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第2章 声だけカワイイ俺は過保護な元従者と新たな国へ
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「……絶対、もっと適任者がいると思う」
呟いた瞬間、ふと思い出す。
そうだ、あの少年は?
中庭でジャックに声をかけていたピンク髪の少年。小柄で、童顔で、可愛らしく、ついでに愛想も良さそうだった。
それに、あの時、彼のまわりには他にも仲間っぽい男が数人いたように見えた。交友関係が広いタイプなのかもしれない。なら、彼自身が戦えなくても、ピンチの時は仲間の誰かが助けてくれそうだ。マジックバッグを持っていても大丈夫なのでは?
ひとつ頷いた俺は、そのことをミリーに伝えてみる。
「なあ。俺、適任者に心当たりがあるんだけど」
「え? 誰? 誰?? そんな人いた!?」
「さっき中庭で見かけたんだ。名前は知らないけど、ピンク髪の、」
そこまで言った途端、ミリーが、すんと真顔になる。
「駄目。あの子はちょっと……その、性格に難がある」
「? そうなのか?」
何故か遠い目をしているミリーは、ふいに俺をじっと見つめてきて、
「……あなたもその顔なら気をつけた方がいいと思う」
? なんの話??
「とにかくっ。今のところ、クラヴィス以上の適任者はいないんだってば。……それにあなた、貴族でしょ?」
まさかバレているとは思わず、俺は固まった。
おかしい。ここ数年、ゼオとばかり話していたから、その影響で俺の喋り方は貴族とは思えないほど崩れているはず。勿論、意識すれば貴族らしい丁寧な話し方もできるが。今はそんなことしていないのに。
混乱している俺を見て、ミリーはふふんと得意げに笑う。
「上手く隠してるつもりでも、何気ない仕草でちゃんと教育を受けてきた人だって分かっちゃうんだよ。だからさ、あなたなら侯爵子息の使用人もこなせるはず!」
「いや……無理だろ。いくら目が悪いって言ったって、」
「絶対大丈夫だから! 私を信じて! 多少の違和感を相殺できるくらい、あなたの声って可愛いから!」
嬉しくねえ。
頭痛がして俺は頭を押さえる。そもそも、だ。
「……あんたさ、俺のこと気持ち悪くないの? この姿で、こんな声だぞ」
「え? あー、まあ、変わってるなぁとは思うけど。ただそれだけっていうか、そんなことより力を貸してほしいっていうかっ」
ミリーは顔の前で両手を合わせる。
「1回! 1回会ってみて! 絶対バレないと思うからー!」
俺はため息を吐く。
「男嫌いなんだろ。バレたら不敬だなんだって、罪に問われたりしないか」
「そこは心配しないで。侯爵様も、アルベルト様の男嫌いをなんとかしたいって思ってるみたいだから。苦手克服の一環、ってことにすれば、いざという時でも侯爵様がこっちの味方してくださるよ!」
ミリーは服のポケットから、淡い黄色と緑色の紐でまとめてある小さな紙の束とペンを1本取り出すと、サラサラとそこに何かを書いていく。
そして書き終えると、その紙を束からビリっと破きとった。瞬間、紙は黄色の小鳥に変わり、そのままどこかへ飛んでいく。
「……文鳥?」
「そう。雇用が決まったらクラヴィスにもあげるね!」
そんな会話をしているうちに、どこからか飛んできた緑色の小鳥がミリーの手にとまる。
ふっ、と一枚の紙になったそれをミリーは広げ、一読して、
「アルベルト様、今から顔合わせしてもいいって!」
今からかよ……
俺はがくっと肩を落とす。もうどうにでもなれ。
呟いた瞬間、ふと思い出す。
そうだ、あの少年は?
中庭でジャックに声をかけていたピンク髪の少年。小柄で、童顔で、可愛らしく、ついでに愛想も良さそうだった。
それに、あの時、彼のまわりには他にも仲間っぽい男が数人いたように見えた。交友関係が広いタイプなのかもしれない。なら、彼自身が戦えなくても、ピンチの時は仲間の誰かが助けてくれそうだ。マジックバッグを持っていても大丈夫なのでは?
ひとつ頷いた俺は、そのことをミリーに伝えてみる。
「なあ。俺、適任者に心当たりがあるんだけど」
「え? 誰? 誰?? そんな人いた!?」
「さっき中庭で見かけたんだ。名前は知らないけど、ピンク髪の、」
そこまで言った途端、ミリーが、すんと真顔になる。
「駄目。あの子はちょっと……その、性格に難がある」
「? そうなのか?」
何故か遠い目をしているミリーは、ふいに俺をじっと見つめてきて、
「……あなたもその顔なら気をつけた方がいいと思う」
? なんの話??
「とにかくっ。今のところ、クラヴィス以上の適任者はいないんだってば。……それにあなた、貴族でしょ?」
まさかバレているとは思わず、俺は固まった。
おかしい。ここ数年、ゼオとばかり話していたから、その影響で俺の喋り方は貴族とは思えないほど崩れているはず。勿論、意識すれば貴族らしい丁寧な話し方もできるが。今はそんなことしていないのに。
混乱している俺を見て、ミリーはふふんと得意げに笑う。
「上手く隠してるつもりでも、何気ない仕草でちゃんと教育を受けてきた人だって分かっちゃうんだよ。だからさ、あなたなら侯爵子息の使用人もこなせるはず!」
「いや……無理だろ。いくら目が悪いって言ったって、」
「絶対大丈夫だから! 私を信じて! 多少の違和感を相殺できるくらい、あなたの声って可愛いから!」
嬉しくねえ。
頭痛がして俺は頭を押さえる。そもそも、だ。
「……あんたさ、俺のこと気持ち悪くないの? この姿で、こんな声だぞ」
「え? あー、まあ、変わってるなぁとは思うけど。ただそれだけっていうか、そんなことより力を貸してほしいっていうかっ」
ミリーは顔の前で両手を合わせる。
「1回! 1回会ってみて! 絶対バレないと思うからー!」
俺はため息を吐く。
「男嫌いなんだろ。バレたら不敬だなんだって、罪に問われたりしないか」
「そこは心配しないで。侯爵様も、アルベルト様の男嫌いをなんとかしたいって思ってるみたいだから。苦手克服の一環、ってことにすれば、いざという時でも侯爵様がこっちの味方してくださるよ!」
ミリーは服のポケットから、淡い黄色と緑色の紐でまとめてある小さな紙の束とペンを1本取り出すと、サラサラとそこに何かを書いていく。
そして書き終えると、その紙を束からビリっと破きとった。瞬間、紙は黄色の小鳥に変わり、そのままどこかへ飛んでいく。
「……文鳥?」
「そう。雇用が決まったらクラヴィスにもあげるね!」
そんな会話をしているうちに、どこからか飛んできた緑色の小鳥がミリーの手にとまる。
ふっ、と一枚の紙になったそれをミリーは広げ、一読して、
「アルベルト様、今から顔合わせしてもいいって!」
今からかよ……
俺はがくっと肩を落とす。もうどうにでもなれ。
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