【完結】キャット・トリップ・ワールド シーズン2 宇宙旅行編

夜須 香夜(やす かや)

文字の大きさ
14 / 29

14話 魚釣り

しおりを挟む
 アキラと手を繋いで宿屋まで帰ってきたら、宿屋の入口に皐月がいた。
 皐月は足早に私たちのところまで来て、繋いでいる手にチョップを食らわした。私たちの手は離れて、皐月は私を引っ張って行く。
「ちょっと、皐月。痛い」
「アイツと2人きりになるな」
「前も2人で出かけたわよ」
 皐月はそれに返答せず、手を引いたまま宿屋へと歩いていく。
 後ろを振り向くと、アキラは腕を頭の後ろに回して、ゆっくりと私たちの後ろを歩いていた。さっきからだが、とても嬉しそうに笑っている。
 私が泊まる部屋の前に行くと、皐月が私の肩を強くにぎった。
「皐月、痛いよ」
「それで?」
「それでって?」
「どう答えたんだよ。あいつに告白されたんだろ」
「え! なんで知ってるのよ」
 私はアキラに言われた言葉を思い出したからか、顔が熱くなるのがわかった。
「……姉さん」
「な、何も言わなかった」
「は?」
「あいつ、死ぬかもしれないとか言うから、怒ってやったの! それだけ!」
 皐月は、手を離し、口元に手を当てた。
「皐月?」
「は」
「は?」
「あはは! 姉さん、バカじゃないの」
 皐月は腹を抱えて笑う。
「そんなに笑うことないじゃないのよ」
「普通は返事するだろ」
「アキラが変なこと言うからよ」
 皐月は笑うのをやめて、大笑いしたためか、出てきた涙を拭った。
「この後も返事する気ないんだろ。姉さんのことだし」
「教えない!」
「なんでだよ」
「皐月が笑うからよ!」
「あはは」
 皐月はまた笑い出したので、私は怒って部屋に戻った。部屋に入る瞬間に、姉さんまた後でと言われたが、無視した。
 部屋の中に入ると、セイライとセイア、水竜がいた。セイライとセイアはベッドに腰かけ、水竜は寝転がっていた。
「笑い声が聞こえたけど、どうしたのよ」
「皐月が私を笑っただけ」
「なんで?」
「知らない!」
 私はイライラして、ベッドに思い切り腰掛けた。セイアは、ため息をついて、やれやれと首を横に振った。
「あ、杏奈……。次は魚釣りだね」
「そうだね。川釣りはやったことあるけど。セイライは?」
「わ、私……私は初めて」
「そうなんだ!釣れるといいよね」
「うん」
 私たちは、談笑しながら魚釣りの時間まで過ごした。水竜は、寝ていたけど。
 魚釣りの時間になり、私たちは海に行った。もちろんアキラと皐月も。私は2人と一緒にいるのがなんとなく嫌で、セイライとセイアの近くにいた。
 魚釣りの会場には、穴の空いたドーナツを縦にしたような大きな水槽が置いてあった。水槽は黒い台の上に乗っており、私の背の二倍はあった。水槽の中には、大きさの違う黄色の魚がたくさん泳いでいた。
「この魚は黄金魚といい、空気に触れると黄金に輝く魚もいます。それは、とても珍しくて、とても美味しい魚になっています。ぜひ、釣り上げてみてください」
 係員さんに言われて、私たちはいくつかのグループに分かれて、水槽に釣り糸を垂らした。垂らしたというより、釣り糸がドーナツ型の水槽の中に浮かんでいる。私は、セイライとセイアの3人で同じ水槽を囲んだ。
「皐月たちの方に行かなくていいの?」
「なんか気まずい」
「何かあったんだ」
 セイアがニヤつきながら私を見た。勘繰られてるのかな。
 セイライは心配そうに見てくるけど。
「喧嘩したの?」
「そうじゃないけど……」
 セイライは首を傾げた。
 私はちらりとアキラたちの方を見た。アキラと皐月は水竜と一緒に釣りをしている。少し声が聞こえた。
「杏奈はなんであっちにいるの?」
「照れてるのかな」
 アキラの言葉に皐月の笑い声が聞こえた。
「お前、避けられてるな。嫌がられてるんじゃないのか」
「違うな。照れてるだけだ」
「随分な自信だな」
「何のことかはわからないけど、喧嘩じゃなさそうで良かったわ。あなたたちに喧嘩なんて似合わないもの」
 その会話を聞いて、何だか面白くなくて、私は釣りに集中することにした。
 その後、何匹かは釣れるが、黄金の魚は釣れない。
「杏奈は魚釣りが上手なのね」
 セイライが自分のバケツを見ながら呟いた。セイライのバケツを覗くと小さい魚が一匹だけ泳いでいた。
「村でよく釣っていたからね」
「そうなんだ。村は川が近かったの?」
「うん。森も近くて、狩りにも行ってたわよ」
「へー。杏奈はすごいね。色々できて」
「そんなことないわよ」
 そう。そんなことはないのだ。
 私は守られてばかりで、アキラが死にそうになった時も何もできなかった。もう誰かが死ぬのは嫌だ。私も強くなりたい。アキラや皐月を守れるようになりたい。
「杏奈?」
「あ、ごめん。ちょっと考え事しちゃった」
「らしくないわね」
「セイアの中の私ってどうなってるの」
「頭お花畑」
「ひどい! 私だって考え事くらいするわよ」
 セイライとセイアはその言葉で楽しそうに笑った。もう、二人して私のことをからっかって……。
 その時、私の釣竿が大きく引っ張られた。驚いたが、冷静に魚を疲れさせて、引き上げた。
 すると、魚は黄色から黄金に光り輝いた。
「すごい! これがレアの」
「杏奈、すごい!」
「豪運ね」
 騒いだからなのか、アキラたちがこっちに来ていた。
「杏奈、すごいじゃないか!」
「さすが、姉さん。運だけはいいよな」
「これが黄金の魚。すごいわね、杏奈」
 三人とも口々に私を褒めた。
「皐月は一言多い」
 私は魚を手に取り、アキラの方に持っていった。
「あげる。とれた魚は今日の夕飯になるんでしょ。あんたにあげる」
「杏奈が釣ったんだろ」
「いいから! 魚逃げちゃうから早く受け取る!」
 アキラは渋々受け取ってくれた。
「ありがとう。杏奈」
「別に。気まぐれよ」
「俺、魚料理が好きなんだ。嬉しいよ」
「ふーん」
 私は何だか嬉しかったが、ここでニヤけるのが嫌で、口元が笑わないように必死で真顔を取り繕った。
「姉さんが食べ物を人にやるなんて珍しいこともあるな」
「皐月、うるさい」
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

廃城の泣き虫アデリー

今野綾
ファンタジー
領主の娘だったアデリーはある日家族を殺され育った領地から命からがら逃げ出した。辿り着いた先は廃城。ひとり、ふたりと住人が増える中、問題が次々とおこって… 表紙はフリー素材です

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...