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屈辱
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突如始まった、レベッカとレクスの再戦。
「また、どうせボロ雑巾だろ」「昨日の今日で何が変わる」
結果は火を見るより明らか――誰もがそう思っていた。
しかし、その予想は大きく裏切られる展開。
両者の間で、凄まじい速度の剣戟が交わされ、訓練場に集まった兵たちは一様に息を呑んだ。
押しては引き、押しては引く。まるで波がぶつかり合うような攻防。
だが、やがて――
鈍い金属の衝突音が止んだ瞬間、訓練場全体に激震が走る。
「う、嘘だろ……?」
「負けちまった……?」
「……昨日、あんなに簡単にやられてたのに……」
「なんでだよ……ッ!」
完全に予想外の展開に、兵たちは互いに顔を見合わせ、ざわめきが広がっていく。
「あのレベッカの姐さんが……」
敗者の名が誰の口からともなく漏れた。
「うわぁ……レクス様、本当に勝っちゃったよ」
ミリアムも思わず感嘆の声を漏らした。
その声音には、ほんの少しだけ喜びの色が混じっているようにも聞こえた。
戦いの最中、レクスの動きは少しずつ変化していった。
それはまるで、二つの異なる何かが融合し、一つの新しい型を生み出していくようだった。
二人分の知識と技術が融合し、この世界には存在しない新たな剣術の形が生まれていたのだ。
それはサセックス家の剣でもなく、既存の未知の剣でもない。
二つを掛け合わせ、互いの欠点を補い合い、長所を掛け算したような――まさしく新たな剣。
「なに——ッ!」
レベッカは思わず声を上げ、握っていた剣を取り落とした。
鈍い音とともに、彼女の手からバスタードソードが地面に転がる。
先ほどレクスが放った一太刀――それは、彼女の常識を覆す軌道と速度、そして力を兼ね備えていた。
それは一見すれば不格好な斬撃だった。
両手の握りを短く取り、腕力ではなく体幹全体を使って振り抜くその一撃は、古武術に伝わる隠し剣の応用。
宗家のみが伝える秘伝の技である。
(なんだ……今のは……)
未知の一撃に、レベッカは無意識に剣を落とした。
敗北の事実――それを誰よりも受け入れられなかったのは、彼女自身だった。
「……どうやら、剣では俺の勝ちのようだな」
俺は肩を剣の腹で軽く叩き、涼しい顔で言う。
さも大したことでは無いかのように。
しかし、全身から溢れ出しそうな、勝利の快感を感じていた。
だが、この場で皆にニヤケ顔を見せては締まらない。
俺はクールな男。
余裕の表情を装い、全力で少しピクピクとする表情筋を抑え込む。
「認めてやるよ……」
苦々しい声で、レベッカが言った。
「ふふ……何をだ? 俺の格好良さをか? やっと分かってしまったということだな? ならば訂正しろ。それなりで――」
「いいや、そうじゃない」
「——はないぞ、俺の顔は……なんだと?」
俺は一瞬素で聞き返してしまった。
「剣では確かにお前の勝ちだ。どんなカラクリがあるかは知らないが……一晩で変わったのは確かだ。強くなった。だが――まだ剣だけだろ……なぁッ!」
レベッカの目には、まだ余裕があった。
確かに、剣術戦では俺が勝った。
だが、戦いはそれだけじゃない。
「……ふふ、そうだな」
「ああ……まさか、サセックスの天才サマともあろうお方が、勝ち逃げなんてセコい真似はしないよな? なぁ?」
その挑発に、俺の口元も自然と吊り上がる。
「……無論だ。お前はまだ本気じゃない……切り札のあれも使っていない」
「……知っているんだな」
「ああ。本気のお前を倒してこそ、意味がある」
「……ほんと、いけすかないガキだよ。お前さんはよ……ふん。――まぁ、いい。ここから先は手加減なしだ……ふふ、死んでも知らないからな」
黒い笑みを浮かべるレベッカ。俺も負けじと笑い返した。
「まだ続けるみたいだな?」
「ああ……」
