よし!!結婚して早々に離縁しましょう!!

☆明刹☆

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異様な光景ばかりです

公爵婦人からの処罰




 アレクシスはサロンで弟のアルジェードから忠告を受けた。あのご指示をお母様が出したと言っていた。そこからして相当お怒りである事は分かったので、少し前までとは違い急いで自室へ向かったのだ。


 自室の扉を開けるとすでに公爵婦人がソファへ座り待って居た。自分の母親であるのだけど、とても子供を産んでいないだろう見た目だ。
 美しい笑顔で声を掛けてきたが、冷や汗が背中を伝う。お母様に謝らなければと思うのに、上手く謝罪の言葉が出てこない。



 「やっと戻って来ましたか……馬鹿息子。どれだけ待っていても、バードン伯爵令嬢と遊びほうけていて戻らないし。ジュードに警告と言う呼び出しをさせました」



 「お母様、お待たせして大変申し訳ありません」

 「本当に長い時間待ちましたわ。眠くなりそうな程にねぇ。アレクシス、なぜ自室へ呼ばれたか分かりますか?」


 お母様の言い方の“眠くなりそうな程に”とは、日中の結婚式から今までの時間を表してだろう。何時間も待って居たのに来なかったと言いたいのだ。



 「本日の結婚式の事ですよね?」


 「そうです。本日の結婚式での事と、その後の事です。アレクシスは何が悪かったのか分かっておりますか?」


 アレクシスは母親が名前で呼ぶ時に、凄くお怒りである事と、その際に聞き分けの悪い、もしくは眼に余る事があると、何かしらの罰を決めている。
 今回の処罰は今までの中で、経験した類いの罰とは種類の違う罰だろうと想像が出来た。


 お母様がお怒りになられてるのは、ずっと私がマリアナと一緒に過ごして居た事が原因だ。
 結婚式なのに花嫁を1人残して、ご来賓らいひんの方々や、親戚しんせきの挨拶へ行かずに居たのだから。



 「今日の私の行動全てです」


 「行動全てとは?」


 「本日の結婚式でシャルメローラ嬢を1人残し、私が幼馴染みのマリアナと過ごして居たこと。
 そしてご来賓の方々や、親戚の挨拶へシャルメローラ嬢に1人で行かせていたこと。そしてダンスもシャルメローラ嬢と踊らずに、マリアナと踊っていたこと。
 結婚式が終わってもマリアナと一緒に過ごしたことです」


 「アレクシス分かっていて、なぜバードン伯爵令嬢と一緒に居たのです?」


 「バードン伯爵令嬢が1人だと寂しいから、ずっと一緒に居て欲しいと言ってたので……」


 「ではなぜ、バードン伯爵令嬢とダンスを何曲も踊ったのです?アレクシスは既婚者になったのですよ?」


 「バードン伯爵令嬢に強請ねだられたので」


 お母様が溜め息を吐き、呆れた様に私を見ている。途中から“マリアナ”と呼ばずに“バードン伯爵令嬢”と変えた。その方が良いと直感で思ったからだ。そしてお母様が仰った。


 「アレクシス、このままだと廃嫡を考えております。そんなに貴方がバードン伯爵令嬢がお好きならば、バードン伯爵家へ婿入りなさいな。
 結婚早々に離縁してね。そして初恋の人とはお別れしなさいな。それ以前にアレクシスは、初恋の人に見限られてしまっていそうですわ」


 お母様の溜め息の後の内容に耳を疑った。お母様の口から私の廃嫡してバードン伯爵家に婿入りしろって件と、初恋の人にお別れとは!?



 「お母様、私はバードン伯爵令嬢のことを、結婚したいとかで好きな訳じゃありません!!ただ妹の様に思ってるだけです。そして廃嫡とは?」


 「このままバードン伯爵令嬢とベタベタして、不貞行為があるならば廃嫡を考えております。どんなに頭脳明晰ずのうめいせきで、文武両道ぶんぶりょうどうと出来が良くてもね。
 バードン伯爵令嬢と噂になるのも時間の問題です。本日の結婚式で、貴方の行動が不貞行為とみなされて、うわさとして流れているでしょうしね。
 ルヴィエル公爵家の恥になります。そしてアレクシスの初恋の人もね、自分を大切にして下さらない旦那様とは別れたいでしょうし。そんな酷い旦那様じゃ、メロちゃんが可哀想だものね。メロちゃんにはジェードとの方が良いわ」



 お母様の口から私の初恋の人、メロの事が出て不思議に思う。お母様にお聞きしなくては。それになぜ私の初恋の人をジェードに?



 「お母様、私の初恋の人の事を知っておられるのですか?しかも名前まで……」


 「あら?アレス忘れてしまったのかしら?貴方の初恋の人って確かアレスが3歳くらいだったわ。
 その頃に王城でお茶会があったのよ。そのお茶会は、王太子殿下と王太子妃殿下のお子様達と、年齢が同年代くらいの子供を集める為だったわ。同年代くらいの子供の居る貴族を招待されたのよ。覚えていないかしら?」


 「私はそのお茶会で『メロ』と言う名前の好きな人が出来たのです。今だと一目惚れしていたと分かります。そしてその感情が初恋だったと……今でもメロが好きなんです!!」


 「そこまで覚えていても、アレクシスは本当に鹿よね。その貴方の初恋の相手の名前は『』は愛称で、『』が名前だったのよ。
 メルロム侯爵家でのシャルメローラ嬢の愛称は『メロ』って呼んでるのよ。小さい頃のアレスが頬を薔薇色に染めて“メロと結婚をしたい!!”って言った時、アレスが可愛らしくてね。フフフ笑っちゃったわ」



 いやいやお母様、ずっと私を馬鹿にしてわらっていたのですね?
 そうお母様からからかう様に言われて、自分が初恋の人の名前を間違えて覚えていた事に気付いた。
 それだとメルロム侯爵家のシャルメローラ嬢が私の初恋の相手だったってこと。しかも初恋の相手と結婚をしたのだと。後悔ばかりが押し寄せてくる。



 「…酷くないですか!?お母様は私が勘違いして名前を覚えていたと、随分前から気付かれていたのですよね?なぜ早くに教えて下さらなかったのです?」


 「そうね……アレスがねぇ、“メロが好き!!”、“メロが可愛いんだよ!!”って何度も言ってたのに、その初恋の相手であるメルロム侯爵家のお茶会にアレスが行かなかったから不思議だったのよ。
 でもね、よくよく考えてみたら名前を間違えて覚えたのかな?ってね私は気付いたのよ。そして可愛い息子がねぇ、いつになったら気付くかなぁ?って思ってたの。勘違いしてるのが可愛いから見守ってただけよ!!」


 それを聞いて私は項垂うなだれた。そんなに前からお母様は私の間違いに気付いていたのにだまっていらっしゃる。
 だから、どんなに初恋の相手を捜しても見付からないのだと思った。しかも母親であるのに楽しそうに息子の様子を観察してるとは……誰も思わないだろう。
 もっと早くに気付けていたら、婚約が決まった時から手紙とか、プレゼントとか、お茶会とか、オペラを観に行ったりしたのに。そして結婚式も初恋の人であるシャルメローラの側に居たのにと思った。折角の結婚式での誓いの口付けも、ちゃんとしたかったと後悔する事が多くあった。


 婚約期間中、学園の勉強と公爵家の仕事を少しずつ覚えたり、マリアナとお茶会やオペラを観に行ったりしていた。シャルメローラ嬢とは、何も思い出も作れていない。
 小さい頃の王城のお茶会で、初めてシャルメローラ嬢に会った時の思い出しかないのだ。それさえシャルメローラ嬢が覚えているか分からないのに。



 「お母様、もっと早くに教えて下さらなかったのは自分で気付けと言う事ですか?」


 「そうね、初恋の人って言っていたのだから自分で気付いて欲しかったわ。なのに全く気付かないのですもの。恋愛に進まないし本当にれったいなって思ったわ。そしてアレクシスのお馬鹿加減に凄く呆れたわ」


 「そしてなぜ今になって教えて下さったのです?」


 そうなぜお母様は今頃になって、初恋の相手が誰だったのかを教えて下さったのか。それが不思議だった。



 「このままだとアレスはシャルメローラ嬢に捨てられるのが分かるからよ。そして捨てられてから気付いて落ち込んでるのを見るのは、やはり母親として可愛い息子が可哀想かなって思ったわ。
 それに教えて差し上げるのはあめよ、でも今回の事での処罰がむちになるわ」



