手軽に読める短い話

ぴろわんこ

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潜在意識ペン

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私は文房具店に行った。日記でも書き始めようと思い、必要な筆記用具を買ってこようと思ったのだ。

自動記録ペンというのが、私の目にとまった。説明書を読むと、自分の心の内をペンが自動で書いてくれるというのである。少々高価だったが、私は物臭なので丁度いい物が売っていたなと思い買って帰った。

早速そのペンを使い、今日の出来事、私の思いを書いてみた。力を入れなくても、指をペンに添えるだけで自動的に書いてくれたのだ。へえ、本当に自動なのだなと私は驚いた。

だがその内容を読んで、もっと驚いた。ほとんどが家族や会社で共に働く人々、あるいは通勤時などに出会った人への悪口だったのである。

妻に対しては、いつも口うるさくてウザいな、いっそ別れてやろうかと書いてあった。
息子に対しては、もっと素直に言うことを聞け。できの悪い奴だ。捨ててやろうか。
上司には、最低な奴だ死んでくれないかな、同僚にはバカな奴だよな、おれも苦労するぜ。
通勤時に会った人には、お前みたいなマナーの悪い奴がいるから周りが迷惑するんだよ、もっと自覚を持てと書いてあった。

私は愕然とした。私も聖人君子ではないから、そう思うことがないわけではないが改めて文章にされてしまうと、私の心の醜さを思い知らされる気になった。

と、同時に気分がすっとするのも感じた。普段はそんなことを思ってはいけない、ましてや口に出してはいけないと封じ込めている感情を文章にするということは、かつてないカタルシスを感じた。ストレスの解消にはなった。

かと言って、こんな内容を家族に見られたら一大事なので、ビリビリに破り捨てた。
翌日また文房具店に行き、シュレッダーを買ってきた。だがよく見てみると、台所の片隅と息子の部屋の片隅にも、シュレッダーが置いてあった。さらによく見てみると、自動記録ペンは妻も息子も持っているようだった。
やはり家族は皆、お互いに口に出せない思うことがあるのだろう。
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