声だけカワイイ俺と標の塔の主様

鷹椋

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第1章 声だけカワイイ俺は廃嫡される

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 ゼオは俺の専属従者だ。
 歳は1つ上の17。艶のない黒髪に灰色の目をしていて、雰囲気はなんとなく猫っぽい。身長は俺よりやや高く、そして意外にも力持ちだ。そんなに筋肉がついているように見えないのに、自分とさほど体格の変わらない俺を平気で持ち上げてしまう。

 俺たちの出会いは、2年半ほど前。
 領地内にある森の中で血まみれで倒れていたゼオを俺が偶然見つけ、屋敷に連れ帰って介抱したのが始まりだ。
 治療は上手くいき、元気になって良かったなと思っていたら、

「あのさあ、助けたなら最後まで責任もって面倒見るべきじゃない?」

 と、何故か長々と説教され、半ば強引に雇わされて、そのまま彼は俺の従者に収まってしまった。
 それから少しして、俺は外出を完全に禁じられ、屋敷に閉じこもるようになった。
 まだ嫡子のままだったから、使用人に表立って無礼な態度をとられることはなかったけれど、腫れ物のように扱われたり、憐れむような視線を向けられるのが億劫で、俺はそれまで付けていた従者をすべて外したのだが、ゼオだけは傍に残した。
 勝手に外せばまた「無責任だ」と怒られそうだったし、俺に対して砕けた態度で接してくるゼオのことは、使用人というより兄弟のような存在であり、また友人のような存在だと思っていたから。
 今となっては、この屋敷の中で唯一まともに会話ができる相手。それがゼオ。


「――って、ことがあって」

 体を起こし、ソファに座りなおした俺は、ゼオが淹れてくれた紅茶を飲みながら、父の執務室を訪れてからのことを語った。
 隣に座り、同じく紅茶を片手に、うんうんと時折相槌を挟んで大人しく聞き役に徹していたゼオは、俺が話し終えると不愉快そうに顔をしかめる。
 あー、うん。ゼオならそういう顔をすると思ってた。

「俺はこんな声だ。仕事に社交と、多くの人に関わらなきゃならない貴族の当主は務まらないだろうから、跡取りから外されるのは、まあ、仕方ないと思う」

 何かにつけ他者を蹴落とそうとするドロドロとした貴族社会だ。俺みたいにあからさまな弱みがあれば、すぐに多方面から攻撃されるだろう。
 だからこそ、父も早い段階で俺を隠したのだ。

「でもさ、代わりの後継がアレで、しかも俺に奴らを支えろとか……無理だろ」

 アレとは無論エリオット・ノウルライのことである。
 外に出られない俺の代わりに、世間一般の必要な情報を収集してくれているのはゼオだ。エリオットの悪評もゼオから聞いたものなので、当然彼も、俺の言いたいことを理解する。
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