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【46】小説
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その言葉に、少し恥ずかしかったものの、小学時代から現在に至るまで、忙しい時を除いて、書いてきたことを伝えた。サイトの話や、選考通過具合も話した。賞をもらったけど、連絡が取れなくなってしまった話をした。ジャンルについては黙秘した。PNも言わなかった。先生も、そこは言いたくないといえば、聞かないでいてくれた。
「と、まぁこんな感じです」
「ふぅん。いくつか質問していい?」
「はい!」
「楽しい?」
「すごく楽しいです。世界で一番楽しいです」
「書けなくなっちゃう時とかないの?」
「基本、指をキーボードに載せれば何かしらは書けますよ。何も思い浮かべてなくても。ただ、ちゃんと書きたいことがあって書く、っていう意味だと、書く気力が失せちゃう時があります。これだけは、あきるのとはちょっと違うんですよね。長編を書いてて途中であきるっていうのはあるんですけど、こう、疲れちゃった、って感じになるんです。それが悪化すると、一日中寝てて、書きたいことを考えることすらなくなっちゃうんですよね。そうなると、もう書く事自体に興味がない感じになっちゃって、ベッドから出られなくて。ずーっと横になってます。別に書き終わった後とかじゃないんですけどね、なんか急にこう、多分絶望感みたいなのがあって、無理だなぁって感じで、興味が無くなっちゃうんです。うん、あれは、寝たきりってやつですね」
「すごいなぁ。小説家って感じ! 書きながら泣いたり怒ったり笑ったりするの?」
「ああ、ものすごくしますよ! 結構悲しい話を書く事が多いので、ボロボロ泣きながら書くんです。多分、人生で泣いたことのある回数の五分の四は、小さい頃を除けば、書いてる時ですね!」
「悲しい話ってどんなの? 漠然とでいいから、主人公と内容教えてよ」
「んー、無気力な主人公とか、あとは、天才だけど気づいてない主人公とか、そういうのがすごく好きです。ま、無気力系が一番多いかな。なんにもしたくないのに、巻き込まれちゃうんです。ここまでは、結構よくあるんですよ。登場人物のパターンとして」
「へぇ。それで? あんまり無い部分がどこかにあるんでしょ?」
「はい。普通は、主人公の才能で、乗り切るんです。でも、私が書くと、いつも主人公は死にたいほど辛い目に遭って、自殺を考えて、周囲の誰かに救出されるんです。そこに感動して泣いちゃうんです。あと、死にたいほど辛いところを考えてる時も泣いちゃうんです。この二つ、泣きながら打つんです。それで、手直しするときに、毎回このパターンだし、何回も使ってるし、そもそも人気のない展開だし、ということで、よくあるパターンに修正するんです。主人公に解決させる展開に、書き直してます! そういう時は、笑ってますね」
「どのくらいのペースで書くの?」
「集中してる時は、三日くらい寝ないで食べないで書いて、書き終わります」
「集中してない時は?」
「暇な日に、まぁ二時間とか、いや、暇な場合13時間くらいですかね!」
「小説家になろうとは思わないの?」
「思っては止め、思っては止め、で、今回、内定もらって本格的に止めることにしました」
「どうして?」
「趣味で良いかなって」
「止める度に、趣味にしてるの?」
「はい。だって、そういう時って、賞とか選考とかで、良い線いった後とかだから、もうここまでで満足かなぁって」
「それだけじゃなくて、大抵その直後に忙しくなってるよね。趣味にして、書く暇はあるの?」
「それが、あんまり無くなっちゃうんですよね。だた、忙しいのも原因で、そういう時って、書く事に興味消失してる寝たきり、みたいな休日を過ごすから、気づくと書かなくてもいられるようになるんです」
「――で、大体その後で、自殺に失敗してるんだ?」
「へ? ああ、まぁ、時期的にはそうなりますね」
「もっと早くこの話を聞くべきだったみたいだ。てっきり、見知らぬ人からの評価の問題だと思ってたけど、違うな」
「えっと、どういうことですか?」