 そのお母様の飴と鞭を聞いて、鞭は過酷なのではないか?と思った。でもお母様から飴が与えられたのだから、これからシャルメローラ嬢に好かれる様に行動すること。
 そして離縁にならぬ様に気を付けなくてはと思う。自分で改善対策を考えていた。



 「お母様、お願いです。シャルメローラ嬢と離縁にならない様にするには、どうしたら良いのでしょうか?」


 「そんな事も分からないのですか?本当にアレクシスはお馬鹿さんね。貴方の今までの行動でだと離縁まっしぐらよ!!なぜだと思うかしら?」


 「シャルメローラ嬢に今まで何もしなかったのと、バードン伯爵令嬢との関係ですか?」


 「そうね、バードン伯爵令嬢と今まで通りの距離感だと、恋人や婚約者との距離感なのよ。抱き付いてみたり、腕を絡めたりとかのスキンシップはね。それをシャルメローラ嬢がアルジェードにしてたら、アレクシスはどう感じるのかしら?」


 「アルジェードになんてダメです!!私がシャルメローラの夫ですよ!!弟とでもダメです!!」


 「そう言うことよ。本日のアレクシスの行動でシャルメローラ嬢は、貴方を絶対に捨てると思うわ。
 だって妻である自分よりも旦那様が、大切になさってるのが幼馴染みなのですよ。幼馴染みのバードン伯爵令嬢を、ずっと優先にしているのだからね。
 そんなに幼馴染みがお好きなら、自分とは離縁なさってバードン伯爵令嬢と結婚すれば良いわ!!と思っておられるでしょうねぇ」


 「そんな……嫌だ。シャルメローラ嬢を失いたくない。」


 「さてそこでアレクシス、貴方がこれから気を付けなくてはならない事、それはなんでしょう?」


 「バードン伯爵令嬢と不貞行為と思われない様にすること。距離感を保つことです」



 「アレス分かってきたじゃない。でもそれだと甘いわね。バードン伯爵令嬢とは縁を切りなさいな。バードン伯爵令嬢はね、貴方のことをお好きなのよ。それだと考えられる事があるのよね、お馬鹿なアレクシスは何だと思うかしら?」


 「シャルメローラ嬢に嫉妬しっとして危害を加える可能性がある。そして今までの様にバードン伯爵令嬢は私に言い寄り、いかにも私がバードン伯爵令嬢を愛してる様に周囲に思わせる。でしょうか?」



 「今までのアレクシスにしたら良い回答だけどね。それだけじゃないと思われるのよねぇ。私の予想だけどね、バードン伯爵令嬢がシャルメローラ嬢に嫉妬して、シャルメローラ嬢を男性に襲わせるとかね。そう強姦ごうかんさせるとか。あとは貴方との既成事実きせいじじつを作るとかかしらねぇ~」



 お母様は酷い内容を仰ってるのに凄く楽しそうに、私に忠告して真実を見なさいという様に言った。シャルメローラ嬢に嫉妬したバードン伯爵令嬢は、男性にシャルメローラを強姦させるようにする!?
 それと私とバードン伯爵令嬢の既成事実って、要は体の関係って事だろう?バードン伯爵令嬢とは無理だ。私の好きな女性のタイプじゃない!!


 「お母様、バードン伯爵令嬢がその様な事までしそうでしょうか?」


 私の問い掛けにお母様は、大層呆れた様に私を見た。そして大きな溜め息を隠しもせずついた。
 わざとらしく私の近くでだから、相当な呆れ具合なのだろう。



 「アレクシスはバードン伯爵令嬢の眼がね、色欲の眼だと思ったりしないのかしら?今日の結婚式でさえ、あんなに独占欲を皆様に分かるくらい見せているのよ?そんなバードン伯爵令嬢が嫉妬して、シャルメローラ嬢を異性に強姦させるとか。
 バードン伯爵令嬢とアレクシスが2人の時に、貴方に媚薬びやくを盛って既成事実を作るってやりそうよ。普通の男性で強力な媚薬を盛られたら、誰だって良いからたべてしまうと思うわ。
 その場合で怖いのはね、女性側の妊娠なのよ。1度でも行為をしておりますと、妊娠する事も可能性としてあるのですのよ。
 まぁ、とても理性がお強い人なら我慢出来るかも知れないわ。でもバードン伯爵令嬢の眼が独占欲と色欲で濁っておられるし、何かやらかす様な気もするわ。アレクシス、お気を付けなさいね!!」



