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異様な光景ばかりです
異様な光景の結婚式
しおりを挟むとある公爵家と侯爵家の結婚式 当日
ここは神聖な大聖堂。神々や天使などを描いたステンドグラスが飾られている。そんな大聖堂で結婚式が執り行われていた。
ルヴィエル公爵家とメルロム侯爵家、本日はこの国で力のある貴族の結婚式だった。そうこの大聖堂で結婚をされる両家と、その親族やご来賓の貴族などが大聖堂に居る面々である。
新郎は白いテールコート、シャツ、アスコットタイ、トラウザーズ、胸元には新婦の髪色を取り入れたチーフにカフスボタン。見ただけなら新婦の事を愛していると思うだろう。新婦の色を取り入れたのだから。
新婦は純白のマーメイドドレスで、繊細なレースと刺繍が施されており、マリアベールにもドレスと同じく繊細なレースと刺繍が施されている物だった。長く美しい髪の毛は、後れ毛を少し緩く巻き垂らして、その他はアップにして纏めて、大きく真っ白なマーガレットの髪飾りを挿している。そして大輪の百合の花を持った佇まいは、神話などの女神や聖女の様である。
そんな2人が司祭の前で誓いの言葉を唱え、新郎と新婦が誓いの口付けを交わした。様に見えたが口付けは新婦の唇の直ぐ横に口付けたのです。
まぁ、ここまでなら初々しい新郎と新婦の誓いの言葉と、誓いの口付けだろうと思われるでしょう。
本当にそこまでの行動は、新郎は良かったのです。その後の行動が悪くなるとは、新婦と両家の家族は想像していなかったのです。
結婚式なら政略結婚でも、恋愛結婚でも結婚相手と上手くやって行こう。そう思われるのが一般的でありましょうね。
普通なら祝福をされ、凄く幸せだと思われる結婚式のはず。そんな日に花嫁は1人で、結婚式に来られたご来賓や親戚にお礼や挨拶を言う対応していた。その近くには小さな少女と少年が、花嫁の行く所へ一緒に付いて来ている。まるで女神と天使が地上に降り立っている様だ。
花嫁はメルロム侯爵家のご令嬢、シャルメローラ・メルロム。
貴族社会ではあるあるの政略結婚で、ルヴィエル公爵家のアレクシスとは両家で決めた婚約であり、致し方無く結婚する事になった訳でございますわ。
そんな花嫁の旦那様になる花婿は、ルヴィエル公爵家のご嫡子であるアレクシス・ルヴィエル。そんな彼は、幼馴染みであるバードン伯爵家のご令嬢マリアナを懇意にしておられるようです。
花嫁を1人にして新郎は、大切な幼馴染みのマリアナ嬢とお喋りしたり、ダンスをしているのです。結婚式ですし花婿と花嫁でダンスを踊るのでしょうと思われますわよね?
ですが旦那様は私にダンスのお誘いもせずにおられました。
ですので本日の結婚式に花婿と花嫁のダンスは1度も踊る事なく終わったのでございます。
旦那様は大切な幼馴染みであるバードン伯爵令嬢と、ダンスを何度も何度も踊られておられましたわ。
そう…それはそれは本当にお2人ともお楽しそうにでございます。
普通に政略結婚であっても、こんなことあり得ない事でしょう。婚約が決まったのは、8年前に両家の祖父母と父母達が決めたのです。本来でしたら婚約が決まったのなら、婚約期間中にお互いにお茶会したり、オペラを観に行くなどするでしょう。
そんな交際期間など全くなく、文通さえもせずに、月日が過ぎて結婚式の当日でございました。
本日から自分の旦那様になる人が、こんな人だと知っていたら婚約なんて絶対にしないです!!ですがお会いしたのが今日が初めてなのですわ。
そう結婚式当日でございますが、それが私と婚約者様との初のお顔合わせでございます。両家の前公爵夫婦と現公爵夫婦、そのご子息(次男)とご令嬢(長女)、侯爵家の前侯爵夫婦、現侯爵夫婦、兄と弟たちは交流がありましたの。
