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第3章
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その人影は一瞬だけきららさんと交差し、素早く離れ北へ向かい、探知範囲から消えた。
ガイさんが簡潔に告げる。
(きららが斬られた)
アポさんが応答する。
(手当てします)
(頼む)
ガイさんはその人影を追い、すぐに同じく俺の探知範囲からはずれ、追えなくなる。
俺はきららさんの方へと進む。最初は足早に歩き、倒れている姿が見えると走りだしていた。
きららさんは、いつもの衣装を着て第三階梯の姿で倒れている。
胸から腹にかけて大きな傷口が開いているのが、少し離れた場所からでもわかる。
アポさんが、腹部を手で押さえている。そこで太い血管が傷ついていて、出血を少しでも抑えようとしているのだとわかった。
だが、血はあふれ続ける。
雨に打たれたきららさんの体から、血の混じった赤い流れが小川に注いでいる。
きららさんが身をよじらせた。第四階梯に昇る。頭部がよりオオサンショウウオに近い形になり、尾が伸びる。だが、手足は長く、ヒトと同じ程度。階梯を昇る事で、より治療の術の効果を高めようとしているのだとわかった。
傷口全体は少し小さくなった。しかし、あふれる血の量はそれほど減らない。
神術の使用には高度な知性の働きと、精神の安定した状態が必要だと聞いている。他者に対してなら治療可能な重傷でも、傷つき血を大量に流して、意識が朦朧としていてはうまく傷を治せないのだろう。
きららさんは苦しそうに再び身をよじらせると、第五階梯に昇り、ヒトの大きさでほぼオオサンショウウオの姿になる。
そして傷口をさらに縮める。血の流れはややゆるやかになったが、まだ止まらない。
きららさんはしばらく口を開け閉めいていたが、大きく口を開けたままになった。体の動きが弱々しくなっていく。
俺にはきららさんが死に向かっている事がわかった。
決して長い付き合いとは言えないし、お互いをよく理解しているとも言えない。だが、短い間にも親しく会話をする機会はあったし、多少心が通じ合っていたとも思っている。
今まで身近の親しい人間の死を体験した事のない俺は、頭の中が真っ白になり、己の無力さに打ちひしがれ、自分が呼吸しているのかどうかも分からなくなる。
だが、このまま手をこまねいているわけにはいかない。
手を伸ばしてきららさんに触れる。
何か灼熱したものが体の中心から外へと放射していくのを感じ、その瞬間にきららさんの体が縮み始めた。
オオサンショウウオ本来の姿と大きさになる。
いつも落ち着いているアポさんがひどく動揺している。。
「きららさんは第五階梯までしか昇っていないはずなのですが」
そして振り返りこちらを見る。
だが、今はそれを気にしている状況ではない。
さらに精神を整え、きららさんとの心の交流を試みる。
やがて迫る死に対してあらがい、自らの体を治療しようとするきららさん心に触れる事が出来た。邪魔にならないようその動きを後押しする。
試みはうまくいって、傷口は急速にふさがり、血も止まる。
そこまでたどり着いてようやく俺は、息をした。呼吸を止めていた事にようやく気が付いた。
深く息を吸い、吐くと、意識がはっきりしてきた。
気が付くと、きららさんは第一階梯に戻っていた。
その場にすわりなおすと、
「命拾いした」
とつぶやいた。
そして頭を下げる。
「ありがとう」
ガイさんが簡潔に告げる。
(きららが斬られた)
アポさんが応答する。
(手当てします)
(頼む)
ガイさんはその人影を追い、すぐに同じく俺の探知範囲からはずれ、追えなくなる。
俺はきららさんの方へと進む。最初は足早に歩き、倒れている姿が見えると走りだしていた。
きららさんは、いつもの衣装を着て第三階梯の姿で倒れている。
胸から腹にかけて大きな傷口が開いているのが、少し離れた場所からでもわかる。
アポさんが、腹部を手で押さえている。そこで太い血管が傷ついていて、出血を少しでも抑えようとしているのだとわかった。
だが、血はあふれ続ける。
雨に打たれたきららさんの体から、血の混じった赤い流れが小川に注いでいる。
きららさんが身をよじらせた。第四階梯に昇る。頭部がよりオオサンショウウオに近い形になり、尾が伸びる。だが、手足は長く、ヒトと同じ程度。階梯を昇る事で、より治療の術の効果を高めようとしているのだとわかった。
傷口全体は少し小さくなった。しかし、あふれる血の量はそれほど減らない。
神術の使用には高度な知性の働きと、精神の安定した状態が必要だと聞いている。他者に対してなら治療可能な重傷でも、傷つき血を大量に流して、意識が朦朧としていてはうまく傷を治せないのだろう。
きららさんは苦しそうに再び身をよじらせると、第五階梯に昇り、ヒトの大きさでほぼオオサンショウウオの姿になる。
そして傷口をさらに縮める。血の流れはややゆるやかになったが、まだ止まらない。
きららさんはしばらく口を開け閉めいていたが、大きく口を開けたままになった。体の動きが弱々しくなっていく。
俺にはきららさんが死に向かっている事がわかった。
決して長い付き合いとは言えないし、お互いをよく理解しているとも言えない。だが、短い間にも親しく会話をする機会はあったし、多少心が通じ合っていたとも思っている。
今まで身近の親しい人間の死を体験した事のない俺は、頭の中が真っ白になり、己の無力さに打ちひしがれ、自分が呼吸しているのかどうかも分からなくなる。
だが、このまま手をこまねいているわけにはいかない。
手を伸ばしてきららさんに触れる。
何か灼熱したものが体の中心から外へと放射していくのを感じ、その瞬間にきららさんの体が縮み始めた。
オオサンショウウオ本来の姿と大きさになる。
いつも落ち着いているアポさんがひどく動揺している。。
「きららさんは第五階梯までしか昇っていないはずなのですが」
そして振り返りこちらを見る。
だが、今はそれを気にしている状況ではない。
さらに精神を整え、きららさんとの心の交流を試みる。
やがて迫る死に対してあらがい、自らの体を治療しようとするきららさん心に触れる事が出来た。邪魔にならないようその動きを後押しする。
試みはうまくいって、傷口は急速にふさがり、血も止まる。
そこまでたどり着いてようやく俺は、息をした。呼吸を止めていた事にようやく気が付いた。
深く息を吸い、吐くと、意識がはっきりしてきた。
気が付くと、きららさんは第一階梯に戻っていた。
その場にすわりなおすと、
「命拾いした」
とつぶやいた。
そして頭を下げる。
「ありがとう」
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