「まだ剣だけだ! 姐さんは魔術を使ってねぇじゃねぇか! なぁ、そうだろ! お前らッ!」
傭兵の一人が叫び、周囲を鼓舞する。
両者は再び距離を取り、仕切り直し。
敗北の現実を受け入れきれなかった兵たちにも、再び熱が戻っていく。
「そ、そうだ……! まだ剣だけだ……!」
「俺たちの姐さんが、あんなクソガキに負けるわけがねぇ!」
傭兵団の面々は再び声を上げる。
サセックス家の兵たちもまた複雑な表情で戦いを見守っていた。
「レクス様……あんなに強かったんだな」
「ああ……人間性はともかく、やっぱり天才だったんだな」
「おい、聞こえるぞ」
その才能は認めつつも、評判は相変わらず芳しくない。
誰もが理解していた。
そして、この世界の戦いは剣術だけで決まるものではない。
「正直、舐めてたよ……」
レベッカは自嘲気味に呟く。
負けるはずがないと油断していた。
混乱が収まり、静けさが戻ると同時に――
彼女の胸の内には、燃えるような感情が湧き上がっていた。
――屈辱。
あの調子に乗ったボンボンに、兵たちの前で恥をかかされた。
その感情が、彼女の怒りと闘志をさらに燃え上がらせる。
「……サセックス家の神童とやらを……」
思い知らせてやる。
レベッカの周囲に、濃密な魔力が溢れ出す。
空気の流れが変わった。渦を巻く魔力はやがて彼女の頭上で一点に収束し――炎の槍となる。
【炎槍《フレイム・ランス》】
炎属性の基本的な攻撃魔術。
熟練した魔術師なら誰でも扱える術――だが、その威力と展開数は術者の力量で天地の差が出る。
レベッカの背後から頭上にかけて、無数の炎槍が展開される。
詠唱は、一言もなかった。
「やっぱすげぇ……本気の姐さんの魔術は……!」
「しかも無詠唱だぜ……! 痺れるッ!」
「はぁ、はぁ……お、俺の心にも火がついちまったぜぇッ!」
荒くれ者たちのどよめきが訓練場を包む。
「はははッ! どうした! お前も出しなッ!」
レベッカは左手の甲をこちらに向け、挑発的な笑みを浮かべた。
炎槍はすぐには撃ち出されず、空中で静かに漂っている。
(不意打ちなんてしない、お前の全力を出させて叩き潰す)
そんな意図が、はっきりと伝わってきた。
「……せっかちな女だな」
眼前を埋め尽くす炎槍を前に、涼しい顔で言った。
不思議と恐怖はなかった。
一呼吸、意識を内側へ向ける。
——あの数を無詠唱だと? 昨日は、全然本気じゃ無かったんだな、あの女。
レベッカをそう評す。
無詠唱とは、数奇な才を持つ一握りの魔術師が長い年限をかけ、ようやく辿り着く領域。
昨日までの俺にはできなかった芸当。
彼女が昨日の俺より、魔術師として遥かな高みにいた証。
だが、今の俺は体内を巡る魔力の流れが手に取るように分かる。
二人の知識の二重奏が語りかける。
今の俺に詠唱は必要ない。
言葉というのは常に本質を表さない。
——今の俺に必要なものは、ちょっとしたきっかけ。
だから、俺は親指と中指を擦り合わせた。
まるで空に向かって空砲を撃つみたいに。
パチン——という乾いた音が鳴った。
「お前……」
レベッカの瞳がわずかに見開かれる。
(——こいつ、成長している。剣だけじゃない——)
彼女は素早く状況を把握する。
魔術の展開速度、数、密度――すべてが昨日より格段に上がっている。
剣術戦での敗因は未知の技術による不意打ちだった。
だが今、彼が使っているのは昨日と同じ魔術。
炎槍を展開した二人は、無言で見つめ合った。
観衆のざわめきが消え、訓練場には張り詰めた空気だけが残る。
(――動かない——)
誰もがそう思った。
お互いに先手を奪い合うようでいて、同時に譲り合ってもいるような、絶妙な緊張感。
ピューッと、一筋の風が土埃を巻き上げた。
瞬間――
無数の射出音と爆発音が一斉に鳴り響いた。
訓練場全体に、何かがぶつかり合う連続音が轟く。
どちらが先に撃ったのか――観衆の誰一人として分からなかった。
それを理解できるのは、いま炎槍を撃ち合っている二人だけだ。
――やるじゃないか……!
俺は内心で彼女を称賛する。
剣では俺が勝った。
だが、魔術では彼女が一歩上のようだ。
初めて展開した無詠唱とはいえ、同数の炎槍を展開した筈だ。
異世界の知識を応用しても、技量は彼女が上回る。
(——まったく……どうなってやがる……!?)
レベッカは逆に苛立ちを募らせていた。
昨日なら、魔術戦で俺を圧倒できたはず。
なのに――今は互角。
その事実が彼女を焦らせる。
「……ッ!」
左前方から飛んできた炎槍を、レベッカが慌てて打ち消す。
(こいつは……本当に、やばい)
炎槍の残数を瞬時に確認しながら、彼女は唇を噛んだ。
爆発音がしばらく続いたのち、突如、音が途切れる。
二人の戦場を覆っていた土煙が立ち込め、視界を遮った。
誰も、勝敗を確認できない。
「互角……ってやつだな」
土煙を裂き、金髪の美男子が姿を現す。
「全く……忌々しいことに、そうらしい」
赤髪を揺らし、無傷の美女が歩み出る。
二人は傷一つなく立っていた。だが、その表情には違いがあった。
「なぁ……出しても構わんぞ? お前の“切り札”とやらを」
「……分かって言ってるんだな?」
「ああ。見せてみろよ」
「……ふふ、いいさ。見せてやる」
その瞬間、レベッカの纏う空気が変わった。
それまでの力強さと柔らかさを併せ持つ気配は消え、そこにあるのは――殺気。
「……遂に本気か。楽しみだ」
「あんたは……本当に……いけ好かないガキだね」
吐き捨てるように言うレベッカの口元には、勝利を確信した笑みが浮かんでいた。
「また、どうせボロ雑巾だろ」「昨日の今日で何が変わる」
結果は火を見るより明らか――誰もがそう思っていた。
しかし、その予想は大きく裏切られる展開。
両者の間で、凄まじい速度の剣戟が交わされ、訓練場に集まった兵たちは一様に息を呑んだ。
押しては引き、押しては引く。まるで波がぶつかり合うような攻防。
だが、やがて――
鈍い金属の衝突音が止んだ瞬間、訓練場全体に激震が走る。
「う、嘘だろ……?」
「負けちまった……?」
「……昨日、あんなに簡単にやられてたのに……」
「なんでだよ……ッ!」
完全に予想外の展開に、兵たちは互いに顔を見合わせ、ざわめきが広がっていく。
「あのレベッカの姐さんが……」
敗者の名が誰の口からともなく漏れた。
「うわぁ……レクス様、本当に勝っちゃったよ」
ミリアムも思わず感嘆の声を漏らした。
その声音には、ほんの少しだけ喜びの色が混じっているようにも聞こえた。
戦いの最中、レクスの動きは少しずつ変化していった。
それはまるで、二つの異なる何かが融合し、一つの新しい型を生み出していくようだった。
二人分の知識と技術が融合し、この世界には存在しない新たな剣術の形が生まれていたのだ。
それはサセックス家の剣でもなく、既存の未知の剣でもない。
二つを掛け合わせ、互いの欠点を補い合い、長所を掛け算したような――まさしく新たな剣。
「なに——ッ!」
レベッカは思わず声を上げ、握っていた剣を取り落とした。
鈍い音とともに、彼女の手からバスタードソードが地面に転がる。
先ほどレクスが放った一太刀――それは、彼女の常識を覆す軌道と速度、そして力を兼ね備えていた。
それは一見すれば不格好な斬撃だった。
両手の握りを短く取り、腕力ではなく体幹全体を使って振り抜くその一撃は、古武術に伝わる隠し剣の応用。
宗家のみが伝える秘伝の技である。
(なんだ……今のは……)
未知の一撃に、レベッカは無意識に剣を落とした。
敗北の事実――それを誰よりも受け入れられなかったのは、彼女自身だった。
「……どうやら、剣では俺の勝ちのようだな」