取り敢えずは結婚式を無事に終えましょう。それが本日の最重要な事なのですから。それなのに旦那様は、まだ幼馴染みのご令嬢であるバードン伯爵令嬢と遊んでおりますの。
私の旦那様のはずなのですが非協力的です!!結婚初日でございますが、旦那様の行動は諦めるしかない様ですわ。旦那様を呆れる様に笑顔で見つめ、下を向いて溜め息をそっと吐いたのです。
旦那様が幼馴染みのご令嬢と、お楽しみなお時間をお過ごしている。
その間、その様子を見ていた花嫁の祖父母、前侯爵夫婦は射殺す様な綺麗な笑顔でありますわ。花嫁の父母の現侯爵夫婦の表情は、笑顔であるけれど凄く冷たい空気が漂っておられまして。そのご子息達も射殺す様な綺麗な笑顔でございます。
花婿の祖父母、前公爵夫婦は笑顔だけれど背後に黒いモノが。花婿の父母の現公爵夫婦は、お素敵な笑顔ですがブリザードで吹き荒れていらっしゃる様です。そのご子息(次男)とご息女(長女)は可愛らしい笑顔なのですが、眼の奥が笑ってないですわね。でも幼い女の子の年齢からして笑顔ですので上出来でしょう。
そんなご両家の表情さえ気付いておられるのか、おられていないのか分からない旦那様。
まだ幼馴染みのバードン伯爵令嬢と、お楽しそうにされております。両家とも旦那様を批難しているのを、無視してるのなら覚悟の上でなのでしょうね。
ですがお気付きでないのでございましたら、ある意味ですが旦那様は強者でございますわね。
私には旦那様の様な事は出来ませんもの。両家の空気がお悪いのですし、ご来賓の方々や親戚の皆様の表情が引きつっておられる。そんな結婚式でごさいます。
結婚式へ来て下さったご来賓の方々は、無理矢理な笑顔でございますわね。それだと花嫁や花婿の両家の親族にバレてしまいますわ。だって笑顔が引きつっておりますもの。折角、お綺麗にドレスやアクセサリーなどで着飾って、お化粧をなさって来てらっしゃるのに、皆様の表情が残念でございますわね。
そんな風に観察しながらですが、私は綺麗に微笑んでおりますわ。私の綺麗な微笑の裏と言いますか、お腹の中では旦那様に罵詈雑言でございます。ですが優雅に優しく、お客様の対応等をしておりますわ。
そんな私の側には可愛らしい女の子と少年、そして私の弟達が居ますのよ。旦那様がいらっしゃらないですが、可愛らしい子達と挨拶まわりとお喋りしてますわ。
何とか無事に結婚式を終えました。そんな疲労ばかりだった結婚式後、ルヴィエル公爵家とメルロム侯爵家がご一緒に、お食事をする事になったのです。またしても疲れる予感しかございませんわね。お夕食は後数時間で始まるのでございます。
それまで私は公爵家で与えられた部屋で、少しゆっくり休ませて頂く予定ですわ。ドレスからワンピースへ着替え、ベッドへ倒れる様に横たわりました。本当に疲れましたわ。
旦那様はまだバードン伯爵令嬢と、ご一緒な様でお元気でございますこと。まぁ…何もせずに大切な幼馴染みのご令嬢と遊んでらっしゃっただけですしね。楽しいだけで疲労などないのでございましょう。
今日の結婚式の時にバードン伯爵令嬢を見ましたが、あの伯爵令嬢は余り良くなさそうですわね。強かと言うか強欲な様に感じられますわ。そして脳内がお花畑なのでは?と思っておりますの。
ルヴィエル公爵家の前公爵夫婦と現公爵夫婦は、バードン伯爵令嬢を婚約者になさらなかった。どんなにアレクシス様が、バードン伯爵令嬢をお好きであったとしても。まぁ…私には関係のない事でありますわね。
バードン伯爵令嬢は、ダークブロンド色の髪は長く、眼がライトブラウン色のやや吊眼のキツめな感じですわね。それにお顔や年齢にお似合いにならないお化粧を施しておられます。ケバケバしいと言いますか、そんなお化粧なので毒々しくに見えるのですわ。まるで娼婦みたいなのです。多分ですが……お化粧してなければ、キツイ系の美人さんなのでは?