 そこまで忠告をされると、バードン伯爵令嬢の今までの行動とかで思い当たる事があった。
 急に露出の多いドレスを着る様になったし、胸を私の体に押し付けている様に思う。
 やはり大切な幼馴染みであっても、縁を切った方が良いのだろう。




 「お母様、ご忠告有難うございます。いわれてみて気付く事が多々ありました」


 「やっとバードン伯爵令嬢の不気味の悪さがアレクシスにも理解出来たみたいね!!あの令嬢はね、アレクシスが居る時と居ない時に非常に差があるのよ。しかも見ていて面白い程にね」

 「そうなのですか!?」

 「ええ、本当に可笑しなくらいにね。口調も変わるし、何よりもアレクシスは自分のモノって感じの言い方が多いかしらね。まるでバードン伯爵令嬢の婚約者が、いかにも私の愛息子であるアレクシスの様に言うのよ」



 バードン伯爵令嬢の本質が見えてきていた。もしもお母様じゃなく、弟のアルジェードや妹のリリシェラが、同じ事を言ったら信用せずに気のせいだと言っただろう。
 そう言えば、リリシェラがバードン伯爵令嬢が怖いって言っていた。それを私は気のせいじゃないか?とリリシェラに返事をした。アルジェードもバードン伯爵令嬢が裏表あるし、気を付けて欲しいと言っていた。私が弟妹からの訴えに、もっと真剣に聞いていたら良かったのに。今さら後悔している。



 「そうなのですね」


 「アレス、貴方は頭が良いけれどもお馬鹿さんなのよ。だからね、アルジェードとリリシェラがバードン伯爵令嬢の事で、貴方に真実を伝える為に言ったかも知れないわ。だけど貴方は優しすぎるのよ。大切な幼馴染みを信じてあげたいとか思ったのでしょうね」


 「今までの私は、幼馴染みなのだからアルジェードもリリシェラも、バードン伯爵令嬢と仲良くして欲しいとそう思ってました。ですがバードン伯爵令嬢の本当の性格と言うか、本質が分かったからアルジェードとリリシェラはバードン伯爵令嬢に関わらなくなったのでしょう」


 「アレスやっと弟妹達のことも理解出来たのね!!良かったわ!!」


 「アルジェードとリリシェラは、もう私の事は嫌いでしょうね。大切な弟妹達を信じもしない兄なんて…」


 そう私が沈んでたら、またもやお母様から鋭い一撃を受けたのです。



 「アレクシスがね、優しすぎるから心配だってアルジェードが言ってたわ。だから嫌われてないわね。ただアルジェードは、貴方がバードン伯爵令嬢を最近好きだと思ったらしく、女性の趣味悪いって言ってるだけでね。
 リリシェラはね、私が妹なのにってバードン伯爵令嬢に嫉妬して怒っていたわ。リリシェラが、お兄様は私と遊んでくれないけどシャルメローラお義姉様は遊んでくれるから、アレクシスお兄様居なくても大丈夫!!だそうよ」



 それを聞いてアルジェードしか、心配してくれて居なそうと思ったのですよ。ただ弟のアルジェードが勘違いしている事がある。
 それは私がバードン伯爵令嬢の事を、異性として好きだと思っている事だ。私はバードン伯爵令嬢を好きじゃないのです!!
 そして今更だが気付いたのは、いかにバードン伯爵令嬢に時間を割いていたかだった。
 大切な弟妹達である、アルジェードとリリシェラとの過ごす時間が少ない事に、やっと気付くのだから。



 「本当に仕方のない子ね。そんなに落ち込んでないで、これから気を付けて頑張れば良いのでは?気付けたのだからね!!」



 お母様から心配気に励まされたから、アルジェードとリリシェラとの時間を取ろうと思う。そしてシャルメローラとの事もだ。離縁にならない様に頑張らなくては!!



 「そうですね。今からでも挽回ばんかいを頑張ります。でもお母様、もっと早くに教えて下されば良かったのに」



 そううらまし気にお母様を見たら、楽しそうなお顔で笑っている。



 「本当に情けない子ね、自分の力で何も出来ないのかしら?この母が分かりやすく、貴方のお馬鹿な脳でも理解出来る様に教えてあげましたのに。
 このままだと離縁街道まっしぐらにまりますよ。我が息子なのに仕事が出来ても、こんなにヘタレでは大切な人を失くしますわよ?」



 今日のお母様は毒舌で私の痛い所ばかりを突いてきます。
 しかもヘタレって可愛い息子に掛ける言葉ですか?
 褒めてないですよね?貶してますよね?