俺は肩を剣の腹で軽く叩き、涼しい顔で言う。
さも大したことでは無いかのように。
しかし、全身から溢れ出しそうな、勝利の快感を感じていた。
だが、この場で皆にニヤケ顔を見せては締まらない。
俺はクールな男。
余裕の表情を装い、全力で少しピクピクとする表情筋を抑え込む。
「認めてやるよ……」
苦々しい声で、レベッカが言った。
「ふふ……何をだ? 俺の格好良さをか? やっと分かってしまったということだな? ならば訂正しろ。それなりで――」
「いいや、そうじゃない」
「——はないぞ、俺の顔は……なんだと?」
俺は一瞬素で聞き返してしまった。
「剣では確かにお前の勝ちだ。どんなカラクリがあるかは知らないが……一晩で変わったのは確かだ。強くなった。だが――まだ剣だけだろ……なぁッ!」
レベッカの目には、まだ余裕があった。
確かに、剣術戦では俺が勝った。
だが、戦いはそれだけじゃない。
「……ふふ、そうだな」
「ああ……まさか、サセックスの天才サマともあろうお方が、勝ち逃げなんてセコい真似はしないよな? なぁ?」
その挑発に、俺の口元も自然と吊り上がる。
「……無論だ。お前はまだ本気じゃない……切り札のあれも使っていない」
「……知っているんだな」
「ああ。本気のお前を倒してこそ、意味がある」
「……ほんと、いけすかないガキだよ。お前さんはよ……ふん。――まぁ、いい。ここから先は手加減なしだ……ふふ、死んでも知らないからな」
黒い笑みを浮かべるレベッカ。俺も負けじと笑い返した。
「まだ続けるみたいだな?」
「ああ……」
「まだ剣だけだ! 姐さんは魔術を使ってねぇじゃねぇか! なぁ、そうだろ! お前らッ!」
傭兵の一人が叫び、周囲を鼓舞する。
両者は再び距離を取り、仕切り直し。
敗北の現実を受け入れきれなかった兵たちにも、再び熱が戻っていく。
「そ、そうだ……! まだ剣だけだ……!」
「俺たちの姐さんが、あんなクソガキに負けるわけがねぇ!」
傭兵団の面々は再び声を上げる。
サセックス家の兵たちもまた複雑な表情で戦いを見守っていた。
「レクス様……あんなに強かったんだな」
「ああ……人間性はともかく、やっぱり天才だったんだな」
「おい、聞こえるぞ」
その才能は認めつつも、評判は相変わらず芳しくない。
誰もが理解していた。
そして、この世界の戦いは剣術だけで決まるものではない。
「正直、舐めてたよ……」
レベッカは自嘲気味に呟く。
負けるはずがないと油断していた。
混乱が収まり、静けさが戻ると同時に――
彼女の胸の内には、燃えるような感情が湧き上がっていた。
――屈辱。
あの調子に乗ったボンボンに、兵たちの前で恥をかかされた。
その感情が、彼女の怒りと闘志をさらに燃え上がらせる。
「……サセックス家の神童とやらを……」
思い知らせてやる。
レベッカの周囲に、濃密な魔力が溢れ出す。
空気の流れが変わった。渦を巻く魔力はやがて彼女の頭上で一点に収束し――炎の槍となる。
【炎槍《フレイム・ランス》】
炎属性の基本的な攻撃魔術。
熟練した魔術師なら誰でも扱える術――だが、その威力と展開数は術者の力量で天地の差が出る。
レベッカの背後から頭上にかけて、無数の炎槍が展開される。
詠唱は、一言もなかった。
「やっぱすげぇ……本気の姐さんの魔術は……!」
「しかも無詠唱だぜ……! 痺れるッ!」
「はぁ、はぁ……お、俺の心にも火がついちまったぜぇッ!」
荒くれ者たちのどよめきが訓練場を包む。
「はははッ! どうした! お前も出しなッ!」
レベッカは左手の甲をこちらに向け、挑発的な笑みを浮かべた。
