自分観測 ヒルガオの誓い

蒼都輝樹

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一、星矢の照らす世界

第一夜・霧がかりな夜(改訂)

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~注意~
この作中では、
独特な固有名詞、地名が登場しますが
事実とは一切関係ありません。



……………………………………………………


他人から見た「僕」と
自分から見た「私」は常に歩幅が合わない。
自分は常にバイアスをかけられて広がるからだ。
僕は素直に自分を表現したいだけ。
だからこそ、自分がどう思われたか
知ったことではないと言う言葉に笑えずにいるのだ。

表現力がたりない。だからといって表現を磨くこともないのに、うなだれる私がここにある。
つまり、不器用極まりない・・・。


クラスに転入して初日のことだった。
周りと比べて異質な制服と緊張をを身につけ、
周囲の私服の生徒達に紛れて登校。
クラスではを溢れ出る「擬似コミュニケーション力」を
用いて「僕」に着替えるのだ。

そんなわけで、

「僕」は、自己紹介を終えたところだ。


机の間を掻い潜った先に自分の席はある。
いわゆる外れ席に等しい。

振り返ればさっき立たされていた
教壇が目に入る。

そこにはまだ僕が立っているように思える。
誰もが本心の私なんか見てはいない。
しかし、私も僕もクラスの隅で
注目を集めることはない。
私であろうが僕であろうが、何がいても
クラスの隅は問題にはならない。
そういう場所なのだ。

そう考え直すと、
心底僕を笑ってやりたい気持ちだった。

しかし、休み時間にはいれば状況は一変する。
同じくクラスという箱の中に押し込められた輩が
数人現れては私と僕を囲んだのだ。

その中には、
僕を口で言うほどには歓迎してない奴がいたりする。
大抵そいつの後ろには本心丸見えの陽炎がいるのだ。

しかしそんな彼なんかですら、
まだこっちを見てくれていた。

酷い奴は私の斜め上に寝転がって浮いている。
或いはあくびをしながら時計にめをやるのだ。

さすがの僕も視線を切っていた。
無論私は言うまでもない・・・。

私は時計の針が
何回動いたかだけをたまに
確認しては、
テキトーに僕に話を任せた。

よし。時間だ。
そろそろ一人なろう。

そう思った時、
僕はやはりやってしまってた。

わかりやすくいえば、「やらかしていた」のだ。

……………………………………………………

……………………………………………………

高校の後ろの小山にに「ヒルガオの丘」という
開けた場所がある。
今、その開けた場所に黒い点々が疎らに動いていた。

その中に勿論、なぜか僕はいる。
大きな細長い器機を担いで歩いていた。
光の屈折を用いた発明品。


天体観測は悪くないと思う。
光は分化もしなければ、
嘘もつかず、まっすぐに飛んでくる。

当たるところにあたっては
それ相応に曲がる。

が、ただそれだけのことを
わざわざ遠くのものを用いて
観測することに

時間を潰されるのが
僕はそうでもなさそうだが、
今の私には少なくとも不快だった。

順当に行けば、
今頃家では

今日の紹介の反省会を
してるところなのに…。

ため息を心の中で私がすると

僕は変に私と距離を置いた。

僕も不器用極まりないらしい…。

私は痛感してた。

天文部に仮入部して初日で
夜に連れてこられることは
考えれば想像できなくはなかっただろうに。

と、反省を僕にさせながら
シャーペンを嫌々動かす。

私はただ観測結果をつづる。

それを見ていた女子の先輩が
一言、「私」の方に言葉を投げてきた。

「そんなに不服だったのかな?笑」

私は僕に不意に水をかけられるように
前に押し出され、動揺していた。

一方で、僕は急にどこかへいってしまう。

僕への反感の気持ちが大きくなるものの、

それを押し殺し、返答した。

「いえ、何もないですよ。
   観測自体は飽きなくて好きな方ですよ。」


先輩は間を置く。
すると、なんとなく見えてしまった。

それに対して女子の先輩の陽炎は、

私が座ってる目線に
わざわざ合わせるようにかがみこんで
私を覗き込んでいた。

余りに距離が近かったから、
退こうとするにも、

座った石の形状が、いい腰あてになって
身動きが取れない。

こんな風に見られるのは
正直初めてで、どうすることもできず、

何か反応しないとそれはそれで失礼だと思い、

結局、こちらものぞきこんでしまった。


言葉が交わされない中である意味、
心理戦が行われていたのかもしれない。

どれだけの時間がそれからたったのだろうか。

あるいはどれだけのことが陽炎に読み取られたのか。


突然彼女は微笑んで立ち上がり、
ゆっくり振り返る。

(あなた、面白いわね…笑)


