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7話 家までくるのはやめてください
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「リコ、お母さん仕事行ってくるから。何かあったら連絡してね」
「うん」
リコは自室のベッドでうずくまりながら返事をした。
リコの返事を聞くと、母の恭子は心配そうな表情を残し部屋の戸を閉めた。
ここ数日の出来事で学校に行く気になれず、母に学校を休むと伝えた。
『…なんで見えちゃったんだろ』
『国家機密てなんだよ』
『いっそのこと、記憶消してもらった方が楽なのかも…』
色んな事を考えたが答えはでなかった。
「…少し寝よう」
リコは布団を頭からかぶり、現実逃避の為に…寝た。
目を覚ましてリコは布団の中でスマホを確認した。
15時になろうとしていた。
「寝すぎた」
何か食べようと部屋を出て、階段を何段か降りると人の話し声が聞こえた。
祖母と…男の声だった。
祖母のご近所友達だろうと、気にせず台所に向かう。
足音で気づいたのか、祖母に呼ばれた。
「さとこちゃん、学校の方がいらっしゃってるわよ」
『サトコじゃないから…』
祖母は、リコをサトコと呼んでいる。リコにとっての小さなストレスだった。
「お饅頭もいただいたの」
嬉しそうな祖母の声。
『学校の人って誰よ』
台所と居間は繋がっており、相手から見えないだろう位置からそっと居間の様子をみた。
『…誰だ!?』
祖母の向かいには、男性が座っていた。祖母の陰に隠れて顔は見えない。
「このお店のお饅頭はおいしいですね。いくつか試食させてもらったんですよ」
「そうなんですよ。お饅頭もお団子もおいしくて」
「では、次はお団子を買ってみます」
『イケボだ…』
リコは知っていた。この声を。初めて黒いものを見たときに居た“本部の人”
『なんで家までくるの…』
リコは階段を数段上がり、自室に戻ろうとした。
「さとこちゃん、降りてらっしゃい」
祖母の声。
逃げられなかった。
リコは諦めて、階段を降りた。
居間に入ると、イケボ男性が立ち上がった。
スーツ姿。あのときと同じ、軍服みたいなデザイン。
顔は笑ってるのに、眠そうで、でもどこか子どもみたいに澄んでいる瞳。
「お久しぶりです。高萩さん」
丁寧な口調。
祖母の前では、完全に「学校関係者」の顔だった。
「……久しぶりです」
リコは棒読みで返した。
祖母が嬉しそうに言う。
「さとこちゃん、この方、学校の先生ですって。心配して来てくださったのよ」
『先生!?嘘つけ!おばあちゃんも、この軍服みたいな恰好の人を先生と信じないでよ』
イケボ男性が柔らかく笑う。
「体調はどうですか? 担任の鹿島から、今日は欠席だと聞きまして」
「あ、えっと……ちょっと、その……」
「そうよねぇ。急に引っ越してきて疲れが出たのかしら。水海道先生、わざわざお見舞いに来てくださって。優しい先生がいる学校で良かったわね」
『おばあちゃん、この人「先生」じゃないし、お見舞いでもないよ!』
リコは叫びたい衝動を抑え、お茶のおかわりを淹れに行こうとする祖母を見送った。
リコとイケボ男性、二人きり。
沈黙。
…
イケボ男性が、先に口を開いた。
「改めまして。水海道悠生です。」
そして深々と頭を下げた。
「……高萩里子です」
「知ってます」
『当たり前だろ』
水海道は、テーブルの上のお饅頭を一つ取った。
「美味しいですね、これ」
「……それだけ言いに来たんですか?」
リコの声が少し尖る。
水海道は、お饅頭を食べ終えてから、静かに言った。
「今日、部活動に参加してください」
「……は?」
リコは耳を疑った。
「学校、休んでるんですけど」
「知ってます」
「なんで休んでるのに、部活行かなきゃいけないんですか!?」