「君は、本当は自分が無気力であることや、天才だということを知っているんだ。後者は勘違いまで、そのまんま。とっても基本的な、投映だ」
「違いますよ! ネットで大人気のパターンなんです!」
「よく知らないけど、人気の部分は、そういう人々が、困難に対処する部分じゃないの?」
「ま、まぁ、そうですけど……」
「人気ないのに、辛い目に遭って自殺しようとして助けられるんでしょ、君の内容は」
「ええ……」
「君は辛い目に遭ってるんだよ、生きてて。だけどそれを意識できないから、お話として辛いことを考えて、それを読んで泣いてる。そして自殺しようとする。これは、普通だったら、他者に『死にたい』って訴える部分の代わり。で、誰かが助けてくれる。つまり君は死ぬほど辛いから、誰かに助けて欲しいんだ。助けてくれる人の存在を空想して嬉しくなって、泣くんだ。最終的には。つまりそれは、辛い目から解放されるということでもあるから」
「そんな学部生じゃなくて高校生でもできるような分析しないでくださいよ。本当によくあるパターンで、ただの趣味です!」
「でも、あきっぽくてめんどうくさがりの君が、ずーっと続けてる唯一のことだ。その上、明るい顔が大得意の君が、素直にいつでも泣ける。かなり頻繁に書きながら泣く。感情表出を、書くことで行っているってことだ。もっと言うと、それ以外に表す方法を、君は持っていないんだ」
「そうかなぁ。そんなこと言ったら、ひどい時なんて、毎日辛いってことになっちゃいますよ? それも半年以上!」
「半年以上辛い日々を送り、多忙になり、感情表出する文章表現すらできなくなり、自殺未遂。一般的な自殺の過程と重なる」
「けど書くの楽しいんだから、辛い日々なんか送ってないと思うんですけど」
「辛い日々を送ってるから、書くのが楽しいんでしょ?」
「えー?」
「まぁでも一つだけ、自殺予防方法ができたね。とにかく、書くべきだ」
「はぁ」
「ただし、一日、長くて二時間くらいね。三日も書いちゃダメだ」
「え!? どうしてですか!?」
「――規則正しい生活を送らないと、社会人は難しいよ」
「まぁ、それもそうですね!」
「うん。決して君が熱心すぎるから警戒しているわけじゃあない」
「警戒?」
「ああ、なんでもない」
このようにして、その日の面談は終わった。
以降は、小説の話を繰り返し繰り返しすることになった。
「と、まぁこんな感じです」
「ふぅん。いくつか質問していい?」
「はい!」
「楽しい?」
「すごく楽しいです。世界で一番楽しいです」
「書けなくなっちゃう時とかないの?」
「基本、指をキーボードに載せれば何かしらは書けますよ。何も思い浮かべてなくても。ただ、ちゃんと書きたいことがあって書く、っていう意味だと、書く気力が失せちゃう時があります。これだけは、あきるのとはちょっと違うんですよね。長編を書いてて途中であきるっていうのはあるんですけど、こう、疲れちゃった、って感じになるんです。それが悪化すると、一日中寝てて、書きたいことを考えることすらなくなっちゃうんですよね。そうなると、もう書く事自体に興味がない感じになっちゃって、ベッドから出られなくて。ずーっと横になってます。別に書き終わった後とかじゃないんですけどね、なんか急にこう、多分絶望感みたいなのがあって、無理だなぁって感じで、興味が無くなっちゃうんです。うん、あれは、寝たきりってやつですね」
「すごいなぁ。小説家って感じ! 書きながら泣いたり怒ったり笑ったりするの?」
「ああ、ものすごくしますよ! 結構悲しい話を書く事が多いので、ボロボロ泣きながら書くんです。多分、人生で泣いたことのある回数の五分の四は、小さい頃を除けば、書いてる時ですね!」
「悲しい話ってどんなの? 漠然とでいいから、主人公と内容教えてよ」
「んー、無気力な主人公とか、あとは、天才だけど気づいてない主人公とか、そういうのがすごく好きです。ま、無気力系が一番多いかな。なんにもしたくないのに、巻き込まれちゃうんです。ここまでは、結構よくあるんですよ。登場人物のパターンとして」
「へぇ。それで? あんまり無い部分がどこかにあるんでしょ?」
「はい。普通は、主人公の才能で、乗り切るんです。でも、私が書くと、いつも主人公は死にたいほど辛い目に遭って、自殺を考えて、周囲の誰かに救出されるんです。そこに感動して泣いちゃうんです。あと、死にたいほど辛いところを考えてる時も泣いちゃうんです。この二つ、泣きながら打つんです。それで、手直しするときに、毎回このパターンだし、何回も使ってるし、そもそも人気のない展開だし、ということで、よくあるパターンに修正するんです。主人公に解決させる展開に、書き直してます! そういう時は、笑ってますね」
「どのくらいのペースで書くの?」
「集中してる時は、三日くらい寝ないで食べないで書いて、書き終わります」
「集中してない時は?」
「暇な日に、まぁ二時間とか、いや、暇な場合13時間くらいですかね!」
「小説家になろうとは思わないの?」
「思っては止め、思っては止め、で、今回、内定もらって本格的に止めることにしました」
「どうして?」
「趣味で良いかなって」
「止める度に、趣味にしてるの?」
「はい。だって、そういう時って、賞とか選考とかで、良い線いった後とかだから、もうここまでで満足かなぁって」
「それだけじゃなくて、大抵その直後に忙しくなってるよね。趣味にして、書く暇はあるの?」
「それが、あんまり無くなっちゃうんですよね。だた、忙しいのも原因で、そういう時って、書く事に興味消失してる寝たきり、みたいな休日を過ごすから、気づくと書かなくてもいられるようになるんです」
「――で、大体その後で、自殺に失敗してるんだ?」
「へ? ああ、まぁ、時期的にはそうなりますね」
「もっと早くこの話を聞くべきだったみたいだ。てっきり、見知らぬ人からの評価の問題だと思ってたけど、違うな」
「えっと、どういうことですか?」
「君は、本当は自分が無気力であることや、天才だということを知っているんだ。後者は勘違いまで、そのまんま。とっても基本的な、投映だ」
「違いますよ! ネットで大人気のパターンなんです!」
「よく知らないけど、人気の部分は、そういう人々が、困難に対処する部分じゃないの?」
「ま、まぁ、そうですけど……」
「人気ないのに、辛い目に遭って自殺しようとして助けられるんでしょ、君の内容は」
「ええ……」
「君は辛い目に遭ってるんだよ、生きてて。だけどそれを意識できないから、お話として辛いことを考えて、それを読んで泣いてる。そして自殺しようとする。これは、普通だったら、他者に『死にたい』って訴える部分の代わり。で、誰かが助けてくれる。つまり君は死ぬほど辛いから、誰かに助けて欲しいんだ。助けてくれる人の存在を空想して嬉しくなって、泣くんだ。最終的には。つまりそれは、辛い目から解放されるということでもあるから」
「そんな学部生じゃなくて高校生でもできるような分析しないでくださいよ。本当によくあるパターンで、ただの趣味です!」
「でも、あきっぽくてめんどうくさがりの君が、ずーっと続けてる唯一のことだ。その上、明るい顔が大得意の君が、素直にいつでも泣ける。かなり頻繁に書きながら泣く。感情表出を、書くことで行っているってことだ。もっと言うと、それ以外に表す方法を、君は持っていないんだ」
「そうかなぁ。そんなこと言ったら、ひどい時なんて、毎日辛いってことになっちゃいますよ? それも半年以上!」
「半年以上辛い日々を送り、多忙になり、感情表出する文章表現すらできなくなり、自殺未遂。一般的な自殺の過程と重なる」
「けど書くの楽しいんだから、辛い日々なんか送ってないと思うんですけど」
「辛い日々を送ってるから、書くのが楽しいんでしょ?」
「えー?」
「まぁでも一つだけ、自殺予防方法ができたね。とにかく、書くべきだ」
「はぁ」
「ただし、一日、長くて二時間くらいね。三日も書いちゃダメだ」
「え!? どうしてですか!?」
「――規則正しい生活を送らないと、社会人は難しいよ」
「まぁ、それもそうですね!」
「うん。決して君が熱心すぎるから警戒しているわけじゃあない」
「警戒?」
「ああ、なんでもない」
このようにして、その日の面談は終わった。
以降は、小説の話を繰り返し繰り返しすることになった。
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