はぐれ者と従順なバカ犬の蜜事

23

　

　彼の警告はかなりの効果があった。
　その日以来、僕は直接的なイジメを受けることはなくなった。

　教室での居心地の悪さはもちろん変わりない。相変わらず孤立はし続けた。無視だってされた。けど、死ねと言われたり、ゲイであることをからかわれたり、暴力を受けることは一切なくなった。

　──触らぬ神に祟りなし。

　彼のおかげだ。


「ありがとう……、関口くん」

　だから、アイスを差し入れした。
　いつも僕が自分を励ますときに食べる、ちょっと値段の高いバニラアイス。
　
「あ？　なにが？」

「な、なんでもない。……でも、お礼……言いたくて……」

「ケツ穴童貞奪った相手にわざわざお礼？　変わってんな、お前」

「……」

　うまい返事が見つからない。照れ隠しのようにアイスを少しすくってなめてみると、鼻にぬける上品な香り。やっぱり、彼が身にまとっている香りに重なる。

　僕がじっくり味わう一方、関口聖はそんなことお構い無しにアイスをすくい、べろべろと口に運ぶ。