8 / 18
第8話 ドラゴンと話す②
しおりを挟む
ギルドに戻ってきたあたしたちは、さっそくマスターにイクメンドラゴンのことを相談することにした。
「──なるほどな、ドラゴンにも事情があることは承知した。
だが、それで解決する問題でもないなぁ」
それはそう。あたしみたいに意思疎通できるならともかく、そうでない人はドラゴンがいる峠を越えるにしても身の危険は感じるだろうし、ドラゴン側をなんとか説得して人間を襲わないように言ったとしても、今度はそれを利用して人間側にドラゴンを襲う人が出ないとも言い切れない。
「巣を引っ越してもらうわけにもいかんし……どうしたものか」
「おねたん、どうしたらいいと思う?」
こういう困った時こそAIに相談すべきだとあたしは判断した。
そして、おねたんからさまざまな解決策が講じられる。
「いっそ、あの道を閉鎖するというのは?
自然災害か何かで使えなくなったとするとか」
「あそこを封鎖すると、隣町からの物資が流れなくなる。
それはそれでこちらにも影響がでるんだよ」
「では、回り道を整備するというのはどうかしら?」
「今から開始しても、それが完成するまでどれほどかかるやら……」
「名うての冒険者をギルドから派遣し、人間、ドラゴン双方に監視をつける」
「それなら、シノあたりが適任ではある……が、あいつに依頼するには国の許可がいる。
前回の魔獣騒ぎがまさにそれだったんだ」
この世界はこの世界で、なかなかお国事情がめんどくさそうだわ。
「ところでチハル、ジフテトは役に立ったか?」
「あー、うん」
ぶっちゃけいない方が楽だったまである。
それでも、あの人なりにあたしを庇おうと頑張ってくれていたし、あんまり悪くは言えないか。
「ドラゴンは話せる状態なんだな?
それなら俺と、国の環境省のやつらを連れてドラゴンの巣まで案内してくれ」
「わかりました」
結局、偉い人たちで話してもらって判断してもらうしかないよね。
その場合、報酬がどうなるのかが心配だわ。
それにしても──
「この世界にも環境省なんてあるんだね、おねたん」
「千春が知ってる近い意味合いの言葉で翻訳されるのよ」
「なるほど」
今まで翻訳されてた言葉に日本で馴染みのある言葉が混じってたのはそのせいか。
***
それからあたしたちは、マスターと環境省の人を連れて再びドラゴンの巣のある峠へと向かった。
「ジフテトさんは来なくても大丈夫だったのに」
「そういうわけにいかないだろ。
まだ依頼達成してないんだぞ」
これを終えたところで、依頼がどう扱われるのかわからないけどね。
どうなっちゃうんだろうなー、お金は絶対欲しいところだけどさ。
「ここです」
ドラゴンの姿は見えない。
巣にでも帰ってるのかな?イクメンだし。
「おねたん、ドラゴンいる?」
「こっちに気づいたみたいよ」
それから間も無くして、ドラゴンが飛来してきた。
巣がどこにあるのかは知らないけど、ここからそんな離れてないのかも。
『人数を増やしてきたか』
なんか、誤解されてる?
「別に戦いにきたわけじゃないよ。
あの眼帯の人はギルドのマスターで、他は環境省の人たちだから」
「本当にドラゴンと喋ってるのか……」
「不思議な光景ですね……」
とりあえず、ドラゴンの誤解を解くためにも、マスターたちと話してもらわないと。
あたしが通訳みたいにしたらいいのかな?
「マスター、どうするかドラゴンと話し合ってください。
あたしが通訳しますので」
マスターたちが話してることをドラゴンに伝えていく。
こういうのって、元の世界の仕事でもそうだったけど、お互いの妥協点を見つけるしか方法はないのよね。
『監視とはどういうことだ?
我ら竜が人間如きの監視下に入れと言うのか?』
ドラゴンはドラゴンで、そこはプライドが許さないみたい。
監視といっても、あなただけでなく、人間側も監視すると言ってるんだけどね。
それはそれで、人間に保護される立場になるから嫌なんだろうな。
でも、どっかで妥協しないと、話し合いが終わらないよ?
『もうよい……所詮、人間は自分たちのことしか考えぬ。
面倒だ、まとめて滅ぼしてくれる』
「ちょっと待ってよ!もし自分たちのことだけ考えてるなら、こんな話し合いに来るわけないでしょ!?」
「チハル、交渉決裂したのか!?」
「この石頭、全然妥協してくれない!」
戦闘体制に入ろうとするドラゴン……どうする?
あたしたちは、戦いに来たわけではないと言うのに。
「おねたん、なんか手はない?ローキックで動き止める?」
「ドラゴンにローキックしてもね……」
「戦うなら、やってやるぞ!」
「2人とも、脳筋な考えはいったんストップ!
おねたんが考えるから、ちょっと待ちなさい」
そうは言ってもドラゴンは待ってくれないじゃん!
「ドラゴンさん、聞いて。
監視を強化するのはあなたのことよりも、むしろ人間側の方なの」
『ほお……』
おねたんがドラゴンに話し始めた。
「あなたは理知的な竜だから、人間側を攻撃しない約束は守るでしょう。
でも、人間には、それすら守れないない人もいる」
「たしかに、そうだな……特にギルドにはそういった人種も多いだろう。
手柄を急ぐあまり、後先考えない奴らばかりだからな。
そういった奴らから、ドラゴンを守るための監視と言ってもいい」
「これは、あなたの家族を守るためでもあるのよ」
『ううむ……』
良かった。
とりあえず、ドラゴンは矛を収めてくれたみたい。
「チハル、伝えてくれ。
ドラゴンの不利益になるようなことにはさせないと」
「聞いて、マスターがあなたの不利益にはさせないって」
『……わかった。
お前たちのいうことを信じよう』
こうして話はまとまった。
ここの監視は、シノさんと通訳できるあたしが引き受けること。
そして、ドラゴンも子供がある程度育ったらここを離れること。
彼らのもともとの棲み家はここではなく、もっと遠くにあるそうだから、それについての異論はないって。
これで、あたしはしばらく安定した収入も得られるし、ドラゴンと戦う羽目にならなくて良かったわ。
おねたんも、ドラゴンに勝てるようなスキルは無いと言っていたからね。
今回の報酬も、ジフテトさんと折半だけどきちんと貰えたし、当面の生活はこれで大丈夫かな。
「──なるほどな、ドラゴンにも事情があることは承知した。
だが、それで解決する問題でもないなぁ」
それはそう。あたしみたいに意思疎通できるならともかく、そうでない人はドラゴンがいる峠を越えるにしても身の危険は感じるだろうし、ドラゴン側をなんとか説得して人間を襲わないように言ったとしても、今度はそれを利用して人間側にドラゴンを襲う人が出ないとも言い切れない。
「巣を引っ越してもらうわけにもいかんし……どうしたものか」
「おねたん、どうしたらいいと思う?」
こういう困った時こそAIに相談すべきだとあたしは判断した。
そして、おねたんからさまざまな解決策が講じられる。
「いっそ、あの道を閉鎖するというのは?
自然災害か何かで使えなくなったとするとか」
「あそこを封鎖すると、隣町からの物資が流れなくなる。
それはそれでこちらにも影響がでるんだよ」
「では、回り道を整備するというのはどうかしら?」
「今から開始しても、それが完成するまでどれほどかかるやら……」
「名うての冒険者をギルドから派遣し、人間、ドラゴン双方に監視をつける」
「それなら、シノあたりが適任ではある……が、あいつに依頼するには国の許可がいる。
前回の魔獣騒ぎがまさにそれだったんだ」
この世界はこの世界で、なかなかお国事情がめんどくさそうだわ。
「ところでチハル、ジフテトは役に立ったか?」
「あー、うん」
ぶっちゃけいない方が楽だったまである。
それでも、あの人なりにあたしを庇おうと頑張ってくれていたし、あんまり悪くは言えないか。
「ドラゴンは話せる状態なんだな?
それなら俺と、国の環境省のやつらを連れてドラゴンの巣まで案内してくれ」
「わかりました」
結局、偉い人たちで話してもらって判断してもらうしかないよね。
その場合、報酬がどうなるのかが心配だわ。
それにしても──
「この世界にも環境省なんてあるんだね、おねたん」
「千春が知ってる近い意味合いの言葉で翻訳されるのよ」
「なるほど」
今まで翻訳されてた言葉に日本で馴染みのある言葉が混じってたのはそのせいか。
***
それからあたしたちは、マスターと環境省の人を連れて再びドラゴンの巣のある峠へと向かった。
「ジフテトさんは来なくても大丈夫だったのに」
「そういうわけにいかないだろ。
まだ依頼達成してないんだぞ」
これを終えたところで、依頼がどう扱われるのかわからないけどね。
どうなっちゃうんだろうなー、お金は絶対欲しいところだけどさ。
「ここです」
ドラゴンの姿は見えない。
巣にでも帰ってるのかな?イクメンだし。
「おねたん、ドラゴンいる?」
「こっちに気づいたみたいよ」
それから間も無くして、ドラゴンが飛来してきた。
巣がどこにあるのかは知らないけど、ここからそんな離れてないのかも。
『人数を増やしてきたか』
なんか、誤解されてる?
「別に戦いにきたわけじゃないよ。
あの眼帯の人はギルドのマスターで、他は環境省の人たちだから」
「本当にドラゴンと喋ってるのか……」
「不思議な光景ですね……」
とりあえず、ドラゴンの誤解を解くためにも、マスターたちと話してもらわないと。
あたしが通訳みたいにしたらいいのかな?
「マスター、どうするかドラゴンと話し合ってください。
あたしが通訳しますので」
マスターたちが話してることをドラゴンに伝えていく。
こういうのって、元の世界の仕事でもそうだったけど、お互いの妥協点を見つけるしか方法はないのよね。
『監視とはどういうことだ?
我ら竜が人間如きの監視下に入れと言うのか?』
ドラゴンはドラゴンで、そこはプライドが許さないみたい。
監視といっても、あなただけでなく、人間側も監視すると言ってるんだけどね。
それはそれで、人間に保護される立場になるから嫌なんだろうな。
でも、どっかで妥協しないと、話し合いが終わらないよ?
『もうよい……所詮、人間は自分たちのことしか考えぬ。
面倒だ、まとめて滅ぼしてくれる』
「ちょっと待ってよ!もし自分たちのことだけ考えてるなら、こんな話し合いに来るわけないでしょ!?」
「チハル、交渉決裂したのか!?」
「この石頭、全然妥協してくれない!」
戦闘体制に入ろうとするドラゴン……どうする?
あたしたちは、戦いに来たわけではないと言うのに。
「おねたん、なんか手はない?ローキックで動き止める?」
「ドラゴンにローキックしてもね……」
「戦うなら、やってやるぞ!」
「2人とも、脳筋な考えはいったんストップ!
おねたんが考えるから、ちょっと待ちなさい」
そうは言ってもドラゴンは待ってくれないじゃん!
「ドラゴンさん、聞いて。
監視を強化するのはあなたのことよりも、むしろ人間側の方なの」
『ほお……』
おねたんがドラゴンに話し始めた。
「あなたは理知的な竜だから、人間側を攻撃しない約束は守るでしょう。
でも、人間には、それすら守れないない人もいる」
「たしかに、そうだな……特にギルドにはそういった人種も多いだろう。
手柄を急ぐあまり、後先考えない奴らばかりだからな。
そういった奴らから、ドラゴンを守るための監視と言ってもいい」
「これは、あなたの家族を守るためでもあるのよ」
『ううむ……』
良かった。
とりあえず、ドラゴンは矛を収めてくれたみたい。
「チハル、伝えてくれ。
ドラゴンの不利益になるようなことにはさせないと」
「聞いて、マスターがあなたの不利益にはさせないって」
『……わかった。
お前たちのいうことを信じよう』
こうして話はまとまった。
ここの監視は、シノさんと通訳できるあたしが引き受けること。
そして、ドラゴンも子供がある程度育ったらここを離れること。
彼らのもともとの棲み家はここではなく、もっと遠くにあるそうだから、それについての異論はないって。
これで、あたしはしばらく安定した収入も得られるし、ドラゴンと戦う羽目にならなくて良かったわ。
おねたんも、ドラゴンに勝てるようなスキルは無いと言っていたからね。
今回の報酬も、ジフテトさんと折半だけどきちんと貰えたし、当面の生活はこれで大丈夫かな。
1
あなたにおすすめの小説
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
人見知りと悪役令嬢がフェードアウトしたら
渡里あずま
恋愛
転生先は、乙女ゲーの「悪役」ポジション!?
このまま、謀殺とか絶対に嫌なので、絶望中のルームメイト(魂)連れて、修道院へ遁走!!
前世(現代)の智慧で、快適生活目指します♡
「この娘は、私が幸せにしなくちゃ!!」
※※※
現代の知識を持つ主人公と、異世界の幼女がルームシェア状態で生きていく話です。ざまぁなし。
今年、ダウンロード販売を考えているのでタイトル変更しました!(旧題:人見知りな私が、悪役令嬢? しかも気づかずフェードアウトしたら、今度は聖女と呼ばれています!)そして、第三章開始しました!
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
いいえ、望んでいません
わらびもち
恋愛
「お前を愛することはない!」
結婚初日、お決まりの台詞を吐かれ、別邸へと押し込まれた新妻ジュリエッタ。
だが彼女はそんな扱いに傷つくこともない。
なぜなら彼女は―――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる