22 / 29
22話 イヴ
しおりを挟む
私たちは、氷龍が新たな名前を与えられた龍神の湖に来ていた。
「燃やして、骨を湖に沈めるよ」
幻がそう言って、カプセルから出した宇治原さんに火をつける。
鼻をつくような嫌な匂いがする。村が焼かれた日に嗅いだ人間の焼ける匂いとは違う匂いだ。
もう、彼女は人間ではなかったのか?
「助けられなかった」
「仕方ないさ」
マーズはぶっきらぼうに言葉を放つ。
「イヴは覚醒するのかしないのか、わからないし」
「ねえ、そのイヴって誰のことなの」
「お前のことだけど」
「私は杏奈よ」
「イヴっていうのは、太古の昔に生きていた人の名前だよ」
「それと、私が何の関係があるのよ」
「お前、水星や金星にも行っていたんだろ?」
「ええ」
「何も聞いていないのか?」
「乙女の象徴とかは、聞いたけど」
その言葉に、マーズは大きなため息をついた。
「俺に丸投げかよ……。イヴはな、お前の前世だよ」
「前世?」
「まあ、何代か前だけど。イヴの生まれ変わりなのさ」
「生まれ変わりって……」
マーズは私の頭を撫でた。
「いきなり言われてもわからないよな。人間は、輪廻転生、魂の循環、魂は天国に帰りまた産まれ直す」
マーズは頭を撫でるのをやめて、腕を組んだ。
「イヴ、ラヴァーズ、その後も色々……そして、お前の一代前は唯という女性だったらしい」
「何で、マーキュリーやあなたは、私がイヴの生まれ変わりだってわかるの?」
「俺たちは、魂が見えるんだ。俺はイヴには会ったことはないが、イヴの生まれ変わりって奴には何回か会っている」
「僕もわかるよー」
幻が私とマーズの間に顔を出して、話した。
「僕は、不可族。長生きな種族なんだあ。マーズくんたちとは仲良し」
「不可族? 初めて聞く種族よ」
「そうだろうね。知っている人は少ないね」
「とにかく、お前はイヴの生まれ変わりな訳」
「でも、私は杏奈よ。イヴっていうのは、過去の人なんでしょ?」
「そうだけど……イヴ、いや杏奈。気をつけるんだ。イヴは必ず争い事に巻き込まれる。イヴがいると争いが起こると思っている奴もいる」
「え……? じゃあ、今回のことも」
「それは違う。もっと大きな争いだよ」
「……イヴじゃないもん」
「お前がそう思っても、世界はお前をイヴだと言うよ」
私は俯いて、何も言えなくなった。
「それと……あ、もう骨になったな」
マーズがそう言ったので、見てみると宇治原さんは骨だけになっていた。
でも、人間の骨ではない。宇治原さんを人間として、死なせてあげることもできないのか。
「辛いか?」
「当たり前でしょ」
「イヴなら、何とかできる」
「どういうことよ」
「……まあ、今更言っても遅いよな。湖に沈めよう」
幻は、湖に一歩近づいた。
「ディスティニー・グロウス・リーナー。龍神様、この娘に慈悲を」
すると、湖から、あの時現れた龍神様が湖から出てきた。
龍神様は瞑っていた目を開き、宇治原さんを見た。
「幻、マーズ。これは人の子かな」
「そうです。悪しき人間によって、モンスターに変えられました」
「そうか。いいよ。湖で浄化してあげよう。魂はもう汚れてしまったから、せめて安らかな眠りを」
龍神様の言葉に、マーズと幻は頷き、骨を湖に投げ入れる。私もそれを手伝う。
骨を全て投げ入れ、龍神様が帰ってから、私はまたマーズに疑問を投げかけた。
「イヴなら、何とかできるってどういうことよ」
「知らない方がいいよ」
「教えて」
私はマーズを見つめる。
マーズは少し考えたような素振りを見せてから、ため息をつき、口を開いた。
「……イヴには、イヴの魂を持つものには、時を操る力が与えられる。それがあれば、あの娘をモンスターにされる前に戻せただろうな」
「え……そんな。救えたの? 私にその力があれば、助けられたの?」
「そうだろうね」
私の目から、涙が出るのがわかった。
「時を操れるって、傷も治せるの?」
「傷も治せるし、無機物の状態も元に戻せる。ただ、死んだ命は取り戻せないよ」
「それって……」
覚えがあった。金星で、モンスターが現れ、アキラが大きく傷ついた時、なぜか人々の傷も建物の破壊も治っていた。
モンスターまで消えたのはなぜなのか。
