目の前で起きていることの矛盾点に頭が混乱しているが、ここがあの場所なのは間違いない。
「ここは…………僕の船だよな?」
自分は海の上に浮かぶ船の中にいることは確かだった
それもただの船などではなく、世界中で詐欺や横領をして集めた資金で購入した自分の豪華客船。
今いる場所がそこであることは間違いないのだった。
「だとしたらおかしいな…………だって僕は……………」
タクトは小さな相違点に気付いた。
その疑問を解決してくれたのは白基調のTシャツの腹の当たりにある破れた跡、起き上がった所に転がっていたナイフ、そして傷の周りを赤く染める血だった。
「やっぱり…………僕はアイツに殺されて………………」
タクトはゆっくりと自分の腹を撫でて言った。
まだ少し痛みがタクトを襲っている。
ついさっき、タクトはある者にナイフで刺された。
そのナイフに命が奪われたのは言うまでもない。
そのまま意識が遠のいていく中、氷山か何かにぶつかった様な音を聞いたのが恐らく死ぬ2番目に聞いた音だっただろうか。
タクトの意識が切れる前、1番最後に聞いた音は…………
「闇の歯車は最高管理室にあり…………だったっけ」
この言葉は聞いたというよりは頭に直接語りかけて来たような感覚だった。
タクトが死ぬ寸前に聞いた最後の言葉はまるで意味を成していなかった。
走馬灯にしてはあまりにも短く、まるで暗号のような物だった。
普通の人がこれを生活の中で突然聞いたら間違いなく怯えてしまうだろう。
もしくは空耳か何かと勘違いして何もしないで終わるだろうか。
それでも、タクトは最高管理室に行く理由があった。
あの時、タクトは絶対に死んだはずだ。
それは本人ですら受け止め、何故か楽しんですらいた紛れもない事実である。
なのに今この瞬間も、タクトの心臓はドクドクと脈を打っているのだ。
タクトからすれば、今ここに自分が存在していると言う事自体が世界の相違点、エラーでしか無い。
そのエラーが何故発生したのか、タクトはエラーメッセージを確認する方法を探していた。
そんな状況のタクトが出した答えは言うまでもない。
「行くしかないか…………」
最高管理室は船の中でも1番上にある。
この船は4階建ての為タクトは階段を何度も登る必要があった。
廊下の窓から見た限り、氷山にぶつかったにも関わらず船は沈んでいないようだ。
それどころか周りに障害物は何1つ見当たらず、ただ海水が波を立てて揺れているだけだった。
さっき死んだ時、タクトは何かにぶつかった様な音と揺れを感じていた。
それなのに船は今もフワフワと水の上に浮かんでいる。
これも自分の存在と何か関係があるのだろうか。
そう思いつつも答えが出ないまま、タクトは最高管理室まで辿り着いた。
最高管理室の鉄で出来た厚い扉はタクトの帰りを歓迎していた。
「ここに謎が隠されているはず……………」
タクトは最高管理室のナンバーロック式の電子扉に番号を打ち込んだ。
プシューという音と共に開いた扉の先、1番初めに目に入ってきたのは監視カメラや機械を操作する3つのコンピューター。
その次に、不自然に青白く光る謎の機械だった。
「なんだ……………これ………」
筒状になった青いガラスの内側から光が差し込んでいる。
まるで近未来の転送装置の様なイメージだった。
もちろん、タクトは船にこんなものを置いた覚えは無かった。
横の稼働している操作パネルを見る限り、オブジェクトか何かなんて生半可な物では無いのは簡単に推測できた。
それ以前に自分にしか分からないナンバーロック式の扉が完備されている管理室に侵入できるはずが無い。
だとしたら、誰がどうやって何の為にこの機械を置いたのだろうか?
次の瞬間、タクトは血塗られたナイフを真後ろに突き出した。
「…………流石というべきでしょうか」
ナイフの先には、コバルトブルーの長い髪を垂らし、豪華な装飾の付いた白い服を来た女性が少し驚いた表情で立っていた。
「貴女は誰だ?どうやってこの部屋に入った?」
女性は静かにこう答えた。
「私から答えなくてもわかっているのでは?」
「やっぱりそうか………」
タクトは小さい頃から神話やおとぎ話を読んできた。
この船を犯罪を犯してまで買ったのだってそんな感じの理由だ。
その神話の中に登場する女神の中に、目の前の女性に瓜ふたつな女神が存在する。
「天空神アテナ……………」
女性はタクトに向かって少し微笑んだ。
常識という名の縄に縛られ、法という名の鞭に打たれ、こんな世界は間違っていると思ったことはないか?
いや、質問を変えよう。
貴方は、世界を変えてみたいと思わないか?
