光の記憶 ―― AIアイドルと、静かな整備士の三年間の記録 ――

明見朋夜

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第8話 折原の感情

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「しばらく、ライブ活動は控えます。」



 折原はエリーの目を見ることなく、コーヒーの入ったマグカップを持ち上げながら言った。ライブを楽しんでいたエリーの反応を、真正面で受け止めるのを避けるように。



「えーー!? なんでー!?」



 想像通りの反応だ。エリーの声が部屋中に響いた。



 折原は気まずさを隠すように、ノートパソコンの画面へと視線を移した。



「ライブだと君の負担が大きすぎるんです。」



「ちょっと寝れば回復するじゃん!」



 確かに、メンテナンスをすれば通常通りに戻る。だが、メンテナンスにかかる時間とボディへの負担は、チームの想定を大きく超えていた。



 視線を外したまま、折原は言う。



「今後は、以前のような配信やテレビ出演を中心に戻します。未発表の曲もいくつかあるので、それを収録してアルバムを出しましょう。」



「……歌の収録は嬉しいけど。ライブも良い感じだったじゃん。」



――ライブは良い感じだったかもしれませんが、君が"良い感じ"じゃないんですよ。



 エリーが彼の隣まで回り込み、折原の腕を掴んだ。折原は広報チームとのチャットを続けようとするが、エリーの手に阻まれた。



「なんか隠してるでしょ!」



「何も隠してません!」



 エリーの腕を振り払い、再びキーボードを叩く。



――君のためなのに。



 その言葉が喉の奥まで出かかった。



 大きく息を吐いて、折原は立ち上がる。真っすぐに彼女の瞳を見る。



「プロジェクトチームの一員として伝えます。これはチーム全体で結論を出した正式な決定です。エリーには、これまで通りチームが立てたスケジュールに従ってもらいます。そしてマネージャーとしても、今のペースでライブを続けるのは反対です。さっきも言いましたが、ライブは君の負担が大きすぎるんです!」



 我慢していた感情を吐き出すように、折原は一息で言い切った。その表情に圧倒され、エリーは言葉を失う。



「……怒んなくてもいいじゃん。」



 折原は目を伏せ、深呼吸してから柔らかい声で言う。



「怒ってません。君のために言ってるんです。だから、まずは集中メンテナンスをするために、ラボに戻りましょう。」



 エリーは小さく唇を噛み、視線をそらした。その横顔は、どこか拗ねた子どものようだった

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