後からそう聞こえた気がした。

変に頭に残るような、イメージが
頭に焼き付けられると、同時に、

私は心を初めてノックされたようで
動揺が露わになっていく。


後々聞くことになるのだが、
女子の先輩というのは一年上で
今年で高2の先輩のことだ。

その彼女の容姿は
例えるなら夕暮れの光というよりは
深夜の月光が合いそうな

その場においては少なくとも綺麗な方だが、
内面の方はというと
表現するにはガラス職人が必要なくらい
繊細でまとまった人だろう。

昼頃に校舎で見た時は
少なくともそう思っていた・・・。


正直先ほどの言動から心が読めず

久々に素直に「一人」で考えていた・・・。






そんなことをしていると
今度は陽炎ではなく、
先輩自身が「私の隣」に現れた。

唐突で自由な人だなぁと心の中で
笑いながらも、私は、先輩の持つ異質な雰囲気に
ちょっと惹かれるところがあった。

その場で無口に隣に座りこみ
星を見る姿を見ていると、
何も考えずに自分も見上げてみる。

すると、どうだろうか。

どれほど、これだけ無心で星を見たことがあったか。

星を初めて、綺麗と思ってしまうと同時に、
隣の先輩の純粋な美しさまで、
頭の中で思わず絵にしてしまった。

そう見とれていると、

先輩は、突然微笑んでから、

「もっと星が綺麗な時に、
   あなたを見てみたかったわ」

と、言葉を置いた。

そう呟く彼女の右手には
鏡が握られてこちらに向けられている。

私はそれに吸い込まれてしまった。



そこにはほんの少しだが
紛れもなく「私」が映っていた。
なんの僕というバイアスを受けない、
無の私。

その場で何も考えなえてない、
場合によってはつまらないものかもしれない。


暫くそんな私を見つめてみる。

少しだけ白く照らされた私を
他人の鏡に写ったということだけでも、

ちょっとした満足感に浸れたのだ。


一方で僕の方は、
そのような不可思議な状況に
動揺と驚きを隠せず、
どちらにせよ、硬直していた。






その時間だけ、
ハッキリと

「僕」と「私」の双方は互いに
自分が自分でないことを

なんとなく悟って、
距離を置いた。



鏡を見た数十秒という
とてつもなく長い時間だけ。








その時間が終わる前に、
先輩は鏡を懐にしまい込んで、


まだ、硬直している私にだけ、

「また綺麗な夜にね」
と声をかけて去って行った。

気がついたのはだいぶあとだった。

(…………。)

思う所はあるが、

先輩は確かに、
本質的な私を覗き込んでいた。

それがなんとなく気になって、
一方でそれが解釈にすぎず、
我に戻ろうとする自分がいて
そんな自分が自分のように思えなくて
でも今までそう過ごして
確立してきたの#$々6%17:・・・・。


彼女に会って数十分で
この有様だ。


とりあえず、硬直していた僕を捕まえて
なんとか落ち着いた頃、
改めて私達は次のことを
思った。


私は心の中から、僕は直感的に

彼女が
魅力的で怖い人と感じてしまった・・・。


彼女は一体何者なのか、

何がどこまで考えすぎで

私は他人から見てどう見えてるのか。


それまで考えていたことを

彼女は鏡をつきつけることで、

全部壊した。


言い換えると、
光を照らした。

ただそれだけのこと。


表に晒された私は

収まりがつかず

答えを探すために、
日を改めて先輩に会いに行くことに決めた。

無論僕を引き連れて・・・。

……………………………………………………
……………………………………………………
第一夜 終
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