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12話 From明日香
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「ただいまー」
自分の部屋に入って、制服のままベッドの上に倒れ込む。
「あー、疲れた」
口に出すと余計に疲れを感じる。
もうすぐ生徒総会だから、生徒会が忙しくなるのは仕方ない。仕方ないのだけれど、忙しいと部活に顔を出せない。すると、菜月に会う時間が減ってしまう。これが一番の問題なのだ。
用もないのに違うクラスに行くのは変だから、なにか話すようなきっかけがあればいいのだけれど……。
私は部屋の中をぐるりと見渡す。
本棚の中に最新刊まで揃えられた菜月の好きなアニメの原作小説と、菜月も気に入ってくれた私のお気に入りの漫画。机の上に飾られている、菜月が好きな作品のフィギュア。遊びに行った時に菜月がユーフォーキャッチャーで取ってくれた、私が好きな作品に出てくるマスコットキャラクターのぬいぐるみ。それから、写真立てに入れられている菜月と私が一緒に映っている写真が沢山。
気に入ったものはどれも揃えたいって思うようなタイプだが、菜月と仲良くなったときから菜月が好きなものを集めることが多くなったような気がする。だって見せたら菜月が喜ぶから。私も同じものを好きになれば、菜月とたくさん話せるから。
もう、漫画の話は一通りしたし、わざわざアニメの話をしに教室まで行くのは不自然よね。グッズはできれば家に呼んで見せてあげたいんだけれど、休みの日も今は平日に勉強できない分遊ぶような余裕があまりないから、やっぱり生徒総会が終わるまではそれも難しい。
「菜月、今何しているのかな」
そう呟くと、なんだか虚しくなってくる。
もしも「生徒総会が忙しいからちょっと手伝ってくれない?」って菜月に言ったら、すぐに良い返事をくれるだろう。でも、今忙しいのは菜月に手伝ってもらうような場面ではない。資料のコピーとか、配布資料の準備とか、アンケートの回収とか、そういうのだったら手伝ってもらえたのだけれど、発表用のスライドだとか、事前に集めた意見の回答を準備するだとかっていうのは手伝ってもらうわけには行かない。だから、毎日毎日、会議ばっかり。
それに加えて、今日はもっと重たい話を会長からされた。
「次期生徒会長、か」
会長に言われたことがわからないわけではない。次期生徒会長候補になれるのは私と橋本だけ。どちらかといえば橋本は表に立つようなタイプの人間ではない。仕事が早くて、正確で、今までのやり方をいい方向に変えるような大きな仕事だってやっていた。でも、人脈はたしかに私のほうが広いだろう。他の人からどんなふうに見られるかばかり気にしていた、私の悪いところがいい方向に傾いた、数少ない機会だ。このまま会長になるのも悪くはない。
きっと、菜月も褒めてくれるだろう。
でも、会長になったら仕事の量も増える。今まで以上に忙しくなる。そしたら、菜月と遊んだり、話したりする時間は減ってしまう。
あ、そうだ。
菜月に生徒会に入ってもらえばいいんだ。
我ながら名案だと思う。
菜月に向けてメッセージを打つ。違和感がないように何度も読み返しながら、ゆっくりと。
「聞いて聞いて! 重大発表だよ~。なんと、次期生徒会長に会長から推薦されちゃった!」
この文章を送るだけで、かなりの体力を使ったような気がする。
返事はすぐに来た。
「すごいじゃん! さすが、明日香だね!」
文章なのに、耳元で声がするようだ。きっとぴょんぴょん飛び跳ねながら言っているだろう。
「それで、菜月にお願いがあるんだけど、いい?」
「いいよ~」
心臓が今にも口から飛び出そうだ。
「生徒会役員にならない?」
暫く、返事は返ってこなかった。やっぱり、普段のお手伝いと同じようには行かない。
「ごめんね」
その一言で、暗い谷底に落とされたような気がした。
「やっぱり難しい?」
「部長と生徒会役員を一緒にやっていたら、生徒会がうちの部活に変に肩入れしているって思われるかもしれないじゃん?」
菜月は文芸同好会の設立者で、部長。だからこそ、自分の部活という意識が他の部活の人よりもあるのだろう。普段の菜月の様子からもそれは感じていた。それに、きっとこれは菜月が気にしているのは私が他からどういうふうに見られるかだ。私が普段期にしていること、きっと菜月もわかっていてくれたんだ。
それを言われてしまったら、もう食い下がることはできない。