「何か心当たりでもあるのか」
私は金星であったことをマーズに説明した。
「それはイヴの力だろうな。モンスターは、街に侵入する前まで巻き戻されたのかもしれないな。近々、また現れるかもしれないな」
「そんな!」
「でも、覚醒していたのか。いや、力が暴発しただけな感じもするな」
「……どうしたら、力が覚醒するの?」
もう二度と、こんな事は、誰かが辛い目に合うのは見たくない。
もし、私にイヴの力があるなら……。
「それは俺にもわからない。ごめんな」
「ううん。色々と教えてくれて、ありがとう」
「あいつらが、不親切すぎるんだよ。好き勝手しやがって」
「そういえば、アダムっていうのは?」
「ああ。わかっていると思うけど、アダムも昔の人間だよ」
「アダムがアキラの前世ってこと?」
「まあ、そういうことになるな。イヴの近くには必ずアダムがいる」
イヴとアダム……そういえば、ノエルとライダンスというのは何だろう。
マーズに聞いてみたが、その二人についてはわからないそうだ。
私は、マーズと幻と別れて、宿屋へと戻った。
氷龍の様子を見た後、皐月とアキラにマーズから聞いたことを話した。
「イヴにアダムか。まあ、前世って過去のことだろ。今は関係ないんじゃないの」
「俺は、予想していた通りだな」
「……それで、思ったのよ。力の覚醒ってどうやったら良いのかなって」
「そんな力、必要なのか?」
皐月が聞いてきた。
「力があれば、宇治原さんを救えたの。私は、その力がほしい。地球に帰ったら、方法を探すわよ!」
「はあ、姉さんの変な行動がまた始まるのか」
「俺は杏奈についていくぜ!」
「まずは、マーズから聞いた、私の一代前の前世の唯って人の足跡を辿ろうと思うの」
「よし! 道中のモンスターは俺に任せろ」
「俺も付き合うよ。姉さんたちだけじゃ、心配だし」
私たちは、地球に帰った後のことを話し合うことにした。
「燃やして、骨を湖に沈めるよ」
幻がそう言って、カプセルから出した宇治原さんに火をつける。
鼻をつくような嫌な匂いがする。村が焼かれた日に嗅いだ人間の焼ける匂いとは違う匂いだ。
もう、彼女は人間ではなかったのか?
「助けられなかった」
「仕方ないさ」
マーズはぶっきらぼうに言葉を放つ。
「イヴは覚醒するのかしないのか、わからないし」
「ねえ、そのイヴって誰のことなの」
「お前のことだけど」
「私は杏奈よ」
「イヴっていうのは、太古の昔に生きていた人の名前だよ」
「それと、私が何の関係があるのよ」
「お前、水星や金星にも行っていたんだろ?」
「ええ」
「何も聞いていないのか?」
「乙女の象徴とかは、聞いたけど」
その言葉に、マーズは大きなため息をついた。
「俺に丸投げかよ……。イヴはな、お前の前世だよ」
「前世?」
「まあ、何代か前だけど。イヴの生まれ変わりなのさ」
「生まれ変わりって……」
マーズは私の頭を撫でた。
「いきなり言われてもわからないよな。人間は、輪廻転生、魂の循環、魂は天国に帰りまた産まれ直す」
マーズは頭を撫でるのをやめて、腕を組んだ。
「イヴ、ラヴァーズ、その後も色々……そして、お前の一代前は唯という女性だったらしい」
「何で、マーキュリーやあなたは、私がイヴの生まれ変わりだってわかるの?」
「俺たちは、魂が見えるんだ。俺はイヴには会ったことはないが、イヴの生まれ変わりって奴には何回か会っている」
「僕もわかるよー」
幻が私とマーズの間に顔を出して、話した。
「僕は、不可族。長生きな種族なんだあ。マーズくんたちとは仲良し」
「不可族? 初めて聞く種族よ」
「そうだろうね。知っている人は少ないね」
「とにかく、お前はイヴの生まれ変わりな訳」
「でも、私は杏奈よ。イヴっていうのは、過去の人なんでしょ?」
「そうだけど……イヴ、いや杏奈。気をつけるんだ。イヴは必ず争い事に巻き込まれる。イヴがいると争いが起こると思っている奴もいる」
「え……? じゃあ、今回のことも」
「それは違う。もっと大きな争いだよ」
「……イヴじゃないもん」
「お前がそう思っても、世界はお前をイヴだと言うよ」
私は俯いて、何も言えなくなった。
「それと……あ、もう骨になったな」