そんなことできるわけがない?果たしてそうだろうか。
それは9月後半の事だった。
夏の暑さが終わりを遂げたと思った矢先に冷たい風が流れ込み寒空が顔を出した頃だ。
タクトは長く閉ざされたまぶたをゆっくりと開き、その奥から虹彩を覗かせ、冷たい床に手をついて重い体を持ち上げた。
彼は辺りを少し見回した。
白いコンクリートの壁はそこが室内であることを示していた。
外から聞こえる雨の音。
窓から外の様子を覗いてみると、本来上にあるはずの月が下でゆらゆらと形を崩しながら揺らいでいる。
その周りは水が跳ねて小さな輪っかを作り出している。
「…………あれ?ここは………」
一通り辺りを見たが、少し状況が掴めないでいた。
眠る前の記憶と、今、目の前で起きていることの矛盾点に頭が混乱しているが、ここがあの場所なのは間違いない。
「ここは…………僕の船だよな?」
自分は海の上に浮かぶ船の中にいることは確かだった
それもただの船などではなく、世界中で詐欺や横領をして集めた資金で購入した自分の豪華客船。
今いる場所がそこであることは間違いないのだった。
「だとしたらおかしいな…………だって僕は……………」
タクトは小さな相違点に気付いた。
その疑問を解決してくれたのは白基調のTシャツの腹の当たりにある破れた跡、起き上がった所に転がっていたナイフ、そして傷の周りを赤く染める血だった。
「やっぱり…………僕はアイツに殺されて………………」
タクトはゆっくりと自分の腹を撫でて言った。
まだ少し痛みがタクトを襲っている。
ついさっき、タクトはある者にナイフで刺された。
そのナイフに命が奪われたのは言うまでもない。
そのまま意識が遠のいていく中、氷山か何かにぶつかった様な音を聞いたのが恐らく死ぬ2番目に聞いた音だっただろうか。
タクトの意識が切れる前、1番最後に聞いた音は…………
「闇の歯車は最高管理室にあり…………だったっけ」
この言葉は聞いたというよりは頭に直接語りかけて来たような感覚だった。
タクトが死ぬ寸前に聞いた最後の言葉はまるで意味を成していなかった。
走馬灯にしてはあまりにも短く、まるで暗号のような物だった。
普通の人がこれを生活の中で突然聞いたら間違いなく怯えてしまうだろう。
もしくは空耳か何かと勘違いして何もしないで終わるだろうか。
それでも、タクトは最高管理室に行く理由があった。
あの時、タクトは絶対に死んだはずだ。
それは本人ですら受け止め、何故か楽しんですらいた紛れもない事実である。
なのに今この瞬間も、タクトの心臓はドクドクと脈を打っているのだ。
タクトからすれば、今ここに自分が存在していると言う事自体が世界の相違点、エラーでしか無い。
そのエラーが何故発生したのか、タクトはエラーメッセージを確認する方法を探していた。
そんな状況のタクトが出した答えは言うまでもない。
「行くしかないか…………」
最高管理室は船の中でも1番上にある。
この船は4階建ての為タクトは階段を何度も登る必要があった。
廊下の窓から見た限り、氷山にぶつかったにも関わらず船は沈んでいないようだ。
それどころか周りに障害物は何1つ見当たらず、ただ海水が波を立てて揺れているだけだった。
さっき死んだ時、タクトは何かにぶつかった様な音と揺れを感じていた。
それなのに船は今もフワフワと水の上に浮かんでいる。
これも自分の存在と何か関係があるのだろうか。
そう思いつつも答えが出ないまま、タクトは最高管理室まで辿り着いた。
最高管理室の鉄で出来た厚い扉はタクトの帰りを歓迎していた。
「ここに謎が隠されているはず……………」
タクトは最高管理室のナンバーロック式の電子扉に番号を打ち込んだ。
プシューという音と共に開いた扉の先、1番初めに目に入ってきたのは監視カメラや機械を操作する3つのコンピューター。
その次に、不自然に青白く光る謎の機械だった。
「なんだ……………これ………」
筒状になった青いガラスの内側から光が差し込んでいる。
まるで近未来の転送装置の様なイメージだった。
もちろん、タクトは船にこんなものを置いた覚えは無かった。
横の稼働している操作パネルを見る限り、オブジェクトか何かなんて生半可な物では無いのは簡単に推測できた。
それ以前に自分にしか分からないナンバーロック式の扉が完備されている管理室に侵入できるはずが無い。
だとしたら、誰がどうやって何の為にこの機械を置いたのだろうか?
次の瞬間、タクトは血塗られたナイフを真後ろに突き出した。
「…………流石というべきでしょうか」
ナイフの先には、コバルトブルーの長い髪を垂らし、豪華な装飾の付いた白い服を来た女性が少し驚いた表情で立っていた。
「貴女は誰だ?どうやってこの部屋に入った?」
女性は静かにこう答えた。
「私から答えなくてもわかっているのでは?」
「やっぱりそうか………」
タクトは小さい頃から神話やおとぎ話を読んできた。
この船を犯罪を犯してまで買ったのだってそんな感じの理由だ。
その神話の中に登場する女神の中に、目の前の女性に瓜ふたつな女神が存在する。
「天空神アテナ……………」
女性はタクトに向かって少し微笑んだ。
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