あの様なお化粧するくらいなら素顔の方が美人でしょうに。ドギツイって香水も残念でございますが……香水の使い方がお分かりになってないのでしょうね。少し離れた所に居られるのに、バードン伯爵令嬢が近くにいらっしゃるって分かるのです。どれだけ香水をお使いになっておられるのか。一瓶を使い切るのでしょうか……。旦那様はバードン伯爵令嬢の強烈な香水臭も平気なのでしょうね。
疲労からウトウトと眠ってしまい、侍女長のラエナに起こされ晩餐へ行く準備をしました。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
吹き荒れる晩餐会
私は疲労から晩餐へ行きたくなかったのです。ですが渋々と、そう渋々と食堂へ向かいました。絶対と言っていい程に、お食事する雰囲気と言いますか、空気がお悪いと思われるのですもの。
十中八九、旦那様の本日の問題行動が多かった事でしょう。ブリザードと落雷の予感が致します。旦那様も結婚式を終えるまで、我慢なさってくれたら良かった訳ですけれど…今日の行いは非常にね。
侍女長のラエナが張り切っております。身内だけの晩餐会なのに、私を凄く着飾らせてますわね。ベビーピンク色のフリルが幾重にもあるフンワリとしたドレス、薄くお化粧を施して、髪の毛は編み込んだ後に緩く巻いてレースのリボンで結ってあるらしいわ。
食堂へ行くとルヴィエル公爵家の先代公爵夫婦、現公爵夫婦、次男アルジェード様と長女リリシェラ様、そしてメルロム侯爵家の先代侯爵夫婦、現侯爵夫婦、嫡男と弟達が席に座られておりました。
私も席に向かいましたが、旦那様がおられないですわね。
「お待たせ致しました。遅くなり申し訳ありません」
「大丈夫よ。今日はローラちゃん疲れたでしょう?」
「折角の結婚式に愚息が他の令嬢に現を抜かしていて申し訳ない」
「本当よね、こんなに美しくて可愛らしいのに、あの子は観る眼がないわね。あの子が懇意にしてる、あの娘は裏があるだろうに」
「女性の趣味が悪過ぎて呆れた。アレクシスに公爵家は無理なんじゃないか?」
「ローラお義姉様、お兄様がご迷惑ばかりですいません。僕とシェラは彼女の事は嫌いなのですが…」
「……あのひとこわい」
「そう言えばお兄様の初恋の人は、バードン伯爵令嬢とは全く違う外見らしいですよ。ピンクゴールド色の髪の毛と言ってましたし……」
「ピンクゴールドなら妹のメロと同じじゃないか?」
「メロお姉様の髪の毛は美しいピンクゴールドですしね。そんなにピンクゴールドの髪色は少ないですよ」
「それよりも今日の事だろう!!こちらも見ていて、結婚式だけれど中止にした方が良いかと思っておった」
「そうよね…私達で決めた婚約だったから、嫌だったのでしょうしね」
「結婚初日に離縁でも、お互い良かったのかも知れないものね」
「娘に不満があるのだろうから、連れて帰ろうかと思ってますよ」
やはり疲れる晩餐になるのでしょうね。室内ですのに氷雪が吹き荒れ、雷鳴が轟いており、いつ落雷するか分かりませんもの。
「まだお兄様は、あのバードン伯爵令嬢とご一緒なのでしょうか…」
「ジェード、あのお馬鹿を呼びに行って来なさいな」
そう言われたアルジェードは、現公爵婦人の耳元へ小さい声で聞いた。
「お母様…呼びに行くのは構いませんが、不貞行為をしていたら…どうしますか?」
アルジェードから何を耳打ちされたのか、公爵婦人のお綺麗なお顔での笑顔が怖いくらいですわ。瞳の奥が光った様な……お鈍い方なら笑顔がお素敵で捉えるのでしょうけれども。
「その様な事での行為内容にもよりますが、自室での手足の拘束し謹慎。もしくは廃嫡を考えるしかないですわね」
「分かりました。お兄様が今日の日中だけの罰である様に……そう願いながら、呼びに行って参ります」
「ではジェード頼みますわよ」
「はい。お任せ下さい」
早く言うのでしたら自室で拘束され監禁と言う処罰か、廃嫡になるかも知れないそうですわよ……いい加減、目をお醒ませになって下さいませ旦那様。廃嫡でございましたら、市井で平民としてお暮しになるって事ですわよ。旦那様には無理ではございませんか?
それとも私と離縁をなされて、バードン伯爵家に婿入りなさるのでしょうか?
