手軽に読める短い話

ぴろわんこ

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便利なカメラ

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私は妻と不仲になった。妻から冷たい目をされたり、よそよそしい態度をとられることが増えた。それとなく探りを入れたが、別に何もないわと言われるだけであった。

いわゆる倦怠期というやつなのだろう。何とか関係を修復しようと、私は妻に二泊三日の国内旅行を提案してみた。妻は最初は渋っていたが、たまにはいいかと了承してくれた。

私は最近買ったばかりのカメラを持って行き、旅行の様子を撮ることにした。ただのカメラではなく、オートでその人の様子を撮ってくれるのだ。スマホやカメラのように手で持つ必要はなく、宙に浮いた状態で撮ってくれる。
モードを決めることもでき、例えば嬉しいというモードに設定すれば、その日一日嬉しかった様子を自動的に撮影してくれるのだ。

しかしこのカメラは、盗撮などの犯罪に利用されるおそれもある。そこで決して家族、または本人以外の者が使ってはいけないという厳しい決まりができた。悪意は無くとも、決まりを破ったら重罪となった。当然トイレや入浴の際は、撮らない設定となっていた。

旅先では観光名所に行き、商店街にも行き、温泉にも二人で行った。楽しかった。久しぶりに、妻の心からの笑顔を見れたように思った。

家に帰って、妻と写真を見た。妻も嬉しそうだった。楽しい旅の思い出が甦り、話に花が咲いた。妻との関係も修復し、上手くいくかと思われた。

しかしそんな算段をするより、別なことに金や知恵を使った方がよかったようだ。私は妻にそのカメラを使われ、不倫相手と会って嬉しそうにしている様子をカメラに撮られてしまった。離婚され、多額の慰謝料を請求される羽目になってしまった。

今思えば、私の不倫に気づいていたから態度もよそよそしかったのだろう。
嬉しそうにしていたのも、このカメラを使えば不倫の動かぬ証拠が撮れる。慰謝料を多額に取れて、別れられると皮算用をしていたからだろう。
向こうの方が一枚上手だった。
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