 「ですから、これから挽回を必死にします!!」


 「ふぅ、やっと見られるお表情かおになりましたわね。そろそろアレクシスの処罰についてです。貴方の処罰ですが心構こころがまえは出来ていて?」


 「はい!!お母様の様子からして今までの罰と違うと思っております。お父様の仕事を私に多く任せるとかでしょうか?」



 そう私がお母様にお聞きすると、コロコロと美しく可愛らしい声でお母様はわらう。勿論、本当に楽しそうにです。



 「だ・か・ら・ね、アレクシスはのよ。そんなに優しい処罰って事はないでしょう?
 だって貴方は、旦那様の仕事で王城以外のモノ全て押し付けたとしても、何も困らずに平気なお表情かおで遣り終えてしまうのだもの。そんな楽な処罰では貴方に効果ないわ!!」


 とてもとても母親とは思えない、お綺麗な笑顔でとんでもない事をお母様は仰るのです。その迫力は美し過ぎて怖いくらいなのだから。

 それに現公爵のお父様の王城以外の全ての、仕事を私に押し付けられたらと想像してみた。
 とてもじゃないけれど休みなく荷馬車の様に、働かなくては終わらない程の量だって分かる。
 それをお母様は私には甘い罰になると仰る。これ以上の罰とは何だろう?



 「いやいやいやいや、お父様の王城以外の全ての仕事を私1人では多すぎて、荷馬車の様に働かなくては絶対に終えません!!」


 「そんな難しくないでしょう?アレクシスがのですからね!!領地の仕事は、各領地で信頼出来る有能な人がおりますのよ。
 その領地の有能な者達が書類にして纏めてくれますわ。その領地から送られてきた纏まった書類の確認など。
 そのような仕事などを自室ですれば良いのよ?仕方ないので休憩時間として、食事の時間とお茶の時間を設けてあげましょう。起床してから就寝前まで働きなさいな」


 「お母様、仰ってる事が色々と大変な内容ですが!?要は就寝の時間と食事の時間、お茶の時間、入浴の時間以外の時間が仕事ってことですよね!?それに甘いと言ってましたから、その他に罰があるのですね?」


 「お馬鹿さん、やっと分かったのね。そう今回の処罰は就寝の時間と食事の時間、そして入浴の時間、お茶の時間以外の全ての時間を仕事の時間としますわ。
 それだけだと今回の貴方のしでかした事に対する処罰にしたら、本当に甘過ぎるくらいなのよ。だ・か・ら・ね、アレクシスをこの拘束具こうそくぐで手足を拘束しますわ、この部屋から出ないこと。
 そう自室謹慎きんしんです!!」


 何から驚くべきなのだろうか?外出せずに仕事をする。
 自室で手足を拘束される。っておかしいのでは!?奴隷どれいや罪人でもないのにと思う。
 そして疑問だったけれどお母様にお聞きする事が出来なかった。それはベッド上にある鎖の付いた革製のベルトの様な物。革製のベルトだけならブレスレットとも思えるが、ジャラジャラと金属の鎖が付いてるのだ。なぜ自室にこのような物があるのか?
 先程のお母様の仰ってる拘束具なのだろう。それは分かるが、なぜ私を拘束具で拘束するのです!?



 「お母様にお聞きしたいのですが宜しいですか?」


 「アレクシスなんでしょう?」


 「この拘束具を私にされますと困る事がありますよね。着替えや入浴の時、それに食事の時間とか、この拘束具だと動かせる範囲が限られておりますし」



 そう困った様にお母様にお聞きした。するとフフフッと今度は可愛らしく笑う。また何かしら企まれているご様子かな。



 「ねぇ、アレクシス試しに拘束具をつけて差し上げるわ!!ちゃんと仕事が出来るくらいの長さで調節してあるのよ?」



 そう仰ってお母様はベルトの拘束具をたのしそうに、私の両手首と両足首につけていく。
 両手と両足を動かすとジャラジャラと音がしている。書類仕事なら出来る位の鎖の長さだ。
 足も歩ける位の鎖の長さだから問題はないと思う。だけど風呂や着替え、食事の時間に困る事がある。このままでは食堂へ晩餐に行けないのだから。


 「これだと食堂へ晩餐に行けません。それに着替えや風呂の時は、誰かに手助けが必要です」


 「貴方は暫くの間、食堂へ行かないのだから問題ないわ。ちゃんと食事も着替えも、お風呂も大丈夫よ!!」


 お母様はフフフッと可愛らしく笑う。何かを予想している様に。私はお母様を不安気に見た。


 「大丈夫って思えないのですが」


 「そうそうお風呂の時には、こっちの金属の拘束具にするのよ。革製だと駄目になってしまうわ」


 お母様が私に差し出したのは、全て金属で出来ている拘束具だった。こんな物まであるのですか?と思う。入浴くらい拘束具は要らないだろう。


 「風呂くらい拘束具は外しても宜しいのではないですか?」


 「アレクシスが逃げると予想してよ。ちゃんと拘束具の鍵はお世話してくれる人に渡しておくわ。だから安心なさいな」


 「不安ですよ!!お母様、これだと監禁ですよ?」


 眉を下げる息子に対して、お母様は呆れた顔をされる。溜め息をつき可哀想な子を見る様にだ。


 「アレクシス、やはりお馬鹿さんなのね。そう貴方の処罰は謹慎じゃなく監禁なのよ。それを今更になって分かったの?」


 「えっ!?謹慎じゃなく監禁なのですか?」


 「そうよぉ、鹿を守る為のね。ですので期間は決めずに、アレクシスは拘束具をつけた生活を送ること。貴方とシャルメローラ嬢は、夜会などの社交はしなくて良いわ。分かりましたね?」



 お母様が仰られた事で、“鹿”は絶対に貶されていると思う。確かに息子思いの母親ではありますが。
 そして“分かりましたね?”って所は、表側の取り方ならば、ちゃんと良い子だから言うことをお聞きなさいな、裏側の取り方なら『』という意味だと悟った。そのお母様の笑顔が怖い。



 「…反抗とかしません。ちゃんと自室へ居ます。夜会やお茶会などの社交にも出ません。ですがシャルメローラ嬢には、どう説明をなさるのですか?」


 「その辺も大丈夫よ。貴方は今夜の食事はここよ。分かったわね?そう言えば、アレクシス大丈夫なのかしら?」


 お母様は不安そうに私を見る。


 「大丈夫とは?」


 「貴方は結婚式が今日だったのよ?だから初夜だけど、アレクシスどうするの?シャルメローラ嬢と出来そうなのかしら?」

 

 お母様はじらう様にお聞きになってこれる。まるで子供を産んでいないように。
 先程のお母様の不安な表情は、シャルメローラ嬢との初夜の事だった。シャルメローラ嬢が嫌でなければ初夜をと思うけれど、自分の両手と両足を見て初夜に拘束されている夫ってどうなのだろう!?
 それよりお母様は、この状況で初夜とか仰っておられますが、これだと初夜というよりもシャルメローラ嬢に手を出さない様にという拘束じゃないか?


 「この拘束具をつけてだと、初夜でシャルメローラ嬢に手を出さないようにって事でしょうか?それにどう考えても初夜に、夫が拘束具で拘束されているって変ではありませんか?」


 お母様は私を見てコロコロと笑う。それはそれは綺麗な笑顔でだ。


 「勿論、シャルメローラ嬢が嫌であれば、初夜は中止となるわね。だけどシャルメローラ嬢がアレクシスの今までの行いをゆるし、貴方を受け入れるというなら、そのまま拘束具をつけたままで致しなさいな。貴方だって公爵家の嫡子なのだものねや教育を受けたでしょう?」


 お母様の言葉は間違ってはいない。間違ってはおられないけれど、拘束具をつけたままですか?
 因みにお母様がお父様と結婚式を終えた日、その後の初夜で拘束具をつけてましたか?なんて怖くてお聞き出来ません。


 「勿論です。シャルメローラ嬢の赦しがあってから、それから初夜だと思っております。ですがお母様、なぜそんなに瞳をキラキラと輝かせておられるのですか?」


 お母様はハッとしたようで、いつもの綺麗な笑顔に変えたのです。お母様が変な事を考えておられる様で怖いのですが、これからシャルメローラ嬢に会ったら謝罪しようと思った。