炎槍はすぐには撃ち出されず、空中で静かに漂っている。
(不意打ちなんてしない、お前の全力を出させて叩き潰す)
そんな意図が、はっきりと伝わってきた。
「……せっかちな女だな」
眼前を埋め尽くす炎槍を前に、涼しい顔で言った。
不思議と恐怖はなかった。
一呼吸、意識を内側へ向ける。
——あの数を無詠唱だと? 昨日は、全然本気じゃ無かったんだな、あの女。
レベッカをそう評す。
無詠唱とは、数奇な才を持つ一握りの魔術師が長い年限をかけ、ようやく辿り着く領域。
昨日までの俺にはできなかった芸当。
彼女が昨日の俺より、魔術師として遥かな高みにいた証。
だが、今の俺は体内を巡る魔力の流れが手に取るように分かる。
二人の知識の二重奏が語りかける。
今の俺に詠唱は必要ない。
言葉というのは常に本質を表さない。
——今の俺に必要なものは、ちょっとしたきっかけ。
だから、俺は親指と中指を擦り合わせた。
まるで空に向かって空砲を撃つみたいに。
パチン——という乾いた音が鳴った。
「お前……」
レベッカの瞳がわずかに見開かれる。
(——こいつ、成長している。剣だけじゃない——)
彼女は素早く状況を把握する。
魔術の展開速度、数、密度――すべてが昨日より格段に上がっている。
剣術戦での敗因は未知の技術による不意打ちだった。
だが今、彼が使っているのは昨日と同じ魔術。
炎槍を展開した二人は、無言で見つめ合った。
観衆のざわめきが消え、訓練場には張り詰めた空気だけが残る。
(――動かない——)
誰もがそう思った。
お互いに先手を奪い合うようでいて、同時に譲り合ってもいるような、絶妙な緊張感。
ピューッと、一筋の風が土埃を巻き上げた。
瞬間――
無数の射出音と爆発音が一斉に鳴り響いた。
訓練場全体に、何かがぶつかり合う連続音が轟く。
どちらが先に撃ったのか――観衆の誰一人として分からなかった。
それを理解できるのは、いま炎槍を撃ち合っている二人だけだ。
――やるじゃないか……!
俺は内心で彼女を称賛する。
剣では俺が勝った。
だが、魔術では彼女が一歩上のようだ。
初めて展開した無詠唱とはいえ、同数の炎槍を展開した筈だ。
異世界の知識を応用しても、技量は彼女が上回る。
(——まったく……どうなってやがる……!?)
レベッカは逆に苛立ちを募らせていた。
昨日なら、魔術戦で俺を圧倒できたはず。
なのに――今は互角。
その事実が彼女を焦らせる。
「……ッ!」
左前方から飛んできた炎槍を、レベッカが慌てて打ち消す。
(こいつは……本当に、やばい)
炎槍の残数を瞬時に確認しながら、彼女は唇を噛んだ。
爆発音がしばらく続いたのち、突如、音が途切れる。
二人の戦場を覆っていた土煙が立ち込め、視界を遮った。
誰も、勝敗を確認できない。
「互角……ってやつだな」
土煙を裂き、金髪の美男子が姿を現す。
「全く……忌々しいことに、そうらしい」
赤髪を揺らし、無傷の美女が歩み出る。
二人は傷一つなく立っていた。だが、その表情には違いがあった。
「なぁ……出しても構わんぞ? お前の“切り札”とやらを」
「……分かって言ってるんだな?」
「ああ。見せてみろよ」
「……ふふ、いいさ。見せてやる」
その瞬間、レベッカの纏う空気が変わった。
それまでの力強さと柔らかさを併せ持つ気配は消え、そこにあるのは――殺気。
「……遂に本気か。楽しみだ」
「あんたは……本当に……いけ好かないガキだね」
吐き捨てるように言うレベッカの口元には、勝利を確信した笑みが浮かんでいた。
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