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〜追放編〜
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しおりを挟む━━長い夢を見ていた気がする。
誰かが言い争っている声が聞こえる。
知っている声だ。
「あんまりよ!こんな事って…!!」
「だがどうする事も出来ない!隠してなど置けないだろう!」
「でもまだ成人もしていないのですよ!何とかならないのですか??」
「俺だって何とか出来るならしているさ!でもどうにもならないんだ!!仕方がないだろう!!」
ああ、この声は父さんと母さんだ。
何でこんなに言い争っているんだろう。いつも仲が良くて見ているこっちが恥ずかしくなるくらいなのに…。
(喧嘩をしたら早く仲直りしなさいっていつも母さんが言ってたし、喧嘩を辞めさせなきゃ…。)
そう思って僕は重いまぶたを必死に上げて声を出した。
「……けんか…は、…だ、め……だよ…?」
思ったよりも掠れて聞き取り辛い、小さな声しか出なかった。
それでも両親はちゃんと聴こえたようで、こちらを見てくれた。
「ああ、目が覚めたのね。良かった…。」
そう言って母さんは僕を抱きしめてくれたけれど、その顔は涙に濡れており、僕を抱く腕も小刻みに震えていた。
父さんは噛み締めるように歯を食いしばって、耐えるように握りしめた手は、見ているこちらの方が痛そうなほどだった。
両親のただならぬ様子に、どうしたのか聞こうと思って口を開いたら、けほっと小さく咳が出た。
「…おみず、…ちょうだい?」
そう言うと母さんが涙を拭いながら、ええ、そうね。と僕を抱き起こし、父さんが無言で背中に枕を差し込んで、僕をベットに起こしてくれた。
その時、視界に見慣れない色が入り込む。
「…え??」
(どういうこと??何で僕の髪の毛黒いの??これじゃまるで……っっ!!)
━闇のエルフ━
その言葉が頭をよぎった。
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