 「そう言えば旦那様からお聞きしましたが、貴方は閨教育の時に実技は行わなかったとか?貴方だけじゃなくアルジェードもだったわよね」



 お母様は急に威力のある爆弾を投下してきたようだ。羞じらいながらお聞きしないで下さいよ。こちらもお聞きされたくないです。
 なぜにお父様ではなくお母様に閨教育の事をお聞きされているのか、全く理解出来ずに分からない。
 アルジェードに聞かれた事があったが、兄弟で同じ様に感じて閨教育の実技は受けなかったのだ。


 「お母様はアルジェードにもお聞きになられたのですか?」

 「閨教育の事かしら?アルジェードにはお聞きしてないわね。お父様も閨教育がお嫌でらしたみたいよ?」


 「お父様がですか?」


 「そう、多分だけどアレクシスとアルジェードと同じ事が原因だと思うわ。旦那様は私には何も言いませんでしたが」









★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★







 閨教育の指導係とアレクシス



 
 お母様から閨教育の事を聞かれた。その事から私の閨教育の指導係だった婦人を思い出す。受けた閨教育と、婦人の獲物を狙う肉食獣の様な眼を。


 お父様も私やアルジェードと同じく、指導係から逃げたのでしょうね。先程のお母様からのお話からしての予想だけどね。


 閨教育の指導係には貴族の未亡人がなる事が多い。その閨教育の指導係が実践で実技など教えていく。それは教本だけだと分からないだろうという事でだろう。
 はじめの内は閨教育の指導係から、閨についての教育を教本で受ける。次に実践じっせん指導で実技などの教育を受けるのだ。



 私の閨教育の指導係は、まだ若い未亡人だった。夫である子爵が早くに亡くなられたのだと聞いた。その指導係はデラと言う名前だった。私より年上だったから姉のように思っていた。


 デラからの閨教育が始まり、はじめの内の教本での閨教育は、何事もなく無事に受け終えた。その次の実践で変わったのだ。



 「アレクシス様、本日から実践になります。私の体を触ったりして下さいませ」



 そう言って自ら服を脱ぎ裸になった。急な事で私は頭が真っ白になり、茫然ぼうぜんと立ち尽くした。何が起きてるのだろう。何も分からずデラに言えなかった。


 白く豊かな胸を出して、私の手を自分の胸に導き触らせた。
 もう片方の私の手の指の人差し指と中指2本を口の中へ咥え、舌で自分の唾液を私の指に絡めるようにしゃぶられた。
 デラが私の指を口から出した時に、銀色の糸が出来て切れた。その指をデラの足の間へ導いていく。そうデラは私の手を自分の秘部へ導いているのだ。そして自分の蜜が潤っている花弁を私の指を使い擦り、デラは頬を赤く染め喘いでいる。そしてデラは自分の両足を大きく開き、先程に咥えていた2本の指を濡れた蜜壺へ挿入した。


 「アレクシス様、ここに挿入いれる所ですわ。子供を作るのにアレクシス様のモノを挿入するのです。初めての人には優しく解し、濡らしてから挿入して下さいませね」


 そう言ってデラは私のトラウザーズをくつろげて、私のモノを取り出して手で擦ってから唇を開けて含んだ。何をしてるんだろう。ネットリと絡み付く様な視線は気持ち悪い。
 まるで指導係のデラは獲物を狙う肉食獣のように、妖艶に服を脱いで、私の体をデラが触ってきたのだ。


 「アレクシス様は美形で格好良い容姿ですし、そして公爵家のご嫡子ですもの閨教育の指導係になれて嬉しいですわ」

 
 最後までいく前に私は、部屋から逃げ出した。トラウザーズなどの衣類を、ちゃんと身に付けて自室へ戻った。侍従に頼んで浴槽にお湯を入れて貰った。そして自分の着ていた洋服を脱ぎ捨てて浴室に向かった。身体の汚れを落とす様に何度も洗う。身体が気持ち悪い気持ち悪い。

 その日の夜にお父様に相談したのが数年前のこと。閨教育の実技は行わず、教本だけで教育で閨教育は終えた。


 閨教育で不快感しかなかったけれど、初恋の人であるシャルメローラ嬢と出来るのかだ。それよりもシャルメローラ嬢に、今までの事を謝罪し赦して貰わないと。


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