リコの声が大きくなった。
「いいですか、高萩さん。あなたが所属したのはただの部活ではありません」
「……それは、聞きましたけど……」
「学校を休むのは、あなたの自由です。ですが『部活動』に休みはありません」
水海道の口調は優しかったが、その言葉はリコに刺さった。イケボだったからかもしれない。
「意味わかんない!」
水海道は、スマホを取り出してリコに見せた。
「見えてしまった以上、関わらないという選択肢はありません。あなたが何もしなくても、侵蝕体はあなたに寄ってきます」
「……それって、脅し?」
「事実です」
画面には、地図が表示されている。
リコの家の周辺に、黒い点がいくつも浮かんでいた。
「これ……」
「侵蝕体の反応です。あなたの家の周り、増えてます」
リコの背筋が凍った。
水海道が、スマホをしまう。
「放っておくと、ご家族にも影響が出ます。お母様も、おばあ様も」
「……卑怯」
「そうかもしれませんね」
水海道は、あっさり認めた。
「でも、事実なので」
リコは、拳を握りしめた。
水海道が立ち上がる。
「着替えてすぐに、第二資料棟へ来てください」
「……行かなかったら?」
「迎えに来ます」
即答だった。
その時、祖母が台所から戻ってきた。
「お茶、入れましたよ」
水海道は、祖母に向かって笑顔で答える。
「ありがとうございます。でも、もう失礼しますね」
「あら、もう?」
「はい。里子さん、今日は部活に来てくれるそうなので」
祖母が嬉しそうに言う。
「まあ、良かった!やっぱり学校行かないとね」
リコは、何も言えなかった。
水海道が玄関に向かう。
リコも、仕方なく見送る。
玄関先で、水海道が振り返った。
「まってますね」
その声は、優しかった。
でも、逃げ道を完全に塞ぐ優しさだった。
リコは、玄関の戸を閉めた。
「……学校は休んでるのに、なんで部活に行かなきゃならないの!?」
彼の言っている事は正しいのはわかったが、リコはどうしても納得いかず玄関で一人つぶやいた。
誰も聞いていなかった。
「うん」
リコは自室のベッドでうずくまりながら返事をした。
リコの返事を聞くと、母の恭子は心配そうな表情を残し部屋の戸を閉めた。
ここ数日の出来事で学校に行く気になれず、母に学校を休むと伝えた。
『…なんで見えちゃったんだろ』
『国家機密てなんだよ』
『いっそのこと、記憶消してもらった方が楽なのかも…』
色んな事を考えたが答えはでなかった。
「…少し寝よう」
リコは布団を頭からかぶり、現実逃避の為に…寝た。
目を覚ましてリコは布団の中でスマホを確認した。
15時になろうとしていた。
「寝すぎた」
何か食べようと部屋を出て、階段を何段か降りると人の話し声が聞こえた。
祖母と…男の声だった。
祖母のご近所友達だろうと、気にせず台所に向かう。
足音で気づいたのか、祖母に呼ばれた。
「さとこちゃん、学校の方がいらっしゃってるわよ」
『サトコじゃないから…』
祖母は、リコをサトコと呼んでいる。リコにとっての小さなストレスだった。
「お饅頭もいただいたの」
嬉しそうな祖母の声。
『学校の人って誰よ』
台所と居間は繋がっており、相手から見えないだろう位置からそっと居間の様子をみた。
『…誰だ!?』
祖母の向かいには、男性が座っていた。祖母の陰に隠れて顔は見えない。
「このお店のお饅頭はおいしいですね。いくつか試食させてもらったんですよ」
「そうなんですよ。お饅頭もお団子もおいしくて」
「では、次はお団子を買ってみます」
『イケボだ…』
リコは知っていた。この声を。初めて黒いものを見たときに居た“本部の人”
『なんで家までくるの…』
リコは階段を数段上がり、自室に戻ろうとした。
「さとこちゃん、降りてらっしゃい」
祖母の声。
逃げられなかった。
リコは諦めて、階段を降りた。
居間に入ると、イケボ男性が立ち上がった。
