運命の糸が絡まった

天野蒼空

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4話 From菜月

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「じゃあ、また学校で」

 そう言ってバスに乗り込み、席に座る。

「橘駅行きー、発車しますー」

 間延びした運転手のアナウンスの後、ブザーが鳴り、ドアが閉まる。窓の外を見ると、幸人が手を振っていた。

 小さく手を振り返すとおもちゃを見つけた子どもみたいに、にいっと無邪気に笑う。妖精の粉のようなきらめきの粒がふわりと舞って、幸人のいる場所だけがきらきらと輝いている。

 なんだか、特別扱いされているみたい。帰りのバスを見送ってくれる人なんて、女友達でもいないのに。
また全身が熱くなる。

 だめよ。勘違いかもしれないんだから。私にとっては特別でも、幸人にとってはこれが普通なのかもしれないじゃない。

 そんなこと自分に言い聞かせても、無駄だった。

 全身を熱い血がものすごい速さで走りまわっているのがわかる。心臓の音がうるさくて、はかの音が聞こえなくなる。口の中から水分が失われていく。

 この感情にきっとまだ名前はない。だって、そんなに仲良く慣れているわけでもないんだから、勘違いかもしれない。もっと、幸人のことを知りたいだとか、もっと幸人と一緒にいたいだとか、そんなのまだ名前をつけるような感情じゃない。

 何度も、何度も自分に言い聞かせる。



 夕焼け色に染まる空に綿あめみたいな雲が浮かぶ。赤く染まったその雲はまるで今の私のようだ。ビルのガラスに太陽の光が反射して、キラキラと輝く。まるで幸人が笑った時のようだ。

 バスは右へ左へ揺れながら、駅へ向かう。

 運命の出会いとか、白馬の王子様とか。そんなものが本当にあればいいな、なんてぼんやり考えていた。

 恋をしたことがないわけではない。むしろ、回数で言えば多い方だったかもしれない。お付き合いをした人もいた。失敗をしたときだってあった。

 それでも、私は「いつか」を待っていたのだと思う。私をこの場所から連れ出してくれるような、そんな素敵な人を。
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