今日の旦那様の様子を思い浮かべて呆れながら、心の中でアレクシス様に注意をした。
アルジェード様も大変ですわね……って同情しながら、アルジェード様の背中をお見送りしました。リリシェラ様も笑顔が可愛らしいですが、その笑顔を見ている私は凍り付きそうですわ。
ずっと静かに口を挟まずに、皆様の言っておられる内容を聞いておりましたわ。もう既に晩餐の空気がお悪いのですし、静かに観察の方が飛び火とかなく済みますしね。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
その頃のアレクシス
お父様とお母様達が勝手に決めた婚約者とは、結婚式である本日まで会った事さえなかった。どんな女性かとか気にならなかったから、釣書の肖像画とかも確認してもいない。
結婚式で花嫁姿の婚約者を見た時に、凄く綺麗な女性だと思った。それに彼女が初恋の人と似ているから気になっていた。好きか嫌いかと聞かれたら、凄く好きな方(今のところ見た目だけが)だと思う。だから誓いの言葉などの時だけ隣に居たんだ。
その後は幼馴染みの伯爵令嬢でマリアナと一緒に居た。マリアナが一緒に居て欲しいと言うからだ。マリアナは幼馴染みで仲が良いだけで、婚約したいとか愛人にしたい訳でもない。妹みたいに可愛がっているだけだ。
それに幼い頃に私は、一目惚れして好きになった娘がいる。その女性と婚約したかったし、家庭を持ちたかった。
私の婚約者と同じ髪色でライトピンクゴールド色の髪に、長い睫毛、大きな瞳はライトレッド色。甘く柔らかい香り。今日から妻になる人が、初恋の人と髪色と瞳の色が同じ様な色だった。だから大人になった初恋の人も、妻の様な見た目になったのでは?と密かに思っのだ。
今、マリアナと一緒にルヴィエル公爵家のサロンでお茶をしている。サロンに控えている侍女がお茶を入れてくれたり、菓子を出してくれた。
そろそろ晩餐の時刻になるだろうと思っていた。
一応だがマリアナが女性だから、サロンの扉は開けており、サロン内に侍従や侍女も居るから大丈夫だと思っていた。
テーブルとソファがあり、私が座って居たソファの向かい側にマリアナがソファに座っていた。お茶を飲みながら、菓子を食べたり、お喋りや読書をして過ごしていた。
急にマリアナが私の隣に座って、私の方へしなだれかかる。それを見ていた従者達の表情が変わる。私は既婚者になった訳だし、マリアナに注意して離れる様に言おうとした時だった。ジェードがサロンへ来たのが。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
お兄様を呼びに
日中も晩餐前もお兄様の行動に問題があり過ぎて、僕まで疲れる事になりそうだ。でも1番お疲れになってるのは、兄嫁であるローラお義姉様だろう。
これ以上、問題を起こさないで下さいよっ!!って思いながら、お兄様を呼びにサロンへ向かった。
ちゃんとサロンの扉が開いていた。それに室内にも従者や侍女が居るから良かった。そう思ってサロンへ入って声を掛ける。
「お兄様、ちょっと良いですか?」
「ジェードなんだい?」
「アレク、ジェードがきたの?」
そう返事があったから近くへ行くと、お兄様とバードン伯爵令嬢のマリアナを見て呆れた。マリアナがお兄様の隣に座りしなだれかかっている。まるで恋人や婚約者と過ごしているかの様にである。
美人で可憐なシャルメローラ嬢が居られるのに、なぜキツイ厚化粧に、露出の多い派手で下品なドレスを着ておられるし、その上に強烈な香水臭いバードン伯爵令嬢が良いのだろうか?
お兄様の女性の趣味が悪いのか、それとも幼馴染みだから優しく付き合ってあげておられるのか?
