コーデリア魔法研究所

tiroro

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6.オークキング

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 ヒコノ村に着くと、そこはもうほとんど壊滅状態だった。
 あれからそんなに時間は経って無いのに……いや、違う。
 私が受付をした時点で、もう襲撃を受けていたんだ。
 しかも、その後にオークまで出て……こうなっていてもおかしくない。

「酷い状態だ……村人たちは無事なのか?」

 辺りには、村人の姿は見えない。
 だけど、泣き叫ぶ子どもの声は聞こえる。

「あっちです。行ってみましょう」

 私は、その声が聞こえる方に行ってみた。
 そこには倒壊を免れた長屋があり、村人や研究所の人たちの姿が何人か見えた。

「──【デオ・ヒーリング】」

 怪我人が多く、薬学治療課の人達が一斉に回復に回る。
 私にグランド・ヒールが使えたら、こんなの一気に回復できるのに。
 手に魔力を集めてこっそりやってみたけど駄目だった。
 あの時と、いったい何が違うというの?
 救いたい、助けたいっていう気持ちは、今だって変わりないのに……。

「女たちは全員オークに連れて行かれた……」

「そういうことか……やつらの繁殖の時期ってわけだ。
 コボルトは尖兵……疲労し切ったところを本陣で叩く……無駄に知恵を付けやがって」

「どういうことですか?」

「オークに雌は存在しない。あいつらは多種族に子を産ませ繁栄するんだ……だから、人間の女性を攫う」

 なんですって!? じゃあ、村の女性たちは今頃……。
 そういえば、リシテアさんの姿が見えない!

「ユリウスさん! リシテアさんが見当たりません!」

「おそらくオークに連れ去られたな……」

「そんな、悠長に言ってる場合ですか!
 リシテアさんの貞操のピンチなんですよ!」

「あいつなら大丈夫だ。それについては心配いらん」

「いくらリシテアさんが強いからって、そんなのわかんないじゃないですか!」

「知らなかったのか? あいつは、ああ見えて男だ」

 ……今なんて? リシテアさんが……男?
 またまたご冗談を。
 声だって高かったし、私よりも豊満な胸もあったじゃないですか。

「オークすら間違えるとは、あいつも大したものだな」

「俺も、最初はびっくりしたよ……あの胸は詰めものなんだよな」

「嘘……でしょ?」

「いや、ほんと」

 えっ、待って。リシテアさんは男?
 なんか、私がユリウスさんと話してる度に突っかかって来てたから、リシテアさんはてっきりユリウスさんのことを好きなんだと思ってたけど違ったの?
 それとも、リシテアさんは男だけどユリウスさんのことが好きで、ユリウスさんも、リシテアさんのこと満更でも無さそうな感じだったし、実は二人とも男の人同士で……。

「私、二人のこと応援してますから!」

「おい、フィオル。お前の新しい部下がおかしなこと言い出したぞ」

「ミア、とりあえず落ち着こうか」

 攫われた村人を救うため、ユリウスさんは部隊を編成し、オークがいるであろう場所へと向かった。
 私とフィオルさん、数名の薬師さんはお留守番。
 オークのいる場所に私は連れて行けないとのこと。
 そりゃそうだよね。私だって初めてが魔物は嫌ですよ。
 それに、私は怪我人の救助の手伝いに来たのだから、魔物退治は専門家にお任せしておきます。
 フィオルさんがヒーリングして、薬師さんが薬を塗って、私が包帯を巻く。
 無駄のない連携の完成だ。

「よくよく考えたら、ミアを連れて来るべきじゃなかったよな……ごめん」

「ほんとですよ! オークがそんな魔物だって知ってたら来てませんでした!」

「ミアが部下になってくれたのが嬉しくて、つい連れて来てしまった……」

 上長にとって、新しい部下ができるのって嬉しいですもんね。
 わかりますよ、私も花屋さんで新人さんが入ってきたときテンション上がってましたもん。

「とりあえず、あとは皆さんの無事を祈りましょう。
 ユリウスさんなら、きっとオークの群れをやっつけてくれます!」

 怪我人の治療を終えた私たちは、持ってきたスープを村人に配りつつ、ユリウスさん達の帰りを待っていた。
 オークの溜まり場が遠いのか、ユリウスさん達の戦う音も聞こえず静かな時が過ぎて行く。
 リシテアさん、無事だといいな──

 突然、長屋が大きな音を立てて揺れた。

「……なんだ!?」

 その音に、フィオルさんが立ち上がった。
 何事かと思っていると、またドンっと大きな音を立てて長屋が揺れる。

「まさか……オーク!?」

 更に音が響いたかと思ったら、今度は壁を突き破って大きな手が私を掴んできた。

「な、何これ!?」

「ミア!」

 持ち上げられてる!?
 ちょっ、頭に天井が当たる!
 外に引っ張りだされて下を見ると、なんか厳つい顔の化け物がいるんですけど!?

「こいつ……オークキング!?」

 キングって、オークの王様ですか!?
 王様が私みたいな庶民を相手にしちゃ駄目ですって!
 目から光線出しますよ!?

「ミア・ビィィイイムッ!」

 光線を掴んでる手に当てて、なんとか逃げ出した。
 束縛する人は嫌いです。

「ミア、無事でよかった!」

 私が離れてすぐ、討伐戦術課の人たちが一斉に攻撃する。

「──【デオ・カッター】!」

「──【デオ・トルネード】!」

 火が一番効果ありそうなんだけど、ここは長屋の中。
 倒れている人たちもいるし、迂闊に炎での攻撃はできない。
 私も何か手伝いたいんだけど、前みたいに魔法が使える感じがしない。

「ミア、これ持ってて」

 フィオルさんから、羽織っていたローブを渡された。
 なんか暖かい。

「水属性を回復魔法だけだと思うなよ……」

 フィオルさんが手を上に掲げ、詠唱を始めた。

「大地を潤し命を育む源たる力よ。
 今ここに集い、その流れを鋭き光に変えよ。
 全てを穿つ蒼き刃となりて貫け──」

 フィオルさんの右腕に青い水の魔力が集まって行く。
 それを見たオークキングが、こちらに腕を伸ばそうとしてきた。

「──【インテンシブ・デオ・トルネード】!」

「グッ、オオォーーーッ!?」

 オークキングの体が無数の風の刃に切り刻まれていく。
 この詠唱の声はリシテアさん!?

「【レゾナンス・デオ・アクアレイ】!」

 フィオルさんは詠唱と同時に指を前に突き出した。
 その瞬間、高圧の水流がオークキングに突き刺さる。
 そして、薙ぎ払うような指の動きでオークキングを切り裂いた。
 すごい! フィオルさんがオークキングをやっつけちゃった!
 そうだ……リシテアさん!

「リシテアさん! 大丈夫ですか!?」

 そこには、胸元をはだけさせたリシテアさんが立っていた。

「ほんとに……男の人だったんだ」

「別に……騙すつもりはなかったのよ。
 ほら、私、変わらず美しいでしょ?」

「オークにやられちゃったかと思って心配してたんですよ!」

「あいつらなら、私の胸を見て残念そうな顔でどこかへ行ってしまったわ……」

「おーい、ミア、俺の水魔法かっこよかっただろ?」

「あんた……そのローブ、薬学治療課に入ったのね」
 
「そうなんです! でも、討伐戦術課とも一緒に仕事したりするんですよ!」

「今まであまり話さなかったと思ったら、今度は凄い勢いで喋るわね……」

 リシテアさんと合流してホッとしていると、オークの討伐を終えたユリウスさん達も戻ってきた。
 村の女性たちも無事だったみたい。
 リシテアさんが救助して安全な場所に避難させてたんだって。
 ずっと苦手だったけど、リシテアさんって凄い人だったんだ!

「これは、フィオルがやったのか?」

「足止めはリシテアがしてくれたよ」

「別に、大したことはしてませんわ」

 ユリウスさんは、リシテアさんに着ていたローブをそっとかけた。

「そんな格好では風邪をひく」

「あ……ありがとう、ございます」

 ユリウスさんの大きめのローブを羽織って顔を赤らめるリシテアさん。

「フィオルさん、私……いけない妄想をしてしまいそうです」

「戻ってこい、ミア」

 村の家は壊されちゃったけど、幸いなことに犠牲者は出なかったみたい。
 魔導士ってすごいなぁ……。
 家を直したりは大工さんのお仕事なので、私たちの仕事はここまで。
 私も、早くみんなの役に立てるように、魔法をちゃんと使えるようにならなきゃ。
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