​転生したら最強辺境伯に拾われました

マンスーン

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15話

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 ​あるよく晴れた日の朝。

 朝食を終えて自室でくつろいでいた俺の元に、メイが弾むような足取りでやってきた。

「ルカ様! 今日はとてもお天気が良いですし、気分転換に街へお出かけしてみませんか?」
「え、街へ?」

 ​屋敷の外に出るのは、あの日魔物の森からここに運ばれてきて以来、初めてのことだった。

「うーん、行ってみようかな」
「本当ですか!? ふふっ、良かったです……!」

 ​俺がすんなりと了承すると、メイはニヤリとした怪しい笑みを浮かべた。
 ​     



 
 ​

 辺境伯領の中心にある街は、活気に満ち溢れていた。

 ​(わぁ……すごい。こんなに賑やかなんだ)

 ​石畳の通りにはたくさんの出店が並び、美味しそうな匂いや人々の笑い声が行き交っている。 

 ずっと屋敷の中で静かに過ごしていた俺にとって、それはひどく新鮮で眩しい光景だった。キョロキョロと周囲を見渡して内心ではしゃいでいると、すぐ隣を歩くラーク様が、どこか眩しいものを見るような、優しい目で見下ろしているのに気づいた。 

「ラーク様?」
「いや……君が楽しそうで、何よりだ」

 ​ラーク様は少しだけ照れたように視線を逸らす。その相変わらずの不器用さが面白くて、俺は小さく笑った。

​「……で。なんであんたまで後ろをくっついて歩いてるのよ」

 ​不意に、俺たちの背後からメイの低い声が聞こえた。
 振り返ると、私服姿のメイが、隣を歩く庭師のガルドを睨みつけている。

「いいじゃねぇか! 俺もたまには街で買い物したいんだよ。新しいハサミと肥料も切らしてたしな!」
「空気読みなさいよこの筋肉だるま! せっかくのデートのお膳立てだったのに!!」
「あぁん? デート? 護衛代わりになってやってるんだから感謝しろってんだ!」 

 ​小声でバチバチと言い争いながらも、どこか楽しそうにワチャワチャしているメイとガルド。その様子を微笑ましく見守っていると、ラーク様が一歩だけ距離を詰め、俺を人混みから守るように立ってくれた。

「ルカ。何か欲しいものでもあるのか? 見て回りたいところがあれば、どこへでも案内するぞ」
「欲しいもの、ですか。俺自身のものは、特にないんですけど……強いて言うなら、屋敷のみんなにお土産を買いたいです」
「お土産?」
「はい」

 ​実は最近、毎日の魔力共有の対価として、ラーク様から毎月十分すぎるほどの給料をもらっているのだ。 

「ただ手を繋いで魔力を流しているだけだから」と断ったのだが、執事のエルザさんから「ルカ様の浄化のおかげで領地の利益が上がっています。正当な報酬を受け取っていただかないと、こちらが困ります」と真顔で押し切られてしまった。

​「せっかくお金をもらったから、みんなに何かプレゼントしたくて。ディーには、馬の手入れに使えるものとか。アランさんには新しいスパイスとか……。あ、エルザさんには何がいいかな。メイやガルドにも何か買いたいし……」

 ​俺が指折り数えながら真剣に悩んでいると、ラーク様はふっと表情を和らげた。

「君は、本当に周りのことばかりだな」
「え?」
「いや、良いことだ。……それなら、俺の行きつけの店にいくつか寄ってみるか? 職人が集まる通りがある。彼らが喜びそうなものも、きっと見つかるだろう」
「本当ですか! ぜひ行きたいです」
「あぁ、任せておけ」

 ​頼もしく頷くラーク様に先導され、俺たちは連れ立って職人通りへと足を踏み入れた。

 ​(……もちろん、ラーク様にも何かお礼のプレゼントを買わなきゃな)

 ​前を歩く広い背中を見つめながら、俺はこっそりとラーク様に似合いそうなものを探し始めた。
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