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私と彼とカップラーメン
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「ねえ、お昼ごはん何が食べたい?」
私はソファーの上でスマホをいじっている彼に聞いた。
「なんでもいいよ」
またこの返事だ。良く言えば私の意見を尊重してくれる、悪く言えば何でも私になんでも投げやりな彼は、いつも決まってこの返事をする。付き合って間もない頃なら間もない頃なら喜んで料理を作り始めただろう。しかし、もう私達は付き合ってから8年、同棲を始めてからは3年が経っている。
「献立考えるのって、大変なんだから。ちょっとは手伝ってよ」
「そうは言われてもなあ」
彼は頭の後ろをポリポリと掻く。面倒くさいと思っているときの彼の癖だ。
「じゃあ、カップラーメンでもいい?」
まだいくつか残っていたはずだ。
「じゃあ、俺はチリトマト」
何でもいいと言いながら、これがいいだなんて。それなら最初から言ってほしいのだけれど。
チリトマトは最後の一つだった。私も食べたかったのに。
仕方ないので私はお湯を沸かして、チリトマト味のカップラーメンと醤油味のカップラーメンを開けた。それから、線のところまでお湯を注ぐ。
「で、何をしているの?」
「スマホをいじっているだけだよ」
聞き方が悪かったのだろうか。思った通りの回答が得られなかったので、私は彼のスマホを覗き込んだ。
「な、なんでその写真持っているのよ!」
スマホに表示されていたのは高校の時の私だった。カメラ目線を意識していない、まるで盗み撮られたような写真。
「なんでって、内緒。まあ、君は昔から可愛かったから……」
「そんなの理由になってないだけど」
「でもさ、はじめて見たときからドキッとしたんだよ。ほんとに、理想って感じでさ。それで、同じクラスの友達とかで君と繋がりがありそうな人を探して。そういえば高校の時って言えばさ……」
そんな流れで私達は高校の時の話を始めてしまった。
文字通り、時を忘れて。
「ああ!カップラーメン!」
時計の針はすでにお昼というよりは、おやつの時間に近くなっていた。
慌てて蓋を開けると、そこにあったのはスープを全部吸ってしまって、柔らかくブヨブヨになってしまった麺。
「もう、柔らかいラーメンになっちゃったじゃん」
私は彼のことを少しだけ睨む。そんな私と対照的に、彼は嬉しそうに笑っていた。
「まあ、こんな日もあるよ。それにね、俺は柔らかいラーメンでも君と食べるならいいんだ。君と食べるものは何でも美味しいからさ」
私はソファーの上でスマホをいじっている彼に聞いた。
「なんでもいいよ」
またこの返事だ。良く言えば私の意見を尊重してくれる、悪く言えば何でも私になんでも投げやりな彼は、いつも決まってこの返事をする。付き合って間もない頃なら間もない頃なら喜んで料理を作り始めただろう。しかし、もう私達は付き合ってから8年、同棲を始めてからは3年が経っている。
「献立考えるのって、大変なんだから。ちょっとは手伝ってよ」
「そうは言われてもなあ」
彼は頭の後ろをポリポリと掻く。面倒くさいと思っているときの彼の癖だ。
「じゃあ、カップラーメンでもいい?」
まだいくつか残っていたはずだ。
「じゃあ、俺はチリトマト」
何でもいいと言いながら、これがいいだなんて。それなら最初から言ってほしいのだけれど。
チリトマトは最後の一つだった。私も食べたかったのに。
仕方ないので私はお湯を沸かして、チリトマト味のカップラーメンと醤油味のカップラーメンを開けた。それから、線のところまでお湯を注ぐ。
「で、何をしているの?」
「スマホをいじっているだけだよ」
聞き方が悪かったのだろうか。思った通りの回答が得られなかったので、私は彼のスマホを覗き込んだ。
「な、なんでその写真持っているのよ!」
スマホに表示されていたのは高校の時の私だった。カメラ目線を意識していない、まるで盗み撮られたような写真。
「なんでって、内緒。まあ、君は昔から可愛かったから……」
「そんなの理由になってないだけど」
「でもさ、はじめて見たときからドキッとしたんだよ。ほんとに、理想って感じでさ。それで、同じクラスの友達とかで君と繋がりがありそうな人を探して。そういえば高校の時って言えばさ……」
そんな流れで私達は高校の時の話を始めてしまった。
文字通り、時を忘れて。
「ああ!カップラーメン!」
時計の針はすでにお昼というよりは、おやつの時間に近くなっていた。
慌てて蓋を開けると、そこにあったのはスープを全部吸ってしまって、柔らかくブヨブヨになってしまった麺。
「もう、柔らかいラーメンになっちゃったじゃん」
私は彼のことを少しだけ睨む。そんな私と対照的に、彼は嬉しそうに笑っていた。
「まあ、こんな日もあるよ。それにね、俺は柔らかいラーメンでも君と食べるならいいんだ。君と食べるものは何でも美味しいからさ」
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