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046 でも、RPGってそんなもんだよな
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リスティアがその細腕で扉を押し開く。
まるで発泡スチロールでできているかのように、石扉は音もなく開いていく。
視界に飛び込んできた光景を一言で表すなら、「玉座の間」だ。
しかし、キングダム王国の王城で見たそれとは対照的。
退廃で飾られ、血に彩られた玉座の間だった。
まさに、魔族の本拠地に相応しい光景。
おぞましさに身の毛がよだつような部屋だった。
広い部屋の中に玉座がひとつ。
遠目にはよく分からないが、何者かが腰を下ろし、こちらを伺っている。
もしや、アイツがガリアスか?
身構えるオレをよそに、リスティアはつかつかと玉座に歩み寄る。
その何気ない様子につられ、オレも後を追いかける。
――カツカツカツカツ。
広い空間にオレとリスティアの靴音が空虚に響き渡る。
部屋は薄暗く、玉座の辺りはぼんやりとしか見えない。
玉座との距離が少しずつ近づいていく。
ようやく、お互いの顔が判別できる距離になる。
玉座の主がゆっくりと立ち上がる。
思っていたよりも小柄な体格をしている。
オレは身構え、リスティアはのん気に手を振る。
そして、玉座の主が口を開いた――。
「お疲れ様でした。勇者様、姉上」
「いーちゃん、おつかれー」
「なんだよ、イーヴァちゃんかよ」
緊張していたオレはガクッと拍子抜けした。
「なんだよって、その言い方はひどいよ、勇者さま~」
「…………」
リスティアがツッコんでくる。
イーヴァも若干ジト目だ。
「あっ、ごめんごめん。そういう意味じゃないんだよ。てっきりガリアスってのが出てくるもんだとばかり思ってたから……」
「いえ、平気です。お気遣いなく、勇者様」
イーヴァが平坦な口調で答える。
相変わらずこの子は感情が読めないな。
「ところで、そのガリアスはどこ? なんでイーヴァちゃんがここに?」
「それなら――」
「うん、もう倒しておいたよ~」
イーヴァが答えようとしたところに、リスティアが割り込んで答える。
「へっ!?」
どうやら、また後をついて歩くだけのお仕事だったようだ。
いぇーい、ミッションクリアー!!
勇者と出会う場面すら奪われ、さっさと倒されちゃったガリアスにちょっとだけ同情したくなる。
不憫過ぎる中ボスだ。
リスティアとイーヴァの話によると、この悪魔城はこの世界における魔族の本拠地。
でもって、ここを支配していたのが魔王の手先のガリアスだそうだ。
魔王のいる魔界にはこの奥にある転移ゲートから転移で行けるんだって。
ちなみにガリアスのドロップアイテムは銀色の宝玉――フェニックスを覚醒させるための宝玉のひとつだ。
本来の世紀攻略ルートだと、
ガリアスを倒す→フェニックスに乗れるようになる→鍵師のお使いクエストのためにフェニックスに乗って世界中を飛び回り、『究極の鍵』をゲット→その鍵で封印の門を開いて、魔界へGo!
って流れだそうだ。
正規ルートだと、むだに行ったり来たりさせられるんだな。でも、RPGってそんなもんだよな……。
だけど、オレたちはそんなのガン無視だった。
本来なら、この山も徒歩で来なきゃいけないし、鍵師ラゴスのお使いもこなさなきゃならなかった。
でも、王国軍のみなさんがオレが召喚される前にガリアス倒していたから、最初から銀色の宝玉ゲット済。おかげでムダな山登りせずに楽々ここまでこれたわけだ。
自力だったら登山してるだけでタイムアップだもんな。
いや、ほんとイージーモードサマサマだ。
ということで、封印の門を『究極の鍵』で開けて、さっさと魔界へ突入だ。
「で? 封印の門ってどこ?」
「もう、開けちゃったよ~。ほら~、見て~」
リスティアが玉座の後ろの空間を指し示す。
そこにあったのは立派な扉――の残骸。
『究極の鍵』意味ねーじゃん!
力技でぶっ壊してんじゃん!!
「あれ、じゃあ、なんのために鍵師のところに行ったんだ?」
と姫さまに訊いたら、「後で役に立つからね~」と笑ってはぐらかされ、くわしくは教えてくれなかった。
うーん、気になる。
ともかくこの世界でやることをすべて終え、オレたち3人は転移ゲートに飛び込み、魔界へと向かった――。
――ミッション8クリアー
【後書き】
次回――『いぇーい、遂に後をついて歩く仕事すらしなくて済んだぜ』
まるで発泡スチロールでできているかのように、石扉は音もなく開いていく。
視界に飛び込んできた光景を一言で表すなら、「玉座の間」だ。
しかし、キングダム王国の王城で見たそれとは対照的。
退廃で飾られ、血に彩られた玉座の間だった。
まさに、魔族の本拠地に相応しい光景。
おぞましさに身の毛がよだつような部屋だった。
広い部屋の中に玉座がひとつ。
遠目にはよく分からないが、何者かが腰を下ろし、こちらを伺っている。
もしや、アイツがガリアスか?
身構えるオレをよそに、リスティアはつかつかと玉座に歩み寄る。
その何気ない様子につられ、オレも後を追いかける。
――カツカツカツカツ。
広い空間にオレとリスティアの靴音が空虚に響き渡る。
部屋は薄暗く、玉座の辺りはぼんやりとしか見えない。
玉座との距離が少しずつ近づいていく。
ようやく、お互いの顔が判別できる距離になる。
玉座の主がゆっくりと立ち上がる。
思っていたよりも小柄な体格をしている。
オレは身構え、リスティアはのん気に手を振る。
そして、玉座の主が口を開いた――。
「お疲れ様でした。勇者様、姉上」
「いーちゃん、おつかれー」
「なんだよ、イーヴァちゃんかよ」
緊張していたオレはガクッと拍子抜けした。
「なんだよって、その言い方はひどいよ、勇者さま~」
「…………」
リスティアがツッコんでくる。
イーヴァも若干ジト目だ。
「あっ、ごめんごめん。そういう意味じゃないんだよ。てっきりガリアスってのが出てくるもんだとばかり思ってたから……」
「いえ、平気です。お気遣いなく、勇者様」
イーヴァが平坦な口調で答える。
相変わらずこの子は感情が読めないな。
「ところで、そのガリアスはどこ? なんでイーヴァちゃんがここに?」
「それなら――」
「うん、もう倒しておいたよ~」
イーヴァが答えようとしたところに、リスティアが割り込んで答える。
「へっ!?」
どうやら、また後をついて歩くだけのお仕事だったようだ。
いぇーい、ミッションクリアー!!
勇者と出会う場面すら奪われ、さっさと倒されちゃったガリアスにちょっとだけ同情したくなる。
不憫過ぎる中ボスだ。
リスティアとイーヴァの話によると、この悪魔城はこの世界における魔族の本拠地。
でもって、ここを支配していたのが魔王の手先のガリアスだそうだ。
魔王のいる魔界にはこの奥にある転移ゲートから転移で行けるんだって。
ちなみにガリアスのドロップアイテムは銀色の宝玉――フェニックスを覚醒させるための宝玉のひとつだ。
本来の世紀攻略ルートだと、
ガリアスを倒す→フェニックスに乗れるようになる→鍵師のお使いクエストのためにフェニックスに乗って世界中を飛び回り、『究極の鍵』をゲット→その鍵で封印の門を開いて、魔界へGo!
って流れだそうだ。
正規ルートだと、むだに行ったり来たりさせられるんだな。でも、RPGってそんなもんだよな……。
だけど、オレたちはそんなのガン無視だった。
本来なら、この山も徒歩で来なきゃいけないし、鍵師ラゴスのお使いもこなさなきゃならなかった。
でも、王国軍のみなさんがオレが召喚される前にガリアス倒していたから、最初から銀色の宝玉ゲット済。おかげでムダな山登りせずに楽々ここまでこれたわけだ。
自力だったら登山してるだけでタイムアップだもんな。
いや、ほんとイージーモードサマサマだ。
ということで、封印の門を『究極の鍵』で開けて、さっさと魔界へ突入だ。
「で? 封印の門ってどこ?」
「もう、開けちゃったよ~。ほら~、見て~」
リスティアが玉座の後ろの空間を指し示す。
そこにあったのは立派な扉――の残骸。
『究極の鍵』意味ねーじゃん!
力技でぶっ壊してんじゃん!!
「あれ、じゃあ、なんのために鍵師のところに行ったんだ?」
と姫さまに訊いたら、「後で役に立つからね~」と笑ってはぐらかされ、くわしくは教えてくれなかった。
うーん、気になる。
ともかくこの世界でやることをすべて終え、オレたち3人は転移ゲートに飛び込み、魔界へと向かった――。
――ミッション8クリアー
【後書き】
次回――『いぇーい、遂に後をついて歩く仕事すらしなくて済んだぜ』
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