正直に不思議だし疑問だったりする。小さい頃なら僕もバードン伯爵令嬢のマリアナと、お茶会したり読書とかして交流があった。
ある時からマリアナは、清楚感とかなく派手な露出のあるドレスやワンピースを着る様になり、化粧も厚化粧で娼婦の様になった。香水臭さも同じ時からで、お兄様であるアレクシスに色仕掛けとか、甘える様にくっつき回っていた。その眼が色欲とか、獲物を狙う眼で嫌いになった。それまではマリアナとは、僕とリリシェラは普通に交流があったのだ。
「お兄様、結婚して早々に不倫ですか?」
「そんな訳ないだろう?なに馬鹿な事を言ってるんだい」
僕がお兄様と会話しているのに、バードン伯爵令嬢が話し掛けてきた。
「あら、ジェード一緒にお茶でもどうかしら?ねぇ、アレク良いでしょう?」
そうバードン伯爵令嬢が話に割り込んできたけれど、僕は空気だと思い無視をして会話を続ける。
「バードン伯爵令嬢が、そんなにくっついていて不貞ではないと?お兄様は既婚者なのですよ?何を考えておられるのですか!!取り敢えず、ジョージはバードン伯爵令嬢をお帰しして、ララーナはお母様へ報告を」
「私はマリアナから離れようとしていたんだが、そこにジェードが来たんだよ。マリアナ離れなさい」
「嫌です!!いつも一緒に隣に座っていたではないですかぁ?それになぜ私が帰らないとならないのですの?まだアレクと仲良くお茶をしてたいわ。それに晩餐の時間になるじゃない。一緒に食べて良いでしょう?」
そう言ってバードン伯爵令嬢は、アレクシスの腕に腕を絡ませ胸を腕に押し付けていた。そう娼婦の様にしか見えないのである。
侍女のララーナは公爵婦人へ報告へ行き、公爵婦人からのお返事とご指示を聞いて戻って来たのだ。それをアルジェードに耳打ちして、サロンの片付けを始めていた。
バードン伯爵令嬢をアレクシスから引き剥がす様に、ジョージ達がバードン伯爵令嬢を取り抑えてアレクシスから離した。
「ジョージ、もう馬車を用意してあるので、バードン伯爵令嬢をお送りして。そしてお兄様、晩餐の時間でございますが、お母様より火急の要件で自室へお戻りになって下さい。そう言われております。」
淡々とバードン伯爵令嬢の事は指示を出した。ジョージ達がバードン伯爵令嬢を引きずる様にして、サロンから出て行く。
「イヤよ!!離しなさいよ!!アレク助けてぇ」
そう言って暴れるバードン伯爵令嬢。
それを冷たい眼で見送っていた。
「マリアナ、今日は遅いから帰りなさい。私も用事があるからね。そんなにずっと一緒に居られないんだよ」
そうアレクシスが優しく声を掛けるのを見て、これだからバードン伯爵令嬢が我が儘になるんだろうと思って呆れていた。
そして再度、アレクシスに声を掛けた。急がなくては、公爵婦人のお怒りが更に増すのだから、悠長にしてられないのだ。
「お兄様、お母様が直ちに自室へお戻り下さいと言われておりました。お急ぎ下さい!!処罰の内容が酷くなりますよ!!」
「ジェード、分かったよ。直ぐに自室へ向かうから気にしなくて大丈夫だよ」
そうアレクシスが困った様に微笑むが、アルジェードは心配気に見つめた。そう既にアレクシスへの処罰は決まっているのだ。アレクシスは、暫くの間は自室で手足の拘束と謹慎と言う監禁生活になる事など予想が出来ている。晩餐の時間なのに自室へと言われたのだし、自室へお戻りになったら直ぐに拘束具で繋がれ、自室での監禁生活になるであろう。
自業自得だがアレクシスは変に優しいから、それが良くないのだと何時になったら分かるのだろう。そう思いながらお兄様の背中を見送った。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
その頃のルヴィエル公爵婦人
晩餐の時刻なのにバードン伯爵令嬢と一緒に居るアレクシスへ、息子のアルジェードにお迎えと言うより忠告へ向かわせたのです。
するとアルジェードの指示で、侍女のララーナが食堂へ私に報告に来たのです。その内容をお聞きしたら、自分の息子に対して呆れるのと、情けないと思いました。
折角、息子の初恋の相手であるメルロム侯爵家へ、シャルメローラ嬢をアレクシスの婚約者として婚約を結んだのです。そのシャルメローラ嬢への申し訳なさ、そして初恋の人と結婚をしたのにバードン伯爵令嬢を優先にする、お馬鹿なアレクシスにフツフツと怒りが爆発してきましたの。
