コーデリア魔法研究所

tiroro

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5.ミアの配属先

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 翌日、普段通りに受付の仕事をしていると、突然フィオルさんがやってきた。

「今日の会議にミアも参加してもらうことになった。
 10時からの予定だから、それまでに来てくれ」

 それだけ言ってフィオルさんは去っていった。
 会議に参加って、なんなんでしょうね。
 私なんかが参加して、何か役に立つことがあるのかしら?

「会議に参加なんて凄いじゃない!
 これで、ミアの正式な配属先が決まるのかもね」

「エリスさん……お世話になりました」

「まだ早いよ!? 私のこと嫌いなの!?」

 そっか、配属先のことがあったか。
 とりあえず、会議の時間までにちゃちゃっと依頼書と結果報告書の写し作業終わらせちゃお。
 と、思っていたら依頼者が来たみたい。

「魔物が……コボルトが百体くらい集団で出たんだ! うちの村が襲われている!」

 緊急の依頼だ。こういう場合は依頼書は後。
 討伐戦術課に直接内線する。

「ユリウスさんですか!? 緊急です!
 村に魔物が現れたと……コボルトの集団だそうで……数は百体ほどと聞いています……村の名前ですか?」

「ヒコノ村だ!」

「ヒコノ村です。 ……はい……承知いたしました!
 すぐに出るそうです! 課の者が来ましたら村まで案内願います!」

「わかった……頼む、村のみんなを助けてくれ!」

 依頼人は体格のいいおっさんだ。見た感じは、そこらの衛兵よりも強そう。
 だけど、いくらコボルトでも百体も出たら物理攻撃じゃ流石に無理か。
 間も無く討伐戦術課から送られた魔導士たちがやってきた。
 リシテアさんと、三名の魔導士たち。
 魔導士のうち一人は白いローブを着た薬学治療課の魔導士みたいだ。
 あと、研究所で雇っている傭兵も二名連れていくみたい。

「それでは、村まで案内をお願いします」

 村人のおっさんとリシテアさんたちは研究所を出て行った。
 会議にはリシテアさんは出ないのか。
 その方が気が楽っちゃ楽だけど……コボルトなら数が多くても、リシテアさんなら大丈夫だよね?
 ……とか言ってると、変なフラグになりそうだからやめとこう。


***


 10時になって会議が始まった。
 各課の課長が勢揃いで、私の場違い感が半端ない。

 討伐戦術課のユリウスさん。
 薬学治療課のフィオルさん。
 遺跡調査課のライネルさん。
 生活支援課のカノンさん。
 情報解析課のセオドールさん。
 術式開発課のエリオットさん。
 そして、所長。

「皆揃ったようだな。それでは会議を始める」

 所長の号令で会議が始まった。
 こういうのって初めてだから、なんか緊急するなぁ。

「フィオル、昨日の状況について詳しく聞きたい」

「はい、患者ですが、病ではなく呪いにかけられておりました。
 詳しくは報告書にまとめておりますが、正直、私の手に余るほどの強力なもので……そこにいるミアの魔法が無ければ患者の……私の命も危うかったかと思われます」

 なんか課長たちが一斉に私を見てるんですけど……。
 ちょっと怖いんで勘弁してください。

「黒い斑点……出血……これまでにそのような呪いは聞いたこともない」

「光属性なら呪いに対抗できる……ミアを連れて行けとおっしゃった所長の判断に感謝いたします」

 私が同行させられた理由ってそれか!
 目から光線しか出せないのに、よくそんな危険な判断したね……。

「報告書にはミアがグランド・ヒールを使ったとあった。
 それは、本当かね?」

 所長が私を見てる。
 私に答えなさいってことか。

「私自身、よくわからないんですけど……やってみたらできました」

「グランドは長い詠唱が必要だ。ミアは術式を知っていたのか?」

「いえ……なんかできそうな気がして、魔法の名前を叫んだだけです」

「無詠唱……」
「グランドを詠唱無しでできるのか?」
「桃色の髪触りたいわぁ」

 一人変な人がいるけど……無詠唱とか言われても私自身よくわかってない。
 あの時はただ、フィオルさんとレイチェルさんを治したくて必死でやっただけだし……。

「何より、ミア自身よくわかってないようだな。
 このことは、私の方でも調べてみる。
 解明できれば、ミアも安心するだろうし、皆の研究の効率も上がるだろう」

 依頼とかあってたまに忘れそうになるけど、ここの本懐は魔法研究なんだよね。
 依頼は国からの助成金のためにやってるそうだし。

「さて、本題だが、ミアの正式な配属先を決めたいと思う。
 皆の意見を聞きたい」

「私はミアが望めば討伐戦術課のままでも構わん」

「遺跡調査もなかなか楽しいものだ。活発な子のようなので、歓迎するぞ」

「無詠唱とは実に興味深い。我が情報解析課で是非とも解析させてほしい」

「術式開発課で光属性の魔法開発に勤しもうではないか」

「ぜひ生活支援課でその桃色の髪を撫でさせて頂戴」

 一人変な人が混じってるけど、それは置いといて。
 基本みんなウェルカム状態なわけね。
 私が選んじゃってもいいのかな……そんな立場でもないような気がするけど。

「私は、今回のことで自分の未熟さを知りました……。
 あの時のミアの魔法が無ければ、私はここにいません。
 おそらく、この中では私が一番頼りない上司でしょう……」

 なんかフィオルさんが語り出した。

「しかし、薬学治療課は、人々の安全な生活には欠かせない部署だ。
 力及ばないところもあるが、回復術や医療術に関しては、それでもこの中では私が一番だという自負はある。
 ミア……どうか、薬学治療課に来て私を手助けしてくれないだろうか」

「はい……」

 フィオルさんの言葉に流されて、思わずはいって答えちゃった!
 なんか、全員でこっち見てるし……。
 まさかこれで決定なの!?
 自由に出せる魔法は目から怪光線くらいよ、私!

「決まりだな。ミアは薬学治療課に配属する」

 なんか、拍手されてる。
 私も拍手したらいい? わー、パチパチ!

「私が拾って来たんだかなぁ……」

「ユリウスさん、ごめんなさい! 助けてもらった恩は全然返せてませんよね」

「薬学治療課は、我々戦術討伐課との仕事も多い。
 恩は、これから返して貰えばいい」

 そういえば、リシテアさんの部隊に薬学治療課の人もいたね。
 所長が私に白いローブを渡してくれた。
 薬学治療課の人が着てるローブだ。

「配属は決まったが、戦術討伐課のように他の課と連携して行う仕事もある。
 今のうちに、課長たちに挨拶しておきなさい」

「はい!」

 私はその後、課長たちに改めて挨拶させてもらった。
 髪に頬擦りしてくる変な人もいるけど、みんな庶民の私に気さくに接してくれる。
 この研究所の人達はいい人ばかりだ。
 ……リシテアさんは苦手ですけど。

「ミア、俺の課を選んでくれてありがとう」

「フィオルさん……私、全然思い通りに魔法を使えないし役に立たないかもしれませんよ?」

「それは、これから俺も協力していく。
 一緒にたくさんの人たちの命を救っていこう!」

「……はい!」

 こうして、私の配属先も決まり、会議は無事終了した。
 そう思っていたのに──

「所長! ……大変です!!」

 戦術討伐課の人がすごい勢いで会議室に飛び込んできた。
 この人、リシテアさんと一緒に向かった……何で、こんなに傷だらけなの?

「お忙しいところ申し訳ありません!
 リシテア部隊、ヒコノ村での魔物討伐に失敗……負傷者も多数出ております!」

「依頼内容はコボルトの討伐ではなかったのか!」

「百体あまりのコボルトは討伐しました……しかし、そこへ更にオークの群れが!」

「数は?」

「正確な数はわかりませんが、二十体は下らないかと……」

 そこまで言い終えると、戦術討伐課の人が力尽きたように倒れてしまった。

「傷つきし魂と肉体に癒しを与えよ──【デオ・ヒーリング】」

 青い魔力が包み込み、戦術討伐課の人の傷が癒やされていく。
 フィオルさんは、その人をベッドの上まで運んだ。

「ミア、俺たちも行こう!」

「はい!」

 まだ、魔法は自由に使えないけど、薬とか食料を運んだりはできる。
 リシテアさん、あんな人だけど……死んじゃったら嫌だし、無事でいてほしい。

「私も行こう。リシテアは、私の大事な部下だ」

 他に、戦術討伐課と薬学治療課からそれぞれ数人引き連れて、私たちはヒコノ村に向かった。
 オークがどんな魔物かは知らないけど、こっちには課長が二人もいるんだから、きっと大丈夫。
 それなのに、さっきから湧き上がるこの言いようのない不安な気持ちはなんなんだろう……。
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