スーツ姿。あのときと同じ、軍服みたいなデザイン。
顔は笑ってるのに、眠そうで、でもどこか子どもみたいに澄んでいる瞳。
「お久しぶりです。高萩さん」
丁寧な口調。
祖母の前では、完全に「学校関係者」の顔だった。
「……久しぶりです」
リコは棒読みで返した。
祖母が嬉しそうに言う。
「さとこちゃん、この方、学校の先生ですって。心配して来てくださったのよ」
『先生!?嘘つけ!おばあちゃんも、この軍服みたいな恰好の人を先生と信じないでよ』
イケボ男性が柔らかく笑う。
「体調はどうですか? 担任の鹿島から、今日は欠席だと聞きまして」
「あ、えっと……ちょっと、その……」
「そうよねぇ。急に引っ越してきて疲れが出たのかしら。水海道先生、わざわざお見舞いに来てくださって。優しい先生がいる学校で良かったわね」
『おばあちゃん、この人「先生」じゃないし、お見舞いでもないよ!』
リコは叫びたい衝動を抑え、お茶のおかわりを淹れに行こうとする祖母を見送った。
リコとイケボ男性、二人きり。
沈黙。
…
イケボ男性が、先に口を開いた。
「改めまして。水海道悠生です。」
そして深々と頭を下げた。
「……高萩里子です」
「知ってます」
『当たり前だろ』
水海道は、テーブルの上のお饅頭を一つ取った。
「美味しいですね、これ」
「……それだけ言いに来たんですか?」
リコの声が少し尖る。
水海道は、お饅頭を食べ終えてから、静かに言った。
「今日、部活動に参加してください」
「……は?」
リコは耳を疑った。
「学校、休んでるんですけど」
「知ってます」
「なんで休んでるのに、部活行かなきゃいけないんですか!?」
リコの声が大きくなった。
「いいですか、高萩さん。あなたが所属したのはただの部活ではありません」
「……それは、聞きましたけど……」
「学校を休むのは、あなたの自由です。ですが『部活動』に休みはありません」
水海道の口調は優しかったが、その言葉はリコに刺さった。イケボだったからかもしれない。
「意味わかんない!」
水海道は、スマホを取り出してリコに見せた。
「見えてしまった以上、関わらないという選択肢はありません。あなたが何もしなくても、侵蝕体はあなたに寄ってきます」
「……それって、脅し?」
「事実です」
画面には、地図が表示されている。
リコの家の周辺に、黒い点がいくつも浮かんでいた。
「これ……」
「侵蝕体の反応です。あなたの家の周り、増えてます」
リコの背筋が凍った。
水海道が、スマホをしまう。
「放っておくと、ご家族にも影響が出ます。お母様も、おばあ様も」
「……卑怯」
「そうかもしれませんね」
水海道は、あっさり認めた。
「でも、事実なので」
リコは、拳を握りしめた。
水海道が立ち上がる。
「着替えてすぐに、第二資料棟へ来てください」
「……行かなかったら?」
「迎えに来ます」
即答だった。
その時、祖母が台所から戻ってきた。
「お茶、入れましたよ」
水海道は、祖母に向かって笑顔で答える。
「ありがとうございます。でも、もう失礼しますね」
「あら、もう?」
「はい。里子さん、今日は部活に来てくれるそうなので」
祖母が嬉しそうに言う。
「まあ、良かった!やっぱり学校行かないとね」
リコは、何も言えなかった。
水海道が玄関に向かう。
リコも、仕方なく見送る。
玄関先で、水海道が振り返った。
「まってますね」
その声は、優しかった。
でも、逃げ道を完全に塞ぐ優しさだった。
リコは、玄関の戸を閉めた。
「……学校は休んでるのに、なんで部活に行かなきゃならないの!?」
彼の言っている事は正しいのはわかったが、リコはどうしても納得いかず玄関で一人つぶやいた。
誰も聞いていなかった。
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