Magia

桐戸李泉

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パンドラ編

プロローグ

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この世界には、言葉を超えた力がある。
人々はそれを『魔法』と呼んだ。

遥か昔、あらゆる生物は竜に支配されていた。
大地を焼き、空を裂き、天と地の秩序を我がものとした竜を前に、人類は従うほかに術を持たなかった。
だがあるとき、竜を打ち破ろうと立ち上がった者たちがいた。

最初に立ち上がったのは、体内の魔力に恵まれたエルフたちだった。
彼らは竜を討つ術を獲得し、独立への一歩を踏み始めた。
やがてその中で『エヴァンズ』と名乗る者たちが現れた。
彼らは討竜魔術を他種族に伝えようと動き、人類の地にその術をもたらした。

エルフから受け継いだ術を、人々はさらに扱いやすく改良した。
術者は自らの魂を一冊の書に変え、その命と引き換えに『魔導書』を生み出した。
血と魂を代償に刻まれた魔導書は朽ちることなく、永遠に知を残す。
そこには術者の記憶と、祈りが刻まれていた。

人々はその知識を頼りに竜を討ち、命の代価を刻んだ魔導書は新たな時代の礎となった。
やがて竜の支配は終わりを告げ、人類は自由を手にした。

竜の支配が去った後も、魔導書は作られ続けた。
ある者は栄光を刻み、ある者は研究成果を永遠に閉じ込め、またある者はただ、生き延びる知恵を後世に託した。
魔導書は知の象徴であり、同時に生きた証であり、祈りの声であった。

そして、そんな世界の片隅で、ひとりの少女が暮らしていた。
彼女は、かつて魔法使いの村と呼ばれた土地で、死者たちの残した魔導書に囲まれていた。
そこに息づくのは、知の残滓と、祈りの声。
彼女はその声を読み解きながら、生きていた。

それが、この物語の始まりである。
――“知の始祖”、パンドラと呼ばれる少女にまつわる、最初の頁の物語。
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