自分観測 ヒルガオの誓い

一、星矢の照らす世界

第二夜・交錯する夜

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目を覚ますために

水に塩、砂糖を
1:1で溶かして飲んでみる。

これを糖塩水と僕と私はよんでいる。

習慣化してるのだが
飲み干せたことは無論なく、

その味が故に1日は大概不快な気持ちで

始まりを迎えるのもまた日課だった。


溶けきれてない塩砂糖を台所に流そうと
ガラスコップを傾け

ゆっくりとそれが流れていくのを
見つめながら


私は昨日のことをちょうど思い出していた。


記憶としてはまだ新しいが
正直1日置いてみると少々

人間的な興味よりも
哲学的な興味が彼女に対しては
大きく膨らんでいる。

誰だって何かを取り外された時は

忘れるはずがない。

なんとなく救われる気がする一方
過度な期待に過ぎないことを

昨日の回想とともに
もう一度考え直す。

僕は台所の前に立っている。

私はガラスコップの中にいる。

どう足掻いても、
昨日のことが引っかかる私は

コップの中に
必死でしがみつく塩砂糖を見て安心すると

それを取り出そうとする
僕を止めさせて、

支度にかからせる。

一方で私は片手間に

もう一度昨日のことを整理し始めた。


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彼女に近づくには天体部の存在が

必要不可欠だったのかもしれない。

あの場だからこそ、
ああゆうコミュニケーションは
行われたことは

多分互いに理解してると
私は思っている。

部活に入ることは
私を隠すことに適してると

中学や前の高校までは思っていたわけだが、

どうもあの場所は
危険な橋そのものらしい。


それは僕が多分一番
恐れていることだろう。

いくら僕だからといって

作ってしまったのは
私だ。


その私が変わればどうなるか。

それは彼女にかかっていた。

だから僕は少しビビっている。



彼女はそうゆう立ち位置にいる。

それが私をどう変えてくれるのか

会ったことない人種に期待をかけるのは
仕方ないことだったととりあえず決めて


私は天体部に入部することを確認してから

登校した。


学校までの道のりは

正直言って憂鬱ではなかったものの
乾いていてなんとも言えない時間が続く。

特に、家から最寄り駅までは
はっきり言ってやることが決まっている。


雨が斜めにバスに打ち付ける音と
エンジン音を意識しながら

つり革をただ握って


「待つ」。

普段ならそうやって

何気に時間が潰れること自体に
楽しんでいたわけだが


今日ばかりは事情が違う。

昨日の地面の湿気はすでに

蒸発し始まめている。

日が出てからまだ数分程度の
早朝に。

そんなこと、
普段なら気付いて面白がるはずだが、


とにかく私はバスの窓に映った

僕を睨み続けていた。

それまで異論なく当たり前のように
一緒にいた存在。

改めて考えさせられてる自分は、

それまた一体何者なんだ。




私を取り巻くもの、

私と僕、

少しずつ何かが変わり始めてることは

むしろ目に見てるものが
感じてくれているような気がした。

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二日目の部活動、

他の部員が今日は仕事をする番らしく

何もすることがない僕は
岩に座って星を見上げてる。

そんななかで、

私は月明かりになんとなく感動していた。

失礼かもしれないが、

本当に
（なんとなく）。

それは、
その時は特に深く考えなかった。

正直、ここに来てしまうと、

都会では見れない

すごい綺麗な景色が相変わらず広がっているのだ。


その景色を背景とし、
ゆっくりと月が動くのを

砂時計を見るように楽しむ。




それを写真に撮ることを
私は特に考えたことはなく、

忘れた頃にまたここに見にくる価値がある

と、山と天体部に値段をつけた。

値打ちをつけ終えるのを
待っていたかのように

彼女はやはりくる。

「自分のカメラを持っていて
   この景色を撮らない、
   やはり変わってるわ。」

そう言いながら頷いている先輩。


先輩の怖いところは、
その理由ですら見透かされてるように

聞こえるところだ。

「顔にわかりやすく出てるよ。
   そんな顔を続けてるから。
   私は飽きなくて良いけれど。」

今日は僕の方に声をかけてきている。

「なかなかこうゆう景色はお目にかかれない
   ものですからね。特に私の住む地域では」

それを聞くと、
満足そうに眼鏡を外して

近くの大きな岩に座り込み、

眼鏡を吹き始めた。

ほんの少しだけ無の時間。

風と時間だけが流れていくのを
僕は少しだけ苦く見つめていた。


少しだけ気を遣ってくれてたみたいで
それがまた怖い。

過去の話になんとなく流れるのを警戒。

それがまたまたなんとなく彼女のにも
伝わっていたらしい。

「聞いたよ。君、あの副都心の方から
    わざわざ通ってるって。」

私はその後に、
先輩の内心、彼女がこう告げているのを
見てしまった。

（正直大丈夫なの？）

突然話題を切り込んで来られて
またまた動揺。


僕は無論平然としていた。

私は・・・。

とりあえず、僕の方は話を続ける。

「そうですね～。遠いですけど
   私は言うほどなんともないですよ。
   損すること特になかったですし。」

（少なくとも。）

私が僕の言葉に一言付け加えると、

 (そっか…)

・・・。

彼女は、少しだけ私として距離を置いてくれていたが、

彼女は、私の方に何かしらを
訴えかけているようだった。

私は残念なことに大体は想像がついた。

前の高校での
私たちのことを、なんとなく探られている。

先輩の表情には
答えが書かれているようで、


だからこそ、私は先輩のことが気の毒で
ならない。

普通そんなに気遣う人がいるのだろうか。



それも、こんな私にまで・・・。

私と彼女のとの会話は

シリアスになればなるほど

僕と先輩の会話は

不自然なほど会話のテンポが
転がるように早くなる。
                       ・
                       ・
                       ・


「前の高校は、ともかく今の高校に
   早く慣れないとですね」

(・・・。)
空元気で誤魔化す僕とは対照的に


私は無言にならざる得なかった。


「そうね。この高校では、
   また、高校での生活があるものさ
   心配は・・・、いらないでしょう。」

(・・・！)
彼女の方はというと、

言ったことをどうも後悔していて、
同様に言葉を発しない



とうとう互いの心中が黙り込むと

本体同士の僕と先輩も一度手を引いた。

互いに触れたくない話題、

なんとなく近づきつつある。

「ごめん、ちょっと。電話。」

「すいません、わたしも整理しないと。」





ある意味似た者同士なのかもしれない。


今日はそんなことがわかった。
彼女の内心も不器用だったのかな。

多分昨日と今日とでは
やはり違うものがあったのだろう。




過度な期待をし過ぎた。



話題が話題なだけに

素直な話が率直に言うと
できなかった。





先輩は今度は先輩自身に鏡を

照らしていた。

先輩もやはり彼女のことを確認している。

無論僕も自分から私の方に
距離を縮めてきた。


二重会話。

ではないが、
ここまで疲れる会話はなかった。


私はもう一度月を見て、
なんとか話を戻す気力を取り戻そうとしたが、

どこからともなく出てきた雲に隠れていた。


それを見て、悟った彼女は、
先輩を引っ張って消えていった。



私も僕のところに戻ったのだが、
何もする気になれなく、
しばらく座り込んでいた。


・・・。

やるせなさがあるこの感じは、


まるで、糖塩水溺れたような気分だった。

先輩が鏡を私に見せなかったのは、
そのせいだろう。

そんなことを考えると

なおさら申し訳なく思って、

先輩達の向かった方向を見るものの、

そこには誰もいない山道があるだけ。


あまりの脱力感に自分のペットボトルの水を
まともに飲むこともできず、

気がつけばペットボトルは地面にへばりついていた。

溢れでてきた水を見て
私はさらに肩を落とすしかなかった。

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第二夜 終