結婚式の時もバードン伯爵令嬢とご一緒に居て、ダンスも何度も踊り、シャルメローラ嬢がご来賓や親戚へ弟妹達(義弟妹も)とご一緒に挨拶へ行ってるのに、あのお馬鹿なアレクシスは気にして居ないのです。でも流石に私と少し目線が合った時に、既に処罰があると思ったでしょうが。
それなのに今もバードン伯爵令嬢とご一緒とは……どこまでお馬鹿なのでしょう?誰にでも優しいだけでは、本当に大切なモノを失くしてしまう可能性もありますのにね。
大切なモノを守る為には、いくら大切な幼馴染みであったとしても、ある程度の距離感を保つこと、そして突き放す事も大切なのです。
私はアレクシスの初恋の相手が、メルロム侯爵家のシャルメローラ嬢だと知っております。
まだアレクシスとアルジェードが幼い頃に、王城でお茶会が催されたのです。そのお茶会は王太子殿下と王太子妃殿下のご子息やご息女と、同い年くらいの子供を持つ貴族がお呼ばれされたのです。
そのお茶会でアレクシスが、一目惚れしたのがシャルメローラ嬢ですわ。そうアレクシスの初恋のお相手です。
シャルメローラ嬢は、ご家族から愛称で『メロ』と呼ばれておりました。その愛称が名前だと思ったのでしょうね。
お茶会が終わって公爵家に帰って来てから、「メロって名前の子が凄く可愛くてね!!僕はメロと結婚したいんだ!!」って何度も言うのです。その時のアレクシスは頬を薔薇色に染めて、それはそれは男の子なのに可愛らしかったのですよ。
元よりメルロム侯爵家とルヴィエル公爵家は交流があったのです。ですが年に数回、お茶会などでお会いするだけです。少し離れておりますしね。旦那様とメルロム侯爵は王城での仕事でお会いしてますけれど。
私とメルロム侯爵夫人は、仲良しだったのです。親同士が仲良しだったので、家族での交流がありましたのですわ。
私はアレクシスから『メロ』と聞いてから、メルロム侯爵家のシャルメローラ嬢だと分かりました。アレクシスは『メロ』が名前だと思っておりました。それは本当は勘違いなので、教えてあげたら良かったのでしょうけれど……余りにもアレクシスが可愛くて教えなかったのです。
アレクシスの初恋の相手のシャルメローラ嬢を婚約者にしたのですが、アレクシスはお手紙も送らず、お会いしに行く事もなく、そのまま結婚式の当日でした。
あのお馬鹿な息子ですから、名前が『メロ』じゃなかったからなのでしょう。『シャルメローラ』でしたからね。
なのでメルロム侯爵家のシャルメローラ嬢が居るお茶会に、アレクシスを誘っても一緒に行きませんでした。
はじめの内は、アレクシスの初恋の相手なのにどうしたのかしら?と思いましたが、勘違いしてるからでしたわ。そんなお馬鹿な息子が少し可愛くて、いつ気が付くかしら?と思っておりましたのよ。
結局は結婚式の当日でさえ、初恋の人『メロ』の髪の毛とか覚えていても、気が付かないお馬鹿さんでありました。ルヴィエル公爵家の仕事もしており頭脳明晰なはずなのに、恋愛系では無能なアレクシス。
先程のララーナの報告では、バードン伯爵令嬢とサロンでお茶をしてらして、サロンの扉は開けており、従者と侍女もサロン内に居たという所だけは褒めてあげられます。
ですがバードン伯爵令嬢がアレクシスの隣に座り、アレクシスにしなだれかかるのは許容範囲外です。アレクシスは既婚者になったのですし、娼婦の様に色仕掛けとはバードン伯爵令嬢の常識の無さと言いますか、淑女としての気品の無さが窺えます。
このままではアレクシス、貴方は初恋の人と結婚して早々に離縁されますわよ!!
そろそろアレクシスに初恋の相手の『メロ』が『シャルメローラ嬢』だと教えて差し上げましょう。
可愛いお馬鹿な息子が初恋の人に離縁されて、不幸になるのも可哀想ですしね。教えて差し上げるのは飴、そして今日の息子の問題行動の処罰も与えますけどね。
可愛い息子に飴と鞭を与えましょう。そうと決まればララーナに、アレクシスに自室へ早急に戻る様に伝えました。
そして私は食堂に居る皆様へ席を外す旨をお伝えして、食堂からアレクシスの部屋へと向かいました。
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