階層

海豹

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階層

23 集会

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 「起きてください」
「起きてください!」
「駄目だ、起きないです。」
どうやら、自分と柊さんと長谷川さん以外の三人は一向に起きる気配がない。
「もういい、置いていけ」
かすれた声で呆れた様子の長谷川。
「時間がない、乗り込むぞ」
エレベーターの入り口に、自動押印ロボットが設置されており服の袖に押さなければ乗車できない仕組みになっている。
三人は袖に92という押印を押され、鉄格子のような広いエレベーターに乗り込み上に上がる。
そして、エレベーターが金属音を奏でながら止まった。
すると、扉が開き六人の白い服を着た男女が乗り込んでくる。
それから次の階で四人が乗り込み、しばらくの間止まることなく上がり続けた。
長谷川の話のせいかやけに緊張していた。
鼓動が高まり、手汗が出る。
過激派とはどういうことだ。
一体どんな組織なのだろうか。
いくつもの疑問が頭の中を駆け巡る。
扉がゆっくりと開く。
 強い光が差し込み、目を細めながら辺りを見回すと、そこには驚きの光景が広がっていた。
広めの体育館二つ分ほどの講堂に等間隔で多くの人が並んでいる。
ざっと見た感じ二千人はいるかもしれない。
壁には七つのエレベーターが配置されており、多くの人が降りてくる。
エレベーターを降りると、空港の保安検査のように一人ずつ並び、何階層から来たのか手際よく押印を確認された。
そして、確認が終わると四桁の番号が書かれた結束バンドのようなものを、左足首に取り付けられた。
自分の言われた四桁の番号が記載されている場所に並べと言われ、コンクリートの床を素足で歩く。
固く、ひんやりとした感触が足裏に感じる。
床には等間隔で四桁の番号が記載されている。
自分の番号の場所へと移動し、辺りを見渡した。
皆不安そうな顔をしている。
そんな中、一人笑顔で手を振っている女性を見つけた。
それも、自分の方を向いて左右に揺れたりジャンプしながら大きく手を振っている。
緊張して固まっている者や、不安から挙動不審に辺りを見渡している者がいる中、一人アブノーマルな行動をしている女性。
その女性と自分との間の人々が徐々に違和感に気づき始め、不審な目で自分を見てくる。
自分は同類だと思われぬよう下を向いた。
そうすると、遠くから叫び声が聞こえてきた。
「おーーい!」
「無視しないでー!」
ここまでアピールしてくるということは自分の知り合いなのかと思い、少し近づいてみた。
細身で長身、長い髪の毛。
まさかと思いさらに近づいていく。
顔の輪郭がはっきりして確信した。
「巫さん!」
思わず走り出してしまい、近づいて行く。
「巫さん!無事でしたか」
「ええ、怪我ひとつ無かったです!」
「よかった!」
「また功治くんと会えて本当に嬉しいです!」
「自分もです!」
「それにしても、功治くん、あの時はいい判断でしたよ!」
「いやー、結果眠らされたんで、、」
「いやいや、ここからのことはこれから考えれば大丈夫ですよ!」
「ポジティブに捉えましょ!」
「そうですよね」
思った以上に興奮してしまい騒いでいると、ガタイのいい戦闘服を着た男達が睨みつけてきたため一旦引き返すことにした。
 そうしていると、全員揃ったらしくエレベーターは動かなくなった。
皆、緊張からか一言も喋ることなく不安気な表情をしている。
すると突然低い声がスピーカーから響いた。
「あ、あ」
「では、今から集会を始める。」
自分を拉致した大男と前髪女がマイクを持ち舞台に立っている。
また、その隣で首元から頬にかけて、片方は天使、もう片方は悪魔の刺青を入れたショートカットの双子が並んでいる。
二人とも黒いウエイトスーツに見るからに重そうな黒いジャケットを羽織っている。
「まだ目を覚ましていない者もいるが、その者たちには後で構成員が指示を出す。」
「まずは私の自己紹介からする。」
「私は開眼戦士筆頭であり、司令官を受け持っている馬場だ。」
「これから先お前たちを開眼戦士へと導くため指導を行なっていく。」
「これから先、俺のことは馬場司令と呼べ。」
一瞬、講堂内がざわついたが、それも馬場による無言の圧ですぐに収まった。
「一つ言っておくが、これから先お前たちの勝手な行動は許されない。」
「もし、教えに反するような行為をした場合は処罰の対象となる。」
講堂内は、時間が止まったのではないかと思うほど静まり返った。
しばらくして、無感情な高い声が聞こえた。
どうやら前髪の長い、長身女が喋り出したらしい。
「私は、作戦守備部隊筆頭の鬼頭です。」
「今から、今日の予定について簡潔に説明いたします。」
「まず、今日、あなた達にこのガベラ施設と方針の全貌を見ていただきます。」
「そして、部隊選択をしていただきます。」
「部隊選択というのは、開眼戦士、作戦守備部隊の二択です。」
「今日のスケジュールは以上です。」
「これから先のスケジュールは後ほど説明いたします。」
「それでは、時間となりましたので教祖様のご教示です。」
構成員達が一斉に拍手を始めた。
すると、部隊裏から一人の女性が現れた。
身長は170センチほど、眼球は赤く、尖った高い鼻、肉食鳥のような鋭い目、長い髪の上には黒い制帽を被り戦闘服の上に黒のロングコートを羽織っている。
遠くからでも物凄いオーラを感じる。


















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