マーズがそう言ったので、見てみると宇治原さんは骨だけになっていた。
でも、人間の骨ではない。宇治原さんを人間として、死なせてあげることもできないのか。
「辛いか?」
「当たり前でしょ」
「イヴなら、何とかできる」
「どういうことよ」
「……まあ、今更言っても遅いよな。湖に沈めよう」
幻は、湖に一歩近づいた。
「ディスティニー・グロウス・リーナー。龍神様、この娘に慈悲を」
すると、湖から、あの時現れた龍神様が湖から出てきた。
龍神様は瞑っていた目を開き、宇治原さんを見た。
「幻、マーズ。これは人の子かな」
「そうです。悪しき人間によって、モンスターに変えられました」
「そうか。いいよ。湖で浄化してあげよう。魂はもう汚れてしまったから、せめて安らかな眠りを」
龍神様の言葉に、マーズと幻は頷き、骨を湖に投げ入れる。私もそれを手伝う。
骨を全て投げ入れ、龍神様が帰ってから、私はまたマーズに疑問を投げかけた。
「イヴなら、何とかできるってどういうことよ」
「知らない方がいいよ」
「教えて」
私はマーズを見つめる。
マーズは少し考えたような素振りを見せてから、ため息をつき、口を開いた。
「……イヴには、イヴの魂を持つものには、時を操る力が与えられる。それがあれば、あの娘をモンスターにされる前に戻せただろうな」
「え……そんな。救えたの? 私にその力があれば、助けられたの?」
「そうだろうね」
私の目から、涙が出るのがわかった。
「時を操れるって、傷も治せるの?」
「傷も治せるし、無機物の状態も元に戻せる。ただ、死んだ命は取り戻せないよ」
「それって……」
覚えがあった。金星で、モンスターが現れ、アキラが大きく傷ついた時、なぜか人々の傷も建物の破壊も治っていた。
モンスターまで消えたのはなぜなのか。
「何か心当たりでもあるのか」
私は金星であったことをマーズに説明した。
「それはイヴの力だろうな。モンスターは、街に侵入する前まで巻き戻されたのかもしれないな。近々、また現れるかもしれないな」
「そんな!」
「でも、覚醒していたのか。いや、力が暴発しただけな感じもするな」
「……どうしたら、力が覚醒するの?」
もう二度と、こんな事は、誰かが辛い目に合うのは見たくない。
もし、私にイヴの力があるなら……。
「それは俺にもわからない。ごめんな」
「ううん。色々と教えてくれて、ありがとう」
「あいつらが、不親切すぎるんだよ。好き勝手しやがって」
「そういえば、アダムっていうのは?」
「ああ。わかっていると思うけど、アダムも昔の人間だよ」
「アダムがアキラの前世ってこと?」
「まあ、そういうことになるな。イヴの近くには必ずアダムがいる」
イヴとアダム……そういえば、ノエルとライダンスというのは何だろう。
マーズに聞いてみたが、その二人についてはわからないそうだ。
私は、マーズと幻と別れて、宿屋へと戻った。
氷龍の様子を見た後、皐月とアキラにマーズから聞いたことを話した。
「イヴにアダムか。まあ、前世って過去のことだろ。今は関係ないんじゃないの」
「俺は、予想していた通りだな」
「……それで、思ったのよ。力の覚醒ってどうやったら良いのかなって」
「そんな力、必要なのか?」
皐月が聞いてきた。
「力があれば、宇治原さんを救えたの。私は、その力がほしい。地球に帰ったら、方法を探すわよ!」
「はあ、姉さんの変な行動がまた始まるのか」
「俺は杏奈についていくぜ!」
「まずは、マーズから聞いた、私の一代前の前世の唯って人の足跡を辿ろうと思うの」
「よし! 道中のモンスターは俺に任せろ」
「俺も付き合うよ。姉さんたちだけじゃ、心配だし」
私たちは、地球に帰った後のことを話し合うことにした。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
廃城の泣き虫アデリー
今野綾
ファンタジー
領主の娘だったアデリーはある日家族を殺され育った領地から命からがら逃げ出した。辿り着いた先は廃城。ひとり、ふたりと住人が増える中、問題が次々とおこって…
表紙はフリー素材です
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる