モーハ

飛雪

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第1章 重力波

おじさん

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「ミーナ、この惑星のこの辺りには珍しい、きれいな花がたくさん咲いているんだ。ライブラリーに登録してくれないか。名前は好きに付けていい。」
 と言って、おじさんは朝から早々にミーナを家から追い出した。何かあるに違いないと思ったミーナも軽く返事してライブラリーの携帯端末と異世界調査キットを持って出ていった。
 ミーナを家から追い出して、おじさんが言った。
「ほら、見てごらん。」
 とおじさんが私に手渡したのは、六角形の透明な棒状の結晶で、太さ1インチ、長さ5インチぐらいだった。日光に当てると表面が薄く黄色い色で光った。見詰めていると意識が引き込まれるような感じがする。
「あまり見詰めちゃだめだよ。後で困るからね。
 実際、それには困らされたよ。ここに帰って来るのに半年もかかったからね。幸い生命維持装置はいつも身につけていたから宇宙空間での即死は免れたがね。それと本当の幸運で恒星の重力圏に引き込まれなかった。」
 おじさんはしょっちゅう、長期間、我が家を留守にしていて、通信の届かないようなところにもいるものだから、家族の者や、姉である私の母からはどこかの惑星で事件に巻き込まれて死んだのよとか言われていた。死んだら死んだで、ライブラリーから連絡が来るから、連絡がないのは生きている印だった。皆慣れっこになって、生きていればその内帰って来るでしょ、で終わりだった。
 それが久しぶりに姉の母のもとに連絡してきて、息子(私)を自分のところに来させてくれないかと言って来た。母は長い間連絡もなしに、こちらからの問いかけに返事もしなかったことを怒っていたが、おじさんとの連絡の最中に、母は私に
「どうする?」
 ときいてきた。
 どうするって、学校も始まっていたし、ミーナのことも頭によぎった。前に「変な面白い虫がいるんだが、見に来ないか」の一言にうっかり乗って3年を無駄(今から思えば)に過ごしたことがある。ハラハラドキドキの3年だったが。

 おじさんの居場所をきくと、大型や中型の亜光速船の定期航路を何度か乗り換えて、最後はチャーター船で無人の惑星に、というコースだった。亜光速で銀河を移動するのは非常に時間がかかる、現実的でない移動手段だったが、他に代わる方法がなかったから、そうするより他に選択肢はなかった。
 まず、ここからコルサントへ行き、そこでアルデラーン行きに乗り換える。
 アルデラーンでベガ行きに乗り換え、ベガでアルタイル行きに乗り換える。これで3年。船内では寝ているだけなので退屈な待ち時間はない。乗り換え港では輸送される荷物のようにベルトコンベアーに乗っているだけなのでそれこそ寝ているだけでいい。短命族は全行程冬眠カプセルで過ごすが、せっかく銀河を縦断するのだから、見ておきたい。VRで見る方法もあるがVRと現実とでは大違いだ。実際にそこに行き自分の目で見、肌で感じるに如くはない。自分の目で見ないで何で生きていると言えよう。おじさんにも何度も聞いた。自分の目で見るのが一番だよ。そこで新しい発見もある。実際に体験すること。それは無駄じゃないんだよ。
 偉大な発明は実体験から生まれてきた。
 我が家のクルーザーは父が商用で乗り回しているし、我が家は、私専用の小型船を購入できる程の金持ちではない。おじさんがいる惑星までの旅程の予約は母が手配してくれるという。
 何か冒険の予感がしたから、ミーナも引き込んだら面白いかもという考えが一瞬ひらめいた。

「ミー…」
 と思わず口が動いたのを母が目ざとく見つけて、
「いいわねぇ」
 と同伴者1名と、ミーナの席も予約してくれた。
「ミーナに確認してね。」
 だ。
 で、ミーナに連絡すると「いいわよ」の一言だった。
 と、先日学校の帰りにミーナの部屋でのちょっとした遊びを思い出した。部屋に入るなり、ミーナが下着を取ったので、こっちへおいでと合図して私の真正面に座らせた。ミーナの形のよい乳房の上に乗った薄く色づいた干しぶどうのような乳首を人差し指でちょんと突いたのだ。ミーナはイヤンというような声を出したが、顔は笑っていた。
 ミーナも私の乳首をちょんと推した。くすぐったさが背筋をかけあがった。私達はそのまま抱き合った。互いの体温が互いの体に伝わっていった。楽しい思い出だった。

 学校へもしばらく休むと連絡した。
 おじさんがいる惑星への旅行は最初の亜光速船の都合で、出発が明日になった。
 ミーナとは宇宙港のロビーで待ち合わせた。ミーナの荷物も私と同様、軽装だった。必要なものはおじさんの家にあるだろう。
     おじさんのいる惑星には1ヶ月で着いた。着くまでの船旅はごくありふれたものだった。船外を通り過ぎる恒星や星団を眺めたり、ブリッジの様子を見学して船長の威厳や船員の動きに感心したり、珍しい食事に舌つづみを打ったり、他の船客と歓談したりゲームに興じたり、乗り継ぎの船を心配したりと。これら全てがミーナとの思い出になった。
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