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第2章 声だけカワイイ俺は過保護な元従者と新たな国へ
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〈標の塔〉に住み着くなんて、そんなのアリなのか?
しかも、簡易テントのようなものを持参して泊まり込むのではなく、塔の中に部屋を拵えてもらうなんて。前代未聞だろう。
「……ちょっと待て。残りの滞在可能期間はどうなってる? 13歳の時に入ったんだろ? 1000日っていうのは、」
「今16歳で、とっくに1000日越えてるけど、追い出される気配はないよ」
マジか。そして侯爵子息とまさかの同い年。
「侯爵様もね、最初はどうにか家に連れ戻そうとしてたんだけど。アルベルト様が塔内の居住空間でなら安心できて、そこにいる間だけ魔眼が解除できるって分かってからは、諦め気味みたい。侯爵子息のアルベルト様がこの〈標の塔〉に住むのも、スティビア王国としては決して悪くないって」
3つの国に面し、そのいずれにも属してないはずの森にある〈標の塔〉。
それが、アルベルトが部屋を貰って住み始めたことで「〈標の塔〉はスティビア王国のもの」と主張できなくもないのか。
うわー……後々、国家間でもめ事が起こる予感しかしないんだが。
「そういうわけで、アルベルト様はここで暮らしてる。ほとんどの時間、居住空間にいるんだ。時々塔の中を歩き回ることはあるけど、塔の外にでることは滅多にないかな。だから私の仕事は、アルベルト様の生存確認とお世話と、あとは外との――というか侯爵様ね、その連絡係。優秀な魔法使いだから、引き籠っていても色んな依頼が舞い込むんだよね。『あの薬作ってほしいです』とか『強い魔物が出ました、助けてください』とか」
「その……目は? 大丈夫なのか?」
「魔眼発動時は、今までどおり見えすぎるくらい見えてるって。でも居住空間にいて解除されてる時は、だいぶ視力が落ちてるね。かなりの近視。腕を伸ばしても触れない位置――それくらい離れていれば、こっちの姿は本当にぼやーっとしか見えないの」
「……」
「ね? どうかな? クラヴィスなら絶対バレないよ。一緒に働いてくれない?」
「俺、使用人の仕事なんてやったことないぞ……」
「大丈夫。アルベルト様、他人に触られるの嫌がるから、着替えも入浴も、全部自分でやるんだ。 〈標の塔〉の効果なのか、ささいな汚れくらいなら、時間が経つと勝手に綺麗になっちゃうから、洗濯も掃除もそんなに頻繁にやらなくていいし。私なんて、料理やお茶を用意して、お出しするくらいしかお世話らしいお世話してないよ!」
そんな胸を張って堂々と言うことでもないと思う。
「……男手が必要とか言ってたのは何? 嘘?」
「うぇっ!? ち、ちがうよ!? ほんとに困ってたんだってば! あのね、少し前までは私の他にもう1人働いてた子がいたんだけど。その子、1000日を越えて〈標の塔〉に入れなくなっちゃったのね。買い出しとかほとんど任せてたから、今ちょっと大変で」
「買い出しって……雇い主は侯爵家だろ? マジックバッグくらい用意してくれないのか」
「貰ったよ。貰ったんだけどさ……マジックバッグって高価じゃん? レアアイテムじゃん? 私みたいな小娘がそんなもの持って買い物してたら、高確率で面倒なやつらに目をつけられるんだよ。私だって戦えないわけじゃないけど、大きい男の人とか、複数人で来られると、どうしようもないし。持ち歩くのやめたのに、未だに絡まれるんだから。クラヴィスも見てたでしょ?」
ああ、それであの男たちに囲まれていたのか……
「その点、あなたは適任。男で、剣が使えて、しかも強そう! マジックバッグ持ってても大丈夫な人ー!」
しかも、簡易テントのようなものを持参して泊まり込むのではなく、塔の中に部屋を拵えてもらうなんて。前代未聞だろう。
「……ちょっと待て。残りの滞在可能期間はどうなってる? 13歳の時に入ったんだろ? 1000日っていうのは、」
「今16歳で、とっくに1000日越えてるけど、追い出される気配はないよ」
マジか。そして侯爵子息とまさかの同い年。
「侯爵様もね、最初はどうにか家に連れ戻そうとしてたんだけど。アルベルト様が塔内の居住空間でなら安心できて、そこにいる間だけ魔眼が解除できるって分かってからは、諦め気味みたい。侯爵子息のアルベルト様がこの〈標の塔〉に住むのも、スティビア王国としては決して悪くないって」
3つの国に面し、そのいずれにも属してないはずの森にある〈標の塔〉。
それが、アルベルトが部屋を貰って住み始めたことで「〈標の塔〉はスティビア王国のもの」と主張できなくもないのか。
うわー……後々、国家間でもめ事が起こる予感しかしないんだが。
「そういうわけで、アルベルト様はここで暮らしてる。ほとんどの時間、居住空間にいるんだ。時々塔の中を歩き回ることはあるけど、塔の外にでることは滅多にないかな。だから私の仕事は、アルベルト様の生存確認とお世話と、あとは外との――というか侯爵様ね、その連絡係。優秀な魔法使いだから、引き籠っていても色んな依頼が舞い込むんだよね。『あの薬作ってほしいです』とか『強い魔物が出ました、助けてください』とか」
「その……目は? 大丈夫なのか?」
「魔眼発動時は、今までどおり見えすぎるくらい見えてるって。でも居住空間にいて解除されてる時は、だいぶ視力が落ちてるね。かなりの近視。腕を伸ばしても触れない位置――それくらい離れていれば、こっちの姿は本当にぼやーっとしか見えないの」
「……」
「ね? どうかな? クラヴィスなら絶対バレないよ。一緒に働いてくれない?」
「俺、使用人の仕事なんてやったことないぞ……」
「大丈夫。アルベルト様、他人に触られるの嫌がるから、着替えも入浴も、全部自分でやるんだ。 〈標の塔〉の効果なのか、ささいな汚れくらいなら、時間が経つと勝手に綺麗になっちゃうから、洗濯も掃除もそんなに頻繁にやらなくていいし。私なんて、料理やお茶を用意して、お出しするくらいしかお世話らしいお世話してないよ!」
そんな胸を張って堂々と言うことでもないと思う。
「……男手が必要とか言ってたのは何? 嘘?」
「うぇっ!? ち、ちがうよ!? ほんとに困ってたんだってば! あのね、少し前までは私の他にもう1人働いてた子がいたんだけど。その子、1000日を越えて〈標の塔〉に入れなくなっちゃったのね。買い出しとかほとんど任せてたから、今ちょっと大変で」
「買い出しって……雇い主は侯爵家だろ? マジックバッグくらい用意してくれないのか」
「貰ったよ。貰ったんだけどさ……マジックバッグって高価じゃん? レアアイテムじゃん? 私みたいな小娘がそんなもの持って買い物してたら、高確率で面倒なやつらに目をつけられるんだよ。私だって戦えないわけじゃないけど、大きい男の人とか、複数人で来られると、どうしようもないし。持ち歩くのやめたのに、未だに絡まれるんだから。クラヴィスも見てたでしょ?」
ああ、それであの男たちに囲まれていたのか……
「その点、あなたは適任。男で、剣が使えて、しかも強そう! マジックバッグ持ってても大丈夫な人ー!」
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