「そっか、じゃあ仕方ない」
そう返信を打つことしかできなかった。
自分の部屋に入って、制服のままベッドの上に倒れ込む。
「あー、疲れた」
口に出すと余計に疲れを感じる。
もうすぐ生徒総会だから、生徒会が忙しくなるのは仕方ない。仕方ないのだけれど、忙しいと部活に顔を出せない。すると、菜月に会う時間が減ってしまう。これが一番の問題なのだ。
用もないのに違うクラスに行くのは変だから、なにか話すようなきっかけがあればいいのだけれど……。
私は部屋の中をぐるりと見渡す。
本棚の中に最新刊まで揃えられた菜月の好きなアニメの原作小説と、菜月も気に入ってくれた私のお気に入りの漫画。机の上に飾られている、菜月が好きな作品のフィギュア。遊びに行った時に菜月がユーフォーキャッチャーで取ってくれた、私が好きな作品に出てくるマスコットキャラクターのぬいぐるみ。それから、写真立てに入れられている菜月と私が一緒に映っている写真が沢山。
気に入ったものはどれも揃えたいって思うようなタイプだが、菜月と仲良くなったときから菜月が好きなものを集めることが多くなったような気がする。だって見せたら菜月が喜ぶから。私も同じものを好きになれば、菜月とたくさん話せるから。
もう、漫画の話は一通りしたし、わざわざアニメの話をしに教室まで行くのは不自然よね。グッズはできれば家に呼んで見せてあげたいんだけれど、休みの日も今は平日に勉強できない分遊ぶような余裕があまりないから、やっぱり生徒総会が終わるまではそれも難しい。
「菜月、今何しているのかな」
そう呟くと、なんだか虚しくなってくる。
もしも「生徒総会が忙しいからちょっと手伝ってくれない?」って菜月に言ったら、すぐに良い返事をくれるだろう。でも、今忙しいのは菜月に手伝ってもらうような場面ではない。資料のコピーとか、配布資料の準備とか、アンケートの回収とか、そういうのだったら手伝ってもらえたのだけれど、発表用のスライドだとか、事前に集めた意見の回答を準備するだとかっていうのは手伝ってもらうわけには行かない。だから、毎日毎日、会議ばっかり。
それに加えて、今日はもっと重たい話を会長からされた。
「次期生徒会長、か」
会長に言われたことがわからないわけではない。次期生徒会長候補になれるのは私と橋本だけ。どちらかといえば橋本は表に立つようなタイプの人間ではない。仕事が早くて、正確で、今までのやり方をいい方向に変えるような大きな仕事だってやっていた。でも、人脈はたしかに私のほうが広いだろう。他の人からどんなふうに見られるかばかり気にしていた、私の悪いところがいい方向に傾いた、数少ない機会だ。このまま会長になるのも悪くはない。
きっと、菜月も褒めてくれるだろう。
でも、会長になったら仕事の量も増える。今まで以上に忙しくなる。そしたら、菜月と遊んだり、話したりする時間は減ってしまう。
あ、そうだ。
菜月に生徒会に入ってもらえばいいんだ。
我ながら名案だと思う。
菜月に向けてメッセージを打つ。違和感がないように何度も読み返しながら、ゆっくりと。
「聞いて聞いて! 重大発表だよ~。なんと、次期生徒会長に会長から推薦されちゃった!」
この文章を送るだけで、かなりの体力を使ったような気がする。
返事はすぐに来た。
「すごいじゃん! さすが、明日香だね!」
文章なのに、耳元で声がするようだ。きっとぴょんぴょん飛び跳ねながら言っているだろう。
「それで、菜月にお願いがあるんだけど、いい?」
「いいよ~」
心臓が今にも口から飛び出そうだ。
「生徒会役員にならない?」
暫く、返事は返ってこなかった。やっぱり、普段のお手伝いと同じようには行かない。
「ごめんね」
その一言で、暗い谷底に落とされたような気がした。
「やっぱり難しい?」
「部長と生徒会役員を一緒にやっていたら、生徒会がうちの部活に変に肩入れしているって思われるかもしれないじゃん?」
菜月は文芸同好会の設立者で、部長。だからこそ、自分の部活という意識が他の部活の人よりもあるのだろう。普段の菜月の様子からもそれは感じていた。それに、きっとこれは菜月が気にしているのは私が他からどういうふうに見られるかだ。私が普段期にしていること、きっと菜月もわかっていてくれたんだ。
それを言われてしまったら、もう食い下がることはできない。
「そっか、じゃあ仕方ない」
そう返信を